なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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サンタとは、自ら名乗るものではない……のか?

「……おっ、サンタ募集の張り紙だ」

「八雲さんからのお誘いが一週間前……時が経つのは早いものですね、せんぱい」

 

 

 基本的に快適温度に保たれているなりきり郷だが、季節のイベントごとがある時はその限りではない。

 四季を楽しむ日本人的感覚がそうさせるのか、はたまた単なる悪ノリか。

 ともあれ、十二月も初旬真っ盛りな今日、なりきり郷は雪でも降りそうなほどに、冷たい空気が立ち込めていたのだった。

 

 そんな街並みを、マシュを連れ立って歩く私。

 ふと近くの店に視線を向ければ、その壁面には『サンタ募集中!』という文面が踊る、特徴的なポスターが貼り付けられているのが窺えた。

 ……なんとなーく自衛官募集とかのポスターと同じ匂いがするのは、華やかそうに見えてその実結構ハードな仕事だから……なのだろうか?

 

 よくわからないが、こうしてポスターが貼ってあるあたり、まだまだサンタが足りていないというのだけは確かなのだろう。

 ゆかりんには、お疲れさまの言葉を送りたいところである。

 

 

「今回もまた、せんぱいとは別行動になってしまいますね……」

「しゃーないよ、私が盾役(助手役)なのに、マシュがサンタ役(主人役)ってのも変な話だし」

 

 

 そんな風にゆかりんの健康を祈っていると、傍らのマシュから吐息交じりの吐露が。

 

 前回のマシュの爆発は、言ってしまえば『また別行動になってしまった』から、ということに尽きるものだった。

 ……まぁ、さもありなん。

 マシュは盾役のエキスパートである。そんな彼女を盾役以外に回すというのは、なりきり郷の懐事情的には贅沢行為以外の何物でもないと言える。

 それ故に彼女は必然的に守護者──今回で言えば助手役に収まるのが普通であり。

 私が助手役になるのも、戦力的にはある意味既定路線でしかないので、結果としてお互いの組分けがわかれてしまう……というのは、仕方のないことなのであった。

 

 ……まぁ、本人の心情的に納得しかねる部分がある、というのもわからなくもないのだが。

 無辜の民を守る騎士としてのあり方もマシュの一側面であり、主の前に立つ守護者としてのあり方もまた、彼女の側面であることに違いはないのだから。

 

 まぁ、こうしてちょっと不貞腐れているマシュというのは、案外貴重なので。

 彼女の先輩を仰せつかっている身としては、その頭を良い子良い子と撫でてあげるのが今の私の役割、ということなのです。

 

 

「……ん、んんんんん!」

「おっ、ワラビマシュ?」*1

「違いましゅ!……いえ違います!センパニウム補給が出来たので、頑張ろうと思っただけですので!!」

「ええ……なにその胡乱粒子……」*2

 

 

 そうして撫でていたら、俯いていた顔をあげてむんっ、とがんばるポーズを取るマシュが出現した訳なのだが……まぁ、元気になったのならいいや。……それと、ユニバースとかぐだぐだとかを思い出しそうな胡乱粒子を想像するのはやめようね?キーアお姉さんとの約束だ。

 

 そんな感じのやり取りを店の前でやっていたら、そりゃまぁ店員やらお客やらからするとすごく目立つわけで。

 往来の人の流れを止めるような状況に、店の中に居た店員が外に出て、こちらに注意を促そうとしてくるのもまた、必然的な話……というわけなのだけれど。

 

 

「はーいすいませぇーん、店の前でイチャイチャすんの止めて貰えますぅ~?そーいうの営業妨害って言う……あ」

「さ、坂田さん?い、イチャイチャだなんてそんな……っ」

「おーいマシュ、戻ってこーい。それと銀ちゃんこんちわー。今日はケーキ屋のバイト?意外とバイトしてるよね、銀ちゃんって」

 

 

 心底めんどくさそうに店内から外に出てきたのは、この店──ケーキ屋のロゴが入ったエプロンを着た、毎度お馴染み銀ちゃんであった。……なんというか、ホントちょい役的に出てくるね、貴方。

 そんな感じにかるーい挨拶を返せば、銀ちゃんは「見付かりたくない奴に見付かった」みたいな、苦い表情を浮かべているのだった。

 

 

 

 

 

 

「出会った当初は『働かなくてもいいんだよ』みたいなこと言ってた割に、結構バイトとかしてるよね、銀ちゃん」

「……ほっとけ、こっちにも色々事情があんだよ」

「ふーん?」

 

 

 店のオーナーから「おや知り合い?じゃあ休憩でいいよー」みたいな、雑というか適当というかなお許し?を得た銀ちゃんを伴って、店内のテーブル席に座った私達。

 話す内容は勿論、「労働なんてクソ食らえ」みたいなことを述べていた銀ちゃんが、今ではまっとうに働いていることについて……である。

 

 いや実際、銀ちゃんとケーキ屋とか、容易に結び付かないものだと思う。客ならいざ知らず、店員側と言うのは何気に珍しいのではないだろうか?

