なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「にしても……サンタ、サンタねぇ」
「……文句はスキマ屋に言ってくれ、俺としては不満も大きいんだ」
合流を果たした私達は、親睦を深めるため朝食を共にしたりしたわけなのだが。
……なんというか、私がちっちゃいからなのか、隣に居ると彼のノリがマハラギ*1さんに近くなるらしく、どうにも居辛そうにしているロー君である。
ネタ会話の応酬とか楽しいし、こっちとしては幾らでもやってくれてオッケーなんだけどね。……みたいな台詞は、
「アイツに寄りすぎると、平気でセクハラし始めるからダメだ。*2……あと、そんな女神転生で出てきそうな名前じゃあない」
……みたいな感じに返されてしまった。
言葉の節々に
影も形もない上に、かすってるかどうかも微妙っ!!……みたいな彼のツッコミを聞き流しつつ、朝食のベーコンエッグを食べ終えた私。
改めて、今日の予定を口に出して確認していく。
「えっと、プレゼント集積場に集まるのが、深夜の十一時。そっからは、ずーっと行って帰っての繰り返し……ってことでいいんだよね?」
「……ああ、そうなる。恐らく妨害も出るだろうが、それはまぁ出た時に対処していけばいい。……風の噂に聞いたが、
「
「……いや、そこで首を捻られても困るんだが?」
活動開始は、子供達が寝静まった頃。
煙突なんてこ
ただまぁ、ある種乱暴にも見えるこのやり方は、最近になって考案・実用化されたものなのだとか。煙突の無い家には、素直に玄関からお邪魔するのが普通、だったらしい。
じゃあなんで現在、そんな押し掛け強盗ならぬ、押し掛けサンタのような真似をしなくてはいけなくなったのか。
そこにもまた、サンタの妨害者達の影がある。
要するに、地面に降りている時間が長いほど、彼等の妨害工作を被りやすくなっていったから……というのが答えなわけだ。
先の玄関から云々も、中に妨害者が居て飛び出してくるとか、こっちのソリを奪おうとするとか、直接的にプレゼントを駄目にしようとするとか……まぁ、次第にエスカレートしていったようで。
それに合わせて、郷の内部が広くなって行ったのも、原因の一つに数えられるみたい。
一つの場所に対して、空から降りる・中の子供に気付かれないようにプレゼントをどうにかして置く・空に戻る……という行程が必要になるわけだけど、降りると戻るのに結構時間を食うし、子供部屋の位置によっては、バカ正直に建物内を通っていると酷い目に合う*5……みたいなことも多かったらしい。
更に、プレゼントを配る相手が増えた、というのも大きい理由だろう。
前までは少年期の子供達が対象だったのが、青年期も含むようになり、中の人が若年層である者も加算され、更に見た目が子供なだけの人も対象に含むようになり──。
最終的にその判別をする方が時間が掛かる、ということで『もうなりきり郷の居住者全員対象にした方がいいんじゃね?』みたいな感じになったのだそうな。
……結果。
半日にも満たない短い期間の中で、広大ななりきり郷の全域を回る必要が出てしまった、と。
……正直に言おう。バカなんじゃないの?
なお、サンタパワーの仕様上、人数の大量動員は許されるけど、プレゼントの渡し方が杜撰だと、サンタとして活動できなくなるというペナルティ的なモノがあることも、合わせて記しておく。
……煙突から投入は、サンタ的にギリギリ許されるもののようで、これ以外の──例えばテレポートとかアポートとかで、直接枕元にプレゼントを投入するというのは、即座にサンタパワーが消失したため、今では禁止されていたりする。
……サンタパワー、融通利かなすぎでは?
まぁ、代わりに空を高速で飛ぶソリとか、相手に見合ったプレゼントを勝手に生成してくれる袋とか、そういった装備面ではかなり有用な面を見せているわけなので、プラマイゼロ……みたいなものなのかもしれないけれど。
なお、そんな感じだからなのか、フロアにつき一人しか居ない龍種の皆様は、クリスマスに限っては感謝される相手だったりする(フロア一つスキップできるようなものなので)。
そういう、わりと重労働なサンタ道。
そこで思い付くのは『
これに関しては、サンタ業を終えるとサンタパワーが結実し、サンタ役の人物が望むものに変わるのだそうだ。
……そこまでアフターケアがばっちりなのに、なんで肝心の業務内容には融通が利かないのだろうか、このパワー。
ともあれ、そんな感じに福利厚生が意外としっかりしているサンタ業。
問題があるとすれば──やっぱり、さっきも言ったけど時間がない、ということに尽きるだろう。
考えてみて頂きたい。
一つの世界を内包するような場所は、翻って誰か一人の為の場所であることがほとんどだから、逆に楽だけれども。
……私の住んでる所のような、人が密集している場所が、この建物の中にはごまんとあるわけである。
ハードスケジュールにも程があるでしょうよ、その上で妨害まであるんだもん、そりゃ空から降りとうないわ、こんなもん。
ってな感じに話は戻りまして、以上がサンタが空から降りてこない理由、なのでしたとさ。
……まぁ、そのせいなのかなんなのか、最近の妨害者もちょくちょく飛べる奴が出てきたらしいのだけれども。
BETAかなんかかよ、とツッコミを入れた人が居たかは、定かではない。
今度こそ話を元に戻して。
私の言葉に対し、小さく首肯を返してくるロー君。
それから、彼の口から『狐』についての確認が飛んでくるのだが……狐?フォックス?
