なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……さっきまでの長い解説の意味はっ!?」
「いやー、情報整理のため以上の意味はない、というか?」
世にも珍しい、ギャグっぽい顔で迫ってくるシャナという不思議物体を宥め賺しつつ、苦笑を浮かべる私。
小難しい理論とか話とか、あれこれ語ったけれども。
まぁ、毎度の如く現状の理解に役立ったというだけで、現状の解決の方には至らないというかなんというか。
「そもそもの話、『
「それが使える理由は種族特性的なもの、って言ってたっけ?……つまり、大前提として今の状況を作った何者かは、この状態の解決を望んではいない……ってことになるものね」
「……む?何故そうなるんだ?」
私とクリスの言葉に、オグリが首を傾げる。
まぁ、理屈の面での話はさっきまで散々していたが、理由についての面は然程重視していなかったので、仕方ないといえば仕方ないのだが。
なので、二人で顔を見合わせたあと、そのあたりの説明に移るのだった。
「箱の内部でならなんでもできる、とは言うけれど。それでも、箱の創造者の
「文字通りの無限の可能性を発揮できるのなら、それこそ一発で求める答えにたどり着くはずだからね」
『なるほど、月での私みたいなもの、ということですね?』
「つ、月?」
「BBさんは元々月の管理AIのお一人でしたから。そこでのご活躍?……を、今回は仰っているのだと思われます」
『ん、んー。マシュさんにそのあたりを語られるのはむず痒いのですが……まぁつまり、仮に無限の試行回数を、時間の軛から逃れた場所で奮えるとしたら。それはつまり、外から見ると一回で成功した、というのと近しい結果になるのです。ですから、それは因果となり、決定事項となり、覆すことのできない未来となる。変えられるのは、それが過ぎ去った後のことだけ、ということになるわけなのです!』
「う、うん……?」
『……ぶっちゃけると、やり方と目的地が見付かっているのなら、たどり着けないはずがない、みたいな感じですね。もはや急行で直行、みたいな?』
「練習で二キロ走るのと競馬場で二キロ走るのの違い、みたいな感じかしら?前者はコースの内容が無数に考えられるけど、後者はコースに関しては予め決まってるでしょ?……条件を付け加えるとしたら、『特定の行程を含むコースを走りなさい』と言われて、特定のコースを走るまでを競う状況……みたいな?」
みんながどうにかしてオグリに理解させようと頑張っているのを見て、思わず苦笑する。
クリスの例を元にするのなら、『一つのコースの中で二度進行方向を反転させ、かつスタートとゴールが同じになるように走れ』、みたいな指令を与えられたとして、それを満たせる場所を探すと考える時の話……ということになるだろうか。
普通の試行作業では、まず条件に見合う場所を探すことから始めることになるが、無限の試行回数を行使できる状況では、要するに『考え付くすべてのコースのレイアウト』が、最初から頭の中にあるもの……として扱うことができる。
前者は指令が指しているものの具体例がわからないので、虱潰しに条件を満たせる場所を探す羽目になるが、後者はそれが競馬場のような、なにかしらのレースのトラックを指していると
ゆえに、後者はまるで
なお、この例で言うと『選択肢も無い状態から、なんにも見ないで答えを当てる』ようなもの達が、アンサートーカーのようないわゆる看破系──
「……普通にクイズ番組で答えを探す時に、問題について詳しくないのが通常の試行作業、詳しいのが無限の試行作業って説明じゃダメなの?」
「その場合だと無限の方は『アカシックレコード並になんでも知ってる』って風になるかな。単なる知識自慢は、言ってしまえば通常の試行作業の延長でしかないしね」*3
「……無限ってめんどくさいわね」
こちらの解説に、シャナがうんざりしたような声をあげる。
……まぁ、無限という概念がめんどくさい、というのは同意。
根本的に数字ではないので、そこら辺の論理を適応するとわけわからないことになるし。*4
「到達不能基数とかまで行くと、最早なにがなにやらって感じになるしね」
「……それは一体なんなの?」
「無限を無限個集めても到達しない大きすぎる数」
「!?」
なお、BBちゃんが月で行った所業は、単純な加算ではたどり着けないこの到達不能基数にたどり着いた、みたいな感じだったりする。まぁ、厳密には違うけど。*5
「えーと、無限云々の話はこれくらいにして。さっきの例で言うなら、例え無限の選択肢を集めても、
「……まぁ、道理よね。無限に繰り返してたどり着けないのなら、別のやり方を試す必要があるっていうのは」
「そう、その考え方が間違いなんだよ」
「……は?」
改めて話を戻し。
何故、この現象を起こしている人物が、この現象の解決を願っていないのか、という部分に話は戻る。
先ほどから述べている通り、無限回試行作業ができるのなら、本来ゴールにはたどり着けていない方がおかしい。
ゆえに、その試行作業の中にゴールが含まれておらず、だから外からゴールを知っているもの・ゴールに届き得るものを招き入れた……というのが、当初の予測であった。
が、だとするとおかしい点が存在する。
「
「……あ、なるほど!
