なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
遠い世界、遥か彼方の銀河の中で……
今からそう遠くはない時代、とある辺境惑星の地に、一人の男が存在していた。
──銀の魂を持つ男。
人々は彼のことを、こう呼んだ。
───シルバーサムライ、と。
「シッパイザムラーイ!……じゃねぇんだよ」*3
「いきなりどしたの銀さん?」
突然にコマンドミスした感じの台詞を呟く銀さんに、首を傾げる私。
いつぞやかの約束通り、お酒を飲みに来たのだけれど、なんというか銀さんが心ここにあらず、という感じである。……いやまぁ、理由はなんとなくわかるんだけども。
「何を仰います『宇宙よろず屋シルバーサムライ』!貴方がシルバーサムライじゃないなら誰がシルバーサムライだというのですか!……ところで実はセイバーだったりします?自己申告ではライダー*4みたいになってますけど、実はセイバーだったりしません?」
「ねぇェェェ!?誰この人呼んだのォォォ!?つーかホントにコイツなりきりですかぁァァァっ!?一人だけユニバースから直接来てませんかコイツぅゥゥゥっ!!?」*5
「うわぁ……」
「ちょっとキーアさあァァん?!俺を置いて一人だけ逃げようとするの止めませんかあァァァ!?」
「やめろー!
「むむむ、私を置いて楽しくおしゃべりとは!ですが構いません、何故なら私はえーっくす!だから!」
「何時にもまして絡み辛ぇ!!!」
丈のあってないジャージを着た、ナイスバディでセイバー絶殺な
なので大人しく生け贄になって欲しい、今の貴方はどう考えても必要な犠牲だ。
「ふざけんなぁぁぁあっ!!?だぁれが犠牲の犠牲になるかぁあああっ!!!」*7
「ええい、騒ぐなら出て行けぃテメェら!!うちは保育所じゃねぇんだよ!!」
「えっ、ちょ、うわああああっ!!?」
なんて風に騒いでいたら、三人纏めて外に放り出されてしまった。
……仕方ないので私は浮いて、Xさんもなんか足から放出しながら飛んで、結果として銀さんだけ尻餅を付く形になってしまったのだった。
「いつつつ……くっそ、こっちじゃ爆破とか襲撃の心配ないからって調子に乗りやがって、このオンボロ酒場め……」
「まぁ、ちょっと荒事があるくらいで、基本的には平和だもんねぇここ。原作みたいにメイドにカチコミかけられたりとかも無いみたいだし」*8
「なんと、そこまでの無法地帯でしたか!では私も遠慮は要りませんね!!」
「え゛」
「ふーはっはっはっ!!えーっくす!!」*9
店に向かって思わず悪態を吐く銀さんと、原作での災難*10を思いちょっとしみじみする私。
……の、横で、唐突にメダロットみたいな鎧*11を纏ってポーズを取るXさん。
……あーあ、みたいな顔になる私と、一応常識人なので何言ってんのコイツ、みたいな顔でXさんを見る銀さん。無論、そんなことで彼女の動きは止まらず。
アワレ、イエロー・フラッグ=サンは爆発四散!!ナムアミダブツ!
まさにショッギョ・ムッジョ。あからさまにサンシタ・ムーブだったのでさもありなん。*12……こんなところまで原作の因果を繰り返さんでもよかろうに、なんてことを思いつつとりあえず手を合わせておく、なむー。*13
「ま、マジでやりやがったぁァァァっ!!?おいどうすんだこれ!?ここじゃ人死にはでない*14っつーけど、これじゃあどう考えても俺ら取っ捕まる流れじゃねぇーかァァァ!!?」
「ははは。銀さん銀さん、バレなきゃ犯罪じゃないんですよ?」*15
「どー考えてもバレバレだろうがぁぁァァァっ!!?」
「ははははは。銀さん、『鼻☆塩☆塩』」*16
「はぁっ!?……ってはぁあぁぁあっ!!!?」
驚き連峰みたいになってる銀さんを横目に、華麗に指パッチン。……甘いな銀さん、チートってのはこういう時に使うものなんだゼ☆
そんな彼が見る前で、
「おや、時間回帰*18ですか?中々良いものをお持ちのようで!」
「あははははっ、Xちゃんも火力すっご~い!」
イエーイ♪みたいな感じでハイタッチ!いやー、なんかこう楽しくなってくるね!