思わず首を傾げてしまったのは、別に
全体のシルエットは、確かに『九尾の狐』といった感じなのだが、彼?が狐だとは、原作では明言されていないのである。
確かに、元ネタとなったのは大妖怪の一つ『白面金毛九尾の狐』ではあるのだろう。
ただ、その顔付きはサメに近いと言われることもある程に、一般的な獣のそれとは一線を画している。
……敢えて言うのなら、
故に、狐と言ってしまうのはどうなのだろうか、と思ってしまうわけなのである。
「……いや、狐だろう、あれは」
「いやー、安易な見立ては相手の存在を確固たる者に押し上げ兼ねないし、今のところは混沌のままで居て貰いたいというか?」
「……意外とまともな理由だな」
「いや、君私のことなんだと思ってるの?私魔王ぞ?」
「
「…………」
「あ゛、いやその、……すまん」
「……いや、いいよ、うん、別にいいんだ……」
なお、そんな私達の会話は、ふっと飛び出したマラララギさん*7の失言により、強制的に中断されてしまうのだった。
「わぁ、高ーい……」
「おい、乗り出すな。危ないだろうが……俺が」
「おおっと失礼。ロー君飛行技能とかないもんね。……立体起動装置*8いる?」
「いや、【継ぎ接ぎ】でもないんだからそんなもの渡されても困……出せるのか?まさか?」
「ドラえもんと張り合える汎用性の高さが売りなのです、えっへん」
「……いや、あれと張り合えるのは、汎用性云々で片付けていい話じゃない気がするんだが……?」
時刻は更に進んで、深夜の十一時。
一度解散&一時間前くらいに再集合、という過程を経たのち、サンタ専用のソリに乗り込んだ私達は、現在上空三百メートルくらいを優雅に遊覧飛行中である。
なお、一回家に戻って聞いたところによると、マシュはアルトリアと一緒になったのだそうな。……宝具レベル上がらない同盟再結成か、胸が熱くなるな……!いやまぁ、今のゲームでの二人、一応宝具レベル一からは脱却してるんだけども。
ともあれ、情報規制だのなんだのは、あくまでも今日の朝までなので、そのまま三人で家を出て、仲良くプレゼント集積場まで歩いていったのだった。
なお、その時二人とは初対面となるロー君はというと、
「貴方が今日のせんぱいの相方になる、トラファルガー・ローさんですね。せんぱいを、どうか宜しくお願い致します」
「いやマシュー?私相方、ロー君サンタ。補助するの私の方なんだけどー?」
「……ああ、朝の内のあれこれで、無茶苦茶な奴だってのは分かってる。大船にとは言えないが、まぁ医者として、怪我のないように見張ってはおくさ」
「あれー?なんか私問題児扱いされてなーい?もしもーし?」
みたいな感じで、ちょっとマシュに
なお、アルトリアには一瞬だけ苦い顔をしたけど、そのあとは殊更意識するでもなく、普通に対応していた。
……んー?なんというか、『トラファルガー・ロー』としてはらしくないというか、なんというか。
「……キリエ屋は、見てるとどうにも羽川屋を思い出してな、ちょっと気後れするというか。……それと
「……ギガデインさんの影響濃すぎでは?」
「阿良々木だ、そんな勇者しか使えなさそうな名前じゃない*9っていうか、原型留めてなさすぎだろう。それで分かる俺もどうかとは思うが」
そんなこちらの疑問は、当のロー君本人からの説明によって氷解するのだった。
はーなるほど、羽川さんとマシュが、ねぇ?……体型と眼鏡とキャラ性?で判断した感じ?*10
んでもってアルトリアは忍ちゃんと──キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード*11さんとダブって見えた、と。……ドラキュラって言葉の語源が『
それと、やっぱりマニューバ*12さんはロー君を侵食しすぎだと思います。都度都度出てくるじゃんこの人。
……みたいなこっちの言葉は、意味を勘違いしたらしいソリが、勝手に板野サーカス*13し始めたので、放り出されたロー君を回収するのに意識を取られたため、宙に溶けて消えてしまいましたとさ。