 ……いやまぁ、それを言ったらコンビニ店員も似合わないんだけども、あれは「届いたばかりのジャンプを仕事しながら読む権利」みたいなもののためなんだろうな、というのは想像が付くというか。

 

 

「おいおい、あんまり俺を無礼(なめ)るなよ?*3仕事中にジャンプの誘惑に耐えられないような、柔な男だと思われてるとか……勤務態度が悪い(ずっとジャンプ読んでる)ってんで三日でクビになったっつーの」

「うわぁ想像の下を行ったよこの人」

 

 

 ……まぁご覧の通り、ジャンプ云々は想像より遥かに酷い(片時もジャンプを手離さない)勤務態度を提示されたわけなのですが。……いや、私が行った時はまだ耐えてたじゃん……。

 

 ともあれ、広いけど狭いなりきり郷、袖振り合うも多生の縁*4とも言うので……。

 

 

「んで?今度は一体誰を抱え込んだので?」

「ぶふっ!!?げほっげほっ……あのなぁっ!?」

 

 

 どうせまたぞろ面倒ごとを抱え込んでいるに違いない、とメタ読みをして話し掛けると、口を付けていた紅茶に思いっきりむせる銀ちゃんの姿が。これは……クロじゃな?

 

 

「すみません坂田さん、せんぱいから三メートルほど離れていただけますか?」

「ちょっ、キリエライトさーん!?誤解っ、誤解だってのっ!!」

「そんな、あの日の燃えるような一夜は嘘だったのね!!」

「せ、せんぱいっ!?……おのれ、坂田銀時ぃっ!!」

「おィィィィッ!!?後輩さんのキャラ崩壊させてどうすんのアンタァァァァッ!!?って言うか熱い夜云々って、どうせあのバッティングセンターでのことだろうがァァァァッ!!!?」

「やだバレた☆」

「でもせんぱいが可愛いからオッケーです」*5

「もうやだこの主従……」

 

 

 おやおやおや。銀時はかわいいですね。*6

 ……じゃなくて。ギャグ時空の住人である銀ちゃんが、まさかマシュにたじたじになるとは。げに恐ろしきはぐだぐだ粒子、というわけか。……自分を棚上げすんな?なんのことやら。

 

 話を戻して、メタ読みって言ったけど、なにも根拠もなしに言ったわけではないのである……と口に出せば、銀ちゃんは「メタ読み以外になにがあるってんだよ」と机に頬杖を付きながらそっぽを向いていた。……ふむ。

 

 

「まず始めに。……コンビニバイトしてた時期辺りで、正式にゴジハム君をよろず屋メンバーとして迎えたんでしょ?」

「……それで?」

「で、ハロウィン辺りでXちゃんを仲間にした、と。……ハロウィンの時に口では『行きたくない』って言いながらも付いてきてたの、あれも()()()()()()()()()()だって言うのなら辻褄が合うんだよね。……嫌ってる、とまで言う相手(ダンテ君)の店に居ることの説明としては、中々に上等じゃない?」

「……それで?それが今の俺の状況とどう結び付くってんだよ?」

 

 

 ……状況証拠を次々に上げてみたのだけれど、反応は芳しくない。

 うーむ強情な。仕方ない、これは使いたくなかったのだけれど……食らえ!(わくわく)

 

 

「いや、なんだそのニンマリした笑みは、……っ!!?」

「ゆかりん特製の滞空回線(アンダーライン)擬きについての対策に気を取られたみたいだな、火のないところに煙はたたないんだよ銀ちゃん。……その部屋の中から伸びる腕は、銀ちゃんのよろず屋メンバーの誰とも合致しない!つまり、銀ちゃんがまた新しい女の子を連れ込んげふんげふん。……新メンバーが加わったと見るのが普通なんだよ!」

「言い方ぁっ!!?」

 

 

 ニヤニヤしながら銀ちゃんに突き付けたのは、明らかに隠し撮りとわかる一枚の写真。

 ……ゆかりんの滞空回線擬きは、その性質──ゆかりんの秘密を喋った者のみを対象にする──を知らない者にとっては、名前の元ネタと同じようなモノと誤認される……という傾向がある。

 往年のゆかりんもとい八雲紫黒幕説に浸っていたことがあれば、なおのこと。*7

 

 実際には、存在を全く知らない人は言うに及ばず、完全に内容を知っている者も気にしない……という、上辺(うわべ)だけ知ってしまった者こそ、無駄に警戒してしまう代物……ということになるのだが。

 ともあれ、銀ちゃんが風の噂に滞空回線について知った、というのは、このこそこそと隠れるようにして何処かへと向かう姿を納めた写真から、ありありと感じとることができるだろう。

 露骨に空を気にしているのが良くわかるが……同時に、普通に横から撮られることについて、注意が疎かになっているわけである。

 ……え?近くから撮られたなら気付くだろうって?

