なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

1282 / 1297
竜宮城には鬼が住む()

 一体この世界はどこに向かおうとしているのか。

 あれか、色んな童話が混じった世界だったりするのか?

 

 そんな風に眉を顰める私の前で、変わらずウミガメ?を虐める子供達二人。

 片方なんか『ざわ……ざわ……』って擬音が喋る度に発生してる気がするけど、なんなんですカイジ世界の住人なんです君?

 

 

「あ、そこの人助けてください!」

「げっ」

「今『げっ』って言いましたか貴方?!」

「んー?なんだよお前、俺らの邪魔すんのかー?」

「無謀……あまりに無謀……ッ!ここら一帯俺らのシマ……ッ!落ちてるものは俺らのモノ……ッ!文句があるならいてこます……ッ!」

「……いや、そこまでは言ってねーよ?」

 

 

 ……やっぱり片方だけなんかおかしいな?

 いやまぁ、言動がおかしいってだけで、見た目は普通のモブ少年Aって感じなんだけど。

 でも残念、まともに戦うと私ってモブAにも負けるんだよなぁ()

 

 

「そういうわけですので見なかったことにして回れ右……したかったんですけど足が動かねぇやこんなとこで自我出してこないで欲しいなー我が肉体(元の人)ぉぉぉぉっ!!」

「なんか一人でわちゃわちゃ言ってる……」

「ヤバいヤツ……溢れ出るヤバいヤツ臭……ッ!こういう時は……三十六計……逃げるに如かず……ッ!!」

「あ、ふざけんな一人で逃げんなよー!」

「……ふっ、これぞ作戦勝ちということですね(キリッ」

「す、すさまじくカッコ悪い……」

 

 

 五月蝿いなー、こういうのは結果が全てなんだよ結果がよー。

 ってなわけで、去っていった子供達を見送りつつ、虐められていたウミガメ?に近寄る私である。

 え、なんで疑問系なのかって?そりゃ勿論、ナチュラルに日本語喋るカメとか不審者以外の何者でもないやんというか。

 

 

「大概酷い言い種ですね貴方……」

「んー、でもまぁ見た感じは普通のウミガメかなー」

「話を聞いてくれません?」

 

 

 そういえば、そもそもの浦島太郎の話だとどうなんだっけ?

 助けたカメに連れられて、とはなってるけど言葉は話さずあくまでも行動で礼をしたいと示したのか、はたまた普通に話し始めたのか。

 ……子供向けと考えるとしれっと喋りだす方がわかりやすい気もするが、わかりやすさが描写の正確性に繋がるかと言われればノーだからなー。

 

 なんて風にウミガメを四方八方から視認していた私、そこでようやく奇妙な既視感に気付くのでありました。

 

 

「……あ、なるほど。どっかで見たことあると思えばドラゴンボールのウミガメじゃん君」

「はい?どらごんぼーる?」

 

 

 ……あっはい、そこら辺の知識はないタイプの方でしたか、そりゃ失礼。

 とはいえ見た目と丁寧な言動からして、彼がドラゴンボールに登場したウミガメであることは間違いないだろう。……子供は名前がわかってるのに本人の名前は不明、というのはどういうことなのだろうか?*1

 

 まぁともかく、である。

 本人にそっちの記憶がない以上、一応扱いとしては普通に竜宮城の使者ということになるのだろう。

 これで迂闊に記憶があった日には、連れていかれる先がカメハウスになる……なんてことになりかねなかったので一安心だ(?)

 

 いやまぁ、向こうの序盤の流れに沿うのであれば、カメハウスに行けば筋斗雲*2を貰って大幅に移動効率が上がる……なんてイベントを起こせるかもだが。

 それって同時に、恐らくは桃太郎の流れに沿って動いているのであろうこの世界のフラグをバッキバキに折ることに等しいわけで……。

 

 うん、一応単なる憑依者である私としましては、そういうトラブルの種を撒くような行為は極力避けておきたいと言いますかね?

 いやまぁ、その辺深堀りするのであれば、そもそもウミガメを助けるなんてイベントを起こしたくなかった、ってことになるんだけども。

 

 

「さっきからなにやら百面相していらっしゃいますけど、大丈夫です?話とか聞いてましたか?」

「え?ああうん聞いてた聞いてた。オッケーオッケー万事了承(りょうしょ)ー」

「あからさまに聞いてなかった態度じゃないですそれ?……まぁお礼をするのはこちら側なのであまり深くは問いませんけど」

 

 

 ほらね、浦島太郎の文脈だから適当な返事でもなんとかなるなる。

 ……いやまぁ、私は一応桃太郎なのであんまり嬉しくないんですけども。

 確か竜宮城での歓待って、結構な年月が過ぎ去るやつでしょ?お土産の玉手箱がその歪みを補正するためのもの、なんて解釈もあるくらいだし。

 

 仮に竜宮城に行って長期間歓待を受けることになった場合、戻ってきた際には桃太郎の本筋が(色んな意味で)終わってる、なんてことになりかねない。

 一応、時の流れのずれによるうんたらかんたら……みたいなのは私には関係ないので、仮に玉手箱を渡されてもなんとかなるとは思うが……。

 

 

(これって仮にも憑依だからなー。中身の私は良くても、今現在私に場所を取られてる形になってる本物の桃太郎にとっては良くないかも?)

