なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
さて引き続き爺さまの課金観戦である。
……いやまぁ正確には違うんだけど、結果だけ見てると似たようなものというか。だってさー?
「とおりゃぁ!!」
「よっ、爺さま日本一!……中身は普通ですねぇ」
「竹水、でしょうか。なんでも美容にいいとか」
「あんれまぁ、そうなのかい?……近所の奥さんとか欲しがるかねぇ?」
「どおりゃあっ!!」
「よっ、爺さまかっこいい!……中身はカッコ良くないですねぇ」
「これは竹串ですね。見るからに貴重さはありませんが……」
「流石にこんなにみっちり入ってるとビビるねぇ」
「……ど、どおりゃぁっ!」
「よっ、爺さま素敵ぃーっ!……中身は素敵じゃないですねぇ」
「ええとこれは……炭?」
「竹炭ってところかな。……まぁ、少なくとも貰って嬉しくないものではないね」
「…………」
「ありゃぁ、流石に爺さまも元気がなくなってきたねぇ」
「そりゃまぁ、流石に二桁本も竹を割ってて、かつ大して益が無ければねぇ。……変わろっか爺さま?」
「ま、まだまだ若いもんには負けんぞぉ~……」
「めっちゃフラフラじゃん……」
婆さまに見られてるから頑張ってるけど、居なかったらまず間違いなく倒れてるヤツじゃん……。
とまぁ、こんな感じでクズガチャに精神を削られしおしおになってる爺さまを見てると、ああこれ爆死ガチャ観戦だな……となるってものだろう。
一応、使用するのはお金ではなく体力なので取り返しの付かないものではない、というのは救いだろうか?
……え?老人の体力は消費すると最大値ごと削れるから止めさせるべき?その辺はここ童謡世界なので……()
「ここに取り出したるは桃太郎印のおにぎりでござい。はい爺さま、これ食べて元気を出して。はいお水」
「お、おぅすまんのぅ……」
懐から取り出したるは、竹の皮に包まれたおにぎり。
時代考証的には五穀米とかになってるはずだが、あくまで童謡世界ということもあって普通に白米おにぎりである。
具は梅干し、シンプルな塩にぎりだけどこれがまぁ疲れた体に染み渡るというもので。
「……んんんんん、元気百倍!儂爺さん!!」
(なぜアンパンマンのイントネーション……?)
あれか、童謡=子供向けのイメージから同じ子供向け作品の影響が地味に発生してるとか?
……まぁその辺はとりあえずスルーするとして、おにぎりを平らげた爺さまの様子に着目すると。
「……凄く元気になっていらっしゃいますね?」
「うむ、おにぎりパワーで元気元気ってわけだね。いやまぁこんなに元気になるとは思ってな……」
「……ん?どうしたんじゃ鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」
「──若返っとる!?」
「んん?……おお、なにやら視点が高くなった気がしておったが……腰が直ったんじゃのぅ」
「そんなレベルじゃないんですけど!?」
お、おおぅ。
主題ではあるものの、桃太郎という話の中では基本的にはモブっぽい役割だからそこまで気にしてなかったけど……あれじゃん、こうして若返ったからわかるけど爺さまってば『じいさんばあさん若返る』の爺さまじゃん。
他の面々と同じくそのキャラとしての自覚はないみたいだけど、やけに元気な爺さまだと思ってたらそういう……。
「……ん?ということは……ええと婆さま?」
「はい?なんです?」
「
「……おにぎりでは???」
片方がそうなら、もう片方も……?
ってなわけで、婆さまの方にも桃太郎印のおにぎりを食べさせたところ……。
「あんれまぁ、随分と動きやすくなったねぇ」
「……予想通りということになるのでしょうか?」
「まぁ、うん。私のおにぎりがヤバイだけ、という可能性もあるけど」
ある意味予想通りに、婆さまも
……うん、予想通りと言いつつも起点が私の作ったおにぎりを食べた、って辺りになにやら嫌な予感がしなくもないぞ……?
もしまかり間違ってきび団子とか手作りした場合、それを食べた犬猿雉がやべーことになるんじゃなかろうな……?
