なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「さて、気を取り直して袋の調査に移ろうと思います」
「はーい」
元気でよろしい。
ってなわけで、人気の少ないことをこれ幸いとサンタ袋についての検証を始めた私達である。
調べることは主に二つ、現状出てくる武器の確率がどれくらいなのか、また既に影響を受けている者が新しく武器を出せるのか、である。
「一応、予測が間違ってないならこの袋は自対象じゃなくて他対象──取り出した人間に対してなにかするものじゃなくて、渡す相手に対して変化を促すものだと思われるけど……」
「それが正解なら誰が取り出しても武器は出てくる、ってことになるよね」
「確率的にどうなるか、って部分を置いておくとそうなるね」
ハロウィンの時のそれが最初に武器に触れた人を対象としたものであるとすれば、クリスマスのそれは最初に触れた人が
前者は直接的にターゲットを絞っており、後者は間接的にターゲットを絞っている、と言えるだろうか?
そんな感じなので、ハロウィンの時よりも武器の発生率は高くなっているんじゃないのか、というのが私の予測である。
なんでかって?前者が対象を決め打ちしてるのに対し、後者はある程度余裕を持って相手を選べる、という違いがあるからだ。
「……どういうこと?」
「ハロウィンの時のそれは、特定個人に対して誂えたような武器ばかりが発生していた。けれどこれは考え方が間違いで、誂えたようなじゃなく
「ああなるほど、私の『YASUTHUNA』を他の人が持っても生徒にはならなかった、ってことだね」
「そういうこと」
私の『飛鷹』なんかもわかりやすい例の一つだろうか?
ハロウィン武器というのは、原則特定個人の性質に寄った──寄りすぎたバックグラウンドを持つものばかりになっている。
例に挙げた二例しかり、その他の武器もしかり。
個人に寄りすぎて、他の人が持っても使えないだろうものばかり、と言い換えればいいか。
これは生徒化の効力に関しても関わってくる話で、恐らく『飛鷹』を私が持つ前に他の誰かが持ったとしても、生徒化自体は発生しなかったのだと思われる。
「まぁ、『飛鷹』の場合は生徒化せずとも『神断流』を雑に使えるようになる、っていう別方向の難点があるけど……それでもやっぱり、ハロウィン武器に特有の『生徒になってしまう』っていう効果は発揮されなかったと思うよ」
それが何故かと言われれば、それは端から一人だけを狙ってチューニングされているものだから。
言い換えると、特定の人だけを狙った病気みたいなもの、ということになるわけである。
「それに対してクリスマスの方はというと、さっきのスノーホワイトを見ればわかるけど特定の個人に向けたモノではなくなってたよね?」
「まぁ、フレーバーもろくにないって貴方言ってたものね」
「あの時はイベントの違いによるもの、って説明したけど……こうして改めて考えてみると、イベントに合わせて感染の仕方を変化させた、って方が正解なのかもしれないね」
「いや感染の仕方って……」
イベントに合わせた進化、とかでもいいかもしれない。
……ともかく、ハロウィンの性質に合わせ個人に対しての武器の体を取っていたものが、不特定多数を目的にして性質を変化させたもの、というのが現在のブルアカ武器の特徴である、というのはほぼ間違いあるまい。
となると、だ。
そこまで変化しているのなら、アプローチの手段も変わっていると見るのが正解だろう。
「ハロウィンの時が座して待つ罠タイプなら、今回のは数打ちゃ当たるって感じの大量ばら蒔きタイプ、みたいな?……ってことは、予想通りなら……」
そんなわけで、袋に手を突っ込んでごそごそ。
指先になにか触れたことを察知した私は、そのままその物を外に引っ張り出す。
するとどうでしょう、そこに握られていたのは先程琥珀さんに渡したモノと寸分の違いもない──されど色合いだけはまったく別の、まるでクローンのようなおもちゃの銃の姿があったのでした。
「……スノーホワイト?」
「いんにゃ、この子の名前はストロベリードロップだね。さっきのは白基調だったけど、こっちは赤基調でしょ?」
「いやまぁ確かに色は違うけど……これ、造りはさっきのと同じだよね?」
「うん、まったく同じだね。工場で増産でもしてるのかってくらい寸分の違いもなくまったく同じだね」
「……あ、あー!もしかしてこれ……?!」
「うむ。クリスマスプレゼントはサンタが作ってる、なんてのは今や否定されてるというかそんな余裕はないだろう、って感じだけど……望まれるプレゼントは大抵
つまりはそういうこと、というか。
……大量生産される玩具だと己を定義することで、実質誰にでも適合する形を手に入れた、ということになるだろうか?
