なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「よぉし、マシュ!コナン君!準備はいい?」
「問題ありません!マシュ・キリエライト、いつでも出られます!」
「……いや、その。……マジで言ってる?」
「どうしたー、コナン。まるで俺みたいなテンションだけど」
「銀時?いやアンタ、さっきまでどこに……」
「ん、後ろの乗客達を最寄りの駅まで送ってた。Xが居れば、輸送手段には困らねぇしな」
「……銀時君は私のことを、なんだと思っているんです?」
「え?フレームアームズ」*1
「そこはせめてメガミデバイスとか、アリス・ギア・アイギスとか言って貰えませんかっ!?なんでそっちなんですか!ガール付いてないし!」*2
「いや、だって『飛行中は危ないので!』ってフルフェイス状態だったじゃん、お前」
「ぐぬっ、安全基準を守ったことが仇となりましたかっ!」
わちゃわちゃと、全員集合!
……を果たした私達は、客車の出入り口の手前で、突撃の瞬間を今か今かと待ち続けていた。
車内に残っていた他の乗客達に関しては、ずっと別行動を取っていたネオニューよろず屋*3達の活躍により、巻き込まれないような場所まで退避済み。
……その最中、空を翔る
多分郷の方でゆかりんが、隠蔽工作とかカバーストーリーとかの作成に全力を尽くしてくれているだろうから問題はなし。……ヨシ!
「愚痴フラグ、というやつだね。帰ってから絡まれても知らないよ?」
「おっとライネス。そっちの方はどうだった?」
「うむ、手懸かりはまったくなし。痕跡の欠片ほども見付けられなかったよ」
「マジでかー……」
「オラも張り切って探したけど、髪の毛一本見付からなかったんだゾ……」
「むぅ、しんちゃんでも見付けられないなら、テレポートでもしたのかな……?」
「いやナチュラルに話を進めるでないわ。……よもやとは思うが、その格好をすると目が良くなる、みたいな話ではあるまいな、お主」
「……そんなの当たり前では?」
「ほっほーい、今のオラは空を飛ぶ鷹!小さいものも見逃さないんだゾ~」
「ええ……?」
郷の方で「なんでよー!」と泣き叫んでそうなゆかりんのことは置いといて、別行動から戻ってきていたライネスから、調査報告を受けたわけなのですが。
……結果は芳しくなく、しんちゃんのコスプレモードでも見付からなかったとのこと。
魔術と物理、両方使って見付からなかったのであれば、
……とまぁ、そのような即席報告会を行っていたところ、横のミラちゃんから飛び出したのは、しんちゃんの格好についての疑問。
今のしんちゃんは鷹の着ぐるみを身に纏っている状態。
その姿だと目が良くなる効果があり、彼はそれを使って、キリアなり金田君なりの痕跡を探してくれていたわけなのである。
と、言うような説明をした結果、ミラちゃんから返ってきたのは疑いの眼差し。
……しんちゃんのスキルについて知ってれば、わりと不思議でもなんでもないはずなのだが、どうにも未だに転生者気分が抜けきっていないらしく、彼のことをただの幼稚園児だと思っているらしい。
いやまぁ、転生者気分が抜けきってないにしても、『野原しんのすけ』を見てただの子供と侮るとか、単なる死亡フラグでしかないような気がするけども。
「オラは鷹!むん!」
「と、飛んだぁぁぁぁ!!?」*4
「そりゃ飛ぶでしょ、鶏でも飛ぶんだし。ありゃ正確には滑空だけれども」
「ええええええ」
そんな彼女の前で、しんちゃんは手に持った翼を羽ばたかせ、宙に舞う。
驚愕する彼女の前で、優雅に旋回したりターンを決めたりする姿は正に鷹の如し。……うん、凄いんだけどさ、狭い客車の中で飛び回るのは止めようね。『あいあむざぼーんおぶまいそーど!』*5とか言ってなくていいから。
「いやおかしいじゃろ!?スキルもなしに飛びおったぞこやつ!?」
「しんちゃんはね、飛ぶんだよ」
「お、おぅ……」
そんな決定的な状況を目にしてもなお、しんちゃんのスペックの高さについて認識しきれていない様子のミラちゃん。
……あのねミラちゃん。私らなりきりなんですよ。
本人様の複製なのかなんなのかはよくわからないけども、とにかく彼らが逆憑依してきた結果として、成り立ってる存在なんですよ。
つまりはだね、派生だろうがなんだろうが、どっかで描写されたことがあれば、それは全て
「ぬ、ぬぅ?」
「しんちゃんが猿の格好をすると木登りが上手くなるのも、しんちゃんが蜂の格好をすると空を飛べるようになるのも、アクション仮面の格好をすればアクションビームが撃てるのも。全部ちゃんと公式からお出しされたものなんだから、なにも問題はないの。おわかり?」*6
「い、いや、前者はまだしも後者二つはおかしい……「お・わ・か・り?」ぬ、ぬぅ……」
しんちゃんが作中において才能の塊であることは、周知の事実。その才能の中に含まれているコスプレ服の作成技術は、彼が大きくなったのならば、どこかで着せ替え人形と恋をしていてもおかしくないレベル。*7
それほどの才あれば、作ったものに魂が込められ、結果としてコスプレの範疇を越えたモノになったとしても、なにもおかしくないのである(ぐるぐるおめめ)。*8
そう、まさしくしんちゃんこそ救世主!
