なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「はぁ、休日を……ねぇ?」
「ゆかりちゃんはお疲れなのね?私がいいこいいこしてさしあげましょうか?」
「いやだこの人、隙あらば可愛がろうとしてくる……」
「バブみとか越えて郷愁すら呼び起こすエウロペ様だ、いいだろう?」*1
『……よくよく考えてみれば、せんぱいやっぱりちょっとおかしいですね?エウロペさんに対しての扱いが、もはや崇敬の域に至っているような……?』
「癒しは時として毒のようなものだよ、BB」
『……いや、似てないですよアムロさんのモノマネ』*2
「なん……だと……!?」
あのなんとも言えない、黒歴史以外の何物でもない一連の事態から少しして。
場所をヘスティア様の屋台に移した私達は、最近増やしたという飲食用のテーブルに集まって、あれこれと駄弁っていた。
その中で、
まぁ、お二神とも構いたがりな気があるので、さもありなん。
あとちょっと今日の私がダメなのは、できればスルーしてください……。
それと、某カボチャが有名になりすぎた感のある、あの映画で出てきたアムロをイメージしながら喋ってみたら、全然似てないとダメ出しをされたわけなのだが。*3
……そんなバカな。数少ない私のモノマネレパートリーの中でも、普通に似ていると有名[要出典]*4なアムロのモノマネが、滑っただと……?
「じ、じゃあ太子のモノマネはっ!?」*5
『いや、似てませんよ流石に』
「……これでは道化だよ」*6
「端から聞いてて思ったのだけれど、そもそもそのモノマネって
「…………っ!!?」
『え、なんですかその『今初めて気付いた』みたいな顔。……もしかして、本気で今気付いたんですかせんぱい?うわ、それは流石のBBちゃんも、憐れみを覚えるほかありません……』
「……憐れみを下さい」
「小鳥ってガラでもないでしょうに」
「なんだとっ、貴様私が鶏ガラだとでも言いたいのかっ、謝れ、マザリーニさんに謝れっ!!」
「いやそれはそれで
「つまりガラが悪いと。日本語ってムズカシネー」*7
オチが付いたような付いてないような。
そんなくだらない話を続けていると、いつの間にか居なくなっていたヘスティア様が、人数分の皿をお盆に乗っけて戻ってきた。
……ふむ?なにかを頼んだような覚えはないのだけれど……?
そんなこちらの疑問に気付いたのか、彼女は朗らかに笑みを浮かべながら、私達の前にその皿を並べていく。
上に乗っているのは、普通に美味しそうなケーキの数々だった。
「エウロペがさ、新商品を開発したいって言うもんだから。こっちを助けると思って、試食をお願いしたいんだけどいいかな?」
「お安いご用でございますヘスティア様。このキーア、卑小非才の身なれど、与えられた任務には全力を以って当たりましょう!」
『ちょっとぉっ、せんぱいその台詞は宜しくないのではないかとっ!!』*8
おっと、BBちゃんに怒られてしまったんだぜ☆……わりと本気で「ウザッ」と言われてしまったので自重する。むぅ、強みを潰され続けている感……。
……気を取り直して。
目の前に並べられたケーキ達は、店で出す持ち帰り用のケーキの試作品……という体の、言ってしまえば間食用のものだろう。
なんというか、さっきから気を使わせてばかりなのが申し訳ない感じだが、こちらから返せるものというのもすぐには思い浮かばない。
なので、ここは相手の提案に乗って、しっかりと味の評価とかをさせてもらうことにしよう。……今日はなんか食べ物関係の話多いな?
というか当初の目的である、ゆかりんの疲労回復はどうなっているのだろうか?午後には温泉に放り込むことが決定しているが、ここまでで余計な疲労を覚えさせたりはしていないだろうか?
……そこを今更心配するのか?……いやその、違くてだね?
「……貴方、時々百面相してるけど、その時なに考えてるの?」
「やだ、ゆかりんのえっち」
「……まったくわかんないってことが、今のでよーく分かったわ」
『えっ?』
「えっ」
……脳内で言い訳を積み重ねていたら、なんだか変なお見合いが発生してた件について。
個人的には、『なにかんがえてるの』でなにを考えたのか、しっかり察したっぽいBBちゃんに、ネタのカバー範囲の広さを感心しつつ、『あれBBちゃんそもそも世代じゃなくね?』とちょっと恐ろしさを感じたりもする私です。*9
いやまぁ、根本的にネタ発言しかしない人間なので、察しやすいところがあるってのも間違いではないと思うけどさ。……それとは別ベクトルから察して来たんじゃないか、という悪寒がね?
マシュも時々変な察し方することがあるし、うちの後輩たち空恐ろしすぎではなかろうか?隠し事とかできる気がしないんですけど。
(……キーア、聞こえますかキーア。私です、キャタピーです。今、貴方の心に直接語りかけています。時間がないので手短に。察せていない物事も数多いので、別にそこまで彼女達を恐れる必要はありません。くれぐれも、彼女達の扱いを間違えないように。いいですね?)