「具体的には犬がバーゲスト、猿がバーヴァン・シー、雉がメリュ子になるとか」
「さ、流石に既に他の役割で消費されている方は出てこないのではないでしょうか……?」
「そうかなー」
確か龍にシャチにイワシとかだっけ?マシュの義理の姉妹達。
言動こそ確かに妖精騎士達だったけど、姿までそうだったというわけでもなし・見た目は他の役割に回されてる……なんて可能性もなくはないと思うけどなー。
……まぁ、その辺は結局私が料理を作らなければいいというだけの話。
あまり気にする必要のあることでもない……と思いたいところなのだけれど。
「なんでだろうなー、なーんかフラグが立ってるような気がするんだよなー。主にお供って原義的に人じゃない、って意味で」
「……すみません、どうにも否定できる証拠が思いつきません……!」
うん、知ってた。
……さっき陸地に戻ってくる前、海の中でマシュが普通にクラゲとか食べてたの見てたし。
いやまぁ、食べるモーションを取ると目の前のクラゲが穴だらけになっていく、というゲームにありがちなモーションだったので詳しい原理は全くわからんのだけれど……。
とりあえず言えることが一つ。今のマシュはシステム上しっかりカメ扱いされてる、ってことだ。
「なので、味覚とかもそっちに合わせられていると……」
「味としては問題ないのですが……その、絵面が……」
「ああうん、リアルにされても困るけどモーション足りてない動きとかされてもやっぱり困るよね……」
「……絵面が酷いので引かれるのが……精神的にキッツ……♡」
「おいこら一瞬でも心配した私の気持ちを返せ」
「……はっ!?ち、ちちち違うのですせんぱい!!?いえ違わないのですが違うと言いますか……っ!!」
「これはひどい」
……可能な限り早急にこの異変を解決しよう。
じゃないと黒歴史が加速度的に増えることになる……!()
事態の解決に改めて意思を燃やすと同時、改めて目を逸らしていた現状に視線を戻す私たち。
うん、逸らしてたんですよね、現実から。視線を。
直前の状況を思い出して貰いたい。
私の提供したおにぎりにより、共に若返った爺さま婆さま。
となればだ、先程の張り切り方からして
「見んさい婆さま、儂の華麗な鉈捌きを!ぬぅんっ!!」
「よ、爺さま世界一ぃ~!……でも中身はやっぱり微妙だねぇ」
「ぬぐっ、な、中身より儂のカッコいい動きに注目しなされ!」
「はいはい、私はいつでも爺さまの虜じゃよ」
「……その言い方はズルいぞ婆さま」
「んふふふ……」
……はい、滅茶苦茶イチャイチャしてますね。
イチャイチャしてハッスルした結果竹が次々と真っ二つになっていきますね()
いやもう、貴方どこの高名な剣士よ……鉈だから鉈士?まぁともかく、刃物の扱い上手すぎやろ貴方と言わんばかりにすぱんすぱん真っ二つにしていく爺さまの姿は、好きな子に応援されて張り切る十代男子のそれに他ならず。
……うん、こんなところで過ぎ去った青春を取り戻すかのような流れを作るの止めてくんないかな、とか言いたくなってくる状況だと言えるだろう。正直砂糖吐きそう()
そんな砂糖空間から繰り出されるのがガチャ爆死、というのは正直笑えばいいのか呆れればいいのか……。
っていうか、さっきとは比べ物にならないくらいの竹処理速度になったけど、その速度を以てしてもアタリが出ないのはどういうことなのか。
あれか、縁日の屋台の如くアタリの入ってない詐欺系ガチャだったりするのかなこれ?
仮にそうだとしたら私は月に攻め込むことも辞さないんだけど、クソガチャを生み出したのは貴様らかっ、って感じに。
「月の方々も覚えのないことで攻め込まれるのは勘弁だと思いますが……」
「そーなのだそーなのだ!ガチャ運が悪いのは日々の行いが悪いか、そもそも単に本人の運があまりにもあれなだけなのだ!それをこっちのせいにされても困るのだ!」
「ぬ、ぬぐぐぐ……遠回しどころか直接的に儂の運が悪いと責め立ててきおる……可哀想だと思わんのかぁ!(運的に)弱者をいたぶって心が痛まんのかぁ!?」
「爺さま???」
なんで突然半天狗みたいなこと言い出したんです?*1
よもや爺さまにあれが混ざっとるとは思わんけど……あれか、鬼ヶ島の鬼ってその辺のやつも混じってたりするのか?
……なんて風に訝しむ私だったが、よくよく先程のやり取りを思い出して一言。
「……誰だ今の?」
「そ、そういえば……私達以外の誰かの声が聞こえたような気が……?」
「……ワンワン」
「なぁんだただの犬かー。……ってなると思ったかー!!というかこの時期の犬って野犬とかの類いじゃろがい!居たらまず間違いなく処理される相手じゃい!主に狂犬病的な意味で!」*2
「し、しまったのだ!?」
「のだ!?」
その特徴的な話し方ゆえに正体はほぼ一つ。
ゆえに周囲を見回す私達だが、その声の主らしき相手の影は見えてこない。
……と、そこまでやって気付く。
そういえばさっきの声、なんかくぐもってなかったかと。
具体的には壁とかを挟んだ反対側から聞こえてくるような声に近い、というか。
……まさか、と思いながら竹藪を──光る竹藪に視線を向ければ。
いつの間にか、明らかに他の竹より太く、かつ強く輝く竹が鎮座していることに気がついた私達なのでありました。
……え、マジで?