なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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祭は続くよまだ少し

 はてさて、ファミレスから出たのと同じくらいのタイミングでジェレミアさんがやってきたので、彼に気絶してるゆかりんとなでしこちゃんを任せ、再び捜索に戻った私達。

 

 ……なお、ゆかりんが気絶してるのをいいことに分身を一つ彼女に同行させたことは内緒である。

 仮に琥珀さんが今のあれこれを見てなでしこちゃんに注目してたら、なにかしらのアクションを示す可能性大だからね。

 止めはしないけどなにをするつもりなのかは確認しとかないと、ってわけである。

 

 

「……止めないの?」

「勘だけど今回の話、琥珀さんがやることに色々掛かってるっぽいからね……」

 

 

 まぁ、本当に私の勘でしかないため、他の人に話して対処とかはできんのだけど……と小声でアスナさんと話しながら歩く私である。

 で、後ろにいる私達と打って変わって先導する他三名はというと、こちらとはまた別の話題で盛り上がっているようだった。

 

 

「それにしても……一つ見付かるだけでも大騒ぎですわね、ハロウィン武器というのは」

「今年のハロウィンを全て担当してるから仕方ないの。どころかこれでもまだ抑えられてる方なのかもしれないの」

「……ああ、そういえばマシュ達……というかキーアさん達のところはハロウィンをテーマにしている、という話だったな?」

「ん?……あーうん、一応そのつもりなんだけど……事件は現場で起きてるなーって感じだねー」

 

 

 いやまぁ、会議室も平穏かと言われればノーなんだろうけど。

 ……などと、さっきマシュから送られてきた我が家の様子を思い出しながら苦笑する私である。

 

 え、なにが起きてたのかって?

 例のおもちゃの武器を持ち歩くのが流行ってるってあれ、どうにも『ハロウィンの仮装』としてうちが売り出したものって扱いになってるらしくってね……。

 いや、広めてたのは謎のカボチャ頭なんだけど、なにがどうなったのやらうちが発信源ってことになってて、その影響か満員御礼常時行列の酷い状態になっているらしい。

 

 あまりに酷いもんだから、ラットハウスから応援が来てると言えば、その混乱っぷりもなんとなく予想できるだろうか?

 ……具体的にはウッドロウさんとピカチュウが手伝いに来てるとのこと。なお上条さんは端から出禁である。

 なんで?!……という上条さんの抗議の声が聞こえて来そうだが、寧ろなんで大丈夫だと思ったのか聞いてみたい次第である。

 

 なにせ我が家、なりきり郷内でも珍しいくらいに空間拡張技術を使いまくってるところだし。

 そんな場所に幻想殺し(上条さん)なんて放り込んでみなよ、あっという間にスクラップが一つ出来上がるわ!

 ……まぁ、ラットハウスとか上条さんが出入りするところのほとんどがそういうの使ってない、ってのは言われなきゃ気付かないのかもしれないけど。

 

 え?なりきり郷は大丈夫なのに家はダメなのかって?

 その辺はややこしいので『単に生活してる分には問題ないけどうちみたいな特殊技術マシマシの家はダメ』と覚えておいて貰えれば。

 

 ……ともかく話を戻すと。

 現在我が家は千客万来で酷い様相だが、そうして酷い様相だからこそこっちに来るトラブルは(比較的)少なくなっている可能性があるわけで。

 それを思うと戻った方がいい気もしてくるのだが、トラブルの総量が多いのが向こうってだけで、トラブルの質的にはこっちの方がはた迷惑なので止めた方がいい……みたいな話になるのでしたとさ。

 

 

「ふむ、その心は?」

「向こうはハロウィン武器が湧いたり侵入したりしないように細工してるから。忙しいけど致命的じゃないってわけ」

「そんなことできるのなら、こっちももう少し簡単に片付くのでは?」

「そんな簡単に行く話なら苦労してないんですよ……」

「……ふむ?」

 

 

 いやまぁ、その疑問が出てくること自体は否定しないけどね……。

 ってなわけで、黒子ちゃんの疑問に簡潔に答えるために口を開く私である。

 

 

「簡単に言うと我が家はハロウィン武器対策をしてる……ってことになるんだけど、この対策って他のモノに応用はできんのよ」

「それは何故ですの?」

「場所……というか座標指定で結界を作ってるようなものなのよ。結界、って時点でなんとなく理由はわかるでしょ?」

「……なるほど。特定箇所を防衛するには向きますが、移動しながら使うには向かないというわけですわね」

 

 

 まさにその通り。

 ……いやまぁ、世の中には移動型の結界とかいう意味のわからんものを使える人もいたりするけど、今回使ってるのはそういうもんじゃないので。

 っていうかぶっちゃけますと『神断流』の技を使ってるので、応用とか基本できんのですよね。

 ご存じの通り『神断流』は再現技法、決められた行動をなぞることで簡便性と威力を保ってるタイプの技術なので。

 

 

「そんなわけなので、我が家にいる分には問題ないけどそこから出られると困る、みたいな人を押し込めとくのにも向いてるんですよ」

「なるほど、それゆえに大変そうな新人は全てキーアさんのところに送られると」

「そうなんだよねー……」

 

 

 いやまぁ別にいいんだけどね?

 でもこう、いい加減他にもそういう人を迎えられる場所を増やすべきというか……。

 え?だったら件の『神断流』の技を他でも使えって?それができるなら『神断流』じゃねーんですよ(白目)

 

 

「……どういうことなの?」

「『神断流』って再現技法なわけだけど、同時にコマンド式みたいなモノなんだよね」

「……?」

「雑に言うと、同じ技を同時に使えない」

「あー」

 

 

 もっと大雑把にいうと、他に『神断流』を使える人を増やさないことには件の技術を使うことはできない、みたいな?

