なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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そうして彼女は虫になった

「えっとつまり?ハクちゃんが爆発することは、貴方が現れた時点で確定事項になってたってこと?」

「そういうことですね。……『しっと団』を追っていたというのも建前のようなもの。実際は状況を整えるために奔走していた、ということになります」

 

 

 数分後、漸く落ち着いたゆかりんが姿勢を正し、桃香さんに話の続きを促したわけなのですが。

 奔走していた、という彼女の言葉を聞いて、ゆかりんはまた微妙に渋い顔を見せていたのでありました。

 

 

「奔走って、一体なんのために?」

「なんだか私への信頼感とかが、底値に落ちてしまっているような気がしますけど……勿論、どうにかして被害を抑えるためのものですよ?別に期に乗じて世界を滅ぼそうとか一切してませんので、どうかご安心を」

「……なんでビースト紛いの相手と話をしている気分になってるのかしら、私」

「まぁ、ある意味今回の桃香さんって、()()()()()に近い立ち回りだったからねぇ」

「……どーいうことよ?」

 

 

 まぁ、いつまでも疑われたまま、というのもあれなので、彼女への誤解を解くためにも、横から口を挟むことにした私。

 そんな私の言葉に、更に怪訝そうな顔を見せるゆかりんだけど……。

 次に私が語った言葉に、眼の色を変えて食い付いてくるのでした。

 

 

 

 

 

 

「いやちょっと待って、整理、整理させて頂戴……」

 

 

 そんなことを額を抑えて呟きながら、ゆかりんはドリンクバーに新しい飲み物を取りに行った。

 

 相当動揺しているのか、コーヒーカップに氷を山積みにしたりしていたため、見かねたロベルタさんが(淑女の嗜みとばかりに)華麗な紅茶淹れテクニックを披露して、暖かい紅茶を手渡していたのだった。

 ……まぁ、それはそれでゆかりんの動揺を誘っていたんだけどね?

 ここにジェレミアさんが居たら、謎の紅茶淹れ対決が始まっていたかもしれない……。

 

 

「おや、間に合ったようですね。良かった良かった」

「お、噂をすれば……ジェレミアさん、お疲れ様ー。それと、あの人は連れてこれましたか?」

「はい、キーア様。そちらに関しましても、滞りなく」

 

 

 そんなことを言っていたら、話の種となっていたジェレミアさん当人が、人を連れて店の中に入ってくるのが見えた。

 なので、各々が座っている位置をずらして、彼ともう一人が入るスペースを確保。

 それと同時にゆかりんが(手渡された紅茶を複雑そうな目で見詰めながら)戻ってきたので、改めて説明を再開する。

 

 

「……わざわざ彼女まで呼んでいる、ってことは……さっきのは本当だったのね」

「その通り。題して、『いっそのこともっと継ぎ接ぎしちまえ』作戦~」

「わー」「ぱちぱちぱち~」「ぶぉぉおっ!」「ええ……」

 

 

 私の言葉に、皆が思い思いの反応を返してくる。……マシュの法螺貝が声真似なのは仕様です。*1

 

 ともあれ、今回の騒動は基本的にこの作戦を遂行するためのもの、という色が強かったので、これを理解できれば事件の全貌がわかる、ということもなるわけで。

 その第一歩としてゆかりんに言った言葉が、

 

 

奈落の虫・裏(VORTIGERN)でーす」

奈落の虫・表(OBERON)です☆」

「我は獣の厄災(BARGHEST)……もとい、陰の厄災(HAKUMEN)……いや、それだと我とは正反対か?」*2

「それで私が炎の厄災(ALBION)、もとい雷の厄災(FATALIS)っすね」

「で、あのビッグ・ビワハヤヒデが呪いの厄災(CERNUNNOS)……もとい毛の厄災(BIWAHAYAHIDE)だった、と」*3

 

 

 と、言うようなことだったわけで。

 ……そんな感じで、ジェレミアさんが連れて来たあさひさんと一緒に、和気藹々としていたのでございます。

 

 

「元を辿ると、ハセヲ君の所に片付けに行った時に喋ってた言葉。*4……あの時点でフラグが立ってたみたいでねー」

「我が言うのもなんだが、迂闊すぎるだろう貴様。後から後から丁寧にフラグを積み重ねて行きおってからに」

「ええと、フラグと言うのは……?」

 

 

 こちらに苦笑を見せるハクさんに、こちらもたははと笑みを返していると、おずおずと言った風にマシュが手を上げながら、こちらに質問を投げ掛けてくる。

 

 

「オベロンの宝具の台詞の物真似でしょ?それから自分が弱いって言う主張。第二形態の仄めかしとか……それと魔王──即ち『滅ぼす者』であるという事実。……いわゆる箇条書きマジック*5って奴で、私とオベロンって結構照応できちゃうんだよね」

「な、なるほど。……ですが、それだけで今回のような状況に繋がるのでしょうか……?」

 

 

 返すのは、私とオベロンの類似性。

 本来は小さく弱いもの、されど世界を滅ぼすもの。

 ……いやまぁ、今の私は魔王でこそあれ、あの大嘘つきのオベロンみたく世界を滅ぼそうとか、一切考えてないけども。

 属性だけ引っ張り出すと、割りと同じじゃね?

