なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まさか私達が乗ってた方が『幽霊列車』だったとは……」
「更には
「全てを諦めたかのような、空虚すぎる笑いじゃのぅ……」
列車の近くに居ると、その意識を操作される──。
単純ながらも強力なその特性により、乗客達は意識を強く誘導されている。
そんな可能性を示された私としては、もはや乾いた笑いしか出てこねーですよちくしょーめ。
というか、だ。
基本的には楽しい列車旅行、ということになるように意識を誘導させられているわけなのだけれど、はたして本当に
「と、言いますと?」
「あの乗客、
「お、おいおいおい……まさか中に幽霊でも居た、って言うんじゃねぇだろうなぁ!?」
「幽霊というか、眷属ぅ*2と言うか……」
こちらの言葉に、微妙に上擦った声をあげるモモちゃん。
……鬼なのに幽霊とか怖いんだろうか、と問い掛けたら「こっここここ怖くなんかねえっての!つーか俺は鬼じゃねーの!」などと寝言をほざき始めたので、一体どうしてくれようかこの赤鬼などと思案中で……え、なにマシュ?
ふんふん、ふむふむ。……はぁ、なるほど?
「な、なんだよその目は……」
「いやいやなんでもございませぬよ?やっぱり幽霊は嫌なんだなって思っただけだから」
現在の彼は──大本はモモタロスだが、憑依しているのが少女であること、それからそもそも『憑依』という行為がこの世界ではちょっと別の意味を持つことから、どうにも存在が不安定になっているのではないか、というのがマシュの考察である。
つまり、今のモモタロスは文字通り
「だからまぁ、女の子らしく『幽霊こわーい』とか言い出しても……ええ、そんな可愛らしいことを言い出しても、私達はちゃんと受け入ぺっ」
「ざけんなっ!!」
説明している最中に顔面にシュークリーム投げるの止めない?
……という私の抗議は華麗にスルーされ、彼……もとい彼女は拗ねたようにそっぽを向いてしまった。むぅ、バッドコミュニケーション……。*3
それと銀ちゃん、君はなんでちょっと羨ましそうな顔をしてるんです?……え?糖分が切れた?シュガードープ*4か貴様は。
ともあれ、からかったこっちの自業自得の面も無くはないため、マシュがこちらの顔を拭こうとしてくるのをやんわりと断りつつ、自分で顔面に飛び散ったクリームを拭き取る私である。
「……つーか、そもそも幽霊列車だって二回目だし。怖くなんかねーし。俺の必殺技パート
「はいはい、こっちが悪かったから機嫌直して頂戴な」
そっぽを向いた彼女は、小声で何事かを捲し立てているが……聞こえているとなると余計に拗れそうなので、ここは一切内容を聞かずに、ただ謝罪だけを投げる。
こちらが真剣に謝っていることを感じ取ったのか、彼女は『プリン・ア・ラ・モードで許してやる』という感じのことを返してくるのだった。……あらどーも、なんちて。*6
「しかしー、うーむ……」
デンライナーの車内で揺られながら、考え込むこと暫し。
いつかは乗ってみたいな、的なことを言った覚えがあるけれど、まさか本当に乗ることになるとは思わなんだ……みたいな感想もちょっと無くはないのだが、それはそれとして。
『電王』の方でも『幽霊列車』の話はあった、ということを聞いた私は、今回のあれこれが予想以上に根が深いモノなのではないのかと、ちょっと疑い始めていたのだった。
「あん?なんだ、前回ってーと……ユウキ、だったか?あれがまた関わってるとでも?」
「さぁね。……ただね、中で会った人に『
「……ふーん?」
モモちゃんの溢した名前にちょっと
ユウキ……すなわち『仮面ライダー幽汽』とは、『電王』で登場したライダーであり、そのモチーフに『海賊』を含むモノでもある。*7
ついでに言えば……まぁ、こちらは偶然に近いが。向こうに、人質めいたモノを取られている……というのも確かなのである。
「……いやその、せんぱい?その理屈で言いますと、蘭さんが怖いのですが?」
「…………」
「せんぱい!?こちらを見てくださいせんぱい!?」
……うん。
『
というか、先ほどまでの話は基本的には噂、あの列車が本当に『悪人を食らう魔の幽霊列車』であるかどうかは不明。
ゆえに、
……具体的に言うと、謎の仮面とか被った蘭さんが出てくる可能性とか、わりと考慮しとかなきゃなー、というか?
