なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ええと、どうなったのこれ?」
「こうなった理由を重ねがけしました」
「ええ……?」
いやまぁ、正確には違うんだけども、話すと長くなるのでその説明で納得しておいてほしいというか。
……どうせ嫌でもこの後話さなきゃいけないんだし。
そうして視線を向けた先に居るのは、先程までの狂騒が嘘のように静まり帰った地下ちゃんの姿。
まさしく放心、といった様相の彼はともすれば魂が抜けてしまったかのようにも思えるが……一応、そういうわけではない。
さっき使った
「なので、安全を確保したのちに叩きこ起こす必要があります」
「……そういえば、さっきまで飛び回ってた光も大人しくなってるわね?」
「脳波コントロールってわけじゃないんだろうけど、基本的には制御を地下ちゃんがしてたってことだろうね」
「……その、関係ないんだけど一ついい?」
「はい?」
動きを止めた地下ちゃんに合わせるかのように、先程まで飛び回っていた光体達もその動きを止めている。
……中空でピタッ、って感じに止まってるので違和感バリバリだが、落ちてこない辺りまともな科学技術の産物ではなさそうだなー、というのは間違いないというか。
裏を返すと、繋がってないように見えても両者の間にはなにかしらの繋がりが確保されているということでもあるため、現状放心している地下ちゃんになんの対処もせずに起こすのは悪手である……ということでもある。
もっかいビームの雨に晒されるのは勘弁、ってやつだ。
そんなわけなので、とりあえずふん縛るか光体との接続をどうにかして断つか、とにかくなにかしらの対処を先にしてしまおうってことになったのだけれど……その動きを遮るように声を発したのがアスナさんである。
申し訳なさそうにこちらを見つめる彼女の様子に、一体なにごとかと首を傾げた私は。
「……その、なんで『地下ちゃん』なんて可愛らしい呼び方してるの?」
「…………ええと、フルネームで呼ぶと長いからとしか」
「…………」
そんな、なんとも微妙な疑問を投げ掛けられることになったのでありましたとさ。
……あれかな、ピンク髪の書記の子のこと思い出すとでもいいたかったのかな?*1
「……小生は一体……」
「おっと、ついに地下ちゃんが正気を取り戻したぞ」
それから数分後。
彼が突然暴れだしたりしないよう厳重に周囲を囲み、目を覚ますのをその側で待ち続けた私達。
図らずも時間の浪費をすることになったが、まぁ待ってる間はトランプして遊んでたので問題はないです。
「……まぁ、やってるゲームの名前でちょっと微妙な気分にさせられたんだけどね……」
「由来は別なんだけど、ねぇ」
響きは同じだからなんか気になるというか、ねぇ。*2
……まぁ、すぐに終われてそれなりに楽しいトランプゲームと言うと、大体ブラックジャックが候補にあがるんだから仕方のない話なんだけど。
とはいえ地下ちゃんが起きたのなら遊びの時間は終わり、ここからは詳しい話の聞き取りのお時間である。
……なので私がさっきまで大敗けしてたとかは関係ない、いいね?
「貴方ってこういうの得意そうに見えるんだけど……弱いのね、マジで」
「そりゃそうだよ、なんども言ってるけど【星の欠片】って雑魚キャラよ?」
「それってこういうって遊びの時にも適用されるやつなの!?」
そうですがなにか?
……とかなんとか話していたら、地下ちゃんの方から飛んでくる訝しむような視線。
まぁ、緊張を解すための冗談はこのくらいでいいかな?
(絶対そういうのじゃなかったわよね、という顔)
「なんかUちゃんが言いたいことがありそうな顔してるけど、その辺はスルーしますね」
「は、はぁ……」
あらやだ、地下ちゃんがすっかり困惑したような視線をこっちに向けてきてる。
まぁ時計みたいな瞳なんでその辺認識し辛いんですけどね!
「……はっ!?そうだ
「はい、その辺はご自分のお好きなように名乗ってくださいな。こちらのおすすめとしては
「……では
「こちらはなりきり郷、貴方のような人を歓迎する場所ですわ、ご客人」
「「「「は?」」」」
「……いや、なんで他の人までわけわからん、みたいな声を出してるのよ」
ここはそういう場所でしょうが。
なんて風に答えれば、そうじゃないわよと返ってくるのはクリスの声。
ふむ、ということはここから詳細解説が必要、ってことかな?
