なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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地下暮らしの○○リエッティ

「地下生活者……でいいのかな?」

「ええと、それって確か……」

「最近のブルアカメインストーリーで暗躍してた敵キャラの一人だね」

 

 

 滅茶苦茶ヘイトを貯めていた相手である、ともいう。*1

 

 ……ドストエフスキーの小説である『地下生活者の手記』を元ネタにするとされる彼は、ブルアカにおける敵対者──ゲマトリアと呼ばれるもののうちの一人である。

 まぁ、そのうちの一人と言いつつも他のメンバーとは折り合いが悪く、基本的には見下してすらいるような風情であったのだが。

 

 そんな彼だが、持っている能力としては卑怯の一言に尽きる。

 作中で明確に語られたわけではないので推測になるが、意志薄弱な相手の思考制御、局所的な物理法則の改竄……のようなモノを持っているとされ、それらを駆使し戦局を左右し続けていた。

 ……まぁ、元ネタである『地下生活者』と同じく、自己を世界から隔絶しつつも世界から認められたい……というような感じのひねくれた性格をしていたため、精神面的に色々と足りておらずそこを突かれて負けることになるのだが。

 

 

「とはいえその辺は長くなるから割愛しまーす」

「雑な扱いね……。それで?今回の一件はその地下生活者とやらが犯人、ってことなの?」

「いやー、うーん?」

「……なんだが歯切れが悪いわね?」

 

 

 いやね、見た目は確かに件の地下生活者っぽいのよ。

 実際、周囲にブルアカの要素……テクスト?テクスチャ?をばら蒔いている辺り、要素的にはそれっぽいというのは間違いないだろう。

 

 ……間違いないはずなんだけど、なんというか違和感を感じるのも確かなのだ。

 確かに、地下生活者は遠隔による干渉に長けた相手である。ならば、今の今まで相手を捕まえきれなかったのはわからないでもない。

 ないんだけど……それだけで説明が付くほど状況は簡単でもないというか?

 

 

「具体的には?」

「とりあえず武器にブルアカ成分の付与って部分。それを彼単独の技能でやれるのならもっと大それたことになりそう、というか」

「ふむ」

 

 

 彼が求めた第六の古則──『非有の真実は真実であるか』は、彼の言い分に寄れば死に纏わるモノであるらしい。

 

 他者の死を実感することはできず、また自身の死はそれを体感した時点で戻って来られない──すなわち観測できない。

 ゆえに、死という概念は人に密接なモノでありながらも、その実証明のできないものになっている……みたいな感じだろうか。

 

 実際、現代においてもっともどうしようもないものは、やはり『死』であるだろう。

 創作の世界だと案外軽く扱われていたりもするが……それでも、真なる意味での『死』というのは、到底人間に理解できるモノであるとは思えない。

 ──否や、理解できたのならばそこからの回帰も行えるはず。

 ゆえに、それ(死者蘇生)が叶わぬ以上理解できないのが道理……と置き換えるべきか。

 

 

「……ええと、その言いぶりだと『死』を理解できれば死者蘇生だってできる、ってこと?」

「うむ。だって居るからね、【星の欠片】にもそれが」

「!?」

 

 

 うむ、包み隠さず述べるのならば──【星の欠片】にも、人が進み続けた先にあるもの……()()()()()()として『死』に纏わるものが存在するのだ。

 ゆえに、もし仮にそれに触れることができるのならば、人は死という絶対的な終わりを克服することも可能になるだろう。

 結局のところ、死というものが一体なにを意味するのか、というのが理解しきれてないからこそ、死というものを回避できない終わりとして扱っているわけなのだし。

 

 

「とはいえまぁ、その辺は語る余裕がないというか理解できるくらいに説明してると凄まじーく長くなるから割愛させてもらいまーす」

「いや、今語らずともどこかに論文にして置いとくべきなんじゃ……」

「別にいいけど、その場合その論文を媒介に『死』の【星の欠片】が顕現しますけど宜しいので?」

「宜しくないですね!はい!」

 

 

 おおっと、食い気味に琥珀さんに否定されてしまった。

 ……まぁ、不老不死が叶うと喜ぶ前に、色々とややこしいことになるのが目に見えてるから仕方ない話だけど。

 

 まぁともかくである。

 死を知ると言うことは、すなわちそれらを自由に扱えるということ。

 ゆえに死を覆せない──死を自由に扱えないのなら、死について知らないのだと言い換えることもできるわけである。

 

 

「そういう意味では研究テーマとして結構真っ当だよね。本人的には不死とか求めてのことじゃあないだろうけど」

「その辺はよくわからないからスルーさせて貰える?今必要なのはそれがなんで相手の存在に対する否定・疑念に繋がるのかってことの方でしょ?」

「へいへい。……まぁ端的に言いますと、今回の事件を起こせるのなら『死』についてなんて幾らでも理解できるから、ですね」

「はい?」

「ん」

「ええと、それは確かキーアの武器……って、あ」

 

 

 そうなるとおかしいのが、今しがたちょっと転送(アポート)してきた私の武器──今回の一件で手元に転がってくることになった、銘を『飛鷹』という銃。

 ……はい、こいつ『神断流』の──【星の欠片】の結晶みたいなものなんですよね。

 言い換えますと、これを作れる時点で件の『死』に纏わる【星の欠片】にアクセスする手段がある、ってことなんですよね。

 

