なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
『そこの列車~!!今すぐ止まりやがれぇぇ!!止まんねぇと実力行使すっぞぉ~っ!?』
「うう、ついに幻聴まで聞こえてきた……もうダメだマシュ、私もう眠いんだ……」*1
「午睡の時間はとうに終わりましたよせんぱい!!ほら、しゃんとしてください!」
「ぬぐぅ、マシュがスパルタだぁ……」
「それは勿論、尊敬していますので!」*2
「そういう意味じゃなーい……」
どことなく聞いたことがあるような声が、脳内に響いてくる。
これは夢だ、なにかの間違いだ……とばかりに現実逃避をする私だが、マシュは許してくれない。『
正直面倒事以外の何物でもなさそうなので、対応とか全部投げてしまいたい気分なのだが。
窓の外に見える、宙を走る新幹線。それは運転席部分が仮面にも見える、独特な形をしたもので。
……うん、勿体ぶるのもあれなので明言してしまうと、どっからどう見ても
……この時点で
それを差し引いてもなお、脳内に響いてくるこの声は、聞き間違い……脳内に響いているのは聞き間違いでいいのか?……まぁともかく、勘違いじゃなければあの
ライダーまで混ぜる気ですか、ふざけるななのですが()
「んも~!モモちゃんそんなんじゃダメだゾ!向こうには魔王なキーアお姉さんが居るんだから、もっとド派手に行かないと!」
『ん、そ、そそそうなのか?……んじゃまぁ、もうちっとド派手に……』
「……ってうぇ?!しんちゃん?しんちゃんナンデ?!」*5
とまぁ、こちらが心労云々から遠い目をしている中で、響いてくる別の声は……しんちゃん?
あれ、なんで向こうからしんちゃんの声が?
そう疑問を抱きながらよーく視線を凝らせば、窓の外を走るデンライナーのコクピット部分には、こちらに手を振るしんちゃんの姿が。
今はまだ離れた位置にあるデンライナーだけれども、流石にあの特徴的なシルエットをした人物を、見間違えるはずがない。……ということは、向こうにはしんちゃんが居る……?
こちらの困惑を余所に、しんちゃんを乗せたデンライナーはこちらとは反対方向に向かって進んでおり、あと数分もしない内にこの列車とすれ違うことになるだろう。
頭に響いてくる言葉の意味は
「…………っ!!」
「え、せんぱい?一体どうされましたか?」
「ミラちゃん、確か貴方空中とか走れたよね?!」
「む?なんじゃ藪から棒に。いやまぁ、仙術を使えばできんことはないが……」
「じゃあ何人か頼んだ!──みんな、すぐに飛び降りるよ!」
「はぁっ?!」
考えている最中に、とある事実に気が付いた私は、思わず顔を青白くする。
それから、部屋の中にいる人物達の数を数えて、自身の確信が間違いでないことを察し。
先ほどまでは開ける気のなかった窓を、大きく開く。
途端、室内は外からの風に、酷く晒されることになるが──そのお陰で、
先ほどからその甘い匂いに晒され続けていた私達は、冷たさとそこに混じった潮風により
そのことを感じ取った全員が、向かってくるデンライナーに向かって、
「アーイキャーンフラーイ!!」
「無茶苦茶かよォォォォッ!!!」
叫ぶ銀ちゃんの声をBGMに、皆が窓から外へと身を投げ出していく。
空中で行動できる者は限られているため、ミラちゃんが何人かの首根っこを捕まえたのを見つつ、私は大声をあげた。
「あーさーひーさーんー!!!」
『──はいはーい。
瞬間、私達をその背に乗せて飛翔するのは、ほどほどの大きさの純白の龍。
……通常モンスターサイズの
「ちっ、止められなかったか」
「どんべえどんべえだゾ、モモちゃん。キーアお姉さん達はお助けできたから、ひとまずはクリボーだゾ」
「……それを言うなら『ドンマイ』と『クリアー』でしょ」
「おおっ、キーアお姉さん~。そーともゆー」
束の間の遊覧飛行を終えた私達は、近くの砂浜に停車していたデンライナーの近くに降り立った。
先ほどまで小さいミラボレアスの姿だったあさひさんは、私達が背から降りて程なく、その姿を芹沢あさひのモノに戻している。
そんな彼女も引き連れ向かった先では、しんちゃんと
……この少女、恐らくだけれど──。
「ん、言ってる内にお出ましだぜしんのすけ。なにか言うこととかあるんじゃねーのか?」
「おおっ、そーだったそーだった。……んもー、
「……その言葉の意味はよくわかんないけど。とりあえずありがとしんちゃん、こっちに声を掛けてくれたから違和感に気付けたよ」
一先ず少女のことは棚上げして、こちらにぷんぷんと擬音が付きそうな憤慨を見せるしんちゃんに、小さく感謝の言葉をなげる私。
──先ほど気付いたこと。それは、私達もあの食堂車の人々のように、
つい先ほど、私は脳内での現実逃避の際、自然とコナン君達を五人組と称していた。
おかしな話である。蘭さんにコナン君、鬼太郎君にバソ、それからライネス……。
そう、しんちゃんのことが、すっぽりと抜け落ちていたのである。
それに、あさひさんについても。
時折思い出したように会話に加わってくるものの、彼女がどこに寝泊まりしているのかについて、私は一切意識していなかった。
ついでに、駅に降りてから二人が居なくなっていたことにも、全然気が付いていなかったのである。
「二人が列車に
というか、そもそもの話をしてしまうと、ゴコちゃんあたりもおかしいのだ。
あまりにも登場が突然、かつ唐突に消えていった彼女は、はたして本当にあの列車に乗り込んでいたのか。
もしかすると、あれも思考誘導による幻覚を見ていただけなのでは……?
