なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・地道なマッピングは冒険者の嗜み

「あー、いっそ全員で家の中に突撃する、というのは……?」

「多分、外で城を作るっていうか、砂遊びするってのも必要条件に含まれてるんじゃないかなーって思ってるから、それはおすすめしないかな。条件が全部出揃って、砂遊びは一切関係ない、ってなったのなら、無視して突撃してもいいかも知れないけれど」

「んー、全部が全部、一度に確かめようとするからこうなってる、ってことでいいのよね?だったら一つずつ確実に確かめていくってのは……」

「地道に見つけて行く……マップ埋めみたいで、楽しそうなん!うち、地図いっぱい書くん!」

「……この通り、れんげちゃんがマッパーに変貌していく姿に耐えられると言うのなら」*1

「んんんんんん……!」

 

 

 あれこれとみんなで意見を出しあってみるものの、どうにも纏まらない。

 単純に繰り返している、と説明しているものの。

 可能性の中での有限ループである、というパターンも考慮しなければならず、わりと時間とか人とかがカツカツになってしまい、運用に関して難しいところが出て来てしまっているから仕方ないのだが。

 

 

「さっきはリソース足りてるって言ってたじゃないの、お前」

「多分、って言ってたじゃないですか。箱の中に居るからこそ見えることもあるけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んですよ?」

「めんどくさいわねぇ……」

 

 

 パイセンが顔を顰めているが……確かに、現状がめんどくさいというのは確かだろう。

 

 ループっぽいものである、というのは間違いない。

 ループの癖に、本来であれば記憶の引き継ぎもない……というのも間違いないだろう。

 が、逆に言うと明確なのはその二つだけ、なのである。

 似たような状況を繰り返している、ということだけが確定的で、それ以外の全ては、あくまでも状況証拠からの推察でしかないのだ。

 

 今この状況に対して考えていること、思っていること、わかっていると()()()()()()()こと。

 それらは全て、後の情報入手の際に、印象ごとひっくり返る可能性のあるもの、でしかないのである。

 

 

「そこまで卑屈にならなくてもいいんじゃない?」

「まぁ、これが最悪のパターンを予想した結果、ってのは間違いないけども。……取れる手段が限られている以上、悲観したくなるのも間違いないと言うかね?」

 

 

 クリスからは嗜めるような言葉が返ってくるが……、あまり楽観視していられない理由がこっちにある以上、ちょーっと焦燥感が沸いてきたりしちゃったりするわけでですね?

 

 

「と、言いますと?」

「……私が何回覚えてられるかわからん」

「あー、なるほど。私達はあくまでも貴方の記憶を覗き見て、今までのことを理解しているだけだから、脳への負担はほとんどないけれど。貴方の場合は純粋に過去(今まで)の記憶と(これから)の記憶、二つを保持し続けているから……」

「あっ、つつつつまり、周回を繰り返す度に、せんぱいの記憶は嵩み続けていくと……!?」*2

 

 

 どこぞのインデックスさんの話じゃないが、大体人の記憶と言うのは大体1ペタバイトほどだとかで、そうそう埋まるものではない……はずなのだが。*3

 繰り返し、という一種の特殊な環境下において、何回繰り返せるのかと言われると……正直よくわからん、としか言いようがないわけで。

 

 つまり、いきなりやってくるオーバーフロー*4、なんて可能性もあるということになり、ちょっとビクビクするのも仕方ないんじゃないかなー、なんて私は思ってしまうわけなのです、はい。

 

 

「私のリミットに場所のリミット、それかられんげちゃんが変化していく可能性(のリミット)……っていう、限度を定めるものが幾つか散見されてるから。……あんまり余裕がないって気分にされちゃってるわけなのですよ、はい」

 

 

 しょっぱい気分でそう告げる私に、皆の反応は微妙に消沈したものになっていったのだった。

 

 

 

 

 

 

「……とりあえず、来るかどうかもわからないタイムリミットに怯えてても仕方ない……ってことで、探索を再開しない?」

「あー、うん。結局目星も大してついてないし、暫く探索を続けなきゃいけないのは本当なんだよねぇ……」

 

 

 沈んだ空気を破ったのは、またしてもクリスであった。

 こういう状況には一番適性がある、ということなのか、はたまた単に割り切っているだけなのか。

 ともあれ、彼女の言葉を聞いて、皆がやる気を取り戻したのは確かだろう。

 