 

 ……分かりやすく言うと、件の技は結界術。

 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()なわけで、その性質上再現という使用条件が引っかかるのである。

 具体的に言うと、結界を張ってる間は本来動けんのですよ。私は分身に任せてるけども。

 

 

「あと、分身に任せてるからといって私が再現してない、って扱いにならないのもポイントかなー」

「どういうことですの?」

「分身が技を使っている間はずっと『私がその技を使っている』って判定になるってこと。コマンドがずっとグレーアウトしてる、みたいなイメージがわかりやすいかな?」

 

 

 あれだ、分身の扱いはあくまで『コマンド選択回数+1』みたいなモノになってる、というか。

 同じコマンドを選べる回数が増えるわけじゃないので、結界を維持し続ける限り再度結界は張れない、みたいな。

 

 

「防御コマンドをずっと押しっぱなのにそこからさらに防御コマンドは押せないでしょう、みたいな?」

「……なんとなく理解できたの。攻撃コマンドとかだったら何回も選べるのが普通だと思うけど、それが防御コマンドとなると二回選べないのは分かりやすいの」

「ふむ……同一の行為なら寧ろ重ねられるのが普通だと思いがちですが……再現技法は最後まで過程を終えない限り同じ事を繰り返すことはできない、というわけですわね」

「まぁ、そんな感じ」

 

 

 一応、一回うちに設置してる結界を解除して範囲を変える、みたいな方法もなくはないけど……その場合余計なモノまで弾きかねないのでやりたくはない感じである。

 この結界、下手に範囲広げるとなりきり郷内に発生しうる【顕象】とか『逆憑依』まで弾きかねないし。

 

 

「それでそいつらがこの世界に発生しなくなる、っていうならそれでもいいかもだけど……実際にはなりきり郷以外で湧くようになる、ってだけだからね。余計な面倒が増えるだけだからやりたくないのさ」

「……それだと、他の方に覚えさせてどうにか、というのも怪しくなるのでは?」

「?……ああ、ごめんごめん。さっき私が言ってたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って意味。他の人に使わせる場合はそもそも自分の家だけが範囲になるから、郷内のあれこれまで影響はないよ」

「……ナチュラルに規模を大きくした話をするの止めません?」

 

 

 いやだって、しゃーないやん。

 我が家はどう足掻いても結界範囲内に含めないといけないんだから、その状況で効果範囲を増やそうとすると規模を大きくするしかないんだし。

 件の結界術はその仕様上、わけて二ヶ所に張るとかできんし。

 

 ……まぁ、あくまで一人で二ヶ所を防護しようとすると無理があるってだけの話だから、他の人に覚えて貰って安全地域を増やすのはそう難しくはないんだけど。

 

 ──うん、難しくない。

 そもそも『神断流』は修得がそこまで難しい技術ではなく、教えたらほぼ確実に使える技術である。

 にも関わらず、何故かこの結界術は周囲に広まっていない。

 それは何故なのかっていうと……。

 

 

「再現技法だから加減とかできないんだよね」

「……?それがなにか問題が?誰が使っても同じ結果をもたらせる、というのは利点だと仰っていたような気がしますけど」

「いやいや、タイミングを考えないと変なことになる可能性大だよこれ?」

 

 

 誰でも同じ結果をもたらしてしまうから、というところがとても大きい。

 これは利点でもあるのだが、同時に欠点でもある。

 どういうことかというと、わかりやすいのは特殊な『逆憑依』が使ったパターン。

 ここでいう特殊なとは【星融体】とかのことではなく、普通の『逆憑依』──単なる人型ではないタイプの人が使った場合の話。

 

 わかりやすい例だと荼毘君とかになるだろうか?

 ここの彼は常に燃えている、という点でちょっと普通とは言い辛い。

 そんな彼が件の結界を使うと、その炎が一瞬にして消えるのである。……で、消えたあと結界も消えて炎が元に戻る。

 

 

「……はい?」

「特殊な存在が件の結界を使うと、その結界の効果で特殊な部分がキャンセルされるのよ。で、キャンセルされたあと結界の維持に必要な条件──再現の部分が満たされなくなって結界そのものもキャンセルされる。……結果、なにもなかったって扱いになると」

「ええ……?」

 

 

 これはまぁわかりやすいパターンだけど……第一に、使う人間が【星の欠片】関係、もしくは一般人系の『逆憑依』じゃないと術が結果的に無かったことになるのだ。

 他、使うタイミング如何によっては周囲の人に似たようなことを経験させるパターンも起こりうる。

 空を飛んでいた人が結界に突っ込んで墜落する、とか。

 

 

「再現技法だから効果を調節とかできないからそんなことになるってわけ。……一応、【星の欠片】なら『神断流』の制約の外から幾らか効果を弄れるけど、これにしたってなんでもかんでも弄れるわけじゃないから問題があるし。……現状ハロウィンの脅威に完全に対処できるのはこの結界くらいだけど、そのためだけに乱用するのはちょっと無理があるってわけ」

「なる、ほど?」

 

 

 一応、『神断流』を極めた人間なら新技を作ることができるため、その際制約とか色々弄った件の結界術を新設することもできるけど……極めるとなると単に使うのとはレベルの違う話になるので、結局無理があるって話になるのでありました。

 ……まぁ、一番の問題なのは件の結界術を使える一般人系の『逆憑依』を見付けること、およびその子に分身系の技術を教えるってのが今のところ無理がある、って部分になるんだろうけど。

 

 

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