なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・影響連鎖のストラテジー

 衝撃的な自己紹介から早十分。

 とりあえず部屋の内装やらがぐちゃぐちゃになってしまったため、一度中に居る人達を全て外に放り出して、内装を端末で弄って初期化&最適化。

 

 そうして元に戻った室内に、再び舞い戻った私達は、改めて机を挟んで対峙していたわけなのですが……。

 

 

「……ええと、つまり?」

「ウチは本来『ウマ娘』カテゴリのはずやのに、最近のクリスマスの騒動のせいで、そのラベルが雑多に貼り変えられてしもうたんや!!……その結果がこの胡乱な経歴!!どうしてくれんねんホンマっ!!」

「どうどう、タマモどうどう」

「やかましいわアホンダラァッ!!?」

 

 

 涙目で捲し立てるタマモX……もといタマモクロス。*1

 彼女の出身原作()は本来ウマ娘になるはずが、ここに居る彼女は『謎のタマモX』として扱われている……もとい、出身原作()がサーヴァント・ユニヴァースになってしまっているのだという。

 そのせいで色々とあれなことになっているので、それをどうにかするためにここに来た……ということらしい。

 

 ……いやその、言ってることがよく分からないんですけど?

 そもそもウマ娘って、なりきり郷においてはレアキャラなはずですよね?

 発生要因的にそんなにぽんぽん出てくるものでもない、みたいな?

 ……それがなんで、そんなわけのわからない状態になっているんです?

 

 と、言うようなこちらの疑問に関しては、彼女の横で落ち着くようにと言って聞かせているトレーナー役、謎のトレーナー沙慈・Xさんが答えてくれ……いやそもそも、そっちもなんなんだその名前?

 

 

「実はもう一人居る予定だったって聞いたら、君は驚くかな?」

「……いやいやいや、なんかいやーな予感がしてきたんで聞きたくないです」

「実はシュウジ・クロス()さん*2も一緒に来る予定だったんだ、色々あって遠慮されちゃったんだけどね」

「聞きたくないって言ってるのに、なんでこの人話してんの?!ってかやっぱり師匠だったんじゃん!!」

「む、イーストグランドマスターXも登場予定だったのですか。師匠被りせずに済んでよかった、と胸を撫で下ろしておく場面でしょうか?」

 

 

 なお、その後に彼が話した言葉により、要するにクロス()繋がりの人選であった、ということが判明するのだった。

 ……あの濃ゆくてヤバい人(東方不敗)が来ていたとしたら、恐らくなりきり郷が酷いことになっていたのは間違いないので、命拾いしたというかなんというか。

 でも発言の内容からするとここに居る二人、自分がここに来た時の事とかを覚えているっぽいので、別の意味で厄ネタ臭がしてきたわけなんですけどね!

 

 そんな風に、現状結構やべーんじゃねーの?

 ……と疑い始めた私に対して、沙慈君が苦笑を浮かべながら声を返してくる。

 

 

「ほんのちょっぴりだけ、誰かに呼ばれたことを覚えてるんだ。まぁ、『行けっ、クロス達よ』みたいなかなり雑な言葉と、気付いたらこの場所に居たってところくらいで、多分他の人と知ってる情報についての差はないとも思うけどね」

「はぁ、なる……ほど?」

 

 

 なんだその、……いやホントになんだそれ?

 彼の言葉に納得しかけて、逆に疑問が増えた感じになって微妙な顔をする私。

 ……クロスって名前についてるキャラを、無造作に送り込もうとしてた感じなのかな、それだと。

 で、その時に師匠も一緒に居て、「いや、儂は遠慮しておこう」*3みたいなことを言ってたと?

 

 ……『逆憑依』って拒否とかできたんだ、みたいな気分になってきたんだけど?

 え?師匠なら気合いでどうにかなる?

