なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まさか、BBが向こうの手先になったってこと?」
『なるほどセンチネルー♪*1……いえ、そんなことあるはずないんですけどね、本来なら。まぁ、向こうのお手伝いをさせられている、ということは否定しませんけど。ある意味同族のよしみ、とでも言いますか……』
「同族……?どういうことよ?」
『おっと、BBちゃん失言です♪失言なので忘れてくださいねー、忘れろビーム☆』*2
「ちょっ危なっ!?」
シャナが警戒の声をあげるが、対するBBちゃんは微妙な顔。
ポジション的には敵?になるのだとしても、肝心の彼女自身にその気があるかは別の話、ということらしい。
端的に言ってしまえば、やる気がない・もしくはでないと言うことのようだ。
……忘れろビーム?
『他所の
「……えっとつまり、こちらと敵対するような意思はないと?」
『ええ、積極的にはしませんよ。……消極的には、敵対しちゃいますけどね☆』
「なんで……?」
なお、気分が乗らないから最低限の仕事しかしない、というだけのことであって、別に敵対自体をしないわけではないとのこと。
……相性が悪いとか、ループものは趣味ではないなどと言いつつも、そちら側であることに彼女が甘んじているのは、ここでは所属陣営に帰属することへの強制力が強いからなのか、はたまた実際は彼女とこちら側の
『ちょっとせんぱーい、余計な考察はノー!ですよ?いいから早く先に進んで下さーい!』
「え、先?
なんて風に考え込んでいると、いつの間にやら目の前に来ていたBBちゃんが、こちらを覗き込んで不満げな声をあげた。
こちらの思考を邪魔するあたり、私の考えを読んでいるのか、不味い*5……みたいな空気に一瞬なりかけたが、発言の内容をよくよく思い返してみると、この図書館が終着点ではない(からもう一人の黒幕もここにはいない)と言外に述べている、ということに気付く。
つまり、彼女はここで無為に時間を使うのは得策ではない、と教えてくれているわけである。
とはいえ、見渡す限りそもそもこの図書館、出入り口というものがない。およそ扉と呼べるようなモノが、一つとして存在しないのである。
なので単に先に進め、と言われても、道がわからない以上はどうしようもない、というのが実状なのだが……。
『ここは図書館なんですよ?ちょっと考えれば、すぐにわかると思いますけどぉ~?』
「……あっ、せんぱい。もしかしてどこかに隠し扉があるのではないでしょうか?」
「なるほど、飛び出した本を押し込むと棚が動いたり、行き止まりに見えるが実際はホログラムで道が隠されていたり……みたいな奴ということだな?」
「なんでちょっと嬉しそうなんやオグリ……」
「ゆるされよ ゆるされよ 謎解きわくわくゆるされよ」
などと考えていたところ、BBちゃんの告げたヒントにより、マシュがこれからするべきことを思い付くことに成功する。
確かに、ここが図書館だと──特に物語の中で登場する、意味深な図書館であるのだとすれば。どこかに仕掛けがあって、それを解くことにより新しい道が開かれる……みたいな、一種のダンジョン構造になっている可能性は、大いにあり得る話だと言えるだろう。
何故か謎解きが始まると知った途端に興奮し始めたオグリにちょっと驚きつつ、皆で手分けして図書館の中を探し始めると……。
「……七つの謎を解いた先に現れたのは、八つ目の謎だった……ってところかしらね?」
「天空に伸びる螺旋階段……もしかしてこれを登る感じなんか……?」
結果として七つの謎を発見した私達は、それぞれが知恵を絞ってそれらを解き明かすことに成功。
そうして謎を解き明かしていった結果、図書館の中央部に突然半透明の螺旋階段が出現したのを確認した、というわけである。
下から現れ、徐々に螺旋を描きながら伸びていったその階段は、天井があった場所さえも越えて、遥かその先へと伸びている。
いつの間にか階段の通り道にあたる部分だけ、天井にくり貫かれたような穴が空いているあたり、これからの目的地は上……ということになるらしい。
外観は塔なので、その面目躍如ということなのだろうか。
ところで、図書館から螺旋階段を登って行く、というシチュエーションにちょっと見覚えがあるような気がしたが、どこで見たんだろうか?
