なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
その週の日曜日。
公園の一画、この間遠目に見た舞台の辺りを中心として、様々な人々が集っている。
……なんか見たことある人がチラホラ居る気がするんだけど、ホントみんなデュエル好きだね?
私はちょっと前の辺りから付いてけなくなったから、基本的には見てるだけだけど。
……リンク*1?何それ、俺引退者*2みたいな。いや、正直ペンデュラム*3の時点でもうギブしてたけどさ。
「せんぱーい!わたしー!頑張ってきまーす!」
「はいはーい、頑張れマシュー!凄いところをみんなに見せてやれー!」
「はーい!頑張りまーす!」
参加者組に混じってこちらに手を振るマシュに、大声で返事をすれば。
彼女はむんっ、って感じに張り切って、選手達の集団に紛れていった。
うむ、頑張れマシュ。頑張って勝ち上がって、あのジャック・アトラスが私達の知る彼と同一なのかを確か
「デュエリストの諸君!よくぞこの『なりきり郷デュエルカップ』に参加してくれたっ!!お前達の熱いデュエル魂、存分に見せつけてくれぇ!!」
「おお、MCはファイブディーズの人なんだ」
舞台の上で熱く声を上げるのは、長いリーゼントが特徴的な男性。*5その隣に解説役なのか、二人の男女が座っている。
「おれぁおせっかい焼きのスピードワゴン*6!今回は訳あって、解説役って奴を務めさせて貰ってるぜ!」
「はぁい、同じく解説役の枝垂ほたる*7よ。ところで私、なんで駄菓子以外の解説役に抜擢されてるのかしら?」
「……なんだあの組み合わせ?」
……んんん?スピードワゴンさんはまぁ分からなくもないんだけど、ほたるさんに関してはホントになんで彼処に居るの?
いやまぁ、リアクションとか言語センスとか、あの二人が解説するなら面白いモノになりそうな感じはあるけれど。
「……時間だぁ!これより、『なりきり郷デュエルカップ』予選を開催するぅ!!事前に引いて貰ったくじに書かれている番号を確認し、同じ数字が書かれているプラカードの前に並んでくれぇ!」
「予選だってぇ?!コイツぁはなから激戦の予感がビンビン来てるぜ!!」
「ふぅん、つまりは栓を開ける前、というわけね。勢いよく飛び出してくれると嬉しいんだけど」
……あ、ラムネか。
ほたるさんの発言の意味について、一瞬考えてしまった。……いや、面白そうだって無責任に思ったけど、これ結構火傷率高い奴だな*8?
なんて事を思っていたら、いつの間にかプラカードの前に人が並び終わっていた。
番号は1から8まで。並んでいるのは……大体十人ずつくらいかな?
「予選では、同一グループ内での総当たり戦を行って貰う!各員、健闘を祈るぅ!!」
「なるほど、総当たり戦か。……結構時間が掛かりそうなモノだけど……」
予選は総当たり戦らしい。
本来なら、それだけでアニメなら何週か使いそうな感じだけど……。*9
一部のグループの近くの観客から、わっという歓声が上がる。
どうやら、デュエリスト特有の俺ルール*10で、何かしらとんでもない事をした者が居るらしい。
なので状況を確かめるべく、1のグループの方に視線を向ける。
「ふふん。君達雑魚が何人集まろうと、この束さんの前ではごみ屑同然!さぁ、纏めて掛かってくるがいいー!」
「なんだとー!元よりなんか優しいからって調子に乗りやがって!」
「そうだそうだー!原作のお前はエボルト*11じみてて、もっと黒く輝いていたぞー!」
「うるさいよ君達っ!?ってか扱い酷いな私の?!いや、元を考えたら当たり前なんだけどさ!!」
「うるせー!かわいいぞ束ェ!」
「なりきりしきれてなくてよかったな束ェ!」
「ファンクラブ出来そうだぞ束ェ!!」
「今のお前なら控えめに言って結婚したいぞ束ェ!」
「イジメかっ!!」*12
……なにあれぇ?
なんか束さん*13っぽい人が、周囲に纏めて掛かってこいって挑発したけど、なんか変な方向に飛び火して、顔真っ赤にしてぷるぷる震えてる。
……見た目
いやでも照れ過ぎて撃沈してるし、単にリアリスト共の作戦かも知れんけど。
「う、ううー!私のアレイスター*14、ごめんねー!」
「おーっとぉ!!優勝候補の一人、篠ノ之束初戦で敗退!最初から大番狂わせが起きてしまったぁー!!」
「く、くせぇッー!!コイツからは良妻の香りがプンプンしやがるぜッーッ!!」
「それって褒めてるの?」
とりあえず、束さんは敗退したようである。……いや、盤外戦術過ぎやしないあれ?