 ……いや、その理論を認めちゃうと、本来断りそうな面々が『逆憑依』してることについて、改めて考え直さなきゃならなくなるのでないかなー、というか。

 いやまぁ、ここであれこれと疑っててもあれだし、深く追求することはしないけども。

 

 まぁとにかく、彼等の発生というか出現というかがつい最近のこと、というのはよくわかった。

 ……となると、こちらに来たタイミングが、クリスマスのあれこれと同時期だったものだから、その時のケルヌンノスのビワへの変化とかの影響を受けた結果、今ここでぶつぶつと唸っているタマモクロスの状態に結び付いていく……ということになるのだろうか?

 つまり……彼女は現在、強制的な【継ぎ接ぎ】状態ってこと?

 

 

「いや、それもあるんやけど。別口のタイミング被りもなくはないみたいでな?」

「……別口?」

「ほい」

 

 

 首を捻る私の前で、自身のスマホ……が動かないことに「げ」と呻いた彼女が、横に居たマシュに端末を貸して貰って、何事かを操作すること暫し。

 目的のモノを見付けたらしい彼女は、端末を裏返しながら、その画面に写ったモノを私に見せ付けてくるのだった。

 そこに書かれていたのは……。

 

 

「『タマモクロスついに実装』……おお、おめでとう。なんかずーっとタイミング外されてた……ってファンが言ってたらしいね」

「せやせや。いやそこはウチやないんかーい、みたいな?まぁこれで、ウチも漸く思う存分走れるーと思うとったんやけど。……ほれ、こっち」

「ん?……『ツングースカ・サンクチュアリ』?」

 

 

 ウマ娘の方で、ようやっとタマモクロスが実装されたというニュースが一つ目。*4

 それを嬉しそうに見せてきた彼女が、途端にスンッ……と表情を無にしながら代わりに表示したのが、fgoのイベント画面。

 

 そこに写っていたのは、ついにコヤンスカヤとの決着が付くということで、プレイヤー達が張り切ってるとかなんとかな、最新章クリア前提のイベントについての解説なのであった。

 ……スルト君は大体十八バルバトスだったそうですね。

 もっと寄越せよスルト、殺したかっただけで死んでほしくはなかったんだぞ……。*5

 

 ともあれ、違うゲームの違うイベント、これになんの関係があるのだろうと少し首を捻った私は、なんとなく視線を二人に向けた結果、天啓を受けたような衝撃を感じたのだった。

 

 ……この二人は、()()()()()()で一緒に居るらしい。

 そして今提示された二つのイベントは……()()()クロスと()()()ヴィッチ・コヤンスカヤの、それぞれ重要な出番に関わるものである。つまり、

 

 

「──タマモ繋がり。向こうのタマモさんがタマモナイン()なんてモノの一人、なんて話とか。それと、クロスを(エックス)と書くと、ローマ数字の()に似てるだとか。……まぁ、そんな感じのこじつけ・言葉遊びが、一部で流行ってたらしいんだよね」

「なるほど、それと私こと『謎のヒロインX』や、最近現れた新キャラクターである『謎の蘭丸X』*6のネーミング法則に肖って──」

「タマモナイン、幻の十番目()。謎のタマモ(クロス)などという胡乱な存在が生まれた、というわけか。……我が別物とは言え妲己の姿であることも、微妙に関係しているというやつだな?」

 

 

 現実の方でたまーに起きる、型月とサイゲの謎のシンクロ現象と、ケルヌンノス(ニアイコール)ビワハヤヒデという、fgoとウマ娘を繋ぐ?存在の転換が、実際にここで起きていたということ。

 それから、その他の雑多な物事が重なって……こっちに呼ばれてくる時に、その辺りのノイズまで巻き込んで(【継ぎ接ぎ】して)しまった、ということらしい。

 

 ……いやちょっと待った、これ私悪くなくないっ!!?

