なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まったく酷いお人……私の気持ちを試していらっしゃるのね、でもそんなところも好き!(挨拶)」
「どうして(白目)」
いやまぁ確かに乙姫だけども……乙姫だけども……!
思わず天を仰ぐ私の目前、そこに立つのは乙姫スタイルの清姫その人であった。……いやまぁ、ウミガメ君と同じで清姫については知らない感じだったけども。
それにしては言動があまりにも清姫な辺り、大分キャラが汚染されていると言わざるを得まい。
……というか冷静になって考えるとヤバくね?
乙姫がおとひーになってるってそれ帰れなくね?
だってほら、浦島太郎の原作における玉手箱は『見るなの禁』を含むタイプのある種引き留め、みたいなもんでしょ?
まぁ、なにもかもが過ぎ去った世界に一人取り残されるよりもそっちの方がマシ、的な救いの意味もあるかもしれんけど。
でもこう、ここにきよひー的感性が組み合わさると、玉手箱に込められた思いが『死は救いである』的なものになりかねないというかね?()
実際、浦島太郎の説話には玉手箱によって老いる……だけではなく、そこから老衰による死にまで至るパターンもある。
ということは、だ。
真実、玉手箱による老化は普通に死を招くモノであり。
かつ、乙姫が海の向こう──
……というかそこまで行かずともきよひーと言えば『逃げられた』ことに端を発する愛憎劇とも読み取れる話の主人公、なわけでして。
いやその、これ竜宮城から帰れますか……?
などと震える私はおかしいでしょうか、いいえおかしくありません。
……こりゃやべぇ、相手に会話の先手を取られるとどう足掻いても詰む!
ってなわけで、颯爽と主導権を握りに口を開きかけ、
「聞けばあなた様は私の従者たるこのウミガメを救ってくださったとのこと。もうそうなれば全力で歓待!……するより他ありませんね!!」
「 」
その反攻の芽を潰すかのように放たれたおとひーの言葉に、思わず絶望することになったのでありました。
なんでや!そこまで歓迎されるいわれないやろ!
っていうか虐めてたっていうけど子供達のやってたことと言えばやいのやいのと言葉で責めることばかり、肉体的なダメージは無に等しい感じだったけど!?
「そうですよ乙姫さま、流石に大袈裟です」
(おおっと意外なところから援護が?!そうだいいぞ言ってやれウミガメ君!)
「あら、そうかしら?」
「はい、大袈裟です。確かにこの方が助けてくれなかったら今頃精神的な後遺症を患っていたでしょうが」
「……それは十分なんじゃないかしら?」
「……あれ、言われてみればそうですね」
(faaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaackッ!!!)
もうちょっと頑張ってくれよぉ!!(泣)
なんでそこで諦めるんだ教えはどうなってるんだ教えは、バカ野郎私はここで終わらんぞそんな結末は誰も求めてねぇ!!
……などと脳内で怒鳴り散らすも表には出さない私、プライスレス()
いやもうどうしたもんかこれとしか言いようがないんだけど、マジどうすればいいんです?
あれか、好かれないように冷たい態度を取って貰うもんだけ貰って帰ればいい?
もしくは人に興味がなくてウミガメが性癖の人です、みたいなどこぞの動物学者(もどき)みたいなことを言ってドン引かせるか……?*1
みたいに思考が迷走してきたわけなのだけれど。
「……む、この音は」
「ああ、例の……」
なにやら布団を叩くような音?がしてきたことで思考は一時ストップ。
それと同時、おとひーとウミガメ君の会話もストップしたようで、二人は顔を見合せ渋い顔。
……どうにも厄介ごとの匂いがしたが、同時にここはチャンスでもあると理解。
そのチャンスが活かせるものかどうかを確認する意味も込めて、二人に事情を詳しく問い質したのであった。
「ふむ、変なカメねぇ……」
「私はこの竜宮城の統治者として、海の生き物との折衝を重ねているのですが……ある日やってきた一匹のカメ?に日々悩まされておりますの」
「私としても大層困り果てておりまして……」
話を聞いたところによると、この音はある日やってきたカメ?に関係するものらしい。
……なんで仄かに疑問系なんだろう、と思わなくもないのだが話の腰を折るわけにも行かず、そのまま続きを促す。
なんでも件のカメ(?)、長期に渡りこの竜宮城に勤めることになったウミガメ君を見込んで海の長的なものが寄越してきた存在らしい。
曰く、彼のように立派なカメになってほしい……とかなんとか。
なので、下働きとして働かせているのだが……どうにも風が悪いとかなんとか。
「どういうこってです?」
「いえそのですね?……こう、真面目に働くいい子なんですよ?いい子なんですけど……なんと言えばいいのか、少々個性的と言いますか……」
「個性的」
「俗にいう仕事人間、ということになるんでしょうかね?」
「仕事人間……?」
個性的って言葉と仕事人間って言葉が一緒くたに出てくることってあるんだ……。
思わず変な感想が胸中を過ったが、あくまで二人の会話から相手を連想しているがゆえの認識のずれのようなものだろう、と一応納得。
そのまま、先ほどと同じ様に続きを促す私であった。
「そのですね?重労働を好むのです、件のカメ?は」
「それも下手をすると命に関わるようなものを特に。……本人的にはできると確信しているからこその行動なのでしょうが、正直外から見ていると虐めているようにしか見えないといいますか……」
「なのでそういう無茶は止めさせたいのですが、仮にそれを口にするとこの世の終わりのような眼差しを向けられまして……」
「なる、ほど」
本心からそれを好ましいと思っていると理解できるからこそ、止めろと言い辛くなっているのです……と、嘘を見破るきよひー成分を醸し出しながら乙姫さまは話を終えたのでありました。
……なるほど、確かに死にそうなほど仕事に打ち込む人、というのは個性的だと言えるだろう。
けど、昔と言えばそういう仕事が大半のような気がするのだがどうだろう?