 

「偶然封入できたと言い張るには、スペックのおかしさが目立つからね……。そのパターンの場合、使える『神断流』が一種類に限られる、なんてことにはならないはずだから」

「あー……仮に偶然武器に封入したってことになると、飛び道具以外の技も含まれるはずってことね。流派として別れてはいるけれど、それを概念的に分けるのは不可能に近いわけだから」

「さっきのクラスカードの話だね」

 

 

 そう、『神断流』は【星の欠片】の一種。

 ……ということは、だ。容量が足りないので一部を割愛する──収録できる情報(わざ)に限りがある、なんてことにはなりえない。

 なにせ一ミリでも再現した時点で全ての情報が含まれる形になるのだ、わける手段を持たない相手が封入したところでどれか一部だけに情報を限る……みたいなことができようはずもない。

 

 偶然に偶然を重ねれば……まぁ、起きなくもないとは思うけど。

 それって宝くじの一等が当たる確率*2よりも遥かに低いレベルだからね?

 あんまりにも確率低すぎて、仮にそれを引いたのなら寧ろ必然だよってなるようなレベルだからね?

 

 

「ってことは、わざわざ一粒だけ取る(分ける)のが劇的に難しい【星の欠片】を、特定の条件を満たすものだけより分けた形で尚且つ武器に封入する……なんてことができるのだとしたら、それって普通に【星の欠片】を解明できてるって考えた方が正確じゃない?」

 

 

 まぁ、誰かしら協力者がいて、そちらに構築を任せたって可能性もなくはないけど。

 ……ただ、こういうことができる相手となると格的に限られるので、必然それらの気配がしないわけもないってことになるのでして……。

 

 

「その言い方ですと、私に『月の君』様が協力してるのは理解していらっしゃったと?」

「どっちかだろうとは気付いてたって言ったじゃん?一応どっちなのかは実際に確かめるまでわからなかったよ」

 

 

 小さい方が凄い、だから干渉の気配も基本小さくなるし。

 ……まぁ、ちょびっと手伝っただけ(最小の労力)とんでもない規模の結果(最大の効率)を叩き出すわけだから、その辺の収支の合わなさからすぐにバレるんだけど。

 

 そういう意味では、今回の相手はその気配がない。

 ないのに、状況証拠的には【星の欠片】を精密に扱えている節がある。

 そりゃまぁ、思わず首も傾げたくなるもの。

 

 

「やってることの内容的には【星の欠片】をある程度掌握できている、と解釈するべき。……ただそうなると、見た目が地下生活者なのがよくわからん。見た目に則った動きをするのなら、他所にちょっかいを掛ける前に『死』の【星の欠片】に触れれば済むんだし」

「原作では実際にその化身を前にした時に怯えすくんでいたみたいだから、今回もそういう感じなんじゃ?」

「その考えは相手が【星の欠片】(じゃくしゃ)ってのが問題になるんだよねー」

「あー」

 

 

 ……うん、なにがあれって『死』なのにも関わらず怖さとかまったくないはずなんだよね、件の【星の欠片】って。

 確かに『死』という概念を読み解くための必須要素なんだけど、その実性質的には【星の欠片】なので……知識を求めるのなら、相手に極力負担をかけずにそれを知らせる、ということも可能だろう。

 無論、無限概念なので他の『死』と同じように威圧感を出すことも可能だろうけど……少なくとも自身を求めている相手が前にいるのなら、その辺の行動を取る意味はまったくないというか?

 

 まぁ、そんな軽い知識の習得は納得できない、と向こうが突っぱねた可能性もあるけど……うーん?

 

 

「ダメだ、わからん。状況証拠が噛み合わなさすぎて相手の正体が掴めん、これなら直接殴りに行った方が遥かに早いわ」

「えっ」

「危なくないそれ?」

「危なくてもそうするしかないんだぁよ!仮にも地下生活者の見た目だから居る場所もそれに準拠してるし!」

「あー」

 

 

 うん、簡単には干渉できない場所にいやがるんだわこいつ。

 となると、殴るにしろ話をするにしろ相手の腹の中に飛び込んで行くしかないわけで。

 ……まさに虎児を得るには虎穴に入らねば、ってやつである。

 

 

「うーん、とりあえず私だけで行くべき……かなぁ?なにしてくるかわかったもんじゃないし」

「それは後でマシュさんに怒られるので止めてください」

「あ、はい」

 

 

 そんなわけで、準備をしてから仮称・地下生活者の懐に飛び込むことになったのでしたとさ。

 

 

*1
ブルーアーカイブの『Vol.1 対策委員会編3章 夢が残した足跡』にて暗躍した敵対者。他のゲマトリアの例に漏れず、人間とは思えないような見た目をしている(真っ黒な顔に黒目が時計になっている瞳が無数くっついている、というような姿)。七つの古則と呼ばれるものの六つ目『非有の真実は真実であるか』を解明する為に動いている、とのこと

*2
往々にして1000万分の1くらいとのこと

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