なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「でもまぁ、多分複数人で進むってのは、結構いい線行ってると思うんだよね」
「まぁ、確かに。今まで無かったものが見えた以上、あの家の中が協力プレイ想定のもの……ってのはまず間違いなさそうだし」
「きょうりょくぷれー?」
「皆さんで協力して進める形のプレイスタイルのことですよ、れんげさん」*1
「なるほどなん、うちも協力してるん!」
相も変わらず特に変化のない台所から、飲み物と食べ物を拝借してきた私達は、それを飲み食いしながら、あれこれと反省会を行っていたのだった。
これは、どうせ周回時に消費した食べ物も元に戻るから、という理由もあるのだが……食べる・飲むという行為が、なにかしらの展開のキーになっていないか?……ということを確かめるためのモノでもあったりする。
他所がおかしくなっている中、あからさまに台所だけがなにもないので、実はなにか隠されているんじゃないか?……という疑いからの行動というわけだ。
……まぁ、今のところはれんげちゃんのおばあちゃんが作った、お手製のおはぎがおいしい……ってことくらいしか、わかることはないわけなのだけれども。*2
そんな風に、皆が和気藹々とお茶会に勤しむ中。
少し離れた位置に座っているパイセンは、おはぎを左手に持ったまま、右手を顎に置いて難しい顔をしているのだった。
そうやって彼女が考え込んでいる姿、と言うものが珍しい気がした私は、淹れたての緑茶を片手に、彼女の隣へと腰を下ろす。
余程真剣に考えごとをしていたらしいパイセンは、自分の隣に人の気配が増えたことで、漸く思考の海から上がってきた様子。
こちらに「なんでわざわざ私の隣に」みたいな、若干迷惑そうな視線を送ってきたため、私が「随分と真剣に考察してるみたいだったので」と返すと。
彼女は小さく嘆息を溢して、纏まりきっていないながらもぽつぽつと、自身の考察を述べ始めるのだった。
「これ、複数の思惑が絡んでる……みたいな話をしてたでしょ?」
「ああ、してましたね。ループの内容的に解決させるつもりがなさそうなのに、実際には鍵と思わしいものが散見されるから……みたいな話だったはずですけど」
「
「
彼女が考えていたのは、この異変には
ループの存続を求めるモノと、その解消を求めるモノ。
……少なくとも、その二つが確実にあるだろう、と思われている陣営なわけだが……。
「
「まぁ、そうですね。無理矢理解消してしまうのが宜しくない・または好ましくないので、解決派が手心を加えている……という可能性も、なくはないでしょうけど」
彼女の言葉を聞きつつ、こちらの意見を返す。……個人的には、後者を推している私である。
ループによる全体リセットまでできる首謀者が、横から付け加えられた程度の勝利条件を、無理矢理変更できないはずもないだろう……という考えからの予測である。
……まぁ、派閥がお互いに完全に互角、それでいてお互いに利のある契約を交わしているので、互いに出し抜かれないように牽制しあっている……みたいなパターンもあり得なくはないので、こちらの推測はどこまで行っても推論でしかないわけなのだけれども。
ただ、パイセンはそこからもう少し踏み込んだところを考えていた様子。
「つまり、
「……えっと、つまり……?」
そうして、彼女がなにを言いたいのか、薄々ながら気付いてしまったために、ちょっと及び腰になってしまう私。
……いやねぇ?だって、彼女の考察が間違ってないとすると……。
「つまり、あの家を攻略した後、表に戻ってきて砂の城を作るって言うのが正解ルート……ってパターンもあるんじゃないのか?って思ったのよ」
RTA張りにギリギリの攻略を強いられているんだ!*3……ってことに他ならないからだ。
「えっと、虞美人さん。一応、根拠をお伺いしても?」
「そこの子供よ、一つ目は」
「ん?うちがどうかしたんぐっちゃん?」
「ぐ、ぐっちゃ……?」
マジかー、みたいな顔でちょっと絶望している私に代わり、マシュがパイセンにその考察の根拠を問い掛ける。
そして返ってきたのは、彼女が指差す先に居る少女、れんげちゃんについての話(なおその時に彼女からぐっちゃんと呼ばれて、パイセンはちょっと狼狽していた)。
「業腹ではあるけど、少なくとも私が死ぬことが何かのトリガーになっている、という可能性は低いわ。見た限り私の死よりも後にループは発生してるし、そもそも家の中でなら結構爆発してるみたいだし、私」
「……というか、そんなにボカンボカンと爆発しても大丈夫なものなの、貴方?」
「クリスクリス、パイセンに常識を語るのは止めといた方がいいよ。この人非常識の塊みたいなもんだから」
「やかましいわよそこの二人、特にキーア。お前にだけは非常識だなんだのと言われたくはないわ。……ともあれ、誰かの死がトリガーであったとしても、それが私ではないってのは確実なわけ。……じゃあ、途中でループしたタイミングでは、誰が死んで条件を満たしたのか?」