 そんなこちらの叫びは、残念ながら聞き届けられることはなく……。

 

 

「やかましいっ!!この余分なものを今すぐ剥ぎ取れアホンダラァッ!!」

「ひぃーっ!!?幾らなんでも無理があるってばーっ!!?」

「あ、せんぱいっ!?せんぱーいっ!!」

「むぅ、これは波乱の予感。トレーナーさん、ご同行をお願いしても?」

「喜んで。……しかしまぁ、忙しくなりそうだなぁ」

 

 

 そうして、私は自身の無罪を叫びながら、家の外へとタマモに追い掛けられながら飛び出した、というわけなのでございましたとさ。

 

 

 

 

 

 

「それで?ここまでせっせと走ってきたと?……いやはや、わざわざ遠方より御足労頂き誠に有り難うございます、とでも言っておけばいいのかな、これは?」

「……突っ込む気力もないのでノーコメント」

 

 

 ユニヴァース産になっている扱いだからなのか、同系列の存在であるはずのオグリよりも遥かに早く……下手すると縮地*7でも使ってるんじゃないのか、と錯覚しそうな速度で追ってくるタマモから、命からがら逃げ延びた私。

 そうしてやって来た場所がラットハウスというのは、なんというか自身の行動範囲の狭さを実感するような、しないような。

 

 ともあれ、いつも通りにやにやとした笑みを浮かべながら、こちらを弄ってこようとするライネスを、適当にあしらいつつ淹れたての紅茶に舌鼓を打っていた、というわけなのでございます。

 

 

「……ふむ。私も何か力になれればよかったのだが、生憎と私が使えるのは幾つかの晶術と、剣と弓くらいのもの。君の問題に対処するには、些かばかり足りないようだ」

「……いや、寧ろ晶術使えるってことの方が驚きなんですけど」

 

 

 店の奥から、私が頼んだ料理を持ってきつつ、申し訳なさそうな声をあげるウッドロウさん。

 ……こっちとしては、レンズもない……ない?のに、晶術が使えるという彼の言葉に、ちょっとばかり面食らったりしていたわけなのですが。

 帯剣している様子もないので、レンズ代わりになるソーディアンも持っていないはず。……余計のこと、なんで使えるんだろう感がひしひしと感じられるというか。*8

 

 

なに、気にすることはない(川´_ゝ`))。私も色々と切り札のようなモノを持ち合わせている、というだけのことだからね」

「は、はぁ……」

 

 

 爽やかな笑みを浮かべるウッドロウさんだが、気のせいだろうか。……なんかこう、特徴的な顔文字(川´_ゝ`))を彷彿とさせる表情をしていた、ような……?

 この人と話していると調子が狂うな、と思いながら、頼んでいた料理……きつねうどんに手を付けようとして。

 

 

「見 付 け た でぇ !!」

「どわぁっ!?あっつぅっ!!?」

「あっ、すすすすまんっ!!だだだ大丈夫かっ!!?」

 

 

 カウンター下から飛び出したタマモにクロスにビックリして、持ち上げようとしていたどんぶりを、思わず宙に放り出してしまった。

 そのままだと彼女の脳天に直撃して、火傷やらなにやらで酷いことになっていただろうから、慌ててどんぶりを掴み直したのだけれど。

 ……生憎と汁が反対側(こっち側)から外に溢れてしまい、結果として私が汁を被る羽目になってしまったのであった。

 ……めっちゃあっつぅ!!?

