なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……えーっと、毛利さん、こんにちわ」
「わぁっ!!?……って、なんだキーアさんでしたか。ご無沙汰してます」
「はい、こちらこそ。……今日はデートですか?」
「デートだなんて、そんな。……見えます?恋人に」
「お二人の内情を知ってれば、まぁ……」
気になることが出来てしまったので、遠くから見守るのをやめて声を掛けたところ、目に見えて慌て出す蘭さん。
隣のコナン君もどことなく恥ずかしそうな辺り、なんというかこの二人は
……いや、幸せそうな他人とか、酒の肴にしたい感すごいよねーというか。
ともあれ、今はさっきの疑問──この二人の再会タイミングについて問い掛ける方が先だろう。
場合によっては、色々と謎が解けるかもしれないのだし。……みたいな思いを込めながら、改めて聞いてみたところ。
「蘭といつ再会したか?そうだな……今年の春頃、ってことになるのか?」
「私は八雲さんに雇って貰えるまでは、郷の中で色々とお手伝いとかしてましたけど……それでも、コナン君よりは早い時期にここに居ましたね」
「ふーむ……。ゆかりーん」
『はいはーい。お呼びかしらー?』
……おおっと。
コナン君がこっちに来たのは、彼の言葉からすると私達よりもちょっと早いくらい、ということになるらしい。
毛利さんがどれくらい古株なのかはわからないけれど、二人の再会タイミングとしては春より後になる、ということは間違いなさそうだ。
つまり、この二人は
……え、夏?ありゃあ郷の外に出てたから除外。
ともあれ、気になることに関してはまだ途中。
こういう時は上の人に聞いてみよう、みたいなノリでコールを掛けると、中空に映像が投影された。……『滞空回線』云々よりインスピレーションを受けて開発された、一部の人間だけが使えるホットラインである。*1
和風感強めのゆかりんとかが使ってると違和感の強い、SFチックな通信機能だけれど、便利は便利なのでその内一般にも普及するとかしないとか。……どこに向かってるんだろうね、この場所。
まぁ、懐古主義っぽい感傷は後回し。
映像の向こうのゆかりんは突然の呼び出しに少し驚いた顔をした後、呼び出したのが私であることに気付いて相好を崩した*2。
「いや、ちょっと確認。郷の中のカップルの総数とかって分かる?」
『……はい?』
『それでしたらこちらに』
『
「……いや瀟洒ぁ……」
ええ……?どうなってんのこの従者。
こっちが欲しい情報を的確に提示してくるんだけど……?実はどこかの瀟洒なメイドさんみたく、時間とか止めてたりしません?……え?出来るのはギアスの無効化くらい*3?それここだとほぼ無用な技能ですよね?
ま、まぁ、欲しい情報が素早く手に入るというのは、決して悪いことではない。
資料を流し読みしているゆかりんに、こちらが最低限聞きたいことを一つ問い掛ける。私の予想が正しければ、恐らく……。
『……そうね、そこの二人がカップルとしては百例目。原作とは無関係な組み合わせも含めてだから、実際の……純粋なカップルの総数としては──うーん、もしかしたら一例目、かも?』
「あー、やっぱり?」
「え、もしかして私達、なにか悪いことしちゃいましたか……?」
「ああいえいえ。そんなことは全然。存分に乳繰りあって頂ければ」*4
「乳繰り……っ!?」
「わぁっ!?江戸川さんが鼻血を吹いてお倒れにっ?!」
「きゃあっ!?しっかりしてコナン君っ!!?」
「……キーアって、時々想像以上に古い言葉遣いするよな」
「ホントに中身大学生なのか、コイツ」
「そこぉっ!聞こえてるわよぉっ!!」
「「げぇっ、地獄耳っ!!」」*5
予想は大当たり……というか予想以上。
百例目にして一例目。区切りがいい数字だろうとは思っていたけれど、まさか原作通りの組み合わせとしては一例目、だったとは。……思わずちょっと眉が寄ってしまったのはご愛敬。
まぁ、それによって毛利さんが意気消沈したしまったのは、こちらとしてもちょっと想定外だったのだけれども。
なので、安心させるような言葉を選んで返した……はずが、結果はご覧の通り、なんというかいつも通りの流れになってしまったので、ちょっと反省することになってしまったのだった。
……なお、余計なことを言った二人には、きつーい灸を据えておきました。*6
「それで、先程の確認は一体なんのためのモノだったのですか?」
場所を周囲の邪魔にならない場所──再びのファミレスに移した私達。
……なんで一時間もしないうちに戻ってきてるんだこの客、みたいな表情を向けてくる
そうして座った直後に飛んできたのは、今回の一連の事件?について、一番気にしているとおぼしい桃香さんからの質問であった。……まぁ、最初に声を上げたのが彼女であって、似たような疑問は皆が抱いていたようだけれども。
