なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「殴れば倒せるゆーても、こんなんキリが無いんと違うん?」
タマモの言葉が響く、
その量と内容に初見こそびっくりしたものの、実際の質としては『殴れば倒せる』という、お前ら幽霊としてどうなん?みたいな怨霊達でしかなかったので、千切っては投げ千切っては投げ……を繰り返していたわけなのだけれども。
……なんというかこう、終わりが見えねぇ!!
さっき夜空の星にしてやった貞子が、再び戦列に加わってる……っていうか、そもそも複数人居るんだけど!?*1
とかなんとか、さっきから文句しか浮かんでこない様相なのであります、はい。
最初は周囲の怨霊達にビビり散らしていたタマモも、目の前でB級ホラーの無双場面*2かの如く軽々しく吹っ飛ばされていく怨霊達には、恐怖心を徐々に解されていったようで。
今では「とりあえず蹴ったら祓えてしまうんと
……が、それでもなお相手の増える?数の方が多いのか、戦闘が一向に終わらない!!
思っていたのとは方向の違う戦闘から来る疲れに襲われつつ、これって一体なにが勝利条件なのか、と五条さんに尋ねてみたところ、
「残念ながらこれ、耐久戦なんだよねー。悪いんだけど、もうちょっと持たして貰える?」
「ふざけんなー!鬼ー!悪魔ー!ちひろー!!」*3
「訴訟も辞さない」
「今の誰っ!?」
「鬼か悪魔でしょ」
などという返答が戻ってきたのだった。救いはないのですか!?*4
「いやー、お見事お見事。ホントは用事が済み次第撤収のつもりだったんだけど、まさか全部成仏させちゃうとはねー」
「そりゃ、やれそうならやるでしょ。どうなってるのかとか、なに待ちなのかとか、何時終わるのかとか、そういうの全然わかんなかったから様子見してたけど」
結局、こうして口にした通り、何を目的にした戦闘行動だったのかがわからなかったため、防衛に徹していた私だったわけなのですが。
なんとなーく相手の正体とかが掴めたあとは、まさに一転攻勢。
周囲に被害がでないように、あれこれとパラメーターを弄った極小ブラックホールをぶん投げ、怨霊達を一塊にしたのちに爆散させる……という、わりとヤバめな技により殲滅したのでありましたとさ。*5
……いやまぁ、相手方はバイバインみたいな性質?だったようだし、それくらいしか対処法がなかった……っていうのもあったりはするんだけども。
「おっ、『バインバイン』?」
「おっとしんちゃん、喧嘩売ってるなら買うけど?」
「お、おぉぅ……聞き間違えちゃっただけだから、そんなに怒らないで欲しいんだゾ……」
「ふふふ、いいかいしんちゃん?私の前で胸の話をするやつは、なんであれ敵……
「い、以後気を付けるんだゾ……」
「よろしい。……まぁ、紛らわしい台詞を吐いたのも事実だから、一応こっちからもごめんとは言っておくけどね」
「ほーい。……で、結局『バイバイン』ってな~に~?」
なお、途中でしんちゃんが盛大に聞き間違えたため、話がストップしましたがなにも問題はありません。ないったらないです。
「ドラえもんに出てくるひみつ道具の一種ですね。増やしたいモノに一滴垂らすことにより、五分ごとに数が二倍になる……という薬品です」
「お?ということは~、チョコビに垂らせばチョコビ食べ放題ってこと~?」
「はい、しんちゃんの言う通り。そういうことになりますね」
「おお~、ふともも~!」
「それを言うなら太っ腹、や。……ところで、話に聞くだけやったら随分と便利な道具に聞こえるけど、どうせヤバいやつなんやろ?ひみつ道具やし」
「タマモさんの反応には、思うところがなくもありませんが……そうですね。ドラえもんの作中において、モノを増やすという機能を持つひみつ道具は、多数存在しますが……
大まかな解説はマシュがしてくれたが、こちらでも補足を。
ドラえもんにおいては『フエルミラー』『まほうのかがみ』『レプリコッコ』などなど。
なんで同一の用途なのにも関わらず、類似品がいっぱいあるんだろう?
……という疑問を抱かざるを得ないくらい、似たような役割を持つ道具というものが溢れている。*6
これはまぁ、ドラえもんという作品が一話完結型の作風であり、以前使ったものを使い回すのでは新鮮味がない……などの作劇的理由を含むものだろうとは思うけど。
ともあれ、近似に互換、どこぞのSCP紛いのモノなどなど。
ひみつ道具というものが、物語を作る種の結晶のようなものである、というのは間違いでもないだろう。
と、言うような前ふりをした上で、バイバインについてのお話。
類似品達が増殖を人の手で行う必要があるのに対し、この薬品は
一応、この薬品にも効果時間というものがあるらしいのだが……仮に一日放置した場合、一日に増える回数は(24(時間)×60(分))÷5(増えるのに掛かる時間、単位・分)となって、その数は288回になる。
これがそのまま指数となるため、倍率は2288となり、これによればなんと、一日放置しただけで宇宙が埋まるような事態になるのだとか。*8
作中描写からして効果時間が一時間そこら、ということも考え辛いため、これは別に大袈裟でもなんでもない宇宙の危機……ということになるわけだ。
ドラえもんは『それこそ一日で、地球が栗饅頭の底に埋まる』というようなことを述べていたそうだが、これを正確に直すと『それこそ一日で、地球は
……ドラえもんのひみつ道具は、子供の思い付きをそのまま叶えたかのようなものも多いため、真面目に考えると訳のわからないことになる……という好例である。*9
「……澗?」
「十進数で三十七桁ほどの数値の事ですが、この場合ですと無量大数のあとに現れているため、いわゆる二週目となりますね」
「漢数字表記って二週目とかあるんか!?」
「命数法的には仕方のないことですので……」*10
「仏教での数詞使っていいなら、もっと大きいのもあるよー、不可説不可説転とか」*11
「……完全にピンとこないのだが」
「一応107×2122くらいだね」
「いや聞いてもワケわからんのやけど!?」
「まぁ、それより大きい数もあるけどね」*12
「ゆるされよ ゆるされよ すうじがにがてなのをゆるされよ」
なお、大きい数字……巨大数というものは、奥が深すぎて説明してると日が暮れるどころの話ではないので、今回は割愛。
そもそもの話、性質がバイバインに近いというだけで、怨霊達が天文学的な数になるというわけでもないから、余談の域を出ないわけだし。
「そ、それはよかった。正直ちょっと話に付いていけなくなっていたところだったんだ」
「そりゃまたご苦労様と言うか。……まぁ、上限が決まってるみたいで、その数までは指数的に増える相手だった、ってことを言いたいだけだったんだけどね」
オグリの様子に、頭を掻きながら声を返す私。
どれほど減らしても、必ず一定数まで増える相手。その増え方が倍々であったために、バイバインの話を思い付いた……というだけの話なので、頭から煙がでるほど悩む必要性はないんじゃないかなー、と思わなくもないのでした。