例えば刀鍛冶とか、現代だとそこまで……いやまぁ現代でもわりとエグめだけど、昔のそれは比べ物にならない……というか、普通に死人が出るのが当たり前のようなものだったと聞いた気がするし。
なので別に困りはしないんじゃないかなー、と安直に思ったものの、どうにもこの竜宮城に関してはその辺の倫理観?的なものは現実に近いようで。
例えば籠屋なんかも、普通に周囲から眉を顰められたりするのだとか。
……この時代がどの辺りを想定してるのかわからんけど、江戸時代とか移動手段の主流だったはずだし、わりとよくわからん時代設定だな?いやまぁ、竜宮城がおかしいだけかもしれんけど。
ともあれ、人目につくところで重労働していると民からの風評が悪くなる……というのが二人の主張したいところということになるらしい。
なのでどうにかしたいけど……同時に本人の希望でもあるので無闇に却下するのも難しい、と。
「……ふむ、でしたらこうするのはいかがでしょう?私は近々鬼ヶ島へ鬼を退治しに向かう予定です」
「なんと、鬼ヶ島に?!」
「ええ、鬼の被害が酷くなっている……と風の噂に聞きました。ですのでそれを解決しようと考えています」
「なんと立派な……」
そこまで聞き終えたことで、私は確信する。
──そのカメ(?)、使えるな……と。
重労働を好んでいるということは、言い換えると無理難題を求めているということ。
ストイックな求道者的なものと見なすこともできるので、それを利用する方向で進めようと決めたわけだ。
具体的には、私が桃太郎として鬼退治に出向くことを検討している……と二人に明かす形で。
これにより、鬼を退治するという無理難題に件のカメ?を連れていくことを提案し、彼らの頭を悩ませる者の処理……というと物騒だが、まぁ面倒ごとを引き受けますよーと主張するわけである。
話に聞く限り、件のカメもこの話を断ることはないだろう。
命に関わるような仕事こそ好む、みたいなことを言っていたから鬼退治なんてまさにうってつけ、というわけだ。
同時に、鬼を退治するという目的を私が持っていることを遠回しに伝え、この場に長く留まることはできないと暗に示すこともできる。
鬼の噂がどこまで届いているのかはしらんが、二人の反応を見る限り結構な被害を出しているのだろう。
ならばそれを引き留める、というのは(心情はともかく)無理筋である、というのは理解してくれるはず。
……まぁ、最悪のパターンを引くとおとひーが一緒に同行します、なんて話をし始める場合もなくはないが……その辺は隣で「そんなこと言い出したら止めますからね」って顔してるウミガメ君がいる限り大丈夫でしょう()
そんなわけで、件のカメ?の元に到着する前にある程度話は纏まった。
私は鬼ヶ島に向かうに際してお供を求めている。
ゆえに、件のカメ?をお供として連れていくことを今回の褒美とさせて貰う……みたいな感じだ。
……実際には厄介払いになるんだけど、その辺は指摘しない方向で。
私は戦力を得る、向こうは厄介払いができる。
……口には出さないがその方向で交渉は成立し、その流れのまま件のカメ?の働きを見ることになった私は。
「お、おらー!とっととうごきやがれー!」<バシーン
「キッツ……♡……いえっ、もっと激しくお願いします!!」
「ええ……なにこの人怖い……」
「(唖然)」
自慢の円卓の盾を甲羅のように背負い、かつ一人で人の乗った籠を持ち、馬に対してのそれと同じ様に(とはいえ人相手なのでかなりやさしく)鞭を振るわれ、なにやら嬉しそうに悲鳴をあげながら人々を運ぶ籠屋になっている(多分)うちのマシュの姿を目撃することになったのでした。
……うん、これが声優ネタの力ァッ!!(ヤケクソ)*2