「……どっちも完全に出来上がってるぅゥゥゥっ!!!?」
隣で騒ぐ銀さんの背中に回って、二人して背中をバシバシ。……酔ってない酔ってない!ぜーんぜん酔ってない!
大丈夫だからほら、次の店行こうぜー♪ってな感じに彼の腕をXちゃんと一緒にひっ捕まえて、無理やり移動開始。
あははははー♪可愛い子が両手で花が咲いたらヤハハハハー*19↑!
「すみませぇぇえええぇんっ!!!!誰か、誰か変わってくださああぁあぁぁいいいいいっ!!!!!?」
銀さんの叫びに、周囲のみんなが頭上でばってんを作るのを見ながら、私達は次のお店を目指して歩き始めるのでした。ふへへへへ~♪
道中、この酔っぱらい共二人に引き摺られながら色んな店を梯子したわけだが、なんというかどこもかしこも濃ゆい面子ばかりが揃っていやがった。
今居る店は普通の居酒屋で、揃っている人間もまぁ見た目には普通。……中身の方がぶっ飛んでるというか、多分あれアイドル系の誰かだよな?みたいな奴が多かったが。
最近のアイドル共はアイドルってだけじゃ売れねー*20からか、キャラクターの突飛させで話題を狙おうとしている感がすげぇ。
ぱっつぁん*21が熱を上げてる寺門通*22とかいうのもまぁ、その系統だろう。……いや、今んとこぱっつぁんもそのアイドルも、こっちじゃ影も姿も見たことないが。
「よぉーし、そこだっ、今だっ!……やったぁ!見てたXちゃん!?サヨナラホームラン*23だよサヨナラ!」
「おー、宇宙ベースボールに比べると流石に迫力に欠けますが、地球の野球もなかなか。……え?この野球、この施設内でしか見れないんです?」
「いやー、流石にレーザービームを本気で投げられる人*24は、そうそう居ないんじゃないかなー?」
「それを綺麗にかっ飛ばしてホームラン!気持ちぃーっ!!」
カウンター席の右上辺りにあるテレビを見ながら、熱燗*25とおでんをつっつく女共が三人。
キーアとXと、ここで意気投合した……ゆっき*26、つったか?が、流れている野球中継で一喜一憂している。
……俺の気のせいじゃなけりゃ、なんか投げたボールがビームみたいになっていたし、それを真正面から打った奴もなんかまともには見えねーし。
これ、ホントに野球なのか?実はテニヌ*27みたいなよく似たなんかなんじゃねーだろうな……?
みたいな気分になってしまって、酔うに酔えないんだが。
「あー、楽しかった!また一緒に飲もうねー!」
ゆっきとか言う女は、連れらしい女達と一緒に帰っていった。……いや、なんかまだ飲み歩きしてそうではあったが、向かおうとしていた方向が反対だったので、別れることになったって感じなわけだが。
そうしてまた両腕を捕まれる俺。……なぁ、俺これどういうポジション扱いなんだ……?
「付き合ってくれるって言ってたじゃないの、今日は朝まで飲むぞー!」
「いやあの嬢ちゃん心配してるだろ?ほどほどにして帰ろうぜ?」
「帰るのは朝って言っといた!マシュはマシュでラットハウスでパジャマパーティらしいしいいんじゃないかな!」
「既に言質取ってやがった……っ!!?」
盾の嬢ちゃんを引き合いに出して逃げられないか試してみたが、既にその辺りは片付いていた為失敗。……もう一人の方は聞くまでもないのでやる意味がない、どう考えても朝まで梯子コースである。
「勘弁してくれ……」
「コンバンワ、ディョルデディヴァナディスカ、イイディスベ」*28
「あぁ?……ってうおわっ!?」
そうして俺が引き摺られていると、なんというか凄まじく聞き取り辛い声*29で言葉を掛けられて、思わず聞き返し……て、目の前に居た謎の人物に思わず驚いて声を上げた。
……全身スーツで鎧っぽい部分があって、赤い複眼っぽいもんのついた仮面を被ってる変態*30……に
「お、ブレイドだ。仮面ライダー*31も居るんだねぇ」
「おおなんと、『宇宙切札ブレイドライダー』*32ではないですか。後々切り札を名乗るダブルライダー*33が出てきたせいで、微妙に名前被っちゃったんですよねぇ」
「ムリイドライダー?イャバァ、シラリデドゥンナラヴァナシヴァヴァャイケド」*34
「……なんもわかんねぇ」
──仮面ライダーブレイド*35。
恐らく目の前に居るのはそいつなんだろうが……なりきりに当たって特徴を誇張しすぎたのか、全く聞き取れねぇ。*36
いや、所々聞き取れるところもあるんだけど、全体的に聞くとわけわからなくなるというか……。
「ライダーザァカバディコナイカ?」*37
「へぇー、そんなところあるんだ?……おやっさんがマスター?そりゃ似合うな絶対」
「よぉーし、銀時くん!行きますよ次の店!」
「イヤだから俺は解放してくんねぇーかなぁっ!?」
「ザァンベイザァバゴア゙ンナーイ!」*38
そんなことを考えているうちに、あれよあれよという間に次の行き先が決定してしまう。……いい加減俺は解放して欲しいんですけどねぇ!?