「……あー、そのだな。詳しい話をするってんなら、とりあえず乗らねぇか?」
「おおっと、こりゃ失礼。……一応、そっちの名前を伺っても?」
「んあ?……ああ、そりゃそうか。この姿じゃあ、なんのこったかわかったもんじゃねーよな」
そうして思考を続ける中、恐る恐るといった様子で声をあげる、赤メッシュの少女。
その口から飛び出してくる声は、少女の可愛らしいものではなく、男性の低い声。
どこのジョージボイスのアイドルだよ……と思わなくもないが、少なくとも前例がある時点でわりとあれである。……という話は置いといて。*6
平凡そうなその少女は、こちらに勝ち気な表情を向けていた……のが、今は『あー』だのなんだの呟きながら、呑気に頭を掻いている。
赤メッシュと、その態度。
それを除けば恐らくは気弱な方だろう、と確信できる顔の造りの少女は、恐らくは単に巻き込まれただけの一般人だろう。……
……まぁ、それが確かだとすると、色々ややこしいことになりそうだなぁと思わなくもないのだが。
ともあれ、こちらとしては確認のために、彼女──もとい、彼の名前を聞く必要性がある。
そんなこちらの言葉に彼女は一瞬呆けた表情を見せたあと、自分が今どんな姿をしているのか……ということに気が付いて、小さく頷いた。
それから、何事かをしようと手を上げ、直前でなにかに気付いたように手を止め、一つ息を吐いたあとにその手を下げる。
……なんというかこう、気になること有りまくりの行動だが、現状の知り合ったばかりの状況では、聞けることでもないだろう。
そう納得して、彼女の次の動きを待つ。
そんなこちらの態度を見ながら、少女は小さく笑みを溢し、自身が何者であるのかを告げるのだった。
「俺はモモタロス。*7……なんでこんなことになってんのかとか、なんのためにあの列車を追ってたのかとか。気になることは有るだろうが……まぁ、なんだ。取り敢えず乗れや。そっちの方が早いってのは、なんとなく見当ついてんだろ?」
「……そうだね。じゃあまぁ、お邪魔させて貰うよ」
彼女の口から飛び出した、予想通りの名前に一つ頷きを返して。
私達は、彼女が操る時の列車、デンライナーへと乗り込んでいく。
内装は……特におかしいところはなし。至って普通のデンライナーだ。
敢えておかしいところを告げるとすれば、車内に私達以外の誰の姿も見えない……ということだろうか。
「姿形はデンライナーそのものだが、性能云々については格段に下だ。自由に時間を行き来する、とかは出来ないんで注意してくれよ」
「それってデンライナーなの……?」
「言うんじゃねぇよ!こっちだって気にしてんだよっ!……ったく」
一番最後に中に入ってきたモモタロス……モモちゃん?が後ろ手に戸を閉めると、デンライナーは勝手に動き始める。
自動操縦ができるというのは中々に凄いような気がするのだが、代わりにというか時を遡ったり未来へ跳んだり、という機能はオミットされているらしい。
それってはたしてデンライナーと呼べるんだろうか、というこちらの疑問に、彼女は声を荒げながら乱雑に席に腰掛けることで答えとするのだった。……余裕がないというか、なんというか。
ともあれ、話が次に進んだ、というのは確かなようである。
そのことを踏まえて、一つ言っておきたいことがあります(震え声)
「あ?なんだ改まって」
「……コナン君と蘭さん、それから金田君置いてきちゃった……」
「あ゛」
……別室待機お願いしてた人達のこと、すっかり忘れてました!!(涙)
ちくしょう思考誘導!!