 

「じゃあ、こうしよう。今までは、探索にも今一身が入っていなかった。だがこれからは、粉骨砕身・死ななきゃ安い*5の精神で探索するんだ、特にキーア以外は次回に持ち越せるモノなんてないんだから」

「んんんんん!?」

 

 

 まぁ、やる気を取り戻した結果、オグリがなにやら燃え始めたことにはビックリしたわけだが。

 まさか死ななきゃ安いなんて言葉を、現実で聞くはめになるとは思わなかったぞ……。

 

 

「いや、なにもそこまで張り切らずとも……」

「なにを言う、私達の疲労とかは持ち越さないのだから、のように働いても問題ないだろう?」*6

「私の気持ちが咎めるんだよぉ!!」

 

 

 そんな社畜みたいなこと言われても、こっちとしては困るだけなんだよなぁ!?

 ……でもまぁ、現状としてはそれが一番というのも、確かな話。

 手数が足りないのであれば、それを補うために死力を振り絞るというのは、一番簡単な対処の方法である。

 ……常態化しまくって組織が回らなくなる理由になるモノでもあるので、できれば勘弁してほしい対処法でもあるのだが(白目)。*7

 

 

「とりあえず、この一回がどうなるかを確かめてから……って話でもいいんじゃない?」

「そ、そうですね!流石にこの一回がラストチャンス、というわけでもないでしょうし!」

 

 

 なお、真面目組二人(マシュとクリス)の鶴の一声により、社会の歯車作戦は阻止されることとなった。

 これには私もスタンディングオベーション*8である。

 

 

「と、言うわけで。今回はマシュとシャナ、頼んだ!」

「はい、お任せ下さい!」

「まぁ、うん。多分大丈夫よ、うん」

「うちに任せるん、シャナお姉ちゃんのことは、うちがよく見とくん!」

「……おかしくない?なんで私の方が、面倒見られる側みたいになってるわけ?」

「自分の胸に聞いてみなさいよ、胸に」

「ぬぐぐぐぐ……」

 

 

 と、いうわけで。

 家の外に残るのは三人、全体的な分析役のクリスと、れんげちゃんの周囲を見極めるためにシャナ、それから二人の補助にマシュ。

 ……れんげちゃんが張り切っているが、彼女はあくまでも観察される側。例え立場が逆転しているように見えても、戦力扱いできるのはシャナの方なので、人数カウントとしては三人になる。

 

 それから、家の中に入るのは私とオグリ、それからパイセンの三人。

 ……さっき居ないのは二人と言ったが、よく見たらBBちゃんも居なかったため、建物の中に囚われているのは推定三人、ということになる。

 BBちゃんを内部探索に連れていけるのなら、もうちょっと家探しも楽になりそうなのだが……まぁ、無い物ねだりをしてもしょうがない。

 次回以降BBちゃんが初期メンバーに居ることを祈って☆4を付けつつ、居残り組に見送られながら私達は家の中に踏み込んで行くのだった。*9

 

 

 

 

 

 

 ──そして、()()日が暮れた。

 

 

「あ、お帰りなさいせんぱ……せんぱい?!」

「ただいま……」

「そ、想定以上に皆さんボロボロじゃないですか!?」

「虞美人が一回こっちにリポップしたあと、また突撃したのは見てたけど……なにがあったの?」

「話せば長ーくなるのですが……」

 

 

 戻ってきた私達を見て、一番始めにマシュがしたことは驚き口元を押さえること。

 怪我こそしていないものの、みんな服がボロボロ……具体的には大破したみたいになっていたため、その反応もわからなくはないのだが。*10

 ともあれ、これまでとはちょっと違う展開になったため、情報の共有が必要となった次第、というわけである。

 

 

「今回、ちょっと探索の手法を変えてみたのよね」

「手法を?一体どんな風に変更したのでしょうか?」

「これまでは、探索範囲を増やすために手分けをして探す……という方式を取っていたんだが、今回はパーティを組んでみたんだ」

 

 

