なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……まぁご立派なお社だこと」
神社の中に入った私達は、その内装に驚いていた。なにせ、外観と内観が明らかに違う。
外側が普通の神社だとするのなら、中はまるで薄暗い洞穴のよう。
とてもじゃないが、人工物だとは思えないような内観が中にそびえていたのである。
そんな洞穴の奥の部分に静かに鎮座しているのは、真っ白なモコモコの物体。
大きさとしては──大体、私達の
抱きついてそのふさふさの毛並みに体を埋めたら、気持ちよさに溶けてしまいそうな気がひしひしと伝わってくる感じの体型でもあったが。……人をダメにする神様、みたいな?*1
──そう、
周囲に注連縄*2っぽいものがあったり、
明らかにその白い物体を奉っている……ということが見て取れるようになっていたのである。
外観が神社であった以上、中に奉られているものなんて、御神体以外の何物でもないだろう。……ここでご立派様*3とかが出てきたら色々と正気を疑っていたところだが、あくまでも出てきたのは白い毛の塊。
とある漫画では似たような白い毛玉の妖怪『ケセランパサラン』が善の究極妖怪だなんて呼ばれていたりするし、白い毛玉が良いものだ、というのは昔から変わらない真実なのだと思われる。*4
話が横に逸れたので元に戻して。
鎮座する毛玉は、身動ぎ一つせずそこに佇んでいる。私達が近付いても、暫くはちょっとした反応すら見せなかった。
……これが予想通りのモノであれば、私達が目の前に現れた時点で反応を返してきそうなものなのだが。
「……動かないね」
「む?おかしいな、いつもならすぐに反応を返してくるんだが。おーい、もしもーし?」
困惑混じりにそう呟けば、ちょっと離れた位置で別の用事を行っていたオグリが、動かない白い塊に一度首を捻った後、起きろとばかりにその毛玉をぽすぽすと叩き始めた。
流石にぎょっとする私だが……、うん、これだけ叩いても反応無し。よもや寝てるのだろうか、と思い始めて更に暫し。
『……む、むむ。……おお、ようやくここまで来たか若いの』
「…………?!」
もそりもそりと白い塊が動きだし、その姿を変える。そうして現れたのは、
『我輩は
「ダレーーーーッ!!?」*6
現れたのは……巨大な白い猫だったのだ!
『ああ、ビワなら我輩に実体を貸してくれておるでな。ある意味上に被さっておるのが我輩、ということになるかの』
「……えっと、【継ぎ接ぎ】的な?」
『半分は当たっている、耳が痛い』*7
「はん……ぶん……?」
巨大なでっかい猫──見た目的にはあやトラの『シロガネ』を、デフォルメのまま大きくしたような感じ。白いニャンコ先生、みたいな風でもある──である琵琶神様は、この辺りの民間伝承に伝わっている、かなりマイナーな神格だそうで。*8
なお、元々は小指ほどの小ささだったという。
……信仰が神々の力の源だというのなら、マイナー神が大した能力を持たないというのは道理だが……。
「ええと、ここを維持してるあたり、貴方は
『むぅ、難しい問いであるな。我輩がここを維持しているのは、とある目的のため。それをお主達が果たしてくれるというのであれば、喜んで協力するが──』
「そうじゃないなら敵対する、と?」
『お主達がどう見るかだ、まだまだ心眼が足らぬ』
「……あの、ちょくちょくサム八混ぜるのやめて貰えませんか?」
『む、これは失礼。我輩どうにも『勇』を失いやすいようでな、誠に済まぬ』
(わざとなのかなこれ……)*9
なお、何故かサム八語録を多用してくるので、ちょっと会話がイラッとする。*10
……いやまぁ、どうにも聞いている限り、勝手に語録が混じってくる感じのようだけど。……シロガネとかニャンコ先生だと思っていたけれど、実際は彼のガワは
ともあれ、この猫神様がなにかしらの目的を持って、この場所を維持しているのは間違いないようだ。
ウマ娘組がちょくちょく消えるのも、恐らくは彼の元に呼び出せるのが下敷きになっているビワの属性に縛られるから、ということだろう。
……そうなると、同じくよく消えるゆかりさんは、同じボカロ……ってよりはボイロ系列の誰かに呼ばれている、ということになるのだろうか?
