なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「そ、そそそそういえば!先ほど集まっていたのは私とせんぱい、ライネスさんにバーソロミューさん、鬼太郎さんにミラさんと、坂田さん達以下三名!江戸川さんと毛利さん、それから金田さんに関しては、各々のお部屋にて待機……と言う形になっていたのでした!?」
「うん、説明ありがとマシュ」
半ば逃げるように行われたあの列車からの退去。
突発的な行動だったがゆえに、現状確認とかほとんどしないままに行われたそれは、その場に居なかった者をある意味では捨て置くような行動だった。
……緊急時・かつ正気じゃなかったその行為は、結果として仲間を見捨てたようなものとなっていたのである。
「マジか。あの列車の中、まだ無事な奴がいんのか……」
「おいィ?こんな状況下で気になるようなことを呟かないで欲しいんだが?」
そんなこちらの言葉を聞いたモモちゃんの反応は、冷や汗をたらりと垂らすもの。
……あのですねぇ、カーブで出会う『幽霊列車』が文字通りデンライナーのことなら、無線で聞こえてたっていう『バレンタイン』『急行』『死』って言葉の危険度が跳ね上がるわけでですね?
もうその時点で嫌な予感しかしないので、不安を後乗せしていくのやめて欲しいんですよこっちはね???
「おお~、後乗せさくさくぅ~」*1
「言うとる場合かっ。……して、モモノスケとや
「おう、なんだ若作り」
「……ほぅ?わしが本当はイケてるナイスミドルと知っての台詞かの?」
「あ、ああ?なに言って……「ほっほっほっ。よいよい、飴ちゃんやろうか?」いらねぇっての!?オイ、なんなんだこいつイカれてんのか?」
「いや、なんで私に聞いてきたし。というか、そもそも貴方がなんなのかはわかったけど、それでも色々わかんないことも多いわけよ、こっちは。だーかーらー……」
「お、おう……(なんかこいつ、コハナを思い出すような……)」*3
まぁ、そのあたりを聞こうと思ったら、いつも通りにぐだぐだしてしまったわけなのだけれど。……しんちゃんとの相性は言わずもがな、ミラちゃんとも案外波長が合うというか、変に噛み合ったというか。
ともかく、話が変な方向に進んでいきそうだったので、何故かこちらにヒソヒソと声を掛けてきた彼に、ズビシと人指し指を向けて。
目を白黒させる彼女──彼?に、ちょっと自己紹介と行きましょうと提案をする私なのだった。
「あー、ちょっと待て。整理すっぞ?」
暫しの自己紹介を経て、モモちゃんは微妙に頭の痛そうな顔をしながら、確認するように指を折っていく。
「
「全部あだ名なのisなに」*4
「うるせーやベーの
「やべーのいち……?」
「な、なんだよ、文句でもあるってのかよっ」
彼特有の謎あだ名に置き換えられた名前を、全員が呼ばれていたわけなのだけれど。……寧ろ覚え辛くないかなぁそれ?
因みに、しんちゃんに関してはじゃがいも、あさひさんに関してはやべーの
ともあれ、彼なりに状況の整理はできたようで。
小さく息を吐いたあと、頭を書きながら彼は現在の状況について語り始めたのだった。
「あー、ことの起こり?は大体二ヶ月前……」
「ごめんなさい大体察したので言わなくても大丈夫です」
「あ?……いや、なんでお前が謝るんだよ?」
「時期的に心当たりが有りすぎるのでいやほんと済んませんっしたァっ!!」
「……なんのこっちゃ?」
が、彼の口から漏れた語り出しの部分で、こちらの
初手から土下座外交を推し進めて行く他なくなったわけなのですよチクチョウァッ!!!
流れるようにジャンピング土下座をした私だが、やられた方のモモちゃんは困惑顔。
すまんな、私は大体こんなノリなんだ。蜂にでも刺されたと思って諦めてくれ。
「いや、結構大事じゃねぇかそれ」
「そうだよ根本原因にこっちの事情が絡んでそうだからアナキラフィシーだよ*5!ごめんね!」
「え、あ、あー……許す?」
「よし許された。じゃあ続きをどうぞ」
「えー……」
いや、ホントに許されたとは微塵も思ってないけど。
一応の確認と、それから実態の確認のため、大丈夫と断ったけどやっぱり聞いといた方がいいかなー?というか。
こちらのテンションが乱高下*6していることに、モモちゃんは困惑頻りだが、それでもコホンと一つ咳を吐くと、気を取り直して続きの話を始めるのだった。
そうして紡がれた言葉を纏めると、こうだ。
事の起こりは今から二ヶ月前……大体十二月の半ば頃。
とある旅行会社が、経営難から倒産を余儀なくされたのだという。
理由としては、その無茶な運営形態にあった。
後払い式のそれは、一応の担保を預かるモノではあったが、それでも無賃乗車は無くならず。
また会社で線路を所有するというのも、維持費やそもそもの購入費などからして……始まった当初はまだ良かったものの、倒産直前あたりの懐事情では、悪戯に事業を圧迫するものにしかなっておらず。
そしてそもそもの車両自体も、特注も特注であったがために整備性に難があり、結果として運行を続ける内にどんどん車両は傷付き・古ぼけて行き、それが遠因となり──。
