なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「思わずノリで驚いちゃったけど、え~、ホントにござるかぁ~?」
「どこの門番だ、どこの。……それに関しちゃ桃香の方が詳しいんで、話は頼んだ」
「頼まれました。ではジェレミアさん、お願いしたものを」
「はい、こちらに」
語られた結論……なりきり郷存亡の危機、という現実味無さすぎる話に、最初は驚いたが徐々に疑念の方が大きくなった私が、本当にそんなことが起きるのか?というところを聞いたところ。
返ってきたのは銀ちゃんのぞんざいな反応と、
まぁ未来の話なので、そもそもに千里眼持ちの桃香さんの方が言い出したことなのだろう、というのは予測が付くわけだけれども。……それにしたって、見事なまでのぶん投げっぷりである。
思わずこちらの視線も冷たくなるが、当の銀ちゃんは素知らぬ顔。……うーん、このダメな大人ムーブ。
しかしながら、銀ちゃんが普段はいい加減ー、というのは既に周知の事実。こっちからツッコミを入れたところで「いいんだよ。いざというときはキラめくから」*1とか言われるだけなのである。……仮にそう返されたら
銀ちゃんに関しては、ほどほどに。
話の主体が桃香さんに移ったので、皆の視線が彼女に移る中。……いつの間にかジェレミアさんに頼み事をしていたらしく、部屋の奥からカラカラと押されてきたホワイトボードには、既に要点とおぼしき物が幾つか書き記されていた。
……なんか、お昼とか夕方のニュース番組みたいに、重要らしき部分をマスクするテープやらが貼られているんだけども。……いや、いつの間にそんなもの用意したので?
というこちらの疑問に気付いたのか、視線を向けた先のジェレミアさんは、口元に人差し指をあてて「
ともあれ、ジェレミアさんが瀟洒に仕事をこなすのはいつものこと、いちいち驚いていたら話が先に進まないので、ツッコミを入れたい心をどうにか押し留め、どこからか取り出した伸縮性の指し棒でホワイトボードを示し始めた桃香さんに意識を向け直す。……やっぱりこれお昼のニュース番組なのでは?
「はい、ではまずこちらから。『そもそもしっと団ってなに?』ということを解説して……」
(やっぱり昼の情報番組だこれー!!?)
ボードをマスクしていたシールを剥がせば、下から出てきたのは題字とトピック一覧。……構成が完全に情報番組なんよ。
まぁ、発表会にはこの形式がよく効く、というのは確かなので、特になにか含みがあるとかではないのだろうけども。……なんというかこう、服装そのものは普通の恋姫劉備なので違和感か……ってあれ?!いつの間にか白衣と眼鏡装備になっとる!?何故に!?
「銀さんからのリクエストです♪」
「銀ちゃん、アンタ……」
「いや違うからね?授業形式にすんのならこうだろ、って銀八先生セットを貸し出しただけだからね?人聞きの悪いこと言うのやめて貰えますぅー?」
「銀ちゃん、アンタ……」
「あれおかしいな?なんで反応変わんねーの?あれ?これ銀さんなにかしら選択ミスった?一つ前の選択肢辺りから、ロードし直しとかできない感じ?」
「銀ちゃん、現実はゲームとちゃうねんで……?」
「おおよそ現実感とは程遠い人物からの現実的な台詞ッ!?」
などと困惑していたら、当の桃香さんから服装は銀ちゃんからのリクエスト……もとい服装の貸し出し、という申告が。
……どうせ銀ちゃんのことなので、新しく下ろし立てのモノを用意したとかではなく、自分が使っていたモノを洗って貸し出したとか、そういう感じだろう。デリカシーの欠片もねぇな!!
どうせ相手から文句とか出なかったからちょっと安心したー、とかそんなやつなんだろうけども!
例え洗濯されていようとも、自分が着ていたモノを貸すとかちょっと信じられねー!同性ならまだしも!
……は!?銀子さんフラグ……?!
「やめろや!人のバベルを神のような気楽さで倒壊させようとすんなや!」*4
「私魔王ですしおすしー。神より理不尽なこともお茶の子さいさい……あいやごめん嘘付いた、神様って時々悪魔より無慈悲だもんね、神より凄いはだいぶフカシを言ったわ」*5
「おいィィィィッ!!?なんでこんな場末で、唐突に某宗教に喧嘩売るようなこと言っちゃってんのォォォォッ!!?」
「おお、これが銀さんのツッコミ。勉強になりますね」
「いや桃香も、こんなん真似しようとしなくていいからッ!!お前さんは綺麗なままで居て!!」
「お?それは私が汚れてると?お?そう言いたいのかな銀時さん?んんん?」
「うぜェェェェッ!!!隙見せたのはこっちかもしんねーけどうぜェェェェッ!!!」
おおっと収拾が付かねぇなこれ?
