なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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師走に走るタマモクロス、彼女こそ東方不敗!(※違います)

「あ、あかん……もうダメ……」

「大丈夫かタマ、卵食べるか?」

「なんで卵やねん……」

「むぅ、ツッコミにキレがない。本格的に疲れているようだ」

「……いやまぁ、見りゃわかるというか……」

 

 

 近くの切り株にへたり込むタマモと、その背を擦りながら、何故か茹で卵を薦めるオグリ。

 まぁ、運動直後の脱水気味な状態で、口の中がパサパサする感じになる卵は好まれなかったようで。

 彼女の差し出した卵は、案の定やんわりと押し返されていたのだが。

 

 そんな二人の姿を横目にしながら、今回の下手人であるハクさんに視線を戻す私。

 視線を受けた彼女は悪びれた様子もなく、逆にこちらへと首を捻る様子まで見せているのだった。

 

 

「いやそもそも、我闇の化身じゃし。誰かの越えるべき障害として立ち塞がるとか、寧ろ誉れじゃしー、みたいな?」

「時と場合と程度を考えてください。どこぞの『人間の苦行見るの大好きおばあちゃん』じゃないんですから」

「……いや、寧ろ居るのか、今の我に似たような方向性のキャラクター」

 

 

 まぁ、それでもこちらの叱責の内容には、目を白黒させていたわけなのだが。

 

 ……神話内でも普通にトップクラスに区分される実力を持つ魔性(ましょう)が、自身を越えるべき壁と定め積極的に立ち塞がってくる……とか、あんまり想像したくない状況なのは、わからないでもないけど。

 当のおばあちゃん(ヴリトラさん)、場合によっては相手の後方で観客面してわえわえしていることさえあるので、多分今想像している内容の三倍くらい傍迷惑なんじゃないかなー、というか。*1

 ……類似例のアマッカス?あれは倍とかそういう次元の迷惑さじゃないです。*2

 

 ええ……なにそいつら……。

 と、自身を棚上げにして引き気味になるハクさんに苦笑しつつ、改めて今回の凶行についての、弁解というか弁明というかを尋ねる私。

 

 

「……汝らが自身を自身と思えぬように、我も今の我を定義しきれぬところがある。中身を持たぬ故に、より元の我等に近いのが【顕象】というものなのかもしれぬが……結局のところ、そこまで述べても気休めにしかなりはせんのだ」

「【継ぎ接ぎ】されているから、とかそういうことではなく?」

それ(【継ぎ接ぎ】)がなくとも、我が我であるかは微妙であろう?……まぁ、そうだとしても気が急いていたのは事実。──許せタマ」

 

「なるほどなぁ、レゾンデートル(存在証明)に悩んどったと。ほならしょうがないなぁ……ってなるかボケーッ!!誰がサスケや!!」

「ちっ、しんみりした空気と、小難しいことを言っとけば騙されるかと思ったが、甘かったか!!」

「当たり前じゃー!!ウチをなんだと思っとるんやー!!」

 

 

 ……えー、結果としましては、タマモに対してデコに指をトンとするやつ(イタチのあれ)をしていたため、徹頭徹尾ふざけ倒してただけだと思われる、と判断しておこうと思います、まる。*3

 

 

 

 

 

 

「わけわからん、なんでみんなしてウチに変な絡みばっかしてくるんや……?」

「関西弁系キャラには積極的にネタ振りしていけと、私のゴーストが……」

「やかましいわっ、そんなゴーストは掃除機にでも吸わせとけっ!!」*4

 

 

 実は現在私の周囲に居る人物の中では唯一、関西弁を使うキャラであるタマモクロス。*5

 ちゃんとした関西弁、という括りになると難しいだろうけれど、なんとなくそれっぽく聞こえる『なんちゃって関西弁』*6としては、十二分にそこに求められている役割を果たせる彼女の存在というものは。

 ……なんというかこう、新しい風をこのなりきり郷に運んでくれる、期待の星とかうんぬんかんぬん。

 

 みたいなことを聞かせてみたところ、彼女が返してきたのは名状しがたい表情。

 ……なんというかこう、『なに言っとんねんこいつ』という感情が、これでもかとばかり込められた顔……みたいな?

