なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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昔々うらしまは、桃に詰められどんぶらこ()

 光るアライさんに導かれ(?)私達が目撃することになった光景、それは──。

 

 

「なにもみえねぇ」

 

 

 光が収まったはずなのになにも見えない環境であった!

 ……いや、見えないどころか体も動かせないんだけどなんなんですかねこれ()

 

 

「おかしい、さっきは立ってたのになんか体育座りさせられてるし……ってかそもそも身長縮んでね?」

 

 

 いやまぁ、周囲が真っ暗なので正確にはそんな気がする、的な状態なのだが。

 ……あとなんだろう、微妙に揺れてるような気がする?

 あれだ、近いもので言うと波に乗ってる感じというか……んん?

 

 

「……樽か?いやこの形はもっと別の……というか外からの光がまったくないってことは作り物にってよりは、端からそういうものに……」

 

 

 ……なんだろう、考察してる内に猛烈に嫌な予感がしてきたんだけど。

 具体的には唐突に異世界(ハルケギニア)に飛ばされた時のことを思い出して来たんだけど。

 いやいや、まさかね……?……いやいやいやまさかね???

 

 でもこの状況を真面目に考察すると……っておや?

 

 

「揺れが収まった……というより揺れ方が変わった?」

 

 

 具体的に表すなら、船の乗り心地から電車の乗り心地に変わった感じ。

 ……わかり辛い?あれだよ、前者はどことなく地に足の着いてない感じがするけど、後者はそういう無造作・無規則な揺れじゃなく規則正しい──そうなる要因が察せられる揺れというか。

 足場の悪い地面を車が通る時とかの揺れが近い、とでも言えばいいのか。

 

 まぁともかくそんなわけで、再び揺られること数分。

 いつの間にか揺れは収まってしまったわけだが……うん、嫌な予感しかしませんねこれ。

 予想が正しいなら危険が危ない()状況ですねこれは?

 

 いやまぁ、仮にその予想が当たってたとしても別に死にはしないけど、変わりにグロテスクな状態を周囲に見せる羽目になりかねないというか。

 流石にそれは勘弁だし周囲が迷惑なので、改めて現在の自身の状態について確認。

 幸い【虚無】は使えそうなので、そこから派生して自身に解析を使用。

 

 

「……なんか目線がおかしいと思ったけど、滅茶苦茶縮んどるやんけ?!」

 

 

 結果、目を覚ました当初にも感じていた『なんか小さくなってね?』という感覚が間違っていなかった、ということを確信したのでありました。

 いやなんやねん五十センチて、元の身長の半分以下やぞ。

 ……おい、二倍したら大体元の身長とか言ったヤツ後でシめるから覚えとけよ?

 つーかそんなに低くねぇわ!百三十あるわ!

 

 というか、よくよく考えたら身長五十センチって生まれたての赤ちゃんと同じくらいの身長だな?

 つまりこの後の展開は……などと思考を回す私を他所に、暗闇の向こう──()の外側から聞こえてくる複数の物音。

 それは話し声であり、なにかを用意するようにごそごそと動く音であり……。

 即ち、このまま予想通りことが進むのであれば、漏れなく酷い(スプラッタな)ことになる!

 

 

「ええいままよ、液状化!」

 

 

 その時不思議なことが起こった(わりとよくやってますよねこの回避)

 

 狭い空間内では()()()()()()()()()と悟った私、迷わず体を変化させることを選択。

 正直ハルケギニアの時と同じように誰かの体に憑依しているのだとしたら、こういう不可逆の肉体変化を起こすのは大分ご法度なのだけれど……。

 正直このまま死ぬ()よりは遥かにマシだと判断し、迷わず決行するキーアさんなのでありました。

 

 そうして変身を終えると同時、なにやらヒュッという音と共に平べったい鈍く光るものが上から落ちてきて、

 

 

「あれまぁ婆さんや、桃を割ったら中から子供が……子供が?」

「どうしたんです爺さんや?……ううん?乳白色の液体?もしかして腐ってる?」

 

 

 パカッと割れた()から私が誕生(?)したのでありました。スイーツ(笑)(笑えない)

 

 

 

 

 

 

「よもや桃の腐った汁だと思っておったもんから、こうして子供が生まれるとはなぁ」

「それも随分別嬪さんなうえにすくすく……すくすく?成長して、今ではこんなに立派に……りっぱに…………?」

「うん婆さま、無理してフォローしなくていいから」

 

 

 本家の私より身長伸びねーんだけどどうなってんすかねこれ(憤怒)

 ……いやまぁ、私の自我が出すぎてる(本来のキャラじゃねぇって)のが理由なんだろうけど。

 

 そんなわけで件の『桃から子供?が生まれました』事件から早数年。

 私はすくすく?と成長し、お婆さんよりちょっと小さいくらいの身長を獲得していたのでありました。

 ……まぁ直前の言葉からわかる通り、ちょっと小さいと言っても腰を曲げた状態のお婆さんと比べて……という話なので冷静に考えると大分背が低いんですけどね。

 でも、赤ちゃんサイズから一年でここまで伸びたんだから十分じゃね?