いやでも、それだとたまに消えるシャナの説明が付かないか……。
まぁ、ともかく。
このループの世界の原因の一端である彼。
その彼の願いを果たすことが、ここからの脱出に必要なことであるというのは明白。
ゆえに、我々は彼の要望を聞き、それを叶える努力をせねばならないということになる。
『む、良いのか?そんなに安請け合いして?』
「安請け合いもなにも、やらなきゃ帰れないので……」
『それもそうか。……とはいえ、お主にできることはそうないからのう』
「私に?……ってことはやっぱり」
『お主は物事をあせりすぎる*12。まぁ、ここでは外の時間経過は一切起きぬ。暫し休んでいくと良かろう』
「休めって……」
「いやまぁ、ループまで猶予がある、ってなら文句はないけど」
「ちょっ、キーア?!」
「いいから、とりあえず今は休んでいよう」
……ほんとちょくちょく挟まるな、語録……。
そんな感想を押し込めつつ、皆を促して洞窟内の探検に出かける私達。
クリスからは疑問の声があがるが……そこは
実際、彼はあくまでここを維持しているだけで、しなければいけないことは私達が直接なんとかできるもの、というわけでもない。
なので、今できることはここに居なかったタマモの方に向かうこと、だろう。
なので、一つ挨拶を置いて皆で社の外に出る。
空模様は変わらず晴れ、天気が崩れるような予兆はなし。いわゆるぴーかん晴れ、などと呼ばれるような天気である。*13
「ぴーかん?ピカチュウがカンカンなん?」
「そうだとするなら今は青天の霹靂になってなきゃおかしいねぇ」*14
「……?」
「おっとこっちも通じねぇ!?」
「そりゃ、普通に暮らしてたら霹靂なんて言葉も聞かないでしょうよ。……で?ここからどうするの?」
なお、ジェネレーションギャップ的なやつなのか、れんげちゃんは首を傾げていた。……霹靂も通じないのかー、なんて風にショックを受けていると、横からパイセンが口を挟んでくる。
声こそ出してないものの、クリスの方も不満げな様子。……いやまぁ、ここで完全に不満だけを抱えているのは、恐らくクリスの方だろうけども。パイセンは薄々気付いていそうだし。
「……え、もしかして理由があるの?」
「ありますよそりゃ。私は別に考え無しに動いてるわけじゃないですよ?」
「えー……?」
「……おかしい、なんか知らんけどクリスからの信頼度が足りてないような……?」
「寧ろどこで稼いだってのよ、ほぼほぼニュートラルでしょ今」
「……相変わらずだな、お前達は」
なお、このようにクリスからは不思議そうな顔を返されたわけなのだが。……いやまぁ、確かに説明とかせずに動いてたわけだから、仕方ないところもあるけれども。
横からオグリが呆れたような声を挟んでくるあたり、いつも通り感が強いのも意味わからんし。
納得しきれない微妙な空気に首を捻りつつ、タマモを探して東奔西走。
結果行き着いたのは、社の後ろにあった竹林の中だったのだが……。
「ふっ!ぬっ!はぁっ!でぇい!!」
「……あの、あの子は一体なにをしているの?」
「修行だ」
「修行……」
目の前で行われる修行とやらに、クリスがなんとも言えない表情を向けている。
隣のオグリは至って普通の様子だが、これに関してはクリスが正しいとしか言えない。なにせ、彼女がやっていたのは。
「ミンナニハナイショダヨ!キシンリュウオウギ!エックスキックッ!!」
「……どう見てもユニバースね」
「いやキャッスルヴァニアでは?」
「凄いん!ばばばっと飛び回って、ヒーローみたいなん!」
「えっ?!……ってヌォワァーーッ!!?」
「えっちょっ!?」
「タマモクロス、死亡確認!」*15
「確認すな!……って、そんなこと言ってる場合じゃないわよ!大丈夫ですかー!?」
しなる竹を足場にして、視界の中を所狭しと跳び跳ねるという、なにを想定したのかよくわからない修行だったのだ。……台詞的に、彼女の中のユニバース要素が増幅された結果、なのかもしれないが。
なお、横でその修行を眺めている者が居ることに遅ればせながら気付いた彼女は、余所見をした結果足を滑らせ、そのまま反動で竹林の奥の方に吹っ飛ばされて行くのだった。無茶しやがって……。