 まぁとりあえず、女の子がしちゃいけない顔だ、と言うのは確かだと思います。

 

 

「やかましいっ、ウチになにを期待しとるんかと思うたら、それ結局他の関西弁キャラでも、十分に代役が務まるやつやんか!」

「んー、そだねー。はやてはりんちゃんだったし、他の関西弁系キャラとは出会ったことないし。つまり今のタマモのポジションは、とにかく危険域ってことだね」

「なるほどなぁ、ウチ以外に関西弁キャラはおらんから、ウチ以外の関西弁キャラは、ここに来たそばから全部蹴落とす勢いやないとあかんってことやね。……ってちゃう!!」

「おお、ノリツッコミ」

「喧しいっ、こんなん別に関西弁系キャラでなくともツッコむわーっ!!」

 

 

 そもそもウチは香川出身やー!

 と声を上げるタマモであるが、そんな彼女の今日の昼食は、出身地に因んでということなのか、きつねうどんであった。*7

 ……なるほど、タマモクロスは実は勇者だったんですね?クロスは即ち胸に輝く勇者の証、と。*8

 

 

「咲かんわっ!別に星座の化けもん殴り倒したりもせぇへんわっ!!」

「……白い稲妻が?」

「僕を責める~♪……やらすなっ!!」*9

 

 

 ……うーむ、打てば響くこの感覚。

 彼女は我がなりきり郷に必要な人材だ、というのは間違いなさそうだ。……主にる!のサンダルフォン的な意味で。*10

 

 

「……別にウチはコーヒーに煩かったりせぇへんよ?」

「そこで冷静になられても困るんだけど?」

「そか。ほな、昼飯さっさと食べよか」

「せやなー」*11

 

 

 ……とまぁ、こんな感じに話を終えて、食事に戻ろうとしたところ。

 なんというかこう、周囲からの視線が妙な感じになっているような……?

 怪訝に思いながら目線を横に向ければ、ジトーっとした視線をこちらに向ける、ハクさんの姿が目に入った。

 ……ふむ。

 

 

「行くでタマ、ワイらのワイルドワイバーンで、あのキツネをこゃんこゃん言わしたるんや!」*12

「がってん承知の助や!ウチの逆撫でヒーコラ言わしたるでぇ!!」*13

「いや待ていや待て、増えるな合わせるなこっちに来るな!というかさっきまでの空気と違いすぎるじゃろ汝ら!?」

 

 

 無意味に決めポーズを取ってみながら、ジリジリと二人で彼女ににじり寄って見たところ、滅茶苦茶怖がられてしまった。

 失敬な、ノリには全力で乗るのが芸人魂やで(?)

 みたいなことを、タマモの方に向いて述べてみれば、彼女はせやせやと大きく頷いている。

 これには周囲も苦笑い。なんでって?さっきまでのやり取りが険悪に見えてたからだよジョニー。*14

 

 

「誰が真紅の稲妻やねん」*15

「おっと、こりゃ失敬。赤と白で縁起が良いかと思いまして」

「年末やからな、新年に向けて運気を上げんとあかんしな」

「そうそう。そういうわけでご用意致しました、紅白饅頭」

「ほぉー、そらまたええかんじやね。ところで、赤い方には中になに入っとん?」

「キャロライナ・リーパーですね」*16

「……白い方の形が変なんは?」

「シモ・ヘイヘを象りました」*17

「どっちも死神やんけ!縁起悪いわ!!……ども、ありがとうございましたー」

 

「……はっ!?いつの間に漫才に……っ!?」

「わりと始めからやで?」

 

 

 思わず箸が止まっていたオグリが、思わずとばかりに声を上げれば、さっさとうどんを食べるのに戻ったタマモが、まるで何もなかったかのように答えを返す。

 皆がなんとも言えない空気に包まれる中、やはりタマモクロスこそなりきり郷希望の星……!

 と、謎の確信を得る私が一人。

 

 

「……えと、とりあえず食べ終わってからにしませんか?」

「う、うむ。そうしよう……」

 

 

 なお、その場の変な硬直は、アルトリアの鶴の一声により弛緩するのでしたとさ。

 

 

*1
『fate/grand_order』より、星5(SSR)ランサー。インド神話における敵方なのだが……カルデア内における彼女は、ヤバい試練を持ってきて『がんばれ♡がんばれ♡』してくるおばあちゃんである。多分勇者モノとか好き。『苦難の果てに乗り越え何かを掴む』瞬間を見るのが好きなので、そのためならば幾らでもエグい試練を引っ張ってくるタイプ。根本的には自分が楽しみたいだけなので、そこには甘さや優しさはほぼない