 今回行ったことは、手分けをして探す……具体的には私×三(私と分身二人)と他の二人の計五つの探索チーム、という形ではなく。

 私とパイセンとオグリのチーム一つと、分身二人が一人ずつの計三チームにわける、という方法だった。

 これはまぁ、一つのチームにある程度の戦力を結集させることで、なにかしらの変化がないか調べる、という目的があったわけなのだが……。

 

 

「見たことのない扉を見つけた?」

「なんというか、すっごい大きい扉だった。キーアが押しても引いても叩いても、まるでびくともしないんだ」

「それは……気になりますね」

 

 

 その三人で探索を初めてほどなく、今まで見たこともない謎の大扉を発見することになったのである。

 

 それは、扉の周囲で四つの色違いの石板が存在感を主張する、あまりにも怪しい扉だった。

 そのため、オグリが言う通りにあれこれと試してみたのだが……扉が開く様子は一切なし。

 周囲の石板の内、左上の石板だけが黒く輝いていたが、わかったことはそれくらい。

 条件を満たさなければ開かない系統の扉だと判断して、とりあえず他の場所を探すために、そこを離れようとしたのだが……。

 

 

「そこでパイセンの死亡フラグがオンになったらしくてね……」

「周囲が大広間みたいな場所だったせいか、骨でできたカマキリみたいなやつが、天井から降ってきたのよ……」

「……は?」

「その衝撃で虞美人は一乙*11。以降彼女が戻ってくるまで、私が速度で撹乱し続けたんだが……」

「向こうの動きも大概速いわ威力高いわで、こっちが悠長に反撃を準備する暇もなくてね……」

「結果として、そこに戻った私が爆発して痛み分け、ってわけ」

「え、ええー……」

 

 

 突然、こちらの虚を付くようにして降ってきた謎の化物……見た目的にはSAOのスカルリーパー*12みたいな見た目の、謎の生き物に邪魔をされる羽目になった、というわけである。

 多分あれそのものよりは鈍重で火力も低いのだろうが、それでもなんの準備もなく相手をするような敵ではなく、結果としてパイセンのだいばくはつで相討ちする、という形で逃げてきた、というわけなのだった。

 

 

「パイセンの死亡フラグが時間カウント性だったとすれば、あそこで暫くぐずぐずしてなかったら、エンカしなかったんじゃないかなーあれ……」

「どうかしらね、あそこ以外だとまた面倒なモノになっていたかもしれないわよ?」

「うわー、想像したくなーい」

 

 

 大広間、なんてお誂え向きの場所で死亡フラグが発動したから、あんな大物になったのだとすれば、謎解きに掛ける時間を少なくすれば避けられる部類なんじゃないかなー、とは思うものの。

 未だここでの法則についてはわからないことが多いため、対処が裏目になる可能性もある……とパイセンに言われ、むむむと唸る羽目になる私である。

 

 なお、この報告を聞いたクリスは、頭痛からか頭を抱えて踞ってしまい、それを宥めるように周囲で慌てるマシュの姿が、ちょっと可愛かったなー、なんて現実逃避をすることになったりもしたのでした。

 

 

*1
ゲーム用語の一つ。地図を自分で書く必要があるゲームにおいて、それを任された人物の呼び方、もしくは地図を書くこと自体を楽しむ者達の総称。TRPGや、『世界樹の迷宮』シリーズなどで散見される。普通のRPGでは、マップは特に何をせずとも確認できる場合が多いため、特定のゲームを楽しむ時でもなければ出会うことは無いかもしれない

*2
簡単に言うと、繰り返す度に過去の記憶『A』は現在の記憶『B』を含むモノに変化し続けていく(一周前の記憶の総量を『a』とするなら、周回する度に『A』に『a'』を代入し続ける形になる)

*3
最近の研究での脳の総容量の数値。ちなみにペタ(P)は1015倍のこと。記号的にはテラ(T)の一つ上

*4
流れ(flow)越える(over)で、つまり溢れることを示す言葉。IT用語としては、数字の桁などが扱える範囲を越えてしまう(桁あふれ)ことを指す。これが起きると、処理の限界を越えてしまっているためにシステムが停止したりすることになる

