なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・できることとできないこと

「複数人の関与がほぼ確定的となった訳ですが……これから、どうされるのですか?」

「うーん、話してる内にそろそろタイムリミットだろうし、今回は行動目標を立てただけで終わり、かなぁ」

 

 

 長々とした話も終わり、マシュが小走りに近寄ってくる。

 日が暮れてどれくらいでループの終端となるのか、今のところはっきりとしたことはわからないが。

 とりあえず、あと何時間も猶予がある……というようなことがないのは確かだろう。

 

 今回の議論の内容などは、あくまで私の脳内にしか残らないが、だからこそ忘れないように気を付けなければなるまい。

 

 

「……?全部覚えてるってわけじゃないの?」

擬き(デミ)って言ったでしょ。あっち(本物)はその世界線の記憶を参照できない代わりに、前の世界のことを覚えてるけど。私の場合はそこら辺、新しい世界の方の知識もキチンと保持してるから、前の世界を()()()()のにちょっと手間が掛かるのよ」

「……貴方がどういう生態なのか、ちょっと気になってきたんだが?」

「恐怖のマッドサイエンティスト的な面を発揮しなくていいから……」

「だだだ誰が岡部好き好き愛してるだあっ!!?」

「誰もそこまで言ってねぇ!!」

 

 

 自爆すな、とツッコミを返せば、冷静になったクリスは顔を赤くして俯いてしまった。……照れるなら自身の言動にもうちょっと気を付ければいいのに……。

 なんて、そんなことをぐだぐだ言っている内に、世界(視界)はまた反転(一巡)するのだった。

 

 

 

 

 

 

「なるほどなるほど。せやから、なんやいきなり機嫌悪うなったんやね、キミ」

「話が早くて助かりまーす」

 

 

 と、そんな感じのことを、今回のメンバー達にさっくりと共有した私である。……え、やり方?そりゃ勿論、言葉で説明してる暇が惜しいから、こう脳に直接ぷすっと、ね?

 

 

「……いきなりわけのわからない糸をぶっ刺すのはやめなさいよ、お前」

「糸じゃなくてエーテライト*1ですよ、パイセン。ついでに言うのなら、刺したのは()()()()()ですし」

 

 

 なお、補足を入れるならば、あくまで私の方に刺して、みんなに情報を読み取らせた、という方が正解である。

 突然自分の頭に極細の糸を突き刺し、その反対側をみんなに持たせようとしてくるのだから、正直恐怖映像感はなくもないなぁ……とは思ったけど、ついやっちゃったんだぜ☆

 

 

「ま、まぁそのおかげで、手間を省略できたんだからヨシとしませんか?」

「……まぁ、あれだけのことを口頭で、ってなると時間が掛かるのはわかるけど。だからって、唐突に奇行を見せられる方の身にもなってほしいんだが?」

「あっはっはっはっ。ごめんごめん。でもまぁ、話の信憑性の問題とかもあったしさ?」

「そりゃまぁ、そうだけど……」

 

 

 ぶちぶちと文句を言うクリスに、まぁまぁと宥めるように声を掛けるのは、さっきは居なかったゆかりさんである。

 ……同じように居なかったタマモも今は居るので、ちょうど姿が見えなくなった二人──オグリとBBちゃん(生身)と入れ替わり、ということなのだろうか。

 というか一切疑問に思ってなかったけど、さりげなくBBちゃん生身だったなアレ?

 

 

「ゆくゆくは電子の世界から物質化することを目標にしている……とは仰っていましたが、今はまだそのあたりの技術は確立していない、とも仰っていましたね」

「完成すればアグモンとか侑子も外に出られるようになるし、早めにお願いしたいところだね。……まぁ、侑子は外に出す時にはちょっと確認とかいるだろうけども」

 

 

 完成していないはずの技術が完成していた……という世界線に切り替わっていたのだろうか。

 今の私のスマホの中に、彼女の姿はないが……ふぅむ、居ないメンバーがどうなっているのか、というのはよくよく考えていかなければならないのかもしれない。

 

 

「と、言いますと?」

「完全に居ないのか、はたまたあっち()のどこかに閉じ込められているのか。……前者の場合、そのままの状態で脱出条件を満たすと、居ない人が()()()()()()()()……なんて弊害を起こしたりしそうだな、というか」

「それは……なんともゾッとしない話ですね」

「可能性の隙間に取り残されて消滅する……ってことになるからね」

 

 

 見ている限り、私とマシュ・パイセンとシャナに関しては変動がない感じだが……。

 それ以外のメンバーである、オグリとタマモ・ゆかりさんとBBちゃんに関しては、周回時に居なくなるパターンを確認している。

 認識している回数が少ないので、これから繰り返す度にメンバーの変動が激しくなる可能性もなくはないが……。

 この()()()()()、というものの範囲次第では、想定しているよりもめんどくさいことになりかねないわけである。

 