「はー、いいお店だった。お酒は美味しいしおやっさんのトークは楽しいし」
「仕事の手伝いをさせられているのが『名探偵ドラゴン・L』だったのはちょっとビックリしましたね、てっきり『旋風切札ダブルライダー』が居るものだと思ってましたし」
「……いや、ドイツもコイツもマスクのまんまだったことの方が驚きだったろ、あれ」
ライダー酒場「
いやー、実にいいお店だった。
……基本的に一つのスレから一人しか来てないみたいだから、どうしても揃わずにちょっとおかしな組み合わせになるんだろうなぁ。うちのマシュが
「……俺もぱっつぁんも神楽*42も定春*43もいねーから、なんつーかやる気が出ないってのはあるが」
「完全に呑んだくれおっさんだもんねぇ」
「おっさ……!?いやいや、まだ若いし、イケるし、銀さんピチピチの二十代だし……」
「最終話基準ならもう三十路前でしょうに。十分おっさんよ」
「がふぅっ!!?」
「おや、銀時くんは私よりも歳上だったのですね、道理でかれ……お兄さんっぽいなと思っていました」
「おい今加齢臭*44って言おうとしたろ、しませんー!加齢臭なんか銀さんからはしーまーせーんー!したとしてもイチゴオレの甘い香りがしますぅー!」
「……その、男性からイチゴオレの香りは、それはそれでどうかと思うのですが」
「まさかのマジレス!?」
そうやって騒ぎながら新しい店を探そうとして──私達は、そいつに出会ったのだ。
「では、僕を仲間に入れるといいのだ、へけっ」
「あん?」
物陰から聞こえてきた声。
無邪気な少年のようなその声は、かつてどこかで聞いたことがあるようなもので。
……いや待って?なんか物陰に居るキャラシルエット大きくない?この声のキャラの大きさと違くない?
なんというかこの物陰に居る子、さっき銀さんが言ってた定春くらいあるよ?どー言うあれなのこれ?
頭に疑問符を浮かべながら待つ私と、なんだか顔色が悪くなってきた銀さんと、よくわかってなさそうなXさん。
そして、物陰から声の主が現れる。
「僕、ハム太郎*45!よろしくして欲しいのだ、くしくし」
──それは、巨体だった。
黒い外装を纏い、人々を恐れさせる波動を発し、可愛いものとおぞましいものを混ぜると言う二律背反によって産み出されしカオスの権化。
見たものはその恐ろしさに心胆を寒からしめ、嘆き、叫び、逃げ出すことだろう。
何故ならば、その口内に獣を納めしその者は、戦没者の怨念によって形作られた、生者を決して許さぬ悪霊以外の何者でもないのだから。
──黒き災神を纏いし獣。それこそが、私達の目の前に現れた者だった。
「ご、ゴジハムかよォォォ!?」
まぁ仰々しく描写してみたけど、要するにでっかいゴジハムくん*46である。……纏ってるゴジラ*47の皮が本物っぽいオーラを醸し出してるけど。
「僕が居れば百人力なのだ、お任せあれなのだ、へけっ」
「だって銀さん、定春ポジゲットだね!」
「いやふざけんなよってうぉわぁっ!!こっちくんなぁァァァ!!?」
おー、全力ダッシュで逃げてく銀さんと、それを追っかける巨大ゴジハムくんだ。……なんだろねこの図?
なお、見た目ほど危なくないらしいと隣のXさんが言ってたので、私達はそのまま朝まで二人で飲み明かしたのでした。
後日、ホントに定春ポジションに収まったらしいゴジハムくんと、その隣で意気消沈する銀さんを見て私が吹き出すのは、また別のお話である。