座っている皆から突き刺さるように向けられる視線に、ちょっとだけ気後れしつつ。
さっきのあれこれで、なんとなく思い付いたことを口に出す私。
「まず始めにだけど。……『しっと団』そのものは、正確な発生時期はわかんないけど、去年よりも前から既に居た、ってのは確かなわけだよね」
「そう……ですね。被害も規模も大きくなかったので、対処を後回しにしていたというようなことを、八雲さんも仰っていましたし」
始めに確認するのは、『しっと団』の活動開始時期について。
彼等はカップルが活発に活動する時期を、その行動期間に定めている。
理由としては彼等の存在意義が『カップルの邪魔をするため』だからなわけだが、それにしたって対処は後回しにされるほど、大した被害ではなかった、らしい。
……原作の彼等は一般人が相手できるような戦力規模ではなかった……という話なので、その時点で大分差異があるというのはわかるわけだが。
それが今年になって、いきなりこの場所を崩壊させうる戦力に成長する、というのが今一納得できなかったのだ。
「それで、なにか切っ掛けでもあったんじゃないかな、と思ったってわけ」
「それが、そこの二人だって?」
次いで放たれた銀ちゃんの言葉に、皆の視線が自然と件の二人──毛利さんとコナン君に集中する。見詰められた二人は、居心地が悪そうに居住まいを正していた。
「確証はないんだけどね。……ただまぁ『百万匹の猿が地に満ちた時』*7みたいに、特定のなにかが水準を満たした時に起動する……という話は、わりとよくある設定の一つだからさ」
とはいえ、それでも疑問は残る。
──なんで今年なのか。確かに区切りはいいのかもしれない、記念?すべき百例目のカップル。
彼等の逢瀬を邪魔するというのは、『しっと』を行動理念とする彼等にとって、記念碑のようなモノになりうるのかもしれない。
……けれど、それを『白面の者』に変化するほどに練り上げる理屈がわからない。
というか、そんなヤバげなモノに変化する余地があるのなら、もっと前から察知できてもおかしくはないのである。
なんというかこう、
……そういうものをここに来てから少なからず感じてきたこちらとしては、どうにも警戒せざるを得ないというか。
「考えすぎじゃねーの?なんでもかんでもお前さんを中心に回ってるわけじゃないんだし、とりあえずは目の前のことに対処するってんでいーんじゃねーの?」
「わあ楽観的ー。……まぁ、思い過ごしの可能性は無くはないわけだし、私としても気のせいの方が嬉しいんだけどさ」
いつの間にか頼んでいたパフェをスプーンで掬いながら、銀ちゃんが軽い調子で声を上げる。
……なんというか、こっちに来てこの方、巻き込まれ体質を開花させた風のある私としては、微妙に笑い飛ばせない感じなので、ケセラセラ*8な感じの銀ちゃんのあり方は、ちょっと羨ましいというか。
まぁ、巻き込まれつつもなんとかしてきたのも事実。
今回もどうにかなる……なんて楽観はできないけれど、肩の力を抜くくらいはした方がいいのかもしれない。
「……はぁ。まぁ、とりあえず今は甘いものでも食べて、ちょっと休憩しましょうか」
「さんせーい!いつもより頭を使って、私へとへとだよ~」
「おや、ココアも時には真面目になるんだね?」
「わ、ライネスちゃん酷いっ!!私だって頑張らなきゃいけない時には頑張るんだよ!!」
話の終わりを告げるように、私が手を叩けば。
皆が姿勢を崩し、気が抜けたように机にへたり込むココアちゃんの姿が見えた。
……まぁ、この中では一番荒事と無関係なのが彼女なので、こういう物騒さの見え隠れする話には、疲れを感じる割合の方が強いのかもしれない。
そうして机に突っ伏した彼女の頭を、はるかさんが撫でてあげているが……あ、ちょっと気持ち良さそうだったけど、恥ずかしさが勝ったのかすぐに飛び起きてしまった。
猫扱いしないでー!……みたいなことを述べるココアちゃんに、皆が微笑みを浮かべる。
……こういう平和な一日が崩れないように、クリスマス当日は頑張らなくては。
なーんて、柄にもなくちょっと張り切ってしまう私なのであった。
なーんて感じに言っていたのですが。
……いやはや、これは予想外の展開、と申しますか。
「そんな……どうして、せんぱい!!」
「どうして、か。……なーんでなんだろうねぇ?」
マシュからの叱責に、小さく首を捻りながら言葉を返す。
──辺りは炎に包まれ、人々の悲鳴や嘆き、怒りの声が木霊し。
巨大な獣達が、世界を蹂躙しようと飛び交っている。
それらを背後に、目の前に立ち塞がる者達と相対し。
私はただ、ニヤリと笑ってこう返すのだった。
「
──クリスマス、当日。