 全員がちゃんと揃った状態以外で、脱出に成功する……くらいならまぁ、最悪中に戻ればいいだけなので、まだ取り戻せる範囲だろうけども。

 仮に、このループの解消条件を満たしての脱出を行った時に、全員が揃っていないだなんてことになると……。

 猫箱の中である、というある種の万能性を捨てることになり、そのタイミングでのメンバーが世界に()()()()()()()()()()()()()()()と認識され、残された者は二度と会うことの叶わない相手になる……なんて可能性もあり得るわけで。

 そうなると、最早間接的な殺人である。検挙も立証もできない、完全犯罪の出来上がりだ。

 

 

「だからまぁ、家捜しの時には誰か閉じ込められてないか、逐一確認した方が良いって話になるわけ」

「……仮に見つからなかったら?」

「全員揃うまでリセマラです」*2

「うわぁ」

 

 

 ゆかりさんが、顔を青くして呟く。

 自身の意思とは無関係の場所で、いつの間にやら断頭台に立たされていたと知ったのだから、その恐ろしさはいかほどか。

 ……なお、その事をずっと()()()()()()()()()()()状態でループすると、もれなくほむらちゃんとか岡部とかの仲間入りである。そっちはそっちでご勘弁願いたい……。

 

 

「まぁともかく。やるべきことについてもわかってないし、とにかく手当たり次第に手掛かりを探していこう」

「では、引き続き家の中の探索、叶うのであれば他の方々の捜索。それから、れんげさんのお相手というわけですね」

「……それ、ほっとくわけにはいかないの?今のところ、なにか問題の起点になってるとは思えないんだけど」

 

 

 ともかく、使える時間はおよそ六時間前後。

 単に家捜しするのなら余裕があるはずだけど、生憎と探すのはバイオめいた仕掛けまみれの場所。

 全貌も明らかになっていない以上、RTAやTASのような華麗な攻略は不可能に近い。

 襲ってくる相手がいない……というわけではないみたいだけれど、それに関してはパイセンに引き寄せられていくみたいなので、心配は必要ないのだが、それを差し引いても中々にギリギリの時間設定だと思われる。

 なので、れんげちゃんの相手は別に構わないのでは?……という声がシャナからあがったのだけれど……。

 

 

()()()()()()()()()のなら、れんげちゃんは攻略条件の一つだと思う。彼女自身がなにも知らなくても、彼女の周りになにかあるって可能性は高いから、放置はちょっと悪手かな」

「……まぁ、ちゃんと考えてるっていうのなら、私から言うべきことはもうないわ。それで、私は探索側でいいの?」

「……んー。そこに関してはノー、かなぁ」

「はぁ?」

 

 

 れんげちゃんがこの異変の中心部に居るのは、ほぼ間違いないと思われる。

 ……それを踏まえると、彼女から()()()()()()()()()()()()()()シャナは、前回と違って残って貰った方がいい、ということになるわけで。

 なので、彼女には居残りして貰いたいと遠回しに伝えたところ、彼女は突然しどろもどろになって、首を左右に振り始めたのだった。

 

 

「む、むむむむ無理!絶対無理!!」

「おや、子供は苦手かね?」

「そうよ悪いっ?!……いやその、これはシャナ()がそうだってことじゃなくて……」

「ほう、珍しいな炎の娘。お前にも、苦手と言うものがあったのか」

「シャナとしてじゃないって言ってるでしょっ!?」

 

 

 珍しく取り乱すシャナと、珍しくニヤニヤ笑っているパイセン。

 ……キャラが近しい二人だが、こうなると似ているとはとても言えたものではない感じである。

 

 ともあれ、シャナが子供が苦手、というのはちょっと意外と言うか。

 原作にはそういう描写は無かった……というか、そもそも子供と関わる場面自体がほとんど無かったような気がするので、珍しいことにこれは彼女の中の人の反応、ということになるのだろう。

 基本的に中の人が見えることのない、レベル5区分の彼女の意外な姿に、ちょっと呆気に取られてしまうが……うーむ、そうなると困ってしまう。

 

 

「シャナって先代の『騎士団(ナイツ)』って使えないよね?」*3

「そ、そりゃ使えないけど……」

「じゃあうん、無理だわ」

「なんで!?」

「だって、シャナのポジションを代替できるの私だけだけど、シャナは私の代替できないんだもの」

「はぁ!?喧嘩売ってるんなら買うけど!?」

「売ってない売ってない……私は基本運用がコピー能力者のそれだから、誰のポジションでも……効率は落ちるとしても代わったりできるけど、他の人が私の代わりをしようとすると、やらなきゃいけないことが多過ぎて持たんのよ。今回だと探索時に私、多重影分身とか使ってるからね?」

「……なん……ですって……!?」

 

 

 私の技能は、()()()()()コピーに留まる。

 再現度の仕様からして、投影みたいにランクダウンするから組み合わせて使っている……というのが基本で、例に出した多重影分身だって、純粋にそれだけを使用しているわけではなく、似たような分身技能を重ねて使う……という形で無理矢理実用圏内に押し上げているものである。

 ……いやまぁ、組み合わせてであれ、実用範囲に持ってこれてるあたり、大概おかしいのは百も承知だけども。

 ともあれ、実際に私が支払っている労力の面を無視すれば、基本的に万能プレイヤー扱い、というのが私のポジションとなる。

 