あとスピードワゴンさん、女性にくせぇはどうかと思うよ、くせぇは。
横のほたるさんの言葉に密かに頷きつつ、他のグループに視線を移してみる。
「これで終わり、です!【神聖騎士王アルトリウス】*15で、ダイレクトアタック!『
「ぐあぁぁあっ!!?マシュボイスの『エクスカリバー』とかありがとうございますぅぅっ!!」
「えっ!?あ、その……どういたし、まして?」
「決まったぁー!!盾の騎士、マシュ・キリエライト選手のダイレクトアタックが成功したことにより、グループ2の決勝リーグ進出者は彼女で決定だぁー!!」
「な、なんて可憐なんだッ、あの少女はッ!?」
「ふぅむ、可愛くて強いのね。いいじゃないいいじゃない、マシュマロみたいに甘さと
おお、マシュも順調に勝ち上がったようだ。
……アルトリウスでエクスカリバーだから、ランスロット*18で攻撃する時はアロンダイト*19になるのかな、やっぱり。
なんて事を思いながら、こちらに手を振るマシュに手を振り返し、別のグループに視線を移す。
「はい、【空母軍貫-しらうお型特務艦】*20で直接攻撃しておしまい、ですね。……この
「おーっとぉ!!空母赤城*22、一航戦の誇りを見せつけ、見事決勝リーグに進出決定だぁー!!」
「へぇ、今の遊戯王には、寿司のカードなんてものもあるんだなァ~」
「知育菓子的な?……ふむ、後で買って帰りましょうか」
こっちは艦これの方の赤城さんが、『軍貫』デッキで勝ち上がったようだ。
……食べ物と戦艦の組み合わせだから赤城さんなのかな?
え、そもそも戦艦テーマがない?*23……そういえば『軍貫』が出るまで、テーマとしては『巨大戦艦』*24しかなかったんだっけ。
……って言ってたら、その横のグループも勝利者が決まったらしく、大きな歓声が上がっていた。
「グループ4の勝利者はハーミーズ*25!リスペクトデュエルの真価を見せつけてくれたぁー!!」
「ふぅ、ガッチャ!熱いデュエルだったよ!」
「……なんか、観客の中にうんうんと頷いてるクラゲ頭*26の奴が居ねぇか?」
「というか、ヒトデ*27と蟹*28と海老*29とトマト*30みたいな頭の人も居るわよ?」
「なんだよアイツらの後方師匠面はよォー……?」
「というか蟹は出場しなさいよ、なんでそこに居るのよ貴方」*31
「……デッキは忘れた」*32
「キメ顔で言う台詞かそりゃぁよォ~ッ?!」
おっと、こっちは天然自然決闘者なアズレンのハーミーズが勝ち上がったようだ。
今日はあの特徴的なバイク*33は置いてきているらしく、普通に立って決闘している。……バイクに関しては、やっぱりあの蟹頭君が整備してたりするのだろうか?
その後勝ち上がったメンバーは、みんな何故かフードとか仮面とか付けていて、誰が決勝に進出したのかは分からなかった。
……いいんだそういうの、みたいな感じに近くの人に聞いたところ、勝負を盛り上げる演出として、わりと好意的に受け入れられてるようだった。
……いやまぁ、カードゲーム系の大会の話ってわりと謎の人物とか居たりするけども。実際にやるのか、って気分になった私がおかしいんだろうかこれ?
まぁ、そんな感じで午前の部、予選試合は大きな問題もなく終わったのだった。
「デュエルしてたらお腹すいちゃって。マシュちゃんも一緒にどう?」
「……というようなお誘いを赤城さんからお受けしたのですが、せんぱいもご一緒にどうですか?」
「え、私別に参加者じゃないけどいいんです?」
お昼は何を食べようかなー、と思っていたら、戻ってきたマシュが赤城さんから昼食のお誘いを受けたから一緒にどうですか、と聞いてきた。
まぁ、どこで食べようとか決めてなかったし、全然構わないけど。
それ、マシュが誘われてる辺りデュエリスト同士の親睦を深めようとしてるんじゃない?私邪魔じゃない?……みたいな感じがして、ちょっと腰が引ける。
「ええ、構いませんよ。お食事はみんなでした方が楽しいですし。ね、ハーミーズさん?」
「そうだな、赤城の言う通り。君がデュエリストでないのは残念だが、それが昼食を共にする事への忌避感を生むわけでもなし。それに、マシュの先輩だと言うのなら私達にとっても先輩のようなものだ。是非、一緒に来てくれないだろうか?」
なんて言ってたら、当のお誘い相手である赤城さんと、まさかのハーミーズさんまで連れ立ってこっちに近付いてくるではないか!
おお、なんだこの図。ちょっと変な感動を覚えるなこれは……。
「あ、あの、せんぱい?徐に御二人に断りを入れてから写真撮影するのはどうかと……」
「いやだってさ、このツーショットは色々ビックリでしょ、問題ないならとりあえず撮っとくよ」
「……マシュ、君の先輩は随分個性的な人なんだな?」
「も、もう!せんぱい!いいから行きましょう!ほら、早く!」
「あーっ!!?待ってマシュ、もう一枚、もう一枚だけっ!!」
「だーめーでーすー!!」
「……ふふっ。楽しそうな二人ですね?」
「うん、楽しそうなのは確かだろうけど……引き摺られてるのはいいのか……? 」
うおーっ!!後生だマシュー!!あともうちょっとー!!
なんて呻くも、彼女は「!かすんぷ」*34していて聞く耳がない。
……むう、仕方ない。撮れた分だけで我慢するか、なんて思いながら、ドナドナって感じに引き摺られるのを許容する私なのだった。