なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まーはい結論を申しますと、あの空間自体厄ネタですが、正直場当たり的な対応しかできんので暫く考慮から外します。その上で話を戻しますがよろしいですか?」
「はーい」
いいお返事ですこと。
……ってなわけで話を戻すんだけど、前回クリスマスにおいても再び解決しきれなかった扱いとなった件のエネルギーは、恐らく私達の目の前から消えたあと件の空間に近い性質を持つ場所に隠れ潜んだのだと思われる。
「ただし、こっちに関しては人為的なものじゃなく、本当に天然のやつだと思う」
「……まぁ、確率的にかなり低くてもそれは起こらないことじゃないわけだし、ありえなくはないけど……」
「ありえなくない上でエネルギー側もそれを探してた、となれば出会う確率は上がるでしょ?」
全くの偶然で両者が出会うというのは無理があるが、片方がそれを求めてさまよっていたのなら話は別だろう。
……というか、そうであってくれないと困るというか。
「困る、というと?」
「最悪あ二人のどっちかに殴りかからないといけなくなる」
「あー……」
……うん、さっきも言った通り、あの空間を人為的に作れるのは実質
いやまぁ、製作難易度的にはそこまで高いと言うわけでもないんだけど、それって厳密には
「結界術に長けてればやれるかも、って感じだけど……例えば同じ結界術系の『領域展開』とかであの場所を作り出せると思う?」
「空間的な隔離はいけるとしても、時間的な隔離はそういう方面に特化したやつじゃないと難しそうね……」
この辺は固有結界でも同じこと。
……要するに、本来の彼らでもできるかどうかあやふやなのに、そこから技量の落ちる『逆憑依』達にそれができるだろうか?……というか。
まぁ一応、なりきり郷みたいに複数人が協力すること前提ならばできなくはないのかなー、と思わなくもないけど。
……逆に言うと、複数人の関与を疑わないといけないということになるわけで。
「ついでに言うと、まず間違いなくゆかりんの関与を疑うことから始めなきゃいけないんだけど……なにかやった?ゆかりん」
「ないないやってない、確かに幾つか貴方に伝えてない案件とかあるけど、そっちはほぼ私だけで片付けられるようなのばっかりだからそんな高度な空間を作る余地なんてないわよ」
「ですよねー」
完全体パーフェクトゆかりんならいざ知らず、頑張って条件を三つ加算するのが精一杯なゆかりんだと一人であの空間を作るのは不可能だろう。
……いやまぁ、他の人間の協力があれば不可能じゃないんだろうけど、そうなると今度は彼女に合わせられる相手って誰よという問題がね?
まぁ、万に一つむかーしなりきり郷を作る前に試作した空間が何故か破棄されずに残ってた、みたいなパターンがないとも言い切れないが……その辺の可能性を考慮に入れ始めると収拾がつかないのでこの辺で打ち切っておく。
「まぁ要するに、件の空間が人為的なものだとするとすっっっごく面倒だから、その辺の可能性については見ないふりをしておきましょうってこと。そうしておくことで余計な問題を引き寄せずに済むならそっちの方がいいでしょ?」
「……ソウネ、問題ハ少ナイ方ガイイワヨネ」
「ゆかりん???」
……そっぽを向いて片言になったことについてはツッコまんぞ?
まぁともかく、件の空間が必然的にしろ偶発的にしろ存在したとして、それを求めてエネルギーが彷徨っていたのならそれが出会う確率はそう低くはない、というのは間違いあるまい。
「結果、件のエネルギーは暫く私達から身を隠すことに成功した。……のはいいんだけど、幾らか誤算があったんだと思うのよ」
「と、いうと?」
「まず、件のエネルギーは浄化されたものだったということ。これは言い換えると
「……ふむ?」
もっと言い換えると、あの場から逃げるということ以外の目的がなかった、というべきか。
浄化の際、本来強く焼き付いていた目的──ネコアルクの抱いた復讐というそれを失ったエネルギーがあの場で抱いた目的は、あくまでもあそこから逃げ出すこと。
ゆえに、他の人間達の目から逃れ、一息吐く暇を得たことで固まってしまったのである。
「……え、個体になったの?」
「わざと言ってるんだよねゆかりん?……エネルギーそのものに目的が焼き付くくらいというのは、
「……暴走して暴れまわるとか?」
「逆だよ、今にも爆発しそうなレベルのそれは、寧ろ安定してしまったんだ」
そう、強い目的が綺麗さっぱり消えてしまったことで、聖杯級の強い力を持つエネルギーは動く意味を失ってしまった。
それはすなわち、暴走して周囲に破壊を振り撒く意義すら失ってしまったということで……結果、隔絶した世界に収まったそのエネルギーは、驚くほどに安定した状態になってしまったわけである。
「ただ、それでおしまいとならないのがこの世界。強い目的に動かされていたわけだから、その意義・意志が欠けた状態というのは実のところ本当の意味で安定しているとは言い切れない、という風に見ることもできる」
「なんかキーアちゃん言ってること二転三転してないー?」
「表面上安定してるってのは間違いないからね。エネルギーに色があるって言われても、それを測定する手段がなければわからないでしょ」
「……なるほど?」
黒く染まった聖杯みたいに、一目見て誰もが異常を判別できるような状態ならまだしも、表面上は一所に留まってじっとしている相手の内面を探るのは難しいだろうというか?