「マシュビンゴ!」
クリスからの再三の確認により、ついにマシュがそこに気付いたため、内心で喝采をあげる私。やはり……天才か。*6
彼女の言う通り、この場所ではループしていることに
……構成メンバーが変動していることにすら気付かないレベルの、あまりにも粛然としたリセット作業。
仮に、この現象を解決して欲しいと願っているのなら、これはあまりにもおかしい。
バグってループから抜け出せなくなったどこかの村*7じゃないんだから、普通は抜け出せるように前のループの記憶を保持できるようにするとか、誰かにそこら辺を思い出せるような仕掛けをするとか、そういう補助を差し込んでしかるべきなのだ、本来であれば。
なお、現実は
ループさせる技能だけを持っている……みたいなパターンでもない限り、ここから導き出される、この異変の首謀者の考えは一つきりだろう。
「──端から解決させる気がない。ループさせることが主目的であって、ループから解放するつもりがない、って風に考えるのが自然ってわけ」
「なん……だと……?」
私の言葉に、オグリが唖然としたような声をあげる。
他のみんなも、険しい表情をしたものがほとんど。……なにせ、彼女達はあくまで『私からその可能性を聞いただけ』。
ループしている実感もない以上、現状がその予測通りであった時に、手の出しようがないことに気付いてしまったからだ。
「……そういえば、シャナは『ここは断ち切るべきではない』と言っていたな?」
「ええ、そうね。──脅迫ではなく、助言。さっきのキーアの台詞がホントなら、これはおかしいんじゃない?」
そんな中、オグリが思い出したようにシャナの方を見詰め、声をあげた。
内容は、シャナが贄殿遮那を使おうとして、結局それを止めた時の話。
この異変の首謀者が解決を望んでいないのであれば、そこにはある程度の悪意が混じっていて然るべきだが……。
「それについてなんだけど……多分、ループさせてる人物と、この結界を作った人物は別、なんじゃないかなって」
「はぁ?」
それに関しては、この異変が
唐突に現れた複数犯説に、パイセンがわけがわからない、とばかりに声をあげるが……。
「……なるほど、そこで私の存在、ってわけね?」
「それと家の中かな。現状の首謀者の動機を考えるに、必要性が薄いし」
「いや、二人で納得してなくていいから、話しなさいよ!」
「あ、ごめんごめん」
視線を動かした先にいるのは、クリス。
記憶を精査した結果、途中からいきなり加わっていた人物が彼女である。
途中から加わったのだから、私達に不和でも起こさせるための人員かと思わなくもないのだが……実際は、彼女は原作の彼女と同じように*8、事態の解決に手を貸してくれる人物となっている。
「ここから察するに、彼女はいわゆるお助けキャラみたいなもんでしょう。……突然出てきた理由とかには一考の余地があるけど、ともかくこちらの味方、というのは間違いないと思う」
「だからこそ、私の存在自体が複数の人間の関与を示してる、ってわけ。だって、さっきの話を真実と仮定するのなら、事態の収拾なんて求めるはずがないんだから」
「同じ要領で、家の中の迷宮染みたモノも、多分別人の関与だと思う。だって、ほっとけばなんにも疑問に思わないまま、ずっと永遠の一日に囚われてくれるのに、わざわざ疑念を抱くようなモノを設置する意味なんてないんだし」
思い起こすのは、自身の記憶の内で現状一番古いもの。
子細なやり取りはちょっと思い出せないものの、特に異変も起きることなく、単に遊んで単に帰ろうとしていたような気がする。
その時は家の中には踏み込んでいないため、中がどうなっていたのかはわからないが……もし仮に、中の様子が今と同じだったとするのなら……その時点で、私達はこの場所の異様さに気付いていたことだろう。
つまり、この閉鎖環境の中でループし続けるのにあたり、あのバイオめいた家の中の様相は、正直言って邪魔以外の何物でもないのである。
ほっとけば永遠ときらら枠みたいになっている*9ところを、わざわざホラーとかグロとか突っ込んで『いなかぐらし!』みたいな感じにする必要は、一切無いのである。*10
「そもそもに、マーリンが手助けしてくれてるしね。複数人関与なのは、最初っから決まってたんだよ」
「……そういえば、なんでアイツここにも干渉できてんの?ここ、可能性の
ついでに、お節介焼きの夢魔が手伝ってくれていることを告げると、パイセンから怪訝そうな声が返ってきた。
確かに、この場所は(予想が正しければ)猫箱の中。
可能性が渾然と漂っており、本来であれば手助けなんてできるはずもないのだけれど……。
「マーリンの千里眼は
「な、なるほど……」
それ以上の大がかりな干渉は、下手すると世界線の固定を招きかねないだろうし……と、今も理想郷からこちらを覗いているのだろう、暇な大魔術師の思考を予測する私なのであった。