 

 

 うむ、私が抜けた後の桃太郎がお爺さんになってしまう、という可能性は否定できまい。

 というか、加齢の問題を抜きにしても竜宮城に長く留まる、ということ自体が宜しくない。

 桃太郎の鬼退治が為されないとなれば、どんな影響があるかわかったものじゃないというか。

 ……いやだよ私、地上に戻ってきたら人々じゃなくて鬼が闊歩する国になってた、とか。

 

 その辺の諸々を考えて出した結論。

 竜宮城に行くのは良いけど、長期間滞在するのは止めておこう。

 すぐに帰ると言ったら乙姫様が悲しむかもしれんけど、その辺は心を鬼にしてきっぱり断るとしよう。

 

 

「……ん?」

「どうしました?」

「いやなにか、変なフラグが立ったような気が」

「ふらぐ……?」

 

 

 あらやだこのウミガメさん横文字に弱いわ。

 なんてことを言いながら、亀の背に乗って波に揺られること数分。

 ……あれ、なんで波に揺られてるんだろうとか思いながら到着を待っていた私は、カメがたどり着いた場所を見て呆気に取られたのでありました。

 

 

「こちらが乙姫さまの城でございます」

「……地上にあるんだけど!?」

「はい?……いや、そりゃそうでしょう。どこにあると思ってたんですか?」

「いやそりゃ海の中……」

「貴方海の中で呼吸できるんです?」

……イヤーハハハ,デキナイッスネー

「でしょう?変なこと言わないでくださいよ(なんで挙動不審なんでしょう……?)」

 

 

 ……ええまぁはい、やろうと思えば海中活動普通にできますし、そもそも浦島太郎ってそういう話じゃんって思ってたのでなんと言いますか……。

 昔話における『海の向こう』とは常世──俗に言う死後の世界と同一視される場合がある*3、みたいな話もあるからそっち方面で攻められたりするのは予想してたんだけど、ねぇ?

 

 いやまさか、普通に他の島に連れてこられるとは思わんじゃあないですか。

 なんならわりと栄えてるし。……まさかとは思うけど竜宮城と鬼ヶ島が同じだったりしないだろうな?

 

 仮にそうだった場合、乙姫さまは鬼ヶ島の姫様……下手すりゃ首領、なんてパターンに派生する可能性も?

 これが素直に桃太郎が私じゃない状態だったら、型月民大好物の殺し愛に派生しそうな感じすらする設定だぁ……。

 なにせ乙姫さまって浦島太郎と結婚していた、なんて話もあるし。*4

 

 

「もしもーし、話を聞いてらっしゃいますかー?」

「おおっとすみません。一先ず貴方の先導についていけばいいですか?」

「いやまぁそれでいいんですけど……聞いてなかったことをごまかしすらしないのはどうなんです?」

 

 

 すまんなすぐに思考に潜ってしまうのは私の悪い癖なんや。

 ……などと謝るわけにもいかず苦笑を代わりに返し、移動し始めたウミガメの背を追う私である。

 いやまぁ、陸上におけるカメは基本遅い……という常識に従ってウミガメさんも普通にスロウリィなので、正直めっちゃ暇なのだが。

 ……暇すぎて周囲を確認する余裕があるのはいいことだけれど。

 

 ざっと眺める限り、竜宮城というわりに住人は普通の人ばかりである。

 タイやヒラメが舞い躍り、なんて文句があるけれどその兆候すら見えないと言うべきか。……なんなら普通に大型の鳥とか飛んでるし。

 

 

「飛んでるとダメなんです?」

「目に入る範囲に獲物となるようなものが入り辛い、という意味で」

「……なるほど?」

 

 

 仮に宙を泳ぐ魚がいたとしても、普通に鷹とか鷲とかに捕獲されるだけやろというか。

 ……寧ろ鳥が踊ってるような見た目になるんじゃないかなこれ?

 

 あと気になることと言えば、城というわりにそれを守る立場の人間とかは見えない……みたいなところだろうか?

 あれかな、島の周囲は特殊な海流に守られていてウミガメさんに先導して貰わないと普通に座礁する……みたいな感じで、天然の要衝になってるとかだろうか?

 

 

「はい、着きましたよ。……またなにか考えてますね?」

「おおっとはなは。乙姫さまとのご対面と言うわけですね、いやー楽しみだなー」

「……もうなにも言いませんよ。乙姫さまー戻りましたー」

 

 

 わぁい呆れられてらー。()

 ……しゃあないやんけ考えることは多いんや。

 そんな風に自己弁護をしつつ、現れた乙姫さまを見た私は。

 

 

「突然ですがあい!して!まーす!」

「すみません帰りますね」

「なんで?!」

 

 

 その姿に思わず回れ右をしたのでありました。

 ……いやおとひーやんけ!!

 

 

*1
カメハウスにて亀仙人と一緒に暮らしているウミガメ。年齢は1000歳を越えており、どうにも数百年生きる内にいつの間にか言語を覚えたとかなんとか。物腰が丁寧であり、かつ亀仙人とは対称的に年長者としての落ち着きを持った言動をする。ただ、武道家としての亀仙人は普通に尊敬している、らしい

*2
ドラゴンボールシリーズに登場する(一定の条件を満たした)人が乗れる金色の雲。元ネタは西遊記の『觔斗雲(金斗雲とも)』で、見ればわかるように漢字が地味に違う

*3
当時の世相から。要するに島流し的な考え方。海の向こうに消えた人とは二度と会えないのでそれが死を意味するもの・一種の暗喩として使われていたのではないかとする説。そういう意味では浦島太郎も『海に消えた(死んだと思われた)』人間が数年経って戻ってきた、と解釈することもできなくはない

*4
助けたウミガメ自体が化けた乙姫さまだった、なんて話もあったり。そちらだと乙姫さまが浦島と結婚する流れもわかりやすい

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。