「うっ、こいつ頭に直接……っ!?」
「なにをいきなり言い出してるんだキミは?中二病はよくないぞ、向き合わなきゃ現実と」
「やだ、非現実の塊みたいな神様から諭されてる……」
脳内会議が駄々漏れているのか、はまたまCP君を装ったロクデナシだったりするのか。
……語り口的に後者の可能性が高いような気がしないでもない、脳内に唐突に響いた声に呻いていたら、なにか勘違いしたヘスティア様に(頭の)心配をされてしまった。
……いやその、純粋に心配しないで貰えないです?
中二云々は、ここにいる人みんなに刺さりかねない話題なんですから。
なお、そんな苦言めいた言葉は、微妙に伝わらなかったらしく。……不思議そうに首を捻るヘスティア様に、小さくため息をつきながら、私は目の前のチーズケーキにフォークを入れるのだった。
「料理の味にまで郷愁が漂うとは思わなかったわねぇ」
「さすが自称おばあちゃま、というか。……実際ヨーロッパのグランドマザーみたいなもんだもんねぇ」
湯船で一息吐きながら、キーアちゃんと一日を振り返る私。
あれから豊富な種類を取り揃えたケーキ達の、それぞれの寸評を好き勝手に語りながら、あれこれと会話を続けて。
気付けばもう五時になっていたため、名残惜しみつつも解散した私達が向かったのは、郷の一画・炎熱系の異形型のなりきり達が集まっているせいで、ただの水まで熱湯と化す魔境・他称『
……ここにいる人達はふざけて
まぁ、なんというか頭に血が上りやすいというか、瞬間湯沸し器みたいなものというか。
……そういう、些細な事柄で噴火してしまう人が数多いから、戒めの意味もあるとかないとか聞いたけど……どうなのかしら?
なお、ここはその『熔地庵』の中でも一般層も訪れることができる観光区、いわゆる温泉街である。
……番頭に
まぁ、当の銭婆様からは「ごゆっくり」という言葉しか掛けられなかったので、詳しいことは分からないのだけれど。
───閑話休題。
最近は能力で体を身綺麗にして終える……みたいな、ずぼらを通り越したケアしかしていなかったけれども。
改めて、こうして湯船に浸かっていると。……随分と自分が無理をしていたのだな、と今更になって理解してしまう。
いやもう、体から力が抜けて言うことを聞かないのよ、真面目に。……体の方からもっと休め、と言われているみたいで、なんというか我ながら反省頻り、というか。
「……うん。もう少しちゃんとお休みは取るようにするわ……」
「そりゃ良かった。精神が占める割合が多い妖怪とはいえ、体を軽視するのはよくないからねー」
頭の上のタオルがずり落ちそうになるのを戻しながら、ふぅと息を吐く。……となりのキーアちゃんがケラケラ笑っているのに、ふっと笑みを返せば、彼女はうんうんと小さく頷いていた。
……なお、二人共子供サイズなので、周囲からは微笑ましげな視線が注がれていたりする。……私、ここの代表者みたいなもの、なのだけれどねぇ。
まぁ、銭婆様とかがもっと真面目にやっていらっしゃれば、そちらが代表者になっていてもおかしくはないんじゃないか、とは自分でも思うので、あまり強くは言えないのだけれども。
「お、ゆかりんの弱気発言とな?こっちでは珍しいね」
「……酒飲みの時の愚痴と混同するのはやめなさいな。……私だって、一つや二つくらい不安を抱えてたりするわよ」
「そりゃそうでしょ、神でもないんだから不安なんて抱えてなんぼよ。……あ、いや。神様にも不安とか感じてるのも居るみたいだけどさ」
からからと笑いながら、キーアちゃんは頬を掻いている。
……まぁ、なんというか。気安い相手として
そこまでするのなら、変わってくれればいいのに、……ってのは、甘えすぎなのでしょうねぇ。
「……そこで意味深に微笑まれると困るんだけど?」
「お互い様でしょうに。──さて、上がったらコーヒー牛乳でも飲む?」
「私フルーツ牛乳がいい」
「……相変わらず好きねぇ、それ」
まぁ、互いにあれこれ考えているのは事実。
それが不利益に繋がらないのなら、放置するのも友情……みたいなものでしょうと嘯いて。
そろそろ迫ってきている就寝の時に、ちょっと思いを馳せる私なのでした。
「八雲紫、完全復活~!」
「おお、そりゃよかった」
数日後。
すっかり元気になったゆかりんの快方祝い、とでも言わんばかりにゆかりんルームに突撃したところ。
思わず「ハッピーバースデー!」とか言い出しそうなテンション*11のゆかりんを前にして、よかったよかったと頷くジェレミアさん達に混じり、私もほっと胸を撫で下ろしていた訳なのですが。
「そーいうわけで、早速キーアちゃんにお仕事の依頼よ!返事は『はい』か『イエス』でお願いするわ!」*12
「おい待てコラぁ!!」
元気になりすぎた結果、私の仕事が増えたのだった。……なしてや!