 

 

「とはいうけどねぇ、三尺(およそ百センチ)程度だとまだまだ子供というか……」

「その背丈で大人扱いは難しいだろうよぅ」

「扱って貰わんと困るんですよ爺さま婆さま」

 

 

 渋い顔をする二人にそう言葉を返す私である。

 

 ……はい、ここまでの話でなんとなくわかるかと思いますが、一応結論を述べさせて頂きましょう。

 どうやら私、桃太郎に憑依したみたいです()

 性別女だし、桃姫とでも呼ぶべきかな?……いやダメだ、なんかしらんけどいかがわしい単語に聞こえる、とりあえず元のまま桃太郎としておこう。

 

 ……うん、最初の暗所かつ閉所ってばどうやら桃の中だったみたいでしてね?

 ということはだ、あそこであれこれと足掻かなかった場合、爺さまの手で脳天まっぷたつ……なんて未来に到達する可能性もちらちらしていたってことになるわけでして。

 いやまぁ、正確には私は死なんけども、少なくとも桃太郎になるはずの誰かは頭かち割られてただろうなーというか。

 

 ……童謡にこういうツッコミを入れるのは本来無粋なんだけど、実際あれってどうやって避けたんだろうね?

 もしかしてあれかな、桃太郎は頑丈なのでお爺さんの鉈による一撃も表皮一枚で耐えた、とかだったりする?

 地上最強の生物的なやつで桃太郎が生まれた瞬間あらゆる生き物は自身の格を思い知った、みたいな感じになってたりする?

 

 ……ないとも言い切れないのが怖いな?なんだっけ、鬼を斬り殺すのが楽しい、みたいなこと言ってなかったっけ?*1

 もうちょっと真面目に考えるなら、鬼というか勝手に島に住み着いた相手を追い払った、というのを童話アレンジしただけなんだろうけど……どっちにしろ鎌倉武士とかの性質が見え隠れするのは変わらんというか。

 

 流石にそのレベルを求められても困るので、私が憑依した桃太郎はこんなものなんだと納得して頂きたいものである。

 

 

「とはいうが、なぁ?」

「旅に出るならもう少し立派になってから、が好ましいといいますか。いやまぁ、普段のあれこれを手伝ってくれるのはありがたいですけどねぇ?」

「ああ、あれは確かにありがたい。……ありがたいが、少なくとも体格的な意味では、なぁ?」

 

 

 おっと、婆さまと爺さまが顔を見合わせている。

 ……これは私の影響が強くなった弊害というか利点というかなのだが……今の私は姿を変えることができるのである。

 とはいっても好きな形に変えられるわけではなく、今の自分の大きさよりも小さくなれる……みたいな感じなのだが。逆一寸法師かな?

 

 いやまぁうん、桃太郎になに変な属性付け加えとるねんとか怒られそうだけど……しゃーないやんけ武力的な強さを私に求めるなや、我【星の欠片】(基本的に敗者)やぞ?

 ……一応、この世界でも【星の欠片】としての能力は(限定的とはいえ)使えるみたいだから、こうして小さくなって細かい仕事を手伝う……とかできるのはありがたいんだけど。

 でも正直桃太郎に求められる能力じゃねぇよな、ってのは私も理解はしてるのでなんとも言えない次第であります。

 

 

「まぁ、お陰さまでお前さんを乗せる船は容易に用意できたけども」

「……それ、いつも私が汁物食べる時に使ってるお椀じゃないです?」

「これとしゃもじがあればどこへでも行けるのぅ!」

「遠回しに口減らししようとしてます???」

 

 

 というかさっきまでの台詞はどうした。

 色々心配だから旅に出すのは了承できない、みたいな雰囲気やったやんけ。

 なんで今は逆に送り出す気満々やねん。

 

 ……とまぁ、ある意味最近のお約束みたいな話を終えた私は、こうしていつものように食料の調達に出掛けたのでした。

 婆さまは川に洗濯、爺さまは竹林で林業しないとだからね、仕方ないね。……そのうちかぐや姫が話に混ざりそうなんですがそれは。

 

 まぁともかく、この時期の食料調達といえば釣りだろう、ってことで簡易的な竿を担いで近くの海へと歩いていく私であります。

 ……この海、鬼ヶ島に繋がってたりすんのかなーとたまに遠くを眺めているのだけれど、特に島の影も見えず水平線が広がるばかりなので違うのかなー、とか思ったり。

 いやまぁ、水平線の向こう側にあるのかもだけど。

 ……仮にそうだとすると向かうの地味に面倒だな、とも思うわけなのです。

 

 

「まぁ、どっちにしろいかだもなにもないから行くの無理だけど。お供もいねーし」

 

 

 というか、仮にお供を集めるとしてそれってこっち来てから見てないマシュ達なのかなー、とか思うのもあって過剰戦力じゃね、とも思わなくもなく。

 ……なーんてことを考えながら竿を握ること暫し、なにやらここから見えない砂浜から誰かの声が聞こえてくることに気付いた私。

 やけに騒がしいのでなにやってんだ、と思わず確かめに行った私は、すぐさまその行動を後悔する羽目になったのでした。

 

 

「ほれほれー!反撃してみろよー!」

「陸の亀……ッ!水を失った憐れな生き物……ッ!!脆弱……脆弱……ッ!!」

「……前々から思ってたけど、お前って語彙がなんか独特だよなー」

「oh……」

 

 

 ……ちょっと変だけど、これ浦島太郎の冒頭じゃねーか!!

 これ以上混ぜ物しようとしてんじゃねー!!

 

 

*1
童謡『桃太郎』の五番から。『おもしろい おもしろい のこらずおにを せめふせて ぶんどりものを えんやらや』という歌詞になっているが、どう考えても逃げ惑う鬼達を斬り殺している。真面目に怖い

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