*5
元々は格闘ゲーム『ギルティギア』のキャラクター、チップを使うプレイヤーが言った言葉である『このコンボ七割しか減らないのか、安いな』から来た言葉。チップというキャラクターは体力が低く(正確には防御が低く、受けるダメージが他のキャラより多い)、簡単に倒されてしまうキャラクターである。一つのミスから一気に敗北まで行くこともままあった為、倒すまで行かないコンボなんて気持ちの上では食らっていないようなものだ、という励ましの言葉だった(実際七割はとても痛い)。……のだが、お互いに即死コンボやら即死技やらが飛び交う場所では意味が一転、本当に『死んでないんだから逆転できる(=支払う代償としては安い)』という感覚が浸透し、結果として言葉の意味も『まだ倒れてないんだから逆転できるぞ』というポジティブなものに変化していった

*6
元々馬車を牽く馬は、自身の走る道以外によそ見をしないように、左右に目隠しをしていた。そこから、目的以外の行動が取れないようにされて働かされている……一つの仕事をずっと倒れるまでやらされている姿を、馬車馬のように働く、と称するようになった。……のだが、そもそも馬は長時間全力で走ることはできない生き物である。ちゃんとペース配分を考えて運用しなければ成り立たない(=酷使はできない)生き物なので、現実にこの言葉が使われるような環境下は、馬よりも遥かに劣悪な労働環境のことがほとんどである

*7
人件費は簡単な経費削減の財源ではないぞ、という話。上からすれば数字だけで判断するからそうなるのだろうが、現場的には本来一人足りないのを無理をして成り立たせているだけなので、それを基準にされても人が居なくなるだけ、という話。……まぁ、止めても次が無い人はそれを飲み込むしかないので、結果として労働環境は劣悪さを極めて行くわけなのだが……

*8
立ち上がり盛大な拍手を送ること。英単語そのものの意味も、立ち上がって(standing)拍手喝采を送る(ovation)である

*9
レビューサイトなどでたまに見られる、地味に役に立たない批評。期待などを込めることで、実際の評価よりも良い評価を付けるという形であるために、現在の評判を知りたい時には邪魔でしかなかったりする

*10
『艦隊これくしょん-艦これ-』などで見られる、ちょっとしたサービス?要素。敵からのダメージが一定量を越えると、武装や服などが欠損する、というシステム。これだけだとマイナス要素でしかないが、これらのゲームはその時に、服の下にある肌や下着などが露出する、という一種のお色気要素となっていることがある。ダメージを受ける、という不快要素を少しでも軽減するための策、と見なすこともできるが……見慣れてくるとご褒美感もなくなってくる為、嬉しいのは最初だけだと思われる(艦これACを除く(破損状態は別種のカードが排出されるため))。なお、服装の変化は中破の時点で起きるため、大破状態でゲームを進める利点はない……どころが、ブラウザ版だと大破状態で作戦を進めてしまうと、轟沈(ロスト)(=永久消失。二度と同じキャラは使えなくなる(正確にはもう一度手に入れる必要が出てくる、の意味)。艦これACのみ復帰手段あり。お金が掛かってるからね、仕方ないね)する可能性があるため、まさしく百害あって一理なしとなる

*11
元々はモンスターハンターから広がった要素。死亡時のペナルティが比較的重め(他の似たようなアクションゲームは、他者が蘇生させる手段が存在したりしているため、討伐速度に差が出るものの、そこまで重いものというわけでもない。……全滅するとダメ、というものが多いので、歓迎されないのも確かなのだが。代わりに、モンハンは全体で三回死亡するとクエストが失敗する。他のゲームの場合、死亡時のペナルティはあくまでもその人の報酬のみ(=個人の責任)に収まることが多い中、全体に迷惑を掛ける可能性があるため嫌がられる)であることから、特に死亡することを乙った(恐らくはお疲れさまでした=仕事終わりの挨拶=ゲームが終わった=負けた、の連想ではないかと思われる。海外ではゲームオーバーはゲームをクリアした時の言葉だったが、日本ではゲームが終わってしまった時の挨拶なので、そういう感覚が強いのかも)と呼ぶようになった。三乙すると(相手によっては)酷いことになる

*12
『ソードアート・オンライン』の75層のボス、ザ・スカルリーパーのこと。クォーターポイントと呼ばれる25層ごとの特殊な階層を守るボスであり、それまでの階層のボスとは比較にならない戦力を誇る。なお、このボスに対してすら体力を一定以下まで減らすことが無かったとある人物が、キリトに怪しまれる契機を作ることにもなった

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