そんな感じのことを述べたところ、涙目のマシュに詰め寄られてしまった、というわけである。
……いやまぁ、うん。推理もの特有の実力行使枠*9だからなのか、蘭さんって戦闘力高いからなぁ……。
というか、よくよく考えてみると蘭さんが再現度が高いのかどうか、私達は一切知らないわけで。
ゆかりんの護衛役も兼ねてるあたり、少なくともそんじょそこらの人よりは強いんだろうし、最悪『藍』扱いだから、なにか強化とかされてる可能性も否定できないし……というわけで、例えマシュほどの実力者であっても、正面戦闘は避けたくなる……という気持ちもわからないでもない、というか。
「まぁ、最悪洗脳されてても『幽霊列車』の方を止めれば、多分どうにかなると思うけど……」
「ああ、なるほど。だからこそ『動機』に間違いがないか、というところが気になったと」
「そーいうこと」
バソの言葉に頷きを返す私。
今回の案件がイマジン絡み……という私の判断は、そう間違ってないと思われる。【顕象】は決して無秩序なモノではなく、ゆえに状況証拠が揃うのなら、ほぼ間違いはないはずである。
ただ、契約者候補が
ちゃんと相手の動機を読めていればいいが、もし仮に読み間違えた場合は……。
「どうなるか、というのはあんまり言わせないでほしい。……よくない結果になる、ってことだけは確かだけど」
私の言葉に、皆がしんと静まり返る。
……この場合の良くない結果、というと、三人が戻ってこない可能性……とかだろうか?
無論、そんなことにならないように善処はするが、読み間違えて対処をミスり、結果として取り返しのつかないことになる、というのは極力避けたいところ。
「……そういえば、怪盗は?」
「え?」
「は?」
「あれ?」
「お?」
「……んん?」
そんな中、ポツリと鬼太郎君が呟いた言葉に、皆の自然が彼に集中する。
あれ、僕おかしいこと言ったかな……みたいな曖昧な表情で、頭を掻いている鬼太郎君だが……。
「……すっかり頭から抜け落ちてたね。そういえば黒雲斎さんも居たんだっけ……」
「怪盗に狙われているという宝石も、外から持ち込まれたモノのはずです。物に関しては
こちらとしては、すっかり頭から抜け落ちていた話だっただけに、思い出させてくれてありがとう、と言いたいくらいの気持ちである。
そう、黒雲斎さんは『宝石を怪盗から守るために』あの列車に乗り込んだのだと言っていた。
最悪、『宝石を守るために』という部分が捏造された記憶だったとしても、実際に宝石があったということは事実。
すなわち、こちらの案件とはまた別個の問題として、怪盗がやってくる可能性自体は潰えていない……ということだ。
「ふむ、わしはその二人にあっておらぬので、迂闊なことは言えぬが……おるのか?怪盗なぞ」
「なにを言いますやらミラちゃん。これに関してはそっち案件なんだぞ?」
「……む、わし案件?」
そんな私達の話に、一人だけ首を傾げている者がいる。
そう、私達と一緒にあれこれと問題を解決したわけではない二人のうち、一人だけ完全に別組織所属のミラちゃんである。
……モモちゃん?彼女はどうにも在野の一般?なりきりのようなので、扱いとしては保護前のキリトちゃんとかと一緒である。……なんか、図らずしもTS系キャラの名前ばっかり上がったな今?
ともあれ、ミラちゃんの所属が『新秩序互助会』という、胡散臭さMAXのところだと言うのは間違いない。
そして、そこに居る者達が、自分を『転生者だと思っている』ということもまた、彼女自身がそう述べていたようなものなので、ほぼ確実だろう。
なりきり郷に所属する人々は、原則として外には出てこない。例外は、私達のような許可を得た者達だけ。
……つまり、こちら側から怪盗なんかが外に出る、ということはほぼあり得ないはずなのだ。
それは裏を返せば、
「……いやいや、理由としては薄過ぎるじゃろう、それ」
「でも、自分が転生者で、この世界は自分達のための遊び場だ、みたいな考え方をしている人が現れやすいのって、そっちじゃない?」
「……む」
こちらの勝手な予測に、軽く呆れたような声をあげるミラちゃんだが……。
考えてもみてほしい。
人の良識とは、環境によって育つもの。
いわゆる『異世界転生』系の作品で、主人公達が好き勝手し始めるのは、転生してきた世界を下位世界──すなわち
それらを考慮するに……『新秩序互助会』は、その設立の目的がどうであれ、勘違いを加速させる坩堝の役割を果たしてしまっている……ということに、言い逃れが利きそうにないモノだと私達には認識されているし、事実ちょっと前までのミラちゃんの思想は──危険でこそなかったものの、実際にその勘違いを否定できるようなものでもなかった。
すなわち。
いわゆる劇場型犯罪*10の典型である怪盗。それが身を潜める場所があるとすれば、それは在野か・はたまた『新秩序互助会』か。
……というような予測を立てるのは、ある意味自然な流れなのである。
「まぁ、こっち側で愉快犯がいる、という可能性も捨てきれないけども」
まぁ、最後に今までの話を、全部ひっくり返すようなことも挟んでおくのが私、なのだが。
そんなこちらの言葉を聞いたミラちゃんは、なんとも言えない表情で固まり、モモちゃんもまた『こいつめんどくせぇ……』みたいな顔をしていたのでした。
……しゃーないやんけ、単なる予測なんやし。