なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁ、はい。理由はわかりました。キーアさんにチョコを作らせてはいけないということは、ええ、はっきりと」
「いやまぁ、最初から作る気はなかったけどね?贈る相手居ないし」
「でしょうね。そもそもキーアさん、中身的には男性でしょう?」
「……?いや、最近は男性側からもチョコ贈るんでしょ?」*1
「え?……あ、そういえばそうでした。私は銀さんにチョコをせびられているので、ちょっとそのあたりの可能性を思考から外してましたね」
「銀ちゃん……」
私が迂闊にチョコを作ると、酷いことになる──。
字面からは想像できないくらい、わりと理由のある崩壊理由にちょっと苦笑を交わしつつ。
そもそも最初から、チョコの手作りなんてする気はない、と訂正を入れておく。
いやまぁ、特に問題なく手渡しして終了……というのなら、別に後輩二人に作ってもいいかとは思うのだけれど。
前にそんな感じのことを彼女達の前で述べたところ、『作るのなら、どちらか一方の後輩にだけお願いします』などという、なんだかよくわからない約束を、凄まじい剣幕でさせられてしまっていたのである。
……いや、そんなことしたら君ら喧嘩するじゃん、とも言い出せなかった私は、仕方なくその辺りのことも、
……みたいな話はまぁ、私の胸の中に留めて、口には出さなかったけど。
代わりに、贈る相手が居ません……という返答を口に出したのである。……日頃の感謝にしろ、愛の告白にしろ。今の私に該当する相手はおらず、ゆえにチョコを作ることはない……という感じの言葉だったのだが、桃香さんは後者の部分に注目した様子。
日本ではまだまだ、バレンタインに男性から贈り物をする……という文化が根付いてない以上、仕方のない話なのかもしれないが。
世の中のお料理男子達は、普通にお菓子やらなにやらを手作りして、意中の彼女達の胃袋を掴んだりしているはず。
……というようなことを述べたところ、彼女から返ってきたのは小さな困惑。
理由を聞けば、銀ちゃんからチョコをせびられている……らしい。
恐らく、特に甘酸っぱい理由とかもなく、単にただで甘いものが食べられる……くらいにしか認識してないのだろうな、銀ちゃん……みたいなことが如実に感じられて、思わずちょっと涙してしまう。
桃香さん、銀ちゃんへの好感度は意外と高そうだし、そう考えてみるとくっつく……とまではいかずとも、自身に気を向けてくれている女性の思いを無視して、彼女の体(料理人の腕的な意味で)だけを目的にしている、とんだプレイボーイと化しているような気がする……ような……?
人聞きの悪ぃこと言うんじゃねぇよ、という銀ちゃんのツッコミが聞こえてきた気がしたが、華麗にスルー。
女の子の純情を弄ぶダメ男の主張なぞ、聞く耳なぞ持たぬわたわけ!
……というか、どうせXちゃんにも似たようにチョコをせびっているのだろう、あの甘味王子は。*2
そうなると、ちょっとばかりお灸を据えてあげる必要がある、ということになるはず。ビワもそう言っています。*3
「え?いやその、キーアさん?大事にする必要はなくてですね……?」
「ふーむ……あ、そういえば」
「え、あのー?お願いですから、私の話を聞いてもらえませんかー!?」
ちょっとばかりモテるからと言って、乙女の純情を弄ぶ無味蒙昧の銀髪侍を、懲らしめねばならぬとキーアは誓った。
つまりこれより来ませりは、あのダメ男の矯正計画!
甘味にしか目のいかぬ、そのお子ちゃまな思考回路を俺が破壊する!そう、俺が……
「相変わらずワケわかんない論理の飛躍っすね」
「何を言いますやらあさひさん!貴方も手伝うんですよ!」
「……あれー?」
なお、我関せず……とばかりにシェイクを啜っていたあさひさんだが、無論彼女も強制参加である。
「……なるほどなるほど。で、銀さんのお子様な思考回路をどうにか強制しよう、と計画を立ち上げて。で、それの成就のために、この列車にやってきた……と」
「そーいうこと。いやはや、まさかこんなところで一緒になるなんてねー」
「ははは……(こっちとしては、これからの面倒事が半ば確約されたようなもんだから、ひとっつも笑えない状況なんだがな……)」
そんな話をしていたのが、大体三日前。
今私達が居るのは郷の外、鹿児島から北海道までを横断する超長距離列車『バレンタイン特別運行寝台列車・
予約しておいた客室に荷物を置き、ちょっと車内の探索でもしてみるかな……と思い立った私達が、車内の食堂に足を運んだところ……、そこで優雅に朝食を取っているコナン君達に出会った、というわけなのである。
で、そうなれば向こうとこちら、お互いに『なんでここに?』と言う疑問が出るのは当然、というわけで。
先程まで、互いの此処に来るまでの軌跡について、詳しく話をしていたのだった。
「なるほど……坂田さんが……でも、こっちも安心しちゃいました」
「……?なにか私達が居て、良いこととかあったかな?デートなんでしょ、これ?」
「あ、はい。一応、デートみたいなものなんですけど……」
そんな中、蘭さんが控えめな笑みを浮かべながら、良かったと声をあげる。
……二人っきりでイチャイチャ……は、一般人もいる状況では、中々できたモノではないだろうけども。
