なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
仕事が終わり、フリーになった私達がすることと言えば、なんだかわかるかな?
そう、粛清だ
別に三分解説をしてるというわけでもないので、そーいうのはよいのです、いらないのです。*1
「んーしかし、こうして私もお呼ばれしてしまったわけですし、そういう方向性でも良いのでは?サバゲーとかやります?」
「(郷に帰ったら似たようなことは幾らでもできるので)いいです」
「なんと、そういう血生臭いのはノーセンキューだと?」
(・ワ・)「きのうきょうあーすー、というやつですなー」*4
「……いや、混じりすぎでしょ、幾らなんでも」
折角の遠出なのだから、とばかりに早朝にも関わらず呼び出した二人……ゆかりさんとシャナと会話をしながら、駅の構内の売店で買ってきたおにぎりを一囓りする私。
「……パクパクですわ!」*5
「いや、キミ別にウマ並の食欲ってわけでもないやろ」
「あなたとっても、ウマナミジャナイノネー……ということですか」*6
「そもそもにそれ、マックイーンの台詞じゃないでしょ」
「そこはかと無く漂う似非お嬢様感……でもそれがないならやきうのお姉ちゃんだし、どっちがマシなのやら」*7
「呼んだー?」*8
「呼んでな……今どこからでてきたの貴方」
お嬢様口調でパクパクだと、どっちかと言うと妖精騎士の方を思い出してしまう私ですが、流石にそっちは茶化せないので口にはしないのでございました。*9
……考えてる時点でアウト?だよねー。
「なるほど、先に皆さんがお参りに行ったのは、あの有名な……」
「そうあの有名な。そっちは郷の中で神社に行ったとかなんとか?」
「人語を喋る熊が居るのを見て、別の人語を喋る牛が驚いてましたね」*10
「……後半の人は本人なので?」
「さぁ?そもそもなりきりだとしても、人選が謎だと思いますが」
「だよねぇ……」
ウルキオラ君とかを連れて、そのまま郷に戻る事にした五条さん達と入れ替わりに、こちらにスキマ送りされてきたのが、此処に居るゆかりさんとシャナである。
なので現在のメンバーは、私とマシュとBBちゃん・
なおパイセンに関しては「項羽様のお声がっ!?」とかなんとか言いながら、何処かへと走り去ってしまったのでおりませぬ。……新年早々いつも通り過ぎるお方である。
ともあれ、ここで郷に直帰したところで、待っているのは寝正月。……正確には寝三が日ってことになるんだろうか?*11
まぁともかく、帰っても怠惰に過ごすだけ、ということになるのは確実。
だったらまぁ、徹夜明けテンションで遊びに繰り出すのだって十二分にありだろう、と思う私なのであった。
「それで、どこに向かう予定なのですか?」
「決めてないから、案を募りたい。とりあえず今は都心部に向かってる感じだけど」
「はい」
「ん、オグリどうぞ」
「食べ歩きがしたい」
「朝から重いわ、やるんなら午後からね」
そんなわけで、メンバー達に希望を募っていく私。
一番最初に発言をしたのはオグリだったが……朝から食べ歩きというのはちょっとアレなので、やるにしても午後からの方がいいだろう……という言葉を返すと、彼女はちょっとだけションボリとしていた。
代わりと言ってはなんだが、朝御飯のお弁当の中に人参が入っていたので、それをそっ……と差し出したら、大喜びでモグモグと食べていたのだった。
端から見たら食べられない人参を、食べられる大人に渡している幼女の姿にしか見えない……ということに目を瞑れば、彼女の機嫌を直せた分良い行動だった、と言えないこともなくもないような。
……まぁ、私に風評被害が付いて回る、だなんてのは今更なので気にしない。横のゆかりさんがにこにこしているけれども、私は気にしない。……次だ次っ!