臨界状態としか思えない状態なのにずっとそこから変化がなければそのうち『そういうものか』って感じになるだろう、みたいな話でもあるかもしれない。
まぁともかく、小康状態となったエネルギーはしかし、強い目的を与えられさえすれば再び動き出すという、ある意味アイドリングのような状態にあったわけだ。
「そこで目的として入力されたというか、思わず反応してしまったのがVtuberの視聴者の気持ちだったんだろうね」
「……なる、ほど?」
あるいは、そもそもの動画配信というシステムそのものにと言うべきか。
……始まりこそハロウィンであったが、その途中の正月にネコアルクの──
「……あ、あー!そういえば今回のファンタズムーンって配信者設定ありましたね!?」
「サンタで魔法少女で配信者って盛り過ぎじゃねー?……って感じだったけど、にゃるほど言われてみれば今の状況の遠因ににゃってそう感スゲー」
「地下生活者から秘匿された場所、秘匿された場所から時間神殿、時間神殿から型月作品もといFGO、クリスマスの要素も混ぜてファンタズムーン……んでもって、最後にファンタズムーンの再臨から配信者って繋がったわけだね」
どんな連鎖反応やねん、って感じだが……一応、納得はできる範疇ではあるというか。
特に、クリスマスから配信者に繋ぐ手際というかこじつけというかがすごい。下手するとぺこーらがチキンを冷ましてしまうとけになってたかもしれない()
「……あーそっか、FGOとクリスマスでかつ配信者って風に繋ぐと、一応ぺこらちゃんに繋がるルートもなくはないのね……」
「クリスマスに独自の逸話(?)があって、マシュの鎧を着たことがあって、そんでもって配信者だからね。……正直なところ、そっちに派生してくれた方が話としては簡単だった、という見方もなくはないけど」
「そうなので?」
「そっから更に配信者→マスコット化って派生を経たであろう今の状況と比べるとね……」
「あっ」
まぁ、なるべくしてなったとも考えられるのだが。
……それが、エネルギー側が考慮してなかった最後の部分、
「いつかも話したことあるけど、制作者のラベルは基本書き換えられるものじゃない……みたいな話だね。まぁ正確にはネコアルクは制作者ではないんだけど……誰に強く影響を受けていたのかといえば間違いなくネコアルクだからね」
「なるほど、そこから件のエネルギーには『マスコット』という属性が付与されたままだったと」
浄化……もとい、リセットされたのはあくまでも目的の部分だけ。
誰と関わっていたのか、誰の思惑を強く受けていたのかというような部分は、それこそ『星解』でも使わないと書き換えることはできない。
ゆえに、件のエネルギーには『マスコットに関わる物事』に対して強い誘引性を持っていたわけだ。
……で、マスコットかつ視聴者という属性を持つすこん部が反応先として適していたため、そこからこっちの世界に干渉する術を持ってしまった、と。
「まぁ、やろうと思ってやったわけじゃないと思うけどね。たまたまフブキちゃんの配信を視てた人の思考に同調して、そこから実体を得たって感じだろうし。……視聴者達をマスコット化して視る、っていうなら他の配信者だってやってることだし」
「あー、35Pとか子牛とか居ますもんねー」*1
ゴコちゃんの言葉に然り、と頷く私。
……その内そいつらも沸きそうな気がするな。
「多分エネルギーの放出に使われてる節があるからなー」
「……というと?」
「ああうん、正確には偶然そうなった、って感じだけど……【顕象】としてエネルギーを消費しきるまでこの流れは止まらないんじゃないかなって」
「なんと」
ある意味必然、ある意味偶然。
そんなことを思いながら、不思議そうに首を捻るすこん部と、さっきの説明だとおかしなことになるクマリンを見ながら私はため息を吐いたのでありました。