 その通り、なのでこちらは写真家のゴルゴ13さんに協力をお願いし、遥か二キロ先から銀ちゃんのことを隠し撮り(スナイプ)して貰ったものになります☆*8

 いやね、実はちょっと前ゆかりんから、

 

 

「なんかね、郷の中に誰かが増えた……みたいな報告が上がってたんだけど、肝心のその()()が見付かってないのよねー。……それとこれは関係のない話なのだけれど、最近坂田君がまたバイト始めたみたいなのよねー」

 

 

 という遠回しな素行調査の依頼を受けていたのである。

 ……要するに、偶然を装っていたけど、今日は最初っから銀ちゃんとお話をすること……もとい銀ちゃんを追い詰めることが目的だったわけでね?騙して悪いけど。*9

 

 

「ウゾダドンドコドーン!」

「好きだねそれ。まぁ、というわけで。──ちょっと(社長室)まで同行願おうか、銀時さん?」

「……っ!」

「あっ逃げた、追えー!殺せー!にゃー!!!」*10

「いやせんぱい、殺してはダメではないかと。幾ら坂田さんが女性の敵とはいえ、ここは半殺しくらいにですね?」

「……前言撤回、逃げろ銀ちゃん!あとでまた会おうっ!」

「心配してくれるのはありがたいけど、焚き付けたのアンタだからなっ!!?」

 

 

 なお、調子に乗ってぐだぐだ(景虎さんの真似を)したら、マシュが変な方向に相乗りしてしまったため、慌てて逃がす側に寝返るはめになったのでしたとさ。

 

 

*1
ンンンンン!!拙僧昂っておりまする!美しき肉食獣、あなやキャスター・リンボと申しますれば、この拙僧、蘆屋道満に相違なく!おおっと、このような狭き場所にて拙僧のことを語るには足りませぬ、子細については『fate/grand_order(ふぇいとぐらんどおーだー)』を確認をば!……とはいえ、ンフフフフ。拙僧の事を奥の奥まで知りたいのであれば、永き旅路を歩く必要がありますがねぇ……?ではこれにて!失礼!

*2
『マグネシウム』のような、言葉の最後が『-ium(-um)』で終わるモノが幾つか存在するが、これは『-ium』が動詞や形容詞を名詞化するためのモノであるため。例である『マグネシウム』は、古代都市であるマグネシア(Magnesia)で採れる金属(-ium)という名前。そのため、~i()ウムなどと単語にくっ付けることで、『(特定の動詞や形容詞を)構成する要素』というような意味で使われるようになった。『センパニウム』の場合は『せんぱいの主成分』みたいな意味となる。『アルトリウム』も似たようなネーミング法則(アルトリア+~i()ウム)

*3
万葉集や枕草子辺りから存在するが、現代では意図して使わなければ『舐める』の方になることが多いと思われる読み方、『無礼(なめ)る』。無礼(ぶれい)であることを強調できるため、時々ゲームや漫画などで使われることがある。有名なのは『マブラヴ オルタネイティヴ』のヒロイン、御剣冥夜の台詞『人類を無礼るな』と、『ウマ娘 シンデレラグレイ』でのシンボリドルフの台詞、『中央を無礼るなよ』だろうか

*4
『道を行く時に袖が触れ合う程度の事でも、前世の因縁に紐付いている』ということから、世の出来事は偶然ではなく、深い宿縁にて起こるものである、という意味。雑に言えば『この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ』、みたいな感じだろうか?なお、袖が『触れ合う・振り合う・擦り合う』も『多生・他生』の縁、という実に六種もの組み合わせの漢字違いが存在するが、別にどれが正解……ということも無いらしい。まぁ、意味が大きく変わるわけでもないのでさもありなん、というか

*5
『でも幸せならオッケーです』は、2017年頃の街頭インタビューで一般男性が述べた台詞。推しの幸せを祈ることができる、漢の中の漢の台詞として有名

*6
『メイドインアビス』のキャラクター、『黎明卿』ボンドルドの台詞である『おやおや』『君はかわいいですね』から

*7
作品の初期の方に、胡散臭いキャラ扱いされていた頃の八雲紫の風評。色々と子細が語られるようになった結果、今ではわりと苦労人なキャラであると認識されているそうな

*8
『ゴルゴ13』の主人公、デューク・東郷。なお恐らくは偽名なので、基本的には作品名でもある『ゴルゴ13』と呼ばれる。殺し屋であり、世界最高峰のスナイパー

*9
『アーマード・コア』シリーズの伝統、お約束。高い報酬や容易い任務内容など、あらゆる手段で以ってプレイヤーを騙し、血祭りに上げようとする企業側の罠。……まぁ要するに、甘い話には裏があるから気を付けよう、ということである

*10
『fate/grand_order』より星4(SR)ランサー、長尾景虎の台詞から。一昔前は上杉謙信名義でなければわからない、という人も多かったが、最近は景虎名義でも認識されるようになった気がしないでもない。眉唾物ではあるが以前から女性説が存在した人物でもあるので、女体化サーヴァントではあるものの、そこを不満に上げられることは少なかった印象。越後の龍の異名を持つが、何故か『にゃー!!』と叫ぶ。……カゲトラは叫んで殺す。コワイ!!

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