「ん」
「はいシャナ」
「とりあえず服でも見ない?私達、キャラの外見的な記号性の保持の意味あいで、イベント事でもないと服を変える機会、あまりないわけだし」
「なるほど、晴れ着シャナとな?」
「……いや、流石にそこまではいいわよ」
「えー、君ら追加組以外は着てるのにー?新春晴れ着ピックアップしようぜー?」
「どういうノリよそれは……」
「あれですか、着物のスキマにお年玉挟めばいいですか?」
『ゆかりさんの発想が前時代的過ぎます!ところで、私もお着替え、した方がいいですかぁ?』
「BBちゃんのDVDとな?」*12
『せんぱいの発想も大概でしたね☆』
「うるせー薄い本の女王」*13
『その称号は鹿島さんにお譲りしまーす』*14
「そんなものを投げ合わないでください!?」
次に手を上げたのは、こういうイベント事で積極的に発言してくるのは珍しい気がするシャナだった。
内容は、折角だから着飾りたいというもの。
……彼女の言う通り、作画上の都合だったり描写の簡略化だったりの影響で、アニメや漫画のキャラクターというものは、その服装が大きく変化することはほとんどない。
ビジュアルから感じるイメージというのは、意外とバカにならないものである。
学生服を着ているのなら学生なんだろうと思われるだろうし、スーツを着ているのなら社会人なのだろう、と思われることは容易に想像できる。
……実際には、学生服やスーツを着ていたとしても、連想する役職や職業に就いている、という保証はないわけだが。
ともあれ、制服と言う形でイメージが固まっている面がある、というのも事実。
特にシャナはデフォルトだと学生服に黒いコート、というあまり可愛らしくない姿をしている。
……どうせなら綺麗に着飾りたいと思う女心は、まぁなんとなくわからないでもない。セクシーかキュートかで迷う、みたいな?クールとパッションを加えても良いぞ。*15
ただ、朝から空いている服屋があるのか、という疑問も無くはないので、やるとしてもちょっと時間が経ってからという結論に至り、そのまま次の提案を待つ私。
「は、はいっ!」
「はいマシュ、要望をどうぞ」
「えっと、そのですね?」
そうして、次に手を上げたマシュが提案したのは──。
「凧揚げ飛んだー、屋根まで飛んだー」
「それだと壊れて落ちてしまいますよ、せんぱい」
「んー、じゃあ屋根よーりーたーかーいー、凧揚ーげーだー」
「キミ二つも三つも凧揚げしてへんやろ」
「むー、好きにやらせてくれないー?」
「突っ込まれるようなことを言ってる方が悪い、ってだけでしょ」
「……ぬぐぐ、なんだこの扱い……」*16
公園の一角、空に泳ぐ凧を糸で操りながら、ああでもないこうでもないと話続ける私達。
マシュが提案したのは、『正月にするべきことをしたい』というものだった。無論、あくまで日本での行事に限るという形ではあるが。
彼女自身は日本の出身ではなく、かつその文化に触れる機会というものも少なかっただろうが、原作において彼女の先輩となる人物は、極東の出身。
そんな彼/彼女と一緒に行動する内に、日本様式の祝い事やらなにやらを知識の上で網羅してしまった彼女は、いつかそれを試してみたいと思っていた、らしい。
礼装やら何やらで着物を着たり羽根つきをやったりしていたような気がするが、それはあくまでも
……中身的には普通に日本人であっても、そちらも今の彼女には記録でしかなく。
故に、改めて日本文化としての正月を、楽しんでみたくなったのだという。
そんなわけで、他の店があくまでの時間潰しの意味も兼ねて、凧揚げやら羽根つきやら、そういった正月にする遊びをやっていこう、という話になったのだった。
なお、道具は私が造りました。
『ごまかす方の身にもなってくださーい!どうして一般人の目の前で『錬金っ!』とかやっちゃうんですかぁ!?』
「ガイアが私にもっと輝けと言っていたので……」*17
「なるほど、つまり……こうだな!」
「いや、固有発動すな。……いや、そもそも今どうやったんそれ?」
「気合いだ、この前悟空に教わった」
「なに教えとんねんあの戦闘狂……」
「名実ともにスーパーサイヤウマ娘と化した、というわけですね」
「気が高ぶり過ぎてサルになったわね……」*18
「勝手に優勝するのもやめてください、せんぱい」
なお、会話はいつもの如くぐだぐだである。
意外と高く揚げるのが難しいとされる凧揚げだが、此処に居る面々は風を読むくらいはお手のものであるため、早々落っことすこともないため、余裕が有り余っているのである。
そうなると、最早立ち話のついでに凧揚げをしているかのような状態になるわけで……。
「……なんか、やけに見られてるね」
『そりゃまぁ、一応周囲の皆さんへの違和感は消していますが……そもそもの
「言い方ぁ」
なんというか、次第にいたたまれなくなったので、早々に凧揚げは切り上げて羽根つきに移る。こっちは寧ろ、女子がやってる姿の方が印象的な気がしないでもないので、変に衆目を集めることもないだろう。
そんなことを考えつつ、
『だからぁっ!せんぱいは目立ちたいのか目立ちたくないのかどっちなんですかぁ!?』
「BBちゃんを困らせたい方」
「まさかの第三の選択肢……」
「平常運転ね。で、負けたら顔に墨で落書きについては、するの?しないの?」
「んー、ホントはするべきだけど、昼になったらすぐ動く予定だし、今回は無しで」
「はいはい。トーナメントでいい?」
「……なんだか、シャナさんが心なしか張り切っているような?」
「……はっ!?まさか羽根つきで攻撃しようと……っ!?」
「違うわよ、単に勝負に手加減をするつもりはないってだけ。……そもそも、羽をぶつけたところで怪我なんてするわけないでしょ?」
「えっ?」
「……えっ?」*19
どうにも互いの間に、拭いきれない認識の差があるような気がしないでもないけども……うん、まぁテニヌじゃないんだから、そんか気軽に人死になんてでないだろう、と自分に言い聞かせておく。
比較対象があれなのはいつものこと、とみんなで納得して、始まった羽根つきは……。
(・ワ・)「むよくのこころのしょうりですなー」
「い、意外と強い……っ!?」
その身近な手足にも関わらず、機敏に動き続けたビワが勝利したのだった。……意外な伏兵っ!