 ……と言ってしまえる、箇条書きマジックの方が問題があるというか。

 

 ただまぁ、本来ならばマシュの言う通り、それだけで私が奈落の虫のポジションに付くだなんてことは、真面目に考えて有り得ないことだったわけなのです。

 それが、こうして成立したのは……。

 

 

「寧ろ、そうなる風に誘導したから。言ってしまえば、ハクさんとビッグ・ビワハヤヒデの生誕こそ、今回のクリスマス最大の目的だったんだよ!」

「……ねぇ?なんでこの子自分から厄災爆誕させてるの?バカなの?死ぬの?」*6

「お、落ち着いて下さい八雲さん!どうどう!どうどう!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()、だったのだ。

 

 

 

 

 

 

「え、じゃああのビワハヤヒデって、元は『しっと団』なの?」

「まぁ、ハクさんを外に引っ張り出しかねないほどに、肥大した尾のなれはて……という意味では、確かに同一だって言えなくもないかなー?」

 

 

 結局のところ、今回の問題の一番の難点は、そのまま外に出ると必ず爆発するハクさんと、それを引き起こす『しっと団』をどうするのか?……ということに要約されるわけで。

 

 それを解決する為に行われたのが、『いっそのこともっと継ぎ接ぎしちまえ』(オペレーション・ラグナロク)作戦*7……即ち、彼らの顕現と無害化を同時に行う作戦。

 またの名を『なりきり郷クリスマス~四つの宝と炎の聖者~』である。

 

 ……いきなり胡乱な話になったって?

 シリアスを打ち砕くにはギャグ、ってのはお決まりのやり方でしょう?

 

 

「私がオベロンポジになったのは偶発的なもの。けれど、それによって私にもなりきり郷(ここ)に落っこちてくる負念に干渉する資格を得たとも言えるわけで。……で、そのせいで祭神(ケルヌンノス)の発生条件も満たされちゃったと」

「……え、もしかして口は災いの元?」

「それそれ。……不安を抱くと実現化する、とまで具体的なものではなかったけど、まぁそれに近い影響力が出てたのは確かみたいでねぇ……」

 

 

 元が負念であるがために、悪いことにしか働かない聖杯のような方向性だったわけだけども、そもそも私自体が魔なるもの──要するに自分の力として使えてしまうものだったために、言うほど問題にはなってなかった。

 

 が、それを警戒したのが尾の方。

 ……意思を持って反応したと言うよりは、脊髄反射的なものだったみたいだけど、自身の顕現を早めようとしたのは確かみたいで、それが伝播してノッブの発生とかが起こってた、らしい。

 らしいというのは、実際それを起こしていた場面を、誰も知らないからなのだけれども。……マーリンにでも聞けばわかるんじゃないかね?

 まぁともあれ、色々な騒動の種──スパロボで言う所の特異点的な状態*8になっていたのは、確かな話だったようだ。

 

 話を戻して、そういう『なんでも起き得る』状態になっていたため、迂闊にもケルヌンノスの発生条件を満たしてしまった私達。

 ……が、流石にあれを顕現させるのは、そう簡単に行くものでもなく。

 故にその依り代──原作で言う所のバーヴァン・シーの立場に収まったのが、『しっと団』の元となったもの──即ち、橋姫の似姿だったと言うわけである。

 

 

「……なんでまたそんなことに」

「橋姫って嫉妬心の強いモノとして扱われることが多いけど、その大本って実は、橋っていう一種の境界を護る神の一柱だったそうだから。……ケルヌンノスとは、本来守護の神であるって所で共鳴……もとい【継ぎ接ぎ】しやすかったんじゃないかね?」

「ぱ、【継ぎ接ぎ】ゥ……」

 

 

 ゆかりんが頭を抱えて突っ伏している。

 ……最近ゆかりんの胃壁が心配な私でございます。原因の一因が心配すんな?サーセンw*9

 まぁ、この【継ぎ接ぎ】に関しては、型月のケルヌンノスが穏健派だったから起きたこととも言えるので、ちょっと複雑なところはあるのだけれど。

 

 ともあれ、そんな感じで成立し掛かっていたケルヌンノスなわけだけど、ここで予想外のことが起きた。

 存在として別枠になったため、ハクさんとケルヌンノスの繋がりが、断ち切れてしまったのである。

 世を呪うものとしては、その性質が別種──羨むがゆえに呪うものと、憤るがゆえに呪うものであるがゆえに、水と油のように反発しあったんじゃないかとは、当事者ハクさんの言。