それでも、知り合いの目があるところよりは、ないところの方が気が休めそうな気がしたのだが。……この二人の場合、話はそう簡単なことでもないらしい。
「……えっと、八雲さんにお休みを頂いたってところまでは、良かったんですけど……」
「妙な噂があるってんで、デートついでにちょっと見てきて……って、軽いノリで頼まれたんだよ。まぁ、八雲社長が働いてるのに、私だけ休むのも……っていう、蘭の遠慮を却下するための理由付け、って面もあったんだろうが」
「ちょっ、コナン君言葉遣い……!」
「おっといけね。……うん、だから僕達、今日は仕事の面もあるんだ」
(……中身についてバレてるのに、外だから小学生らしくしなきゃいけないの、それはそれで大変そうだなぁ)
とまぁ、こんな感じ。
ゆかりん的には部下にお休みと、それから恋人と一緒に過ごす時間を与えるための妙案……くらいのものなのだろう。
見た目とか能力だけなら、普通に外に居ても目立たないふたりである。郷の中に居ると蘭さんが仕事を気にしてしまうから、体よく外に放り出す……というのも、中々気が利いていると言える。……角に関してはスルー。
とはいえ、それは彼等が本当に普通の人なら……の話なのだが。
「けどほら、僕達って
「だから、オラたちがおふたりをおたすけするために、こうしてお呼ばれしたんだゾ!」
「あー、マイナスを圧倒的なプラスで掻き消す……みたいな?」
コナン君は……そこまで
彼が歩けば事件に当たる、とは彼のことを知るものであれば誰もが思い至ることであり、それの対策として複数の人員が抜擢されたのだった。
その栄えある?一人目が、『埼玉のセイヴァー』こと野原しんのすけ、というわけである。……『嵐を呼ぶ五歳児』でもあるので、事件が起きた時に余計に問題を肥大化させる可能性も有るわけだが。
「で、その対処と、それから彼等彼女等では対処できないオカルト方面の問題が発生した時に、その対処を行う役として僕も選ばれた……ってわけ」
「因みに私は保護者だよ。なんだかんだ言って、社交的な紳士としても有名だからね、私は」
「そうだね、メカクレさえ関わらなければわりとまともな人だよね……根が海賊だから、普通に荒事もこなせるし」
そのあたりもひっくるめて対処できる人員として、鬼太郎君とバソが加わった、という形になるようだ。
……バソもメカクレ関連だと暴走する側だけど、逆に言うとそこが関わらなければ海賊紳士の異名の通り、わりとリーダーシップもあるし、戦闘力も相応にあるし……と、意外に頼りになる人物であるというのも間違いなく。
「で、私が哀ちゃんポジションとして参加した、というわけさ」
「……本当は?」
「おや、信じていない?……冗談冗談、怖い顔をするなよキーア。まぁ、探偵役は別に二人居てもいいだろう、ということさ」
それから最後に、男女比とかの『周囲からの印象』の調整役として、ライネスが加わったという形らしい。
まぁ、彼女に関しては多分『面白そうだったから』というのが、一番の理由なのだろうが。
参加できる人数に余りがあり、丁度予定が空いてるのが彼女しか居なかったから……という面もありそうだけど。*6
ともあれ、こうして此処に揃った子供達四人こそが、
「臨時少年探偵団、ってか?」
「おおっ、なりきり防衛隊でもいいとオラは思うゾ!」
「因みにキーアもお仲間だね、こうして出会ったんだから」
「ええー……」
いつもの彼等の仲間達の代わり、みたいな感じになるようだ。……身長的に子供枠になるからって、私まで巻き込もうとするのやめない?
「はぁ、なるほど?今回は
「ちょっと銀さん?そのだらしない銀髪が見えてしまいますから、帽子は外しちゃダメって言ったじゃないですか。それからサングラスも外しちゃダメですよー、その腐った魚のような目を衆目に晒したら、どう考えても通報待ったなしなんですから」
「……ねぇ?なんで俺出先でまでダメ出し食らってんの?っていうかおかしくね?こんな格好で居る方が不審者だよね?列車の中でまで帽子にマスクにサングラスって、どう考えてもこれから犯人になるか、もしくは遺体になるかのどっちかしかないやつだよね、構成メンバー的に?」
「もう、言わなきゃわからないんですか銀さん。いいからそのまま、大人しく待てをしていてくださいね♡」
「おっかしーなー、可愛くお願いされてるはずなのに、なんだか命の危機を感じるんだけど、俺の耳の方がおかしーのかなぁぁぁぁ!?」
「うるさいですよ、銀時君。いいからそこに座って、チョコケーキの前で大人しく手も出さずに座っていて下さい」
「なにぃ?!なんなのぉっ!?なんで今回こいつらこんな感じなのぉぉぉぉっ!?単純にこえーんだけどぉぉぉぉっ!?」
「お客様ぁぁぁぁ食堂ではお静かにぃぃぃぃ」
「いやおめぇーもうるせーから!!ってかなんなんだよ今回!嫌な予感しかしねーんですけどぉぉぉぉっ!!?」
「僕アルバイトォォォォ!!」*7
「うべふっ!?」
なお、別席でこちらの話を聞いていた銀ちゃん一行のうちとりわけ煩かった銀ちゃんは、食堂でバイトをしていたメガネの青年にハリセンでぶっ叩かれ、静かにすることを強制されていたのだった。
……初っぱなから収拾つかねーなこれ!