*2
上記のヴリトラが優しく見えるような超スパルタ系男子、甘粕正彦。出身は『戦神館』シリーズ。なおヴリトラさんは神にも試練を強いる系(甘粕は人の可能性が見たい系)なので、どっちがマシかはケースバイケースと思われる

*3
『NARUTO』より、うちはイタチがうちはサスケに対してよく謝罪と共に行っていた行動。後にサスケも使うようになった。()()に指を()()っと置くため、『デコ遁』などと呼ばれることもあるとかないとか

*4
囁くゴーストは『攻殻機動隊』より。掃除機に吸わせろ云々は洋画『ゴーストバスターズ』、及びそれをオマージュしている『ルイージマンション』シリーズより。『ルイージマンション』の方の『オバキューム』は正しく掃除機だが、『ゴーストバスターズ』の方の『プロトンパック』は撮影機材として掃除機を改造しただけで、設定上は小型原子炉(!?)である。そこからビームを発射して、幽霊を弱らせるのが目的のアイテムなのだとか

*5
正確には『近畿方言』と呼ばれるもの。四国の一部も同系統の方言を話す人が居るらしく、そういう意味では香川出身のタマモクロスが関西弁を使うのはおかしくない……のかも?大阪弁・神戸弁・京言葉なども広義では『関西弁』になるため、『ちゃんとした関西弁』というものがどこの言葉を指すのかは、意外と難しいようだ

*6
アニメ・漫画などの関西出身キャラクターが喋る言葉、及びそれによって求められているキャラクター性。芸人気質であることを望まれることがほとんど

*7
前回出てきたきつねうどんも、ある意味タマモクロスネタだった、というお話(タマモ(きつね)うどん(香川の名物))。ついでに言うならたぬきネタもなくはない(たぬき動画で最初の流行になったのは『ヒガシマルのうどんスープ』、歌詞の中でうどんの種類を述べている(『うどんかぞえうた』より))

*8
『結城友奈は勇者である』と『勇者シリーズ』より。『ゆゆゆ』の方は舞台が香川県(正確には四国)であるため、登場人物のほとんどが好物にうどんを上げている。後者は『勇者王ガオガイガー』などの、胸に動物の顔があるようなロボ達のこと。機能的には特に意味がないが、カッコいいからついている……なんてこともある

*9
SMAPの楽曲『青いイナズマ』の歌詞の一部から。1996年の楽曲であるため、かなり古い。無論稲妻繋がり

*10
『ぐらぶる!』のサンダルフォンのポジションから。要するにツッコミ役・苦労人属性。あっちと違って、タマモクロスには付き合う義理も義務もないが。なお、彼はコーヒーが好きという特徴を持っている

*11
ウチはおらんけどウチのネタは出るでー。無論ウチこと『琴葉茜』の口癖からやでー。あとそれを元にした楽曲『何でも言うことを聞いてくれるアカネチャン』とか、謎の生命『セヤナー』みたいなんもおるでー

*12
『爆球連発!!スーパービーダマン』より、ビーダマンの一つ『ワイルドワイバーン』と、それを扱う西部丸馬より。『ワイのワイルドワイバーンや!』なる『言ってない台詞』が有名。後半の『こゃん』は狐の鳴き声を擬音化したもの

*13
『BLEACH』より、平子真子とその斬魄刀『逆撫』から。上のワイルドワイバーン云々と合わせて、どちらも関西弁キャラクターの持ち物と、そのキャラをネタにしたもの

*14
アメリカ系の通販番組でよく見るやり取り。大体女性はキャシー、男性はジョニーだったりする

*15
稲妻繋がりネタ再び。『機動戦士ガンダム』シリーズより、『真紅の稲妻』ことジョニー・ライデンのこと。パーソナルカラーがクリムゾンレッド(真紅)であったため、同じ赤系統を使っているシャア・アズナブルと勘違いされていたらしい、という悲運の人

*16
その形が『鎌を持った死神』を連想させることからその名がついたとされる、唐辛子の一種。世界一辛いと認定されたこともある劇物

*17
第二次世界大戦期にフィンランドで伝説的な活躍をした兵士の一人。上のキャラロイナ・リーパーと合わせて、赤と白の()()繋がり




今年はありがとうございました。
来年もまた宜しくお願い致します。

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