なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
途中で止められればよかったんだろうけどねー直前でおサルさんがあっさり退場したせいでねー(棒)
……まぁ、冷静になって見て貰えれば、おサルさんの神席って他の神のモノにはなってないってわかるんですけどね。
「あれ、そうなの?」
「接続を阻害してるだけで名簿はそのまんま、って感じ?」
「どういうことよ……」
いや、
……縁とか切れるのが私なのだよ、と言えば滅茶苦茶ドン引きした顔を向けてくる姫様なのでした。
なんだよう、対不老不死系技能があるって時点でその辺は予測できるじゃんかよぅ。
まぁともかく、今の彼らの状況は電気やらガスやらが止まっていることに気付かず食材を大量に買い込んだようなもの。
冬場ならともかく、夏場ならあっという間に食材が腐るわ調理もろくにできないわで普通に餓死寸前みたいな状況。
そりゃまぁ、侵入者に対処する余裕なんて一欠片も残ってなくて当たり前なわけでして。
「なんと氏神様*1、どうなされた!?」
(この上ないくらいに白々しい……)
(戦わずして勝つ、兵法とはこのようにありたいものだ……)
(……俺、最初に脱落してて良かった……)
……なんだよ、言いたいことがあるなら口に出したまえよそこの人達。
私が声を出しながら近付いたのは、結界の中心で枯れ木のような姿になって震える一柱の神。
私が抱え起こせば、彼?は震える手をこちらに伸ばしながらこう告げたのだった。
「……し、信仰……信仰を……」
「なんと、崇め奉ればよいと!?お任せあれこの桃太郎、善神に捧ぐ感謝の念は常に絶えぬ!」
「どの口が言うのよどの口が」
「あ、いえかぐやさん。せんぱいは基本的にその辺りのことについては嘘を付きませんので……」
「……マジで言ってる?」
「マジです」
……口に出せとは言ったけど陰口みたいにひそひそ話せとは言ってないぞ私?
ともあれ、私としてはすることは一つ。相手に求められたのだからそれを与えるだけの話である。
この場合は信仰──神を畏れ敬う気持ちなので、それを存分に捧げることとしよう。
「……お、おお信仰が我が身に満ちる……これならばかつての我を越えることも……おや?ちょっと待ちたまえこれ君一人分の信仰心?」
「ええはい、他のモノは祈ってないでしょう?」
「いやまぁ確かにそうなんだけど、なんというかこう数千人……数万……数十万人?くらいから信仰心を向けられているかのような圧を感じるのだが」
「なんとたった十万人!?我が祈りがまだまだ足りてないということですか!」
「え゛っいやそんなことは言ってな」
「この桃太郎一生の不覚、なればこれより死地に挑む心持ちにて一心不乱の祈りを捧げましょうぞ!」
「えっいや話を聞いてちょっ待っおかしいおかしい桁が跳ね上がった五桁くらい一気に吹っ飛んでいったおわああああああああっ!!?」
「
「えー……」
なにそれ、とでも言いたげな姫様の目の前で、さっきまで干からびていた神はみるみる内に元気になっていき──元気になりすぎて爆発した()。
なお、その光景を見ていたマシュは『せんぱいの祈りを捧げられて爆発……キッツ……♡』などと自身がそれを受けた際の状況を夢想してハッスルしていた。もうダメかもわからんね()
まぁ、周囲があれこれしていても状況は無関係に進むもので。
光に包まれ爆発した神様は、暫くの間その時発生した煙に包まれていたが……、
「我が身に勿体なき信仰、誠に感謝せり」
「……綺麗な神様になったわよ!?」
「然り。善き信仰は善き神を産む。これは必然である」
それが晴れた時、姿を現したのはまるで観音様のような穏やかな顔をした先程の神様の姿であった。
……これぞ信仰による善神化である。日本人なら標準装備だよね()*2
八百万の神の中には悪い存在だったのが信仰を受けて良いものとして扱われるようになった、というものがそれなりの数存在しているわけで。
それと同じことを今私はやったわけだ。……わかりやすく言うと【星の欠片】経由の無限ごり押しである()
「そういえばなんか信仰の桁がおかしい、みたいなこと言ってたわね……」
「まぁちょっと小細工を、ね?……ともあれ、こうして善神として崇められるに足るお方となったわけですから、私達としては次の場所へ向かおうと思うのですが……?」
「うむ。汝の信仰は心地よい。他のモノにも分け与えられるのであれば、存分に励むとよい」
「……普通に送り出すのね」
信仰を得られる相手を手放すとかおかしくない、ってことかな姫様の疑問は。
まぁ前のままの──荒神としての神様ならそりゃそういう方向に思考が向いてもおかしくはないだろう。
というかそっちに考えが及ぶ方が普通であるというか?
