なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「はい、そういうわけで。屋台巡りも終わりまして、こうして普通の服に着替えたわけなのですが……」
誰に説明するでもなく呟いて、ちょいと後ろを振り返る。
辺りはすっかりと暗くなり、幽霊やら妖怪やらのような、なにかしらの怖ーいものが出てきても、一切おかしくなさそうな雰囲気と変わり果てていた。
ちょっとした好奇心から付いてきた非戦闘組……ぶっちゃけてしまえばウマ娘の二人は、その表情を青く染めつつ、余裕ぶろうとしながらカタカタ震える……などという、わりと典型的な怯えの態度を取っていたのでありましたとさ。
「ふふふふふんんんんん、ここここんなんここここわくなんかなななないわわわわわ」
「タマ苦しい、襟はやめて欲しい襟は」
「ここここ怖がってなんかないわぁっ!!」
『おやおや、お二人とも面白いくらいにビビっていますねぇ』
「ゆるされよ ゆるされよ めちゃくちゃビビるのゆるされよ」
「……ビワがわりと喋るようになったのはいいんだけど、巫女構文になるのはどうにかならないのかな?」
(・ワ・)「ゆるされたです?」
「あー、うん。
元の存在が元であるだけに、ビワの方は特に怖がっていないようだけど。
代わりにタマモの方は、見てて不安になるくらいにガッタガタと震えている。
そんな彼女に振り回されているオグリも、本質的にはビビっているらしいが、相方の方がよっぽど怯えているため、比較的冷静になっているようだ。
……まぁ、現状の二人を引き剥がして一人にすると、多分オグリの方もガッタガタになるとは思うんだけども。
基本的には二人とも一般人なので、仕方ないとは思うんだけどね。
「対霊装備は必要がない、とのことでしたが……本当に準備をしなくても大丈夫なのですか、五条さん?」
「大丈夫大丈夫。僕最強だし……とは
「……まぁ、それはそうですが」
反対側では、珍しく鎧と盾で完全武装しているマシュが、五条さんに今回の件についての確認を取っている。
彼の言うところによれば、そう荒事にはならないらしい。
仮にそういうことになっても、守りに関してはマシュを筆頭として、境界を弄っての防御もできるゆかりん・問答無用の私が同行しているため、特に問題はない……との見解を示されたわけなのだけれど。
……うーむ、はたしてそんなに上手く行くのだろうか?
「やけに心配してるわね、お前」
「いやー、自分が五条さんの代わりに外に出て、あれこれとやってた時のことを思うと、こう……なんというか……」
「私は報告書を流し読みしただけだけど、それでもトラブルの連続だったってすぐに理解できたしねぇ」
「
「なるほどね。……まぁ、最悪私が自爆すればいいでしょ」
「いややめて、気軽にヤバめの呪詛ばら蒔こうとするのやめてパイセン!?」
(・ワ・)「そうなったらじっしつせかいのおわりですなー」
そんな風にむむむと唸っていると、パイセンが呆れたような声をあげながら近付いてくる。
案外面倒見のよい彼女のことなので、純粋に心配してくれたのかもしれないが……彼女も大概トラブルメイカー、頼りすぎるのは宜しくない類いの人だ。
彼女が暴走しないことを祈りつつ、そのまま歩くこと暫し。
「お、ついたついた。おーい、居るかーい?」
「ついたって……なんにもないじゃない?」
たどり着いたのは、少し開けた森の中の広場……とでも呼べそうな場所。
無論、ゆかりんの言う通り単に周囲が開けているというだけで、特に誰か人が居るわけでも、はたまたなにか目につくようなモノが置いてあるわけでもない。
本当に、単なる広場としか言い様のない場所だった。
……そもそもに
そんななにもない場所に立ち止まった五条さんは、辺りに大声で呼び掛けを行っている。
そうして響いた声は、暫く辺りを反響したのち、次の瞬間。
「あ、五条。こっちこっち」
「……おぉっ、きたちゃ~ん!おひさしぶりぶり~、イワシの塩焼き~」
「あれ、しんちゃんも来てたのかい?いやまぁ、君なら特に問題はないだろうけど」
近くの木陰から広場に歩み出て来たのは、片方の目が髪で隠れていて、黄色と黒の縞模様のちゃんちゃんこを着た少年。
───すなわち、ゲゲゲの鬼太郎その人なのであった。*1
「……あれ、鬼太郎?彼ってヘンダーランドのエキストラに居なかったっけ?」
「おや?初めて見る人だけど……君は僕のことを知ってるのかい?」
現れた人物に見覚えが──キャラクターとしてという意味ではなく、文字通りに
……人に対する隔意が薄そうなので、最新作の彼ではないのだろうか?*2
「ああ、違う違う。迎えに来たのは彼じゃなくて、別の人だよ。彼に関しては、単なる協力者」
「協力者?」
なんて風に首を傾げていたら、後ろから首を出してきた五条さんに、探しに来たのは彼ではない、と指摘されることに。
……んー、つまり彼は、あの時の彼……ヘンダーランドのエキストラをやってた彼と同じ、ってことでいいのかな?
