なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「──さっきの話の続きだけど。一つの問題ってのは他でもない、基本的に荒神達は主神・天照からしてみれば遥かに格下の存在なわけよ」
話しながら私は地面に落ちた枯れ葉を手にとって見せる。
それはつい最近枯れ始めたものなどではなく、明確に枯れ落ちた──触った端から崩れるほどに脆くなった一枚の葉っぱであった。
それが意味することはすなわち、今現在この陣地の中は生命溢れる春や夏ではなく、それらが衰退する秋……いや、それすら終わった冬に近い環境である、ということ。
薄暗く、かつ命の息吹を感じずとも、
「……ふむ?主殿、これはまさか」
「私としては滅茶苦茶流暢に喋るおサルさんにビックリだけど……それはそれとして、そのまさかだよ。結局は天照の指先・舌先一つでなんとでもなるのが荒神達。なら、
「えっ」
無論、完全に一から百までお願いした、ってわけではない。
というか荒神達が好き勝手してたのも、天照がそれを見逃していたからというところが大きい。
幾ら力関係的にそっちの方が強いとはいえ、徒党でも組まれたらややこしいことになるのは目に見えている。
なので、目障りなことを始めない限りは咎めもしない……みたいな感じで天照自身は静観していたのだ。
──丁度、釈迦の手のひらの上で粋がっていた孫悟空のように。
「うぐっ」
「なんでおサルさんがダメージ受けてるの?……まぁともかく、下手なことしなけりゃ天照は関与しないってのが現状だったわけ。……それは言い換えると
「……ま、まさか」
「そのまさかよ、荒神達は天照に気付かれなければ──バレなきゃなにをしてもいいと解釈した。結果、そこのおサルさんみたいに
「ぐふっ」
……なんでさっきからダメージ受けてるんだこのおサルは?
まぁともかく、天照自身は常日頃からあらゆる全てを見ているわけではないので、普通に見逃す部分があったわけだ。
なまじ、お天道様としてあらゆる場所を照らす──あらゆる場所を見ることができるからこその慢心、とでもいうべきか。
基本的に慢心というのは掬われるもの、荒神達はそこを上手く使って自身の戦力増強を測っていたわけである。
とはいえ天照も無様に見逃していたわけではない、力量を見抜く力は持ち合わせているため、変に力量の上がった者に関しては普通に叩き潰すこともしていたわけだ。
「無論、取り締まりが激しくなれば犯罪は裏に潜るもの。……常日頃から自身が強くなるようにするのではなく、特定状況でのみ自身が何者にも負けなくなるような世界──結界を作る方向に舵を切ったってわけ」
そもそも結界自体が天照の目を欺くものである。
ならば、その中に自身の研鑽を込めておくのもまた自然の流れだろう。
こうして、荒神達は結界を使うことが増え、ついでに結界の習熟度も上がっていったと。
「でもまぁ、それでも問題は無いと言えば無かったんだよね。少なくとも、天照自身が進んでその結界に入る──自ら不利になりに行くなんてことはあり得ないわけだし、所詮は結界──その場から動かせないものなんだから、それを維持するためのエネルギーを補給している地脈との繋がりを断てばなんとでもなるわけだし」
「なるほど、積極的に動く理由がなかったわけだな」
雑に言えば、いざとなればなんとでもなると天照は考えていたわけだ。
実際、単に天照と荒神が戦うだけならばその考えで間違いはない。
結界の性質上、結局は一対一に終始することになるのだから、地力の差で普通に倒せるはず……というわけだ。
「──だから、そうじゃない可能性について伝えてあげたのよ。今は一柱一柱だけ結界を作ってるけど、
「あ、なるほど。最初に言ってた複数で挑む、ってやつね」
彼らの作る結界は自身の陣地としての面が強く、通常の結界のように複数で維持を受け持つ……というような手段は取り辛い仕様になっている。
その事実が、天照の彼らへの介入を後回しにさせる理由になっていたわけだが……それは甘いぞ遊戯、と私がツッコミを入れたのだ。
陣地としての面が強いというのなら、連合を組めばいい。
共通の軍勢に所属する仲間であると解釈すれば、多くの荒神達が協力して大結界を構築することも可能だろう。
元々天照を倒して自身が主神になろうとするような我欲の持ち主ばかりなので、協力しようにも主張がぶつかって難しかろうという反論も『アイツを倒すまでは一時共闘だ』的なノリで組むことは可能だと指摘。
……実際、現状や終わりまでは厳しくとも、仮に天照を追い落として日の本の国の主神となれた場合、得られるリターンは破格どころの話ではない。
自身の薄暗い陣地でちまちま戦力を高めるより、一発どかんとやってうまく行けば美味しい思いができる、となれば乗っかる者も多いだろう。