「じゃあまず前提条件として。この地下ちゃん、最近『逆憑依』になったばっかりだと思われます」
「はい?!」
「具体的にはついさっき、だったりするかも?」
「はい?!?!」
というわけで、一つ一つ解説して行くと、だ。
恐らく、彼が地下生活者の『逆憑依』として成立したのはついさっきの話。
それまでは中身のない──【鏡像】のような状態であったと考えるのが正しいのだと思われる。
「……いや、あり得なくはないですね」
「ちょっと琥珀さん!?」
「実のところ前例があるんですよ、中身のない──【顕象】に中身が入るという前例が」
「因みに桃香さんのことだよ」
「えーっ!?」
そう、この現象実のところ前例があるのだ。
初出の際は謎のマント姿だったが、その後中身が入って確たるキャラクターと化した桃香さん、という前例が。
ゆえに、かつて意識を持たぬ【鏡像】ないしは【顕象】が『逆憑依』となる、というのは与太話でもなんでもないわけだ。
……いやまぁ、正確には【鏡像】でも【顕象】でもない【兆し】って感じだけど。
「でも一応動いて周囲になにかしらの影響を出してる辺り、単なる【兆し】って風に片付けるのも違うでしょというか?」
「その例を持ち出すと言うことは……彼もそうなんです?」
「まぁ、中身を求めて暴れてたと考えると、中身が埋まって大人しくなるのはわからないでもないというか?」
「……ええと、小生話が見えないのですが」
「話としては単純だよ、貴方はその見た目通りの存在になった、ってわけ」
そしてそれがさっきの恐慌の理由、というか。
……推測状態ですらややこしいのであれなのだが、一応説明すると。
「まず、今の彼は【複合憑依】のなりそこない、って感じだと思う」
「なりそこない……?」
「より正確には【星融体】の、だね。そしてそれこそが彼が恐慌してた理由というか」
「ふむ……?」
まず、今の彼は【複合憑依】ではない。
……一応は【継ぎ接ぎ】的なものになるんだろうけど、その内訳についてはこの話には関係ないので割愛。
ポイントは、【継ぎ接ぎ】になっているのは【星融体】に
要するに、【星融体】になる条件を突っぱねた結果こうなっているのである。
「突っぱねた?」
「そ。さっき【星の欠片】には『死』に纏わるモノもある、って言ったの覚えてる?」
「ええまぁ、一応は」
「そして地下生活者の求めているモノは、大雑把に言うと『死の先を知る』というもの。言い換えると死という概念を求めている、ってことになる」
「……ええと待って、なんとなーく結果が予測できたんだけど……まさかそういうこと?」
「うむ、Uちゃんの予想であってると思うよ。──死を求めるものの側で【星融体】の条件が整うのであれば、そこにやってくる【星の欠片】は
そう、キャラクターの設定だけ眺めれば、地下生活者は『死』を知ろうとしているもの。
ゆえにそれに呼ばれてやってくる【星の欠片】はまず間違いなく『死』に纏わるものになる。
……なるのだが、中身がない内はともかく中身が入ってしまえば話は別。
原作においてあれほど怯え散らかしたのだ、その記憶も持ち合わせることとなる当人としては、ずっと離れられない位置──自らという存在そのものに付随する形で『死』の影がこびりつき続けることになる【星融体】なんて、それこそ発狂するレベルで嫌なことだろう。
結果、【星融体】の成立を阻害するレベルで否を突きつける形となり、それを受け取った【星の欠片】側もあっさりそれを了承した、と。
……まぁ、本来の『逆憑依』の目的的にも成立されると困るどころの話じゃないからこその特例、みたいな気もするが。
「ともかく、地下ちゃん的には無意識レベルで嫌がってたわけで。その無意識レベルってのがポイントでね?」
「え、まだなにかあるの?」
「無意識に同じようなものだと判別したから、他の【星の欠片】からの干渉で放心する羽目になったってわけ」
「……ああ」
ここで話は冒頭のものに戻ってくる。
私が使った技は『
言葉や気に殺気を乗せ、
……要するに、ある種のショック療法だったわけだ。
「それ、失敗してたら余計に酷いことになってたんじゃ……」
「いや、それはないよ」
「なんでよ?」
「殺気云々って言ったけど、原理はどっちかと言うと蛇にらみだから」
「……あー」
暴走する気力から刈り取るようなものなので、失敗する可能性は万に一つもないというか?
そんなわけなので、さっくりしっかり相手を止めることに成功したのでしたとさ。