すっかりギャグ回のテンションに染まってしまった銀ちゃんと、あらあらうふふ、みたいな微笑みで彼を見詰める桃香さん。
……よろず屋的にも変な展開になってるなー、と思いつつ、彼を弄る言葉選びを止めない私なのであった。……いや、面白くてつい。
「……俺一応ボケ側の人間のはずなんだけど。こっち来てから大体ツッコミ役やらされてる気がすんだけど。なんで俺、こんなに酷使されてるんだ?」
「お疲れかい銀ちゃん?大丈夫?おっぱい揉む?」*6
「なんでそっちからデストラップ仕掛けてくんのっ!?」
チッ、乗らなんだか。
乗ってきたら死ぬまで弄り倒そうと思っていたのに、中々残念である。……仮に桃香さんが同じ事を言ってても、彼は断れるのだろうか?
なんてシモい話を交えつつ、なんやかんやと話を進めた私達。……単調な会議にはならなかったので良かったのか、はたまた脱線しまくったので悪かったのか。
そのあたりは大いなる蟹の味噌汁……違った大いなる神のみぞ知る、というやつだろう。*7
ともあれ、長めの解説となった今回、何故桃香さんが銀ちゃんに真名を預けているのか、みたいなところもなんとなくわかったのは良かったと思う。
「ふーむ、嫉妬心の暴走による凶行……というのはまぁ、最初の予想通りだけども。まさかそれが季節性の【継ぎ接ぎ】だったとはねぇ」
「季節性の【継ぎ接ぎ】とかいう、パワーワード以外の何物でもない言葉」
「で、でも実際そうとしか呼べないモノのようですし、ある意味ではエリザベートさんという前例もありますし……」
さっきの解説内で飛び出した胡乱なワードに、ゆかりんが眉を寄せてむむむと唸っている。
……結構色んな行事やらトラブルやらと関わってきた気がする私だけれども、それでもなおチェイピ城みたいな意☆味☆不☆明な単語が飛び出してくるのには、未だに慣れないというか、慣れちゃいけないというか。
でもマシュの言う通り、意味不明さではエリちゃん関連の話にも引けを取らなさそうなのはどうかと思う。
季節性の【継ぎ接ぎ】というのは、大雑把に言ってしまえば冬に流行するインフルエンザ、みたいなものである。
……それだけだとなんで病気と同列扱いされているのか、みたいな疑問が更に加算されるので、詳しく説明すると。
要するに、原理的にはエリちゃんに対するハロウィンと同じ。
その季節ならではの出来事
例であるハロウィンとエリちゃんで説明するなら、『ハロウィン』が開催されると、自然とエリちゃんに『
……要するに、何かしらのイベント事に対して、それに付随するイメージが周囲に認知されていれば認知されているほど、そのイメージが強固に補強されていく……というものである。
春ならば『卒業の季節である』というイメージから、なんとなく何かしらを『卒業しよう』みたいな、謎の飛躍願望を発生させる……というような。
夏なら『水着イベントがあるはず』というイメージから、周囲の人に『水着を着るべきである』という意識誘導を通り越して、『そもそも水着じゃない方がおかしい』と感じさせる……というような。
そんな感じに、自身の裡から溢れでる欲求ではなく、外部から誘導される展開として発生するもの──それが、季節性の【継ぎ接ぎ】、の正体……で、いいのか?ホントに?
……まぁ、場の空気的なもの、という風に読み解くのが正解だと思う、多分。
そして、今回のしっと団。
これは元々カップルがイチャイチャしていることを羨み・妬んだ者達が、殊更にカップル達がイチャイチャするクリスマスやバレンタインを中心に、それらの浮わついたカップル達を撲滅するために結成されたもの……で、いいのか?
まぁ難しいことを省けば、単なるモテない奴らの怨嗟の叫び、というところでしかないのだが。
これがいわゆる『リア充爆発しろ』──即ち『幸せなモノへの憎しみ』と混ざりあった結果、本来ならばカップルだけ対象だったものが、幸せな全てのモノへの復讐心へとランクアップしてしまった、ということらしい。……【継ぎ接ぎ】が
というか、下手すると『生きとし生けるモノへの恨み』などと解釈されかねない『
「結果としてなりきり郷は
「……いや、なにその意味不明な状況は?」
「今のままだとほぼ百パーセントやってくる未来ですよ?」
流石に『白面の者』を維持できるほどの強度が足りていないため、器となったモノは爆発し、中に納められていた『
……恨み辛みは身を滅ぼす、みたいな話があるが、よもや周囲を巻き込んでの自爆テロと化すとは、最早乾いた笑みしか浮かんでこないというか。
なにがあれって、このまま放置すると実現する可能性が非常に高い、避けようのない未来だってのが一番あれって言うね?
……なんも笑えねーっ!!