なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
結局、対策的なものは
とりあえずは一番大変なタイミング……正に決戦の日となるであろうクリスマス当日までは、各々警戒しつつ過ごしましょう……みたいな、場当たりどころか対処療法にも達しているか、ほとほと微妙な方針を守っていたわけなのだけれど。
「……なーんで、いつの間にやら仲良くなってるんですかね?この人達」
「どうされましたかキーアさん?暗い顔をしていらっしゃいますが」
「……なんでもない」
近くのハンバーガーショップ(何故か某道化師みたいなのと某髭のお祖父様が一緒にいるという謎仕様)*1で買ってきたチーズバーガーをもむもむと口に運び、たまにシェイクに手を伸ばしたりしつつ。
これまたいつの間にやら出来上がっていた、スケートリンクの上で思い思いに滑っているお子様達を眺め、小さくため息を吐く。
……なぁんで私は、小さな子供達の引率ー、みたいなことをしとるんでしょうね?
っていうかはるかさんよ、アンタ大人側でしょうが。呑気に一緒になって遊んでるんじゃないわよ。
そんなこちら側の抗議も彼女は素知らぬ顔で、カメラをココアちゃんに向けて構えながら、リンクの外周をゆったりと滑っている。……あの人、ホントに妹絡みだと
そんな感想を口の中の最後の一欠片と一緒に飲み込んで、食べ終えたあとの包み紙をくしゃくしゃに丸め、飲み終わったシェイクの入れ物に詰めて、そのままくずかごにシュート。
綺麗な放物線を描いて飛んでいった紙コップは、
「……ていっ」
「いや、そこで能力を使ってまで横着する君には、そういうことを言う権利は無いんじゃないかい?」
「ゴミを散らすよりはマシでしょ」
「やれやれ……」
まさかのくずかごの縁に当たって、そのまま外に落ちそうになったのだった。……仕方ないのでちょちょいっと
なにはともあれ、うーむノーコンすぎる。
空間認識力もっと鍛えてホラホラ。そんなんじゃキラさんに「やめてよね、僕が本気を出したら、キーアが敵うわけないだろ」とか言われちゃうぞ?*5
……こんなこと言ってるけど、SEEDで一番好きなキャラはキラ君です(小声)
あとライネス、能力の使い方には貴賤とかないから。使いたいように使えばいいんだよこんなもの。
まぁ、それで世を乱すのであれば、周囲からタコ殴りにあっても文句は言えないと思うので、使っていい範囲とかはあるだろうけども。
そんな話はおいといて、今日はラットハウスの面々と遊びに出ているわけなのです。
でーすーがー。……一人で家に放置するわけにもいかないアルトリアはまだ分かるけど、なーんで呼んでない桃香さんまで、一行の中に自然と混ざってるんですかねこれ?
……え?一番の異物は(ラットハウス所属でもない)私だろうって?ははは、そいつを言っちゃあおしめえよ。
「じゃあ行くよー♪必殺、三回転半捻り~!」
「!?そ、それはこんな普通のスケートリンクで見せるものでは、ないのではないでしょうか!?」
「えへへ~♪実はこっそり練習してたんだ~」
「練習してできるものなのか?」
「何事も気合、ということですね!……ところでオグリ、何故貴方はリンクの外にいるのですか?」
「いや、なんだかよくわからないが、スケートはやるべきじゃない……という声がどこからともなく……」*6
「はぁ?」
「虫の知らせ、というやつですね。まぁ、害意が無いものであれば従ってみるのも一興、ではないかと」
「そういうものなのか?……まぁ、走ると言うよりは滑る感じだから、私自身もあまり好きとは言えないが」
「おや、いいのかい?競技によるとはいえ、スケートと言えば馬よりも早い、時速九十キロ代の速度が出せるスポーツだと聞くけど?」*7
「なん……だと……!?」
「止めてくださいライネス、オグリを惑わせるのは。……第一、それは本当に一部の競技・一部の選手の話でしょう?」
「ははは、すまない。いや、一人だけ寂しくリンクの外……というのも可哀想かと思ってだね?」
そうしてテーブルに頬杖をついて眺める先では、今回同行した面々が、思い思いに遊んでいる姿が一面に展開されている。
客足が疎らでほとんど貸切状態に近いからこそ、ここまで騒いでいてもなにも言われないけど。
……うん。女三人寄れば姦しい*8、などと言うけれども。姦しいってか喧しいのレベルなのではこれ?