そんな風に質問してみれば。
「そうだね、向こうではあの二人の所にお世話になっているから、時々ああして手伝いをしているんだ。それじゃあ改めて……墓場鬼太郎だ、よろしくね」
「おおっと、これはこれはご丁寧に……」
「……いや、政治家かなんかかいっ」
紳士的に右手を差し出してくる彼の姿に、内心ちょっと驚きつつ、その手を握り返す私。
……鬼太郎というキャラクターは、アニメの世代によっては結構キャラの性格とかが違う。
それが個人的なイメージとちょっとずれていたのが、こうして困惑してしまった理由だったりするのだが……。
それを置いてもなお、違和感が残るような?
「ああ、僕はちょっと複雑でね。見た目はいわゆるパチスロ版*3、中身はいわゆる四期の僕に近い……って感じかな?」
「……なんでまた、そんなちぐはぐなことに?」
「敢えて言うなら趣味、かな?『カッコいい鬼太郎』を見せたいって思ったからか、見た目的に一番大人びているこの姿と、人との距離感が近すぎず遠すぎない四期の性格になった……と言うか」
「なるほど……?」
そう説明する彼の背丈は、私よりもそれなりに高いもの。
基本的な鬼太郎の背丈というものが、私よりも低いのがほとんどであることを思えば、外見のイメージが結構違うという感覚も、なんとなーくわかって貰えるかもしれない。
「彼はこっちの区分だと【継ぎ接ぎ】に分類されるみたいだからね。ちぐはぐって言う割には結構強いよ?」
「ほうほう。弱いきたちゃんってのも、なんだか変な感じだもんね」
「個人的にはしんちゃんの方が怖いけどね、僕は」
「お?オラいつの間にか『イシュタル神殿』しちゃった?」
「……しんちゃんの再現度が低いようには思えませんしね……それとしんちゃん、多分イシュタルさんの神殿ではなく、『異世界転生』では?」
「おー、そーともゆー」
なお、彼はしんちゃんともちょっと遊んだりする仲、なのだとか。
鬼太郎はバージョンによって女性に弱かったりするし、意外と気があうのかもしれない。……それと、しんちゃんが意外と怖いというのは同意。
彼の場合は再現度が上がると『埼玉のセイヴァー』としてのスペックを存分に発揮し始めそうで、下手な戦闘キャラより厄介さは上かもしれないから。
閑話休題。
妖怪に関する専門家と呼べるであろう鬼太郎に、呪霊に対しての専門家である五条さん。
──この二人が一緒にいるというのは、警戒心を煽るには十分な理由だと思いません?
「不穏なこと言うのやめーや!!」
「だからタマ、私にすがり付くのは止めてくれ……」
……ということを、わざわざタマモに近付いて話したところ、返ってきたのは予想通りのビビり姿。
そこまで怖いのなら帰れば良いとも思う(帰り道が暗くて怖いのなら、ゆかりんにスキマで送って貰えばいい)のだけど、なんというかプライド?的な問題から、ここから尻尾を巻いて逃げるのはノー!らしく。
『ではでは、怖くなくなるようにBBちゃん予防注射、受けときます?』
「……それを受けるとどうなるんや?」
『幽霊なんて目じゃないモノが見えるようになって、結果として幽霊が怖くなくなります!』
「節子それ予防注射やない、単にSAN値が全損しただけや」
なので、BBちゃんがとある提案をしたのだけれど……まぁ、案の定却下されたわけでして。
なにがあれって、元のBBちゃんと違って
『……なんだかせんぱいから視線を感じますね。……はっ!?もしかして優秀にして可愛いBBちゃんの魅力に、遅まきながら気付いてしまったとか?!ですがご安心を。私は貴方の後輩BBちゃん。いつでもどこでも、貴方の後輩であることに変わりはありませんので!』
「せ、せんぱい!マシュ・キリエライトも!貴方の後輩マシュ・キリエライトも居ますからね!?」
「いや、その
なお、そうしてジト目で見詰めていたら、またもや光と闇の洗礼を受ける羽目になってしまった。なしてや!
「……五条、また変な人を連れてきたんだね?」
「あっはっはっはっ、おかしいなー、否定できないや」
「そこは嘘でも否定してくれないかな!?」
ついでに、鬼太郎からの視線の温度も下がった気がしました。
だから、なしてや!!?