「……れんげちゃん?」
「恐らくはね。そもそも回を追う毎に微細ながら変化がある辺り、どこぞの
彼女が言っているのは……恐らくまどマギの鹿目まどかの魔法少女の素質が、どうして神になるほどのモノになったのか、という話だろう。
暁美ほむらの繰り返したループは、まどかを中心としたもの。
──それは見方を変えれば、彼女に対して何度も何度も糸を掛け続けるようなモノでもある。
因果を糸と見なすのなら、そうして多量の因果を持つに至った彼女が、大きな力を持つのは道理であろう。
ともあれ、明確に回を増す毎に変化を続ける
──故に。彼女の喪失は、即ち
だからこそ、この場所で一番保護されていると言えるのは、恐らく彼女だということになるわけである。
「つまり、こいつをどうにかするってのが、恐らくは第一条件。今のところはあの砂の塔が、それだと思われてるわけだけど……」
「単に砂の塔を建てるってだけなら、何回もやってる……っていうか、勝手に大物が出来上がったりしてるわけで」
単純な塔の建築だけなら、今までもそれなりの回数こなしている。……単に建てるだけでは足りないのかもしれないし、それ以外の条件があるのかもしれない。
なにせ、れんげちゃんの手伝いを誰もしない場合、
「え、そうなの?!」
「うん、改めて思い返して見ると、塔については建ったり建たなかったりまちまちで、建った時には決まって
「そうなん?うち、砂のお城は作れないん?」
「いや、お城だったら一人で作ってるみたい。……ただまぁ、誰かの手伝いがない限りは、あくまで普通のサイズに収まるみたいだけど」
嫌が応にも視界に入ってくる巨大な砂の塔の場合を除き、庭の片隅で常識の範疇に収まる砂の城が建造されていたとしても、こちらに訴えかけてくる力は少ない。
つまり、目立たないのでスルーされていただけで、砂のお城自体は(途中でループしたパターンを除き)毎回作成はされていたわけである。
……そこを改めて考慮すると、出来上がった砂の塔自体の観察も、次回からはしっかりしておいた方がいいかもしれない。
なお、今回に関してはれんげちゃんがシャナのお世話をするん!……と張り切ってしまったため、砂のお城は出来上がっていない……という、レアパターンとなっていたりするのだった。
「まぁ、これはこれで城が完全に無い時に何か起こるのか、って検証ができるから問題はないんだけど」
「な、なるほどなん。うちが城を作らないのも、計算のうちだったん……!」
(……絶対そこまで考えてなかったわね、こいつ)
こちらを興奮した様子で見てくるれんげちゃんをほどほどに嗜めていると、パイセンからの冷ややかな視線が飛んできた。
……はい、その通りですけど口には出しません()。
まぁ、とにかくそれが一つ目。
二つ目は無論、家の中にある迷宮めいたものについての話である。
「そいつが起点だとするのなら、それとは全く関係ない
パイセンが言いたいのは、恐らく鍵と鍵穴の話だろう。
れんげちゃん関連の話は、つまり
そして家の中は、
「複数人でなければ現れない扉、これ見よがしに設置された四つの石板。……多分あれ、必要な人数を示してるのよね」
「人数ってことは……四人?」
「お誂え向きでしょ、そういう場所で集まる人数が
そのまま、扉に付いての考察に移る。
四つの石板の内、一つだけが輝いていたのは……素直に受け取るのなら、その場に条件を満たしている人物が一人しか居なかったから、だろう。
つまり、四人の条件に見合った存在が、あの場所に向かうことで扉は開かれ……んん?
「……気付いたみたいだけど、続けるわよ。必要な人数が揃っていない場合は、そもそもあの部屋は出てこない。出てきたとしても、条件を満たしていなければ開かない。そして光っていたのは左上の黒い石板だけ──」
「えっと、他の石板は確か……」
「赤と白と青、だと思う」
「……それって、基本色彩語に含まれる色じゃなかったかしら?」
「きほん、しきさいご?」
クリスの発した言葉に、れんげちゃんが小首を傾げながら聞き返す。
基本色彩語というのは、人類全体に共通する
赤には熱さに纏わるようなイメージがあったり、青であれば冷たいイメージがあったり……というような、文化も言語も違うはずなのに、特定の色に似たような印象を抱く傾向がある、とする研究があるらしく、そこで人類には基本とする色彩がある、という風にみなす研究が生まれたとかなんとか。*5
だがまぁ、今回はそこまで小難しい話をする必要はない。
一応、四神のイメージカラーと同一である、という風に見ることもできるが……恐らくはそこまで重要でもないだろう。
何故ならば……。
「これ、髪の毛の色を指定してるんじゃないか、って思うわけ」
恐らく、四人組であることを指定する、という以上の意味は