なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、なでしこちゃんの食事終わりを待つ間、私達も改めて昼食にすることに。
さっきは突然現れた彼女に邪魔されたからね、いい加減こっちもちゃんと昼食を摂ろうって話になるのは自然なことだろう。
……ただまぁ、ここの店員さんも追加でやってきた二人もなでしこちゃんに付きっきりなので……。
「こっちはこっちで勝手に作って食べよう、って話になるんですけどね……」
「まさか自分で調理することになるとは思いませんでしたわ……」
はい、さっきまでの注文とかは全部なかったことになって、代わりに鉄板焼的なものが始まりましたとさ。
いやまぁ、そんなに本格的なやつじゃないけども。
でもこう、なんかいきなりジャンル変わったな感あるのは確かというか。
なおこの鉄板、勿論単なるファミレス的な店に最初から用意されているはずもなく、普通にエミヤんが投影したものだったりする。
「ふむ……我々は暫く彼女に掛かりきりになる。つまりは君達に時間を割く余裕がなくなるということだ。申し訳ないのだがその辺は了承して貰いたい。代わりと言ってはなんだが、この鉄板で好きに具材を焼いたり粉ものを楽しんだりするといい……」
「……みたいな感じでエミヤんがぱぱっと投影してくれたんだよね」
「エミヤお兄さんの投影って相変わらず意味不明なの」
「それは言えてるね……」
ってなわけなので、忙しそうな向こうは放置してこっちは鉄板パーティである。
……唯一懸念点があるとすれば、こういうの食べてるとお酒呑みたくなるってことカナー?
「別に忠告せずともわかっていることとは思いますが、敢えて述べておきますわよ。……勤務中ということをお忘れなく」
「祭なんだしこれくらいいいじゃん、私酔わないんだからいいじゃん……とは言えないのが悲しいところよね……」
規律を正す側が規律を乱してちゃ説得力半減以下だよ、とでもいうか。
……まぁそんなわけなので、少なくともこのメンバーで行動している間はお酒厳禁である。
夜以外基本どっかの手伝いしてるんだから、そもそもそんな暇はないとか言うのは禁句です()
いやまぁ、その分夜呑めばいいんだよってのも確かなんだけど。
とかなんとか呟きつつ、今日の夜はゆかりんの深酒がやばそうだなーと別方向の心配をする私です。
やけ酒がどこまで連鎖するか見物だな!(半ばヤケクソ)
とまぁ、いい加減話を戻して鉄板焼。
無論さっきも言った通り、別に本格的な鉄板料理を始めるわけではなく、半ば
「私が作るって話だったらもうちょっとちゃんとするけど……みんなで作るって感じだから、ちょっとくらい雑な方がいいよね」
「私としましては、こういう時でもキチンと手順を踏まえて作るべきかと思うのですが……まぁ、こういうタイプの調理に造詣が深いわけでもなし、大人しく口を噤んでおきますわ」
「右に同じなのー」
「私も同じく」
「というわけだ、みんなのりこめー」
「わーい」
普段は細やかな料理をする面々も、ここでは無礼講。
焼き肉焼き魚焼きそばお好み焼き、とにかく鉄板で焼けるものならなんでも焼くぜの半ばBBQ状態である。
……いやまぁ、流石に使うスペースとかは分けてるけどね?
そんな感じで適当に調理と食事を進めていたんだけども。
「……なんか、視線が」
「はい?いきなりなにを……いえ、確かに見られていますわね、凄く熱心に」
なんかこう、私達が美味しく食べる姿に対して熱い視線が向けられているような気が……。
突然なにを言い出すのか、とツッコミを入れようとした黒子ちゃんも、なにやら突き刺さる視線に気付いたようで微妙な顔をしている。
それもそのはず、この視線の出所はすぐに確定できてしまうのだから気付かないはずがない。
というのも、こちらからは離れた位置にてエミヤん達に料理を持ってきて貰っているはずのなでしこちゃんが、こっちに視線を向けてヨダレをダラーっと垂らしていたのである。
いやまぁ、ヨダレに関してはすぐさま運ばれてきた料理を口にしているためすぐに途切れてるんだけど、代わりに視線はずーっとこっちを向いているというか……。
「……ふと気になったのですが、確かカービィさんというのは大食いではあるものの、延々と食事をし続けないといけないタイプの方ではなかったような……?」
「そういえば、食べるのは好きだけど別に他人の食事に手を出すようなタイプではない、とかも聞いたことがあるような……」
そんな彼女の様子を見て、疑問を溢す黒子ちゃんとアスナさん。
そもそも食材がなくなるまで永遠と食事を続けるようなタイプではなかったような……というその言葉は、なるほど確かに単純なカービィ相手なら当てはまっている内容であるのは間違いあるまい。
いやまぁ、自分から奪っていく相手には容赦なかったりするので、食事に拘りがないってわけじゃあないのも正解なんだけども。
……とはいえ、今のなでしこちゃんが何やら変、という感想を抱くのもそうおかしな話ではない。
となると、そのおかしな様子の理由はほぼ間違いなく【複合憑依】であるという部分にあるわけで。
「さっき私は、出会ったばかりの彼女の様子に対して『行き倒れていた人が久しぶりの食事にガッツいているかのような勢い』って称してたんだけど」
「たんだけど?」
「それが答え」
「えーっ!?」
おっとこれだけだとわからない?