 なので、普通の……っていうと語弊があるけど、言ってしまえば一つのキャラに特化し(なりきっ)ている他の人が、私の役割を務めようとすると、手数とかの面から無理が出てくるのである。

 今回に関しては、彼女が先代『炎髪灼眼の討ち手』の固有の自在法『騎士団(ナイツ)』を使えるのであれば、容易に代わりが務まる分、わりと簡単な案件だったのだが……まぁ、無い物ねだりをしても仕方ないと言うか。

 

 

「器用貧乏の凄いやつ……ってのが私だからね。だから、別に喧嘩とか売ってるわけじゃないんだよ、ホント」

「ぬ、ぬぐぐぐぐ……」

 

 

 そう語ったところ、シャナはなんとも言えない表情で唸っていた。

 今回の場合、必要なのは『れんげちゃんから目を離さない』ことと、『家捜しのための人手の確保』。

 前者はシャナの『審判』で賄えるが、後者はシャナの取れる手段だと天目一個の召喚くらい。*4

 ……下手すると、彼の顕現そのものがこの結界の破綻を招きかねないので、あまり取りたい手でもない。

 

 ゆえに、シャナにはれんげちゃんを見ていてほしい、ということになるのだった。……それに関しても、私を除けばシャナにしかできないからね。

 

 

「まぁ、私も残ってやるわよ。子供の相手くらいなら、別に問題もないでしょうし」

「おー、ぐっちゃんが残ってくれるん?」

「そうよ、せいぜい敬いなさい子供」

 

「……不安はなくもないけど、まぁパイセンは面倒見もいいし、大丈夫かな?」

「では、代わりに私が探索に同行するということで宜しいでしょうか?」

「私は変わらず居残りね。探索とかみたいな力仕事には向いてないし」

「じゃあ、ウチは探索やな。なんや襲ってきても、ウマの足に追い付けるようなものもおらんやろ」

「私も探索ですかね。最悪ゾンビ相手ならチェーンソーでも使えばいいですし」

(持ってるんだ、チェーンソー……)*5

 

 

 結果、パイセンとシャナ、それからクリスを残し、他のみんなで家の中を探すことになったのだった。

 

 そうして中に入り、いざ探索を始めようと分身しようとして、

 

 

「──後輩、私死んだわ」

「…………は?」

 

 

 いきなり地面から生えてきたパイセンの姿を見て、また視界(世界)一巡(反転)した。

 

 

*1
『MELTY BLOOD』より、キャラクターの一人であるシオン・エルトナム・アトラシアの使う糸のようなアイテム。エーテルで作られた特殊なモノフィラメント、疑似神経であり、武器に使ったり相手の脳に刺してその情報を読み取ったりなど、様々な用途に使える彼女の武装。なお、相手の脳の情報を読み取る為には高度な取り扱いが必要となるため、これさえあれば誰でも真似できる技術、というわけではない。fgoのシオンは、これを使わなかったことも一因として、他の作品の彼女と性格がかなり違ったものになっているのだとか

*2
『リセットマラソン』の略。ソーシャルゲームは基本無料を謳っているが、原則的には課金しなければ手に入らないキャラなどの存在により、最終的に課金をさせようとしてくる。それと合わせ、ゲームを始めたばかりの初心者には、ある程度ゲームを楽しむ──トップ層に追い付けるように、有料キャラを無料で手に入れる機会を用意していることがある。これを利用して、出来うる限り有利な状況でゲームを開始できるように、無料で貰えるガチャを何度も引き直す……ために、アカウントを削除するなどして初心者ガチャを回し続けること。文字通り、ゲームを()()()()して、目的のキャラやアイテムを手に入れるまで同じ作業を()()()()のように続ける、という意味。なお、初心者ガチャが豪華すぎると、リアルマネートレード業者の標的にされることもあるため、意外と調整の難しい部分だったりする

*3
『灼眼のシャナ』における先代の『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールの得意とする自在法の名前。紅蓮の焔で構成された軍隊を顕現させる、とても強力な技能。軍隊とは言うものの、獣や武器だけ、はたまた破城槌まで顕現させられる上、そもそも軍隊状態でも一体一体が並のフレイムヘイズと同等とかいう、無茶苦茶な性能と汎用性を誇る

*4
『灼眼のシャナ』におけるミステスと呼ばれる存在の一つ。『史上最悪の“ミステス”』『化け物トーチ』『“紅世”に仇なすモノ』等と呼ばれ恐れられた存在。贄殿遮那を造り上げた鍛治士が変じたものであり、そちらの特性(自在法無効)を引き継いだ上に気配を持たず、自身に最低限の封絶を貼った上で戒禁まで掛かっている為、『物理でしか勝てない物理最強』みたいな災害染みた存在として世界を彷徨っていた。最終的にシャナの武器となるが、贄殿遮那の中に彼は未だ存在しているらしく、彼女の求めに応じて顕現したこともあった

*5
初音ミクにとってのネギのような、結月ゆかりの持ち物として有名なアイテム。和田たけあき氏の楽曲『サヨナラチェーンソー』がその元ネタとされる

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