「ちまちま、ですか」
「うむ。基本的にそこらの荒神が力を得ようとするなら、そのやり方は細々としたものにならざるを得ない。大っぴらにやってたら速攻天照に潰されてるわけだからね。なんでできることって言ったら
「神隠し……つまり贄、ということですか?」
「まぁ、そういうことになるねぇ。童話が優しいばかりと思うな、みたいな?」
「本当は怖い童話、みたいに言われることもありますからね……」
贄を得て力を増す、なんてある意味典型的なパターンだしね。
あとはまぁ、見咎められない程度に地脈からエネルギーを得るというのもあるにはあるか。
……天照は別に荒神達を滅ぼしたいわけではない。
というか、下手に滅んで貰っても困る。なにせ彼らは土着の神のようなもの、ゆえにその席が空いてしまうと色々面倒なのだ。
どう面倒なのかって?主を失った神席に他の生き物が着いたりしかねない()
「実際、付近で荒神扱いされてるような強化原生動物って、主のいなくなった神席に偶然座っちゃった生き物、って面が強いだろうからね」
「その神席ってのはよくわからないけど、無くしたり潰したりはできないの?話を聞いてると、それが一番の問題だと思うんだけど」
「それができれば苦労はせんよ。分かりやすく神の席って言ったけど、要するに地脈の噴出点だからねそれ」
「あー、なるほど」
あって当たり前のものなので、それを迂闊に塞ぐとこの国にどんな悪影響があるものやら。
最悪季節が無茶苦茶になるわ、地震や噴火が頻繁に起きるようになるわで日本国そのものが滅びるかも?
……まぁそういうわけなので、神席を潰すのは却下。
かといってそこを全て天照が管理する、というのは難しい。単純にアホみたいにいっぱいあるので手が足らないわけだ。
なので、そこらの神に任せている……と。
「逆に言うと、神席に居座ってるからってみんな荒神ってわけでもないんだよね。普通にそこを管理して周囲から崇められてるようなのもいるんだよ」
神社とかまさにそんな感じだし。
……まぁそういうわけで、管理しきれない神席の確保のため、ある程度神の理を知っていて地脈の力に耐えられる者が必要、というのは間違いない。
同時に、野生動物が神席に着くのは避けておきたい。
それは大抵の場合暴走するし、暴走しなくても鬼とか別の生命に派生する恐れしかないのだから。
「まぁ、偶然に偶然が重なって新たな神様になることもあるらしいけど、その場合でも基本は荒神になるわけだから面倒は面倒だよね」
「ぐふっ」
……なるほど、さっきからダメージ受けてるなーと思ったけどこのおサル、普通にそういうパターンか。
などと納得しつつ、そのまま話を進める私。
「それらも含めて、天照は地脈を閉じるようなことはしていない。荒神達が余計なことをしないで、かつ自身の存在を保てる程度にはエネルギーを確保することを許してる……ってわけね」
「だからこそ、その領分を越えるような神隠しや徒党を組むっていうのは見咎められる、ってこと?」
「見てればね。……ご覧のように、その辺については気付いてなかったみたいだけど」
その辺は荒神達が思ったより上手だった、ってことで……。
まぁともかく、色んな手段でエネルギーを溜め込んでいたのが彼らだった、というわけである。
無論、エネルギーを溜め込めるのは基盤が安定しているからこそ。
天照側の温情として
「……ということはまさか」
「その通り、余分なエネルギーを溜め込んでるってことを知らないから天照は情けを与えてたんだから、
補助をしないと生きられないと思っていた人が、その実普通に生活の基盤を持てるくらいには稼いでいた……みたいな?
そりゃ支援も打ち切られるというもの、当然にして当たり前の既決である。
「無論、いきなり打ち切らせたわけじゃないよ?相手に支出を強要するようなことをこっちがさせてから……いや正確にはその前くらいからって感じかな」
「……はっ!?私達への警戒……!」
「そゆこと」
なお、支援に関しては完全に打ち切ったのではなく、今から一切なにも余計なことをしなければ暫く耐えられるようなレベルにまで落とすように助言しておいた。
これにより、天照側への文句を減らす効果があるってわけ。
お題目としてはそうだなー、『私も今苦しいのです』とか?
……そんなこんなで、エネルギーをバカ使いする理由が生まれる直前で補給を最小限にしたことにより、相手は自分から兵糧攻めにあうことになったわけで。
その絶望的な状況に気付くまで──おおよそ一週間勝手に警戒させたことで、相手はほぼほぼ消滅直前のレベルまで弱ることになったのでありましたとさ。
……うん、正直うまく行きすぎて怖いくらいですねこれは()