あれだ、ハロウィンの時におもちゃの武器を携行するのが流行ってたけど、あそこからさらに発展させた形というか。
「……あれ、結局なんにも起こらなかったから気にしてなかったけど」
「今こうしてこの銃を見てると、これに繋げるためのものだったんだなってなるよ」
確かにあの時流行っていた『銃の携行』という行動。
されど流行っていたからといって皆が皆その流行に乗れたかと言われれば、微妙だと返さざるを得まい。
だがしかし、同時にそれが流行っていたというのも事実。
……であるならば、クリスマスにその流行に乗れるような贈り物がリクエストされる可能性はとても高い。
ゆえに、このままなにも気付かずにプレゼントを配りに行った場合、流行りものに飛び付く人々の心理がそのまま反映され、渡されるプレゼントが自動的に決まってしまう──
「武器自体の個性消しと一緒に、相手側が
「頭がいいと言うべきか、迂遠に過ぎると呆れるべきか……これってどっちだと思う?」
「どっちもかなぁ」
「どっちもかぁ」
頭のいいバカ、的な感じというか?*1
そうかー、と遠い目をするアスナさんに苦笑を返しつつ、改めて件の武器──ストロベリードロップに意識を向ける。
今しがた述べた通り、先程琥珀さんのところに持っていったスノーホワイトと、見た目上の変化は色以外認められない。
じゃあ
なにも記されていない、まっさらな状態となっている。……
いやまぁ、不特定多数に配る・配りたいという相手方の思惑からしてみればそっちの方が都合がいい、ってのもあるんだろうけど。
「
「まぁそういうこと。個人個人に合わせるのならそりゃ特注の方がいいけど、大衆に向けて大雑把に売り出すならある程度規格を統一したものの方が楽だからね」
なんなら、手に入れた人間がそれぞれにカスタマイズする、みたいなやり方で利便性を上げる方法もあるし?
……このパターンだと、誰かの手に渡った時点で名前が変わる、とかあるのかも。
「まぁ、流石にその辺は実際に試すわけにもいかないし、あくまでそうなんだろうなーって仮定に留まるけど」
「まぁうん……その話が間違ってないなら、これを誰か他の人に持たせた時点で契約完了……みたいなことになりかねないもんね」
「悪徳商人かなにかなのこれ???」
「方向性的には間違いでもないかなぁ……」
めっちゃ押し売りしてきてるのは事実、というか。
……っていうか、そもそもこの武器を広めることで黒幕になんの益があるのか、って点からして不明だし。
ここまで頑なに行動し続けている辺り、なんの意味もなく愉快犯的に広めてるだけとは考えにくいけど……。
「うーん、ブルアカの概念に強く結びついたものだから、これを広めることによって郷内の概念をブルアカに染め上げようとしてる……?」
「テスクチャの張り替え、ってこと?」
「今んとこそれっぽい理屈が付けられそうなのはそれくらいかなぁって」
とはいえ、それもあくまで状況証拠からそうなんじゃない?
……って予測できるだけであって、実際にそうなのかどうかは確証の一つもないんだけど。
そんな若干以上の疑問を抱えつつ、私達の検証は進むのでありました。