なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「新年早々なにを運び込まれるかと思えば……ふむ、調べた限りは不審なところはなにもない、としか言えんな」
「そっかー」
無論、あくまでも私に調べられる限りでは、だが。
……と補足してくる先生の様子にふむ、と頷く私。
あの後、とりあえず予定を返上してネコアルクの状態を確認するために動くことにした私達は、まず先生のところに彼女?を持ち込むことにした。
現状、この辺の話を確認するには一番向いていると判断したためだ。
その結果は……まぁ、あんまり芳しくはないけど。
とはいえ、なにもわからない状態から前進したのも確かな話。
となれば、次にとるべき行動も自ずと定まってくることだろう。
「具体的には?」
「ゆかりんに報告」
「……そうだな」
至極当たり前の行動、というか?
……まぁ、新年早々ネコアルクの姿を見せられるとか、色んな意味で恐怖体験でしかないかもしれないが、その辺は納得して貰うしかあるまい。
ってなわけで、先生のところを後にした私達は一路ゆかりんのところにまで向かったんだけど。
「おや、寝てる?」
「ええまぁ、いわゆる寝溜めと言いますか……」
当のゆかりん、すぴすぴと寝息を立てていた。
彼女が睡眠を多く必要とする人物であることはよく知られているので、そこまで不思議な状況ではないが……なんというか、タイミングが悪いと言わざるを得まい。
「っていうか、少なくともこの状態だと明日まで梃子でも起きないだろうからなぁ……」
「え、そんなに長時間眠ってらっしゃるんですか?」
「寝ないとしんどいタイプの人だからねぇ」
疑問を投げ掛けてくるルリアちゃんに私が答えを返すのを横目に、アスナちゃんがゆかりんのほっぺをぐにぐにと引っ張っている。
無論、どんな形に変化させようともゆかりんの睡眠を邪魔することはできないんだけど……。
「むぅ、本当に起きない」
「確かめるためにほっぺを引っ張るのは止めなさい、一応その人偉い人なんだから」
「はーい」
苦笑するジェレミアさんを視界の端に納めつつ、彼女の暴虐を嗜める私である。
……ともあれ、この分だと本人に伝えるのは不可能なので、簡易的な報告書を一つ作ってジェレミアさんに渡しておく。
ゆかりんが起きたら読んでほしい、と伝えることも忘れずに。
「はい、承りました」
「宜しくお願いしまーす。……そういえば、蘭さんは居ないんですね」
「彼女でしたらコナン君と初詣に」
「あー」
そりゃお熱いことで。
そんな感じで話を切り上げ、ゆかりんルームから出た私達。
その間ネコアルクはどうしてたかと言うと……。
「私の頭の上で大人しく丸まってますわね」
「ほ、本当に大人しいですね……」
「ネコアルクらしからぬ様子。これ、本当にネコアルク?」
「見た目はそうなんだけどなぁ……」
いやまぁ、過去には記憶喪失になった結果、ウザい性格とかが吹っ飛んで真っ当なマスコットキャラになったネコアルク……なんてモノもいたらしいけど。
それと比べても違う──どっちかといえば単なるネコ、みたいな動きをしているこのネコアルクは、また別のトラブルを予感させるというか……。
「む、普通のネコのようならトラブルもなにもないのではないか?」
「逆だよ、普通のネコみたいだからこそ厄介なんだよ」
「……と、言うと?」
「この見た目が偽装である可能性がある」
「……あー?」
大雑把に言うと、ネコみたいなのではなく実際にネコなのだ、というか。
……要するに、そこらにいる野良猫にネコアルクの見た目を張り付けただけの存在、という可能性があるのである。
もう少し分かりやすく言うと、ネコアルクの【継ぎ接ぎ】になった野良猫、みたいな?
実際にそれが可能なのかはともかく、その辺の疑いを持ってないといけないくらいには、ネコアルクという存在は面倒なものなのである。
別に叩けば素材が落ちてくる旨い生き物、ってだけではないのだ()
「……素材って」
「絆も美味しかったです。あの三倍お茶普段でも買わせてくれんかね?」
「あ、あの。話が大分ずれているかと……」
「おおっと」
人類悪フェイスしてる場合じゃねぇな?