とはいえそれもあくまで前のままだったらの話。
今のこの神様は身に余るほどの信仰によって我欲が洗い流され、本来持っていた神性を取り戻した状態。
そりゃまぁ、こっちを引き留めるなんて無様なことはしないだろう。
それは今の己を否定することに繋がるわけだし。
……え?その否定が重なった結果がさっきの姿だろうって?い、一度の失敗でその存在の価値は決まらないし……(震え声)
ともかく。
飢餓に苦しんでいた神様は新鮮な信仰をその身に受けることでまさに新生し、こうして土地を任せるに足る氏神となった。
これには天照もにっこり、わざわざ私の提案を聞いた甲斐があったというものである。
「……まさかとは思うけど、この結果まで含めて主神を口説き落としたってこと?」
「そりゃ幾らそっちに悪評は付かないようにするって言っても、そのままだと神席が空になるようなこと認めてくれるわけないじゃん?」
いやまぁ、最終的にそれしかないってなったらその手段も辞さないタイプではあると思うけど。
……とはいえ結界内であれこれしている程度でその神の討滅を認めるか、と言われるとノーであるのも事実。
なにせ神席は埋まってない方が問題。……埋める相手が微妙であれ、それの意味を理解していることの方が重要である。
まかり間違って鬼だの悪魔だのの邪霊側の存在に居座られでもしたら大事だし、そうでなくとも野生動物がたまたまそこにいる、ってだけでも問題なのだ。
そりゃまぁ、一応は正当な権利を持ってそこに座っている相手を迂闊に排除できるかっていう。
……まぁね?奇跡が重なればそこのおサルさんみたいに、出生が違っても神と成る者もいるわけだけどさ?
基本的にはそうならず暴走──神における荒神みたいなことになるパターンの方が圧倒的に多いんだから、そりゃダメだよって話にしかならないというか。
「……そのおサル荒神じゃなかった?」
「そうだね、折角神様になったのにそのあと堕落してたね」
「ギャー!スンマセンッシター!!」
……え?このおサル出会った時荒神だったって?
まぁ神様に成れるのとそこからちゃんと正しくいられるか、ってのは別の話なので……。
一応、今現在はマシな形に落ち着いてるみたいだけどさ?
「もし仮にまた暴れだすようなら、さっきの神様みたいな対処もありっちゃありかな?討滅されるよりかはマシだと思うけど」
「ドッチモカンベンッスヨ!アッシハモウココロヲイレカエタンデカンベンシテクダサイ!」
「そう?綺麗なおサルさん見てみたかったけど」
「ミテミタカッタデヒトノソンゲンフミニジロウトシナイデクダセェー!!」
んもう、わがままな。
……まぁともかくである。
こちらに小さく手を振る神様を背に、次なる結界に足を向ける私達。
とはいってもそっちは結界としてはほぼ機能してない、惰性で続いているようなものなのでさっきと同じ手段は通用しないんだけど。
「ん?どういうこと?」
「さっきから何度か触れてるでしょ?神席には別に神だけが座れるわけじゃない。けどその機能を十全に活かすには神でなければならない」
「あー」
座るだけなら何にでもできるけど、その機能をちゃんと使おうとすると資格が必要になる、みたいな?
まぁ、機能を自分から使えないだけであって、その前から機能していたものは基本そのまま継続するんだけど。
……そう、なんらかの理由でそれまでそこにいたはずの神が離れたとしても、その時に至るまで機能していた結界などはそのまま残るのである。
地脈に繋がっている以上はエネルギーは供給され続けるので、神にそのエネルギーがいかない分自然と結界の維持に回されるわけだ。
「まぁ、流石に結界の維持程度だと余裕で余るくらいのエネルギーではあるから、その状態になっちゃうと色々問題みたいだけど」
「それが神以外の存在が神席に座るってこと?」
「そういうこと」
結界の維持に使う分のエネルギーを超過したものは、結界内に充満することになる。
最初の内はそれほどの量でもないが、そもそも結界内は外の世界と時の流れが違う。
……結果、超過分のエネルギーはこちらが思うよりも早く結界内を満たすことになる。
神席に神が座っている分には超過はしないというか寧ろ目減りするんだけど、一番エネルギーを消費する相手がいないからこの場合はエネルギーだけが置き去りになるわけだ。
「で、そうして結界内から漏れてきたエネルギーっていうのは、野生動物からすると不思議と目を惹かれるものなのよ。で、本来なら入らないし入れないはずの結界内に迷い込んで」
「最終的には神席に座っちゃう、と?」
「そういうことー」
そういう意味では彼らも被害者であるということか。
……まぁ、被害者だからといって容赦されるかといえばそうでもないんだけど。
最初はそうだったとしても、そうして神席に座ったあと好き勝手してるのは彼らだし?
「そういうわけだから、次はおまちかねの本格戦闘だヨ!」
「ノリがかるーい」
重苦しくしても意味ないしね!
……ってなわけで、戦闘準備をしながら次の結界を目指す私達なのでしたとさ。