という感想が出るくらい、各々楽しげに遊んでいるわけでして。
……というか時にココアちゃんよ、君そこまで運動ハイスペックキャラだったっけ?私、君がバレーの練習で
そんな彼女の見事な滑りに反応するのは、こっちはデミサヴァスペックで大体なんでもこなすマシュと、私以外では唯一リンクの外にいる、相変わらずエグい量の食べ物を口にしているオグリの二人。
特にオグリの方は、大量のハンバーガーをもりもり食べているせいで気付き辛いが、どことなく寂しげな顔をしていた。……その理由が「スケート ダメ、ゼッタイ」*9だと言うのは、はたして笑っていいものなのやら。
そんな彼女のほんの僅かな落ち込みに、目敏く気付いたのはアルトリア。
……友の身を案じた言葉は、しかし彼女からのよくわからない理由の説明によって、首を捻るという結果に結び付いてしまう。……いやまぁ、そりゃそうでしょ。聞けてよかった、となるかはまた別だろうけど。*10
小さくフリーズしてしまったアルトリアに近付くのは、これまた彼女といつの間にか仲良くなっていた桃香さん。……元々マーリンが見付けてきたとか言ってたし、仲良くなったのには打算とかも無くはないのかもしれないが。
……哀しいかな、この場においては実は一番感性が普通な人物なので、その内振り回されることがほぼ確定している。
それを彼女が知っているのか知らないのか、神ならぬこの身には知る術の無い話ではあるが。まぁ、精々今の内に、頼れるお姉さん面をしていればいいさ……と私が思ってしまうのは。
恐らく、ニヤニヤ笑みで三人に近付いて行ったライネスのせいだと思われる。……責任転嫁すんな?なんのことやら。
ともあれ、そんな感じでわいわい言ってるのと、私とはるかさんを加えたのが、今回遊びに出てきたメンバー……っとごめんごめん。足元のピカチュウから抗議の静電気を受けながら、『それとピカチュウ』と心の中で付け加えておく。
クリスマスまでは、あと一週間ほど。
街の中も、一際飾りつけが輝き始める頃のことなのであった。
「おー、やってんねぇ」
「ん、銀ちゃんどしたの?恋人の様子を確認しに来たとか?」
「……いや、勘違いさせる必要とかもうないんで、そーいうこと言うの止めて貰えます?」
そのまま、なにをするでもなくぼけーっとみんなが滑っているのを眺めていたのだが、背後からふと影が差したので首だけ振り返ってみると。
柵の向こうからちょっとだけ身を乗り出して、滑っているみんなをいつもの眠そうな目で眺める銀ちゃんと、その後ろに「なにやってんだこいつ……」とばかりにジト目を向けるハセヲ君、それからブルーノちゃんとキリトちゃんが、更にその奥に居るのが見えたのだった。
男子会……と言い張るには、なんというか
「人聞きの悪いことを言うのは止めてくれ。……女の姿にはなったけど、心は男のままなんだから」
「確保ーっ!!」
「なんでっ!!?」
「はやくしろっ!!間にあわなくなってもしらんぞーーーーっ!!!」*12
「だから、なんでだよっ!!?」
「……いや、これに関しちゃキーアの方が正解だと俺は思う」
「はぁ?!」
(天然のサークルクラッシャー*13ですね、わかります)
「こいつ直接脳内に……っ!!?」
……という私の言葉は、キリトちゃんの『心は男』発言によって、半ば肯定されてしまうのであった。
……世のTS好きな奴の何人かはなぁ、心は男なのに同性を好きになってしまって、そこから生まれる葛藤とか苦しみとか、そういうものから摂れる栄養分でしか生きられない奴が居るんだよぉっ!!*14
お前さんそのままほっといたらそういう人の餌食になるわ!!
ブルーノちゃんからの念話も納得だわ!保護が必要なのだわっ!!
丁寧丁寧に育てて、そういう栄養素が出なくなるまで絞り尽くしましょうねぇ?……え?いきなりマッドになった?違いますよナナチ、これは愛なのです。*15
彼がTSの醍醐味の一つに目覚めるまで、私には彼を大切に育てる使命があるのですよ。
「目を覚ませ」
「あいたぁっ!!?銀ちゃんが殴ったぁっ!!」
「やかましい、お前さんが言うことは冗談なのか本気なのか、判別つかねーんだよ」
「失礼な!私はいつでもいつも本気でやってるよ!」*16
「余計質が悪いわっ!!この仮面は没収!」
「あー!!やめてー!それ高かったのー!!『
「なんだそのおぞましすぎる物体っ!!?没収ってか処分だこんなんっ!!ほれ、ブルーノ」
「はーい。必殺!
「あー!!?たまにグラサンキャラがやらされる目からビーム!!?なにそれブルーノちゃんいつの間にそんなものを!?」
「HAHAHA☆アンチノミーモードでのみ使える必殺技だ!」
「すごーいっ!!でもどっちかと言うとキャプテンコレダーだよねこれ!」*19
「おっと、そいつは言わない約束だ!」
「「HAHAHA☆」」
「……あれ?なんか別な方向に収拾がつかなくなってないかこれ?」
「諦めろ、アイツに関わった時点で、遅かれ早かれこうなる」
「実感こもってんねぇ。……ところで、なんか向こうの姫さんがお前さんに手を振ってるけど?」
「アルトリアが?……あ」
「なんだよ、ハセヲも隅に置けないな」
「ちげーっての。……なんつーかこう、あの声には逆らい辛いっつーか……」*20
「ああ、原作の。……なんつーか、こういう時難儀だねぇ、俺ら」
「……そういうアンタも、なんつーかよろず屋ってより、
「おっとそいつはいけね……」
「どうした?いきなり固まって」
「……いや。そういや俺ら、外部出演である意味共演してたなー、と」*22
「は?……あ」
「世の中は狭い、って奴だな」
──なお、ご覧の通り人が集まり過ぎたためにぐだぐだした。是非もないね!