暫し思い出そうと記憶を洗ってみるものの、記憶にはうっすらと靄が掛かっているかのようで、どうにもそれを思い出すことは叶わない。
……なにか干渉をされている、というわけではなく単に自分が思い出せないだけ、というのがなんともむず痒いところであるが……。
「まぁ、思い出せないんならそれはそれでいっか!」
「なにを一人でぶつぶつ言ってんのよお前。さっさと上に行くわよ」
「へ?……ってあ、もうみんな登ってやがる!置いてくんじゃねー!」
引っ掛かるところが無いわけではないが、思い出せない以上は仕方ない。
と、このことは一端横に置いておこう、と下げていた視線を上げると、いつの間にやらみんなは階段を登ってしまっていて、
やだ恥ずかしい、完全に出遅れてるじゃん……とちょっと顔を赤くしつつ、急かすパイセンに言葉を返しながら、私も螺旋階段を登り始めるのだった。
「手すりが無いのって、地味に怖いわね……」
「だからこそ安定を取ってゆっくり登ってるんでしょ。最悪落っこちたら私が拾ってあげるわよ」
「……!?シャナお姉ちゃん、お空を飛べるん!?」
「え?……ああうん、飛べるわよ?」
「すごいん!天使様なん!」
「て、天使?!ちょっ、止めて!そういうのじゃないんだってば!っていうか他のみんなも!笑ってなくていいから!」
天に伸びる螺旋階段は、それがどこまで続いているのかも見渡せない。……正確には、
恐らくはゴールまでどれくらいの距離なのか、ということを悟らせないようにすることで、焦りや恐れを生じさせようとしているのだと思われる。
実際、手すりもなにもない、中空に浮いたただの光る板……としか呼べないこの螺旋階段は、単に次の段に上がるだけでも、気の弱い人や高所が怖い人ならば簡単に足が竦んで動けなくなってしまいかねない……そんな、欠陥構造になっているわけで。
型月に詳しい人ならば、『スパイラル・ラダー』と言えばわかるだろうか。……え、ネタバレ?そこだけお出しされてもなんのこっちゃって感じだろうから大丈夫大丈夫(震え声)。*6
ともかく、こんな階段を急いで駆け登る、なんてのは以ての他だろう。
一歩一歩、いきなり抜け落ちたりしないかどうか慎重に確かめながら、着実に踏破を進めている、というのが現状である。
……まぁ、
そもそもここまでの道中でゆかりさんに出会ってない、というのも問題だし。
最上階、この階段を登り切った先に居ると言うのなら問題はないのだが、実は途中のどこかにさっきの図書館と同じような仕掛けがあって、そこから連れ出さなければいけない……とかになると、どこまで登ったのかわからないこの階段を下らなければならない、なんてことにもなりかねないわけで。
そうならないように、必要以上に周囲を確認しながら、かなりゆっくりと登っているのだった。
その中で、クリスがポツリと呟いたのが、さっきの『手すりが無いから怖い』という言葉だったわけだ。
ただまぁ、さっきの猫神様の世界ならいざ知らず、今の私達は元の姿に戻っている。
なので、仮に落ちそうになったとしても、私が『ねんりき』を使って助けてもいいし、シャナの言った通りに彼女が紅蓮の双翼……もとい『真紅』で空を駆けてもよい。
この場所ではそのあたりの能力制限は掛かっていないようなので、落っこちる心配自体はそこまででもないのだった。
……だったらさっさと飛んでいけばいいじゃないか、と言われそうな話なのだが。
試しに私が錬金でドローンを作成し、螺旋階段の中心を上に向けて飛ばして見たところ。
とある場所で見えなくなった後に、下から飛び出して来たのである。
なお、試しにそのまま下に飛ばしてみたら、そちらは途中で電波が途切れてロスト。
それならばと螺旋階段の上を、階段そのものにぶつからないように注意しながら道に沿って飛ばしてみるも、こっちもある程度進んだところ──中心部を飛ばした時に、ちょうど下にワープしたあたり──で反応がロスト。
結果、この螺旋階段は……見える範囲内であれば自由に動けるが、それ以上先に進むのであれば、ちゃんと階段を登らなければいけない……ということがわかったのだった。
さっき、ゆっくり登っている理由には危ないから、というものがあったが。この『見える範囲内』というのがどういう意味なのかわからないので、現状一番足が遅い人物──れんげちゃんの進行速度に合わせている、という部分もあったりする。
なのでまぁ、さっきのやり取りはれんげちゃんの気分を上向かせるための、シャナなりのおどけた態度、なのかもしれない。……素かもしれない。本人の名誉的に、わざとだとしておくが。
「それにしても……なんかやけに光ってるよね、この階段」
「そうだねぇ。大体どれも青色に光ってるけど、時々紫色のがあったりするのが、ちょっと気になるけど」
『…………』
「……?BBさん、どうされましたか?ちらちらとせんぱいを窺っていらっしゃいますが……」
『ななななんでもありませーん!別にヒントとか教えちゃおうかなーとか、一切これっぽっちも思っていませーん!』
「は、はい?」
そうしてちょっとみんなの空気が緩んだ中で、荷葉ちゃんが足元の階段──複数の板が連続して空に伸びている──についての感想を述べる。
うっすらと光るこの階段は、くらいこの空間の中で、唯一の光源となっていた。
それゆえ、時々混ざる
と、そんなことを話していると、突然挙動不審になるBBちゃん。……ヒント?なんのこっちゃと首を捻るキーアにその時電流走る!*7
「む、紫の板……まさか、ゆかりさん!?」
「ええーっ!?」
そう、露骨なBBちゃんの視線は、私ではなくその下。
今現在私が立っている、ちょうど紫に光っている板にこそ注がれているのではないかと、私は気がついたのだった!