……ともかく、ネコアルクという存在自体が厄介なのは事実。
なので警戒はし過ぎになることもないというのが、ここでの私の主張と言うことになるのでありました。
「うむ、理解した。理解した上で言うが……少なくとも今ここにいるこやつに関しては、然程警戒の必要性はないと見るが?」
「にゃー」
「……まぁ、うん」
こっから唐突に豹変する可能性もゼロではないけど、同時に可能性として考慮に値するようなレベルでないのも確かな話。
ゆえに、少なくとも私の頭の上でくつろいでいるこの子に関しては、別に警戒を緩めてもいいのかもしれない……ともなっていくのでありました。
「まぁ、そうやってガードを下げさせといて別方向に悲しくなるパターンもないとは言えんのだけど」
「と、言うと?」
「黒幕を倒す際に犠牲になるのがこの子」
「あー」
すっごくありそう、みたいな顔で呻くハクさんに苦笑を返す私なのでありましたとさ。
「とりあえず、事態の進展が見られるまではいつも通りに動いていよう」
「はーい」
……ってな感じに話が纏まった結果、改めて初詣に行くことになった私達である。
まぁ、面子的には特に誰が増えるということもなく、そのままスライドした形になるんだけど。
「結果出不精のハクさんも初詣に行くことになった、と」
「か、勘違いしないでよね!別に神様に感謝とかお願い事とかあったりはしないんだからね!」
「なんでツンデレ風……?」
いや、そっちの方が分かりやすいかと……とか宣うハクさんに頭痛を覚えつつ、当初向かう予定だったロイドさんのところの神社に到着。
……したのはいいんだけど。
「あ、すまんみんな!ちょっと手伝ってくれないか!?」
「ええ、なにこの状況……」
神社の中で私達が目撃したのは、境内を走り回る無数の人影──より正確に言えば、ネコアルク・アーニャとかネコアルク・ヨルとかが走り回っている光景なのでありました。
……素直な感想を述べよう。これが地獄か()
「え、えっ、ネコアルクさん……???」
「そういえば、単なるネコアルク以外にもあれこれと派生がおるという話だったのう……とはいえこれは……」
「なんでもいいから止めるのを手伝ってくれ!このままじゃ参拝者もUターンしてしまう!」
「おっと了解!じゃあみんな、相手はネコアルクだ存分にやっちまえー!」
「り、了解しました!来て、バハムート!」
「にゃにゃ!?」
「ん、ハマノツルギ。──何発めで消えるかな?」
「にゃにゃにゃ!?」
「では我も。──思う存分食らわせて貰おうぞ」
「ぎにゃー!?」
「うわぁ、なんだかすごいことになっちゃったぞ」
みんな滅茶苦茶やってやがる……。
まぁ、相手はネコアルクだし、別にいいか!
ってな感じで、作業を進めることはや数分。
「しゅーりょー」
「思ったより早く片付いたのぅ」
ネコアルクの群れをやっつけた!(ファンファーレ)
現在私達の周辺には、ふん縛られたネコアルク達の姿が散見している。
で、ここにいたネコアルクは以下の三種。
アーニャの姿を模した仮称:ネコアルク・アーニャ。
ヨルさんの姿を模した仮称:ネコアルク・ヨル。
それから、ケルヌンノスを模した仮称:ネコアルク・ヌンノスである。
……うん、他二匹はともかく、ヌンノスについては繋がりが見られないというか、突拍子もない感じがするな?
「あれかねぇ、場所が神社だからなにかしらの神様の姿を模した、みたいな?」
「その辺はわからんの。……本人……人?達もろくに喋れぬようだから事情聴取も叶わんし」
「んにゃー」
なお、三種とは言ったものの三匹ではなかったので、周囲には都合二十近いネコアルク達が転がっていたり。
……そりゃまぁ、この数が境内を走り回ってたら参拝客も逃げ出すわ、というか。
ともあれ、こうして神社の平和は守られたわけで……そうなると次にやるべきことは単純、現場検証である。
「ではロイドさん、私達がここにくる前になにがあったのかお教え頂いても?」
「いや、それが君達と大して変わらないんだよ」
「と、言いますと?」
「私もついさっきここに来て、かつ彼らが暴れまわっているのを確認したばかりということだ」
「なるほど……」
つまり、私達がここに到着したのと然程変わらないくらいのタイミングで、ロイドさんは境内に足を踏み入れたばかりだと。
……この人、基本的にはこの奥にある住居を住処にしているはずなのだが、なんで外からやって来ているのだろう?
そんな疑問をこちらが抱いていることを察してか、ロイドさんはバツが悪そうに頭を掻いたのち、こう答えたのであった。
「その、昨日は年末だから……」
「……あー、飲みに行ってたと?」
「端的に言うとそうなる、な」
なるほど、年末年始の飲み会に参加してたのか。
私は年末は家に居たので詳しくはないが、毎年年の瀬になるとどんちゃん騒ぎをしているというのは風の噂に聞いている。
銀ちゃんも参加してるとかでそのことについて桃香さんが愚痴ってたりもしたが……なるほど、それに参加してたんなら飲み過ぎで一夜明かすのもわからんではない。
「つまり、夜通し呑んだあと家に戻ってきたらあんなことになっていた、と」
「そういうことになるな。……あとそのついでと言うわけじゃないんだが」
「はい?」
「……ちょっと横にならせて貰えないだろうか、正直限界というか……」
「あー」
まぁ、うん。
夜通し呑み明かしてたというのなら、そりゃ今現在酔いが回って辛いとなるのも自然なこと。
特に帰って寝よう、とここまでやってきたのが今のロイドさんだ、その状況下での重労働は堪えたことだろう。
下手すりゃ胃の中のモノを逆流させてもおかしくはないが、その辺は凄腕スパイであるロイドさんの矜持みたいなもの、ということだろうか?
「……ああうん、とりあえず貴方から聞ける話はこれ以上無さそうだし、行って貰っても大丈夫ですよ」
「すまん、詳しい話は起きた後に聞かせてくれ……」
そうして私達は、青い顔で奥に歩を進めるロイドさんをみんなで見送ったのだった。
……冷静に考えると、なんなんだろうねこの絵面?