んじゃまぁ彼女の【複合憑依】の内訳、もう一度カウントしてみよう。
まずは一人目なでしこちゃん、見た目の要素を大幅に締めている部分。
それから二人目はカービィちゃん、この大食いレベルは彼?彼女?が組み込まれていないとちょっと説明できないレベルである。
「そんでもって三人目、小鳥遊ホシノ。イメージとかカラーリングとか名前とかで他二人と関係していることを示している彼女は、けれど本人に大食いのエピソードとかがないから若干浮いている、とも言えなくもないよね」
「……まさかとは思いますが、ホシノさんこそが現状の彼女の様子の理由だと?」
「そのまさかでーす」
「えーっ!?」
で、三人目となるホシノちゃんに関してだけど、他二人と比べると大食い系の逸話には掠りすらしないのがわかると思う。
他の部分では二人と繋がる要素があるけど、裏を返すと二人の一番の共通点である『食事』に関する逸話は特にない、という感じになるはずだ。
──つまり、今現在彼女の食い意地が張っているように見えるのは、その理由は
なんでかって?他二人に共通している『大食い』要素は、
「まぁ、食べていいよって言われたら食べ続けるかもだけどね。でもここにいる彼女は許可とか出される前から食べ続けてたわけだから、そうなるのには必然的に理由があるってわけ」
「……ええと、私の勘違いじゃないなら……わりとお労しい理由だったりする?」
「えっ」
「アスナさんせいかーい」
「えっ」
……つまり、行き倒れて──
この場合、砂漠で遭難した結果枯死したホシノちゃんの先輩・ユメの存在が彼女の思考パターンに影響を与えている可能性大というわけだ。*1
「まぁ、あくまで原因であってなにもかもの理由ってわけじゃあないだろうけどね。ユメ先輩の死に方って飢え死にというよりは干からびて死んだ、って感じだろうし」
「……まぁ、どちらにせよ死因としてはあまり良いものではないでしょうね」
ここにいるなでしこちゃんは中身カービィ・要素にホシノ……って感じっぽいので、ユメ関連のあれこれも単に『死への忌避』的なモノになっているんだろうなーと。
……まぁ、そのせいで途中までみんな気付かなかったんだろうけどね、彼女がなんなのかってとこに。
だってある程度腹が膨れるまでの彼女、微妙に殺気染みたものを振り撒いてたんだもの!
あれだ、もちづきさんみたいな感じと言えばわかるかな?もしくはホシノ(昔)。*2
「まぁ、忌避って言ってもなんとなく、って感じでそこまで重いものでもないと思うよ。……で、さっきカービィちゃんは他人の食事を奪うようなタイプじゃないって言ったけど、」
「……あ、あー。もしかして最初になし崩し的に食べさせたから……」
「うむ、
で、最初こそ鬼気迫る様相だったけど、ある程度満足してからは単に楽しんで食べてるわけで。
……ここまでくると逆に止められないというか止めにくいというか、まぁそんな感じでなでしこちゃんの食事は加速していったというわけである。
え?じゃあなんでこっちを見てたのかって?
そりゃまぁ、こっちが向こうにないものを食べてるから、ってところもあるんだろうけど……。
「……なるほど。他人の食事を奪うことがないということは、
「まぁ、素直に受けとるならそうなるよねぇ」
「ぽよ!」
……まぁそんなわけで、結局みんなでパーティタイムみたいなことになったのでしたとさ。どんとはれ。