とまぁ、全てが悪循環を形成していたその会社は、まさしく潰れるべくして潰れてしまった、ということだったようだ。
クルーズトレイン自体が、その割高な料金設定から富裕層向けのサービスである以上、品質を高い水準で維持し続けられなくなった時点で、その寿命は尽きていたのだ……とも言えなくもないのかもしれない。
……まぁ、それだけなら悲しいけれどもよくある、単なる会社倒産の話……ということになるのだが。
なんとまぁ、そのクルーズトレインの最終運行日に、車内で首吊り自殺が起きてしまうのである。
自殺したのはその会社の社長。
経営難からの鬱や、家族との離散に耐えきれず、列車の最後の日を自分の最期の日にした……というような内容の遺書が見付かったという。
……のだけれど。
「ふむ、首吊りで他殺を疑う原因……となれば、吉川線が見付かった、ということかね?」
「お?ヨッシー?」
「吉川線というのは、突然首を絞められた被害者が、抵抗した結果として自身の首に出来てしまう傷のことですよ、しんのすけさん」*7
「おー、マシュちゃん物知り~」
……とまぁ、ライネスやしんちゃんの言う通り。
社長の首元──縄の痕である索条痕*8と共に、ファンデーションで巧妙に隠された、吉川線が見付かったのである。
それにより、事態は急変。結果として、妻に依頼された愛人の男性が彼を殺害し、それを自殺と見せ掛けて車内に設置した……という事実が判明した。
調べによれば、倒産間近となってもなお、社長はどうにかしてクルーズトレインを存続させようと、あちこちを東奔西走していたのだという。
その、夢見がちとも言える行為に疲れ果てた妻が、縁を切るために計画された犯行だった……と、警察の調書では〆られている。
……悲しい事件、と言ってしまえばそれだけの話なのだが。
問題はこれから。そう、クルーズトレインの最終運行日こそが悪かった。
その日は、クリスマスイブ。
そう、なりきり郷でのサンタクロース騒動が、解決する少し前のこと。
要するに、闇の化身であるハクさん……いや、ここでは敢えてこう呼ぼう。
大妖・白面の者の顕現を間近に控えたその日であったということが、この事件を悪化させることとなったのである。
「留置所にぶち込まれていた元妻と、実行者の間男。……その両方が、突然姿を消したらしい」
一番最初にその被害にあったのは、犯人である二人。
検察官への引き渡しのため、一時留置所に勾留されることになった両名は──ほんの少し、刑事が目を離した隙に、忽然と姿を消した。
物音はなかった、牢屋の鍵も開いていなかった。
ただ、そこにあるべき二人の姿だけが、まるで魔法のように消え失せていたのである。
警察も必死の捜索を行ったものの、そもそもに逃げられるハズのない場所から忽然と姿を消したこともあり、痕跡すら見付からずにお手上げになったのだそうだ。
そして、そこから広まる一つの噂。
会社が倒産し、整備する者もおらず。
倉庫にて、解体される時を待ち続けるクルーズトレインが一つ、姿を消したという語りから始まる噂だ。
車内で無念の死を迎えた社長の意思を継ぎ、彼を殺した二人をその身に呑み込んで。
世の悪人共を、ひたすらに巻き添えにしながら運行する地獄の列車。
──『幽霊列車』が、悪人を裁きに行くぞという噂だ。
「……ああくそ、思い出して来たぞ。僕とバーソロミューさんは、元々あの列車を調べるために来たんだ……!」
忌々しげに吐き捨てるのは、鬼太郎君。
元々彼とバソは、噂の真偽を確かめるためにあの列車を調査していたらしい。
それがどういうことか、彼等はコナン君達と一緒に旅行を始めた、という風に意識改変されていたわけである。
「……あー、私も思い出して来たぞ。確か八雲のに頼まれて、噂の調査に来たんじゃなかったか……?」
「そうだゾ!オラは、ライネスちゃんのお助け役だったんだゾ!」
更に、ライネスとしんちゃんもまた、別口での調査部隊だったようだ。
鬼太郎君達は独自調査の上で、ライネス達はゆかりんからの依頼で、それぞれあの列車に近付いたらしい。
だが、あの列車を調べようとしたところ、列車からの思考誘導により、それらの目的を忘れてあの列車に乗り込んでしまった……ということだったようだ。
更に、それらの情報は向こうに利用され、蘭さん達が列車に乗り込んだ切っ掛けとして再利用されていたのである。
一番最初、蘭さんにあの列車に乗っている理由云々の話を聞いた際に、彼女が説明していたのはライネス側の理由が混じったものだった……というわけだ。
二度目の説明の際に、『ゆかりんには行き先を伝えていない』などという話が飛び出したのも、思考誘導で自分のモノではない理由を自身のモノだと洗脳されていたから、というわけらしい。
……そう、よくよく考えてみると、結構なボロが出ている今回のあれこれ。
それら全てをカバーしているのが、件の洗脳能力。……いや、敢えてこう言おう。
「精神汚染を発生させる異常列車……それこそが、あの『幽霊列車』なんだよ!」
「「「「「「「「な、なんだってー!!?」」」」」」」」
……うん、いつも通り良い反応ありがとう。
それと新入り二人、変なものを見る目でこっちを見んな。