 

 そしてそれ故に、ハクさんが『白面の者』として外に引っ張り出される危険性はなくなった……ように思えたのだけれど。

 ここで桃香さんの『簡易人理定礎』が余計なことをしてくる。

 どうなるかというと、『ケルヌンノスの呪いの爆発で次元障壁が崩壊し、結果として『白面の者』が表に出て来て呪いの腕に接触。結果爆発する』。

 

 ……余計に酷くなってるじゃないかと思ったそこの君、その感覚は正しい。

 実際これを視たらしい桃香さんは、思わず泡を吹いたというのだから、その驚愕は推して知るべし、という奴だろう。

 まぁ、個人的には『迂闊にまた未来を視てんじゃねーよ』感が強かったんだけども。

 

 ……ただまぁ、『簡易人理定礎』に繋がるような未来は、半ば啓示*10に近い形で()()()()()()()のだと聞けば、彼女を責める気も失せようと言うもので。

 そもそも成立前の『簡易人理定礎』が残っている場合は、次の『簡易人理定礎』は発生しないらしいし。

 

 要するに、ケルヌンノスが発生しようがしまいが、最終的に『白面の者』を爆発させるのは必須事項。

 更に、元はその眷属に近いものだったせいで、基本的にはハクさんを護るように動くケルヌンノスが、『白面の者』への迂闊な干渉を防いでくる、というのも追加。

 

 ……ケルヌンノスになってなければ、最悪『しっと団』を壊滅させるだけで済むはずだったものが、いつの間にか難易度ナイトメア*11に変貌しようとしていたわけなのである。

 

 そんなヤバい状況、それを覆す手段と言うのが──。

 

 

「無能な指揮官ほど、味方を殺すものはない──即ち、敢えて敵側について行動をコントロールしよう、ってことだったわけよ」

「……ねぇ、私はこの子の軽率過ぎる行動を怒ればいいのよね?っていうか怒っていいわよねこれ?」

 

 

 なお、概要を聞いたゆかりんはお腹を抑えて踞ってしまったのでしたとさ。……解せぬ。

 

 

*1
最近のイベントで法螺貝を演奏できるようになっていたようだが、ここのマシュはまだ無理

*2
ここで彼女が言っているのは『ハクメン』、即ち『BLAZ BLUE』のキャラクターのこと。六英雄の一人であり、悪ではなく善の方面に寄った存在。『悪滅』なんて技も持っているので、似ても似付かない……はずだが、彼の紋章は『九尾の狐』をモチーフにしたもの。無関係とは言い切れないかもしれない

*3
『fate/grand_order』における、とあるボス達の呼び名的なもの。一応、姿繋がりのビワハヤヒデ以外も、獣系である『白面の者』、自然にて唯一炎を産む可能性のある雷を扱う『ミラルーツ』と、関連はさせてあったりする。なお、『Fatalis』はミラボレアスの海外での名前。『fate』と同じく悪い意味での『運命』を意味する言葉から来ている

*4
三章・十二話参照

*5
ネットスラングの一つ。二つの物事の共通点を抜き出し、箇条書きすることで『類似したものである』と誤認させるテクニック。獣である・肉を食べる・人と一緒に暮らすこともある……みたいな感じに、それがなんなのかを明確にする部分を意図的に省いて書くことで、違いを隠してしまうというもの。例にあげたものには猫や犬・熊などが含まれるが、それらを一緒と括るのは暴論である、と言うのはすぐわかるだろう。故に、箇条書きというものは人を騙すのに向いている、というわけなのである。……うまく扱えば便利なのだが

*6
元々はとある架空業者への電凸関連の言葉とされる。『バカなの?死ぬの?』という形で有名になったのは、恐らく『ゼロの使い魔』から。相手のバカさ加減に怒り心頭であり、同時に強い呆れも感じさせる台詞

*7
作戦のルビの元ネタは、『Steins;Gate』から。なおそちらでは正確には『オペレーション・ラグナロック』

*8
『何が起きてもおかしくない』、因果律が歪んで事象の発生確率が無茶苦茶になっている状態──それを引き起こすものが細工をされた特異点である

*9
『すいません』という言葉が崩れた形のもの。すいあせん→すあーせん→さーせん、みたいな崩れ方だと思われる。ネットスラングの一つでもあるので、普通の謝罪には向かない。少なくとも文面上で使ったらキレられても仕方がない類い

*10
神からのお告げを意味する言葉。啓示を受けてない人間に信じさせるには、ある程度本人のカリスマ性が必要となる

*11
悪夢を意味する英単語『Nightmare』から。難易度の表現として用いられているのは、主に『英雄伝説』シリーズなど。各ゲームで好き勝手高難易度の名前がつけられているため、調べてみるのも楽しいかもしれない

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