 

 

*1
『ウマ娘』のキャラクターの一人。『白い稲妻』と呼ばれた競走馬『タマモクロス』をモチーフに持つ。モチーフ馬の性格に起因する喧嘩っ早さが特徴の一つに数えられるが、その一方で面倒見の良さも持ち合わせている。背丈が小さく、よく年下に間違われたりする。関西弁のキャラの宿命か、粉モノの調理が得意(モヤシとはんぺんの扱いも上手いとか)で、よくツッコミキャラにされている。……周囲がわりと非常識なウマばかりだから、というところもあるとは思われる

*2
『機動武闘伝Gガンダム』のキャラクターの一人、東方不敗マスター・アジアの本名、シュウジ・クロスのこと。ロボより生身の方が強い、と言われるGガンダム勢でも、トップクラスのガンダムファイター。大体東方不敗か師匠と呼ばれるため、本名で呼ばれることはほとんどない

*3
『ゼノサーガ』より、とある人物の言葉『いいえ、わたしは遠慮しておきます』から。『みんなのトラウマ』の一種。人の良さそうな感じのキャラクターが疑われる遠因の一つ……かもしれない

*4
アプリ・アニメ・漫画などで結構目立つ立ち位置にいる彼女だが、その実装は12月になってから。配信開始からすると十ヶ月ほど経過している

*5
大々的なレイド形式のイベントであった『冠位時間神殿ソロモン』でのバルバトスの哀しみの経歴から。一般的なゲームにおけるレイドイベントとは、強力な敵キャラクターをプレイヤー全員で削り倒していくという感じの、協力形式のイベントである。だが、このイベント当時のレイドイベントというものは、大体がめんどくさいだけのモノ、という意識が強かった(基本的にMMO系列のゲームが実装するもので、時間もリソースも大量に必要とするもの、という意識が強めだった。報酬もある程度やれば、そこまで欲しいものではなくなる、というか)。そんな中始まった『冠位時間神殿ソロモン』は──fgo特有の素材の渋さを投げ捨てた、やればやるだけ上手いイベントだったのである(似たようなことはボックスイベントにも言えたりした)。結果として、落とす素材の需要が(直近で実装されたマーリンが使う素材を落としていた)非常に高かった管制塔・バルバトスが、秒間44本という速度で倒されていき、真っ先に全体力が削られて落ちていくはめになった。その時に生まれたのが、倒される速度(体/秒)を表す単位『1バルバトス』であり、同時期にアニメをしていた『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』での主人公・ミカの台詞から流用された『もっと(素材を)寄越せよ、バルバトス』、それからfgo史に残る狂気の台詞『殺したかっただけで死んでほしくはなかった』(=いつまでも素材を落としてくれれば良かったのに)である。なお、『ツングースカ・サンクチュアリ』でのスルトの撃滅速度はおよそ18バルバトス。一秒間に800体近くのスルトが倒された計算となり、fgo界にまた新たな記録を刻みつけることとなったのだった……

*6
fgoのイベント『昭和キ神計画 ぐだぐだ龍馬危機一髪! ~消えたノッブヘッドの謎~』にて実装された配布サーヴァント、星4(SR)アヴェンジャーのこと。サーヴァント・ユニヴァース産としか思えないような胡乱な設定を持つ存在だが、恐ろしいことにユニヴァース出身だとはどこにも書かれていない。ネーミングの法則などからそうだろうと思われているだけ、というある意味恐怖の存在。でも蘭丸がかわいいので、全部OKなのであります

*7
仙術の一つ。言葉通りに『地を縮める』技。もしくは、古武術における『地を縮めたような』歩行方法のこと。後者の場合は技術の一つであり、相手に自分が移動したことを気取らせないもの、と考えるとよい。例えば頭の高さが変わらないように進むと、相手が足元を見ていない限りこちらの移動に気付くのが一手遅れたりする。そういう技術の積み重ねが、古武術における『縮地法』だと言える

*8
『テイルズオブデスティニー』シリーズにおける、他作の魔法や譜術に相当するもの。元は彗星から取り出した、晶力を含むエネルギー結晶体『レンズ』に纏わる技術。ソーディアンによって行使される晶術と、レンズによって行使される晶術では原理や概念が違うらしいが、高純度レンズの集積回路的なモノであるコアクリスタルが搭載されたのがソーディアン、という説明からすると、ちょっと疑問が沸かなくもないような。純度の問題、ということなのだろうか?


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