祝え!数多の苦難を乗り越えし、嵐を呼ぶ幼稚園児!その名も野原しんのすけ!あらゆる困難を笑いに変える、天下無敵の救世主である!*9
「おちつけ」
「……殴る必要性はないんじゃないかなライネス」
「おお……げんこつ……」*10
……なお、ちょっとヒートアップし過ぎたせいで、ライネスに拳骨を落とされる羽目になる私なのであった。なにゆえ。
「3・2・1……ゴーゴーゴー!!」
「やっぱりテンションおかしくないかお主?」
外のビームの雨が比較的修まったタイミングを見計らい、外へと飛び出す私達。
先頭を行くのはマシュ、そのラウンドシールドで背中を追うみんなを守護する役割だ。
続くのはコナン君を抱えた蘭さん。ポジション的に一番安全な二人は、今回の作戦の要である。
その更に後ろには鬼太郎君。今回はバソは待機しているため彼一人、曲がるビームとか飛んできていたので、ちゃんちゃんこで跳ね返す役割が主体となる。*11
そして最後尾は、私とミラちゃん。二人とも空が飛べるので、臨機応変に状況に対処することが求められる。
その他の面々は、みんな列車内で待機。
大勢で向かっても的になるだけなので、少数メンバーでの攻略となる。
……え?大体五人なのにインペリアル・クロスじゃないのかって?相手の攻撃範囲的にあれじゃあコナン君を守り切れないので仕方なし。
ともかく、勢いよく列車を飛び出した私達は、そのまま一目散に『魔列車』の方へと駆け抜けていく。
『おい、危ねぇぞテメェら!』
「百も承知!こっちに構わず、そっちはそっちで頑張って!」
『……ちっ、どうなっても知らねぇぞ!』
こちらを視認したらしいモモちゃんが、デンライナーから音声を飛ばしてくるが……決め手に欠けるこの膠着状態を打ち崩すためにも、こちらが動かなければならないのは道理。
彼にはそのまま怪獣大決戦を続けて貰うとして、こちらはこちらのやることをやる……ということを伝えると、彼は小さく舌打ちをしたのち、再びデンライナーで『魔列車』への突撃を敢行していた、
東洋龍同士のぶつかり合いのような、デンライナーと『魔列車』の対決であるが、その実周辺への被害は驚くほどに少ない。
それもそのはず。互いにぶつかり合ってはいるものの、両方の属性が微妙にずれているせいで、扱いとしては単なる接触……という形に留まってしまっているのである。
スパロボで実体剣とビームソードで切り払いが発生しているような状態、とでも言おうか。
本来であれば、ビームの刃を実体剣で受け止めることは不可能である。
形のないビームは……現実に即して考えるのならば、実体剣をバターのように切り裂くか、はたまたビームを形成している粒子が遮られて、傍目には折れたように見えるかのどちらかになると思われる。
前者は勝ち、後者は負け。
要するに、
それでは困るため創作における鍔迫り合いは、互いの獲物が実体・非実体のどちらであっても起こりうるものとなっていることが多い。
今回の場合、互いに実体と幽体の存在であるが、【兆し】から生まれたという共通常識を持つがゆえに接触はできる、という形になっているのだろう。
ただ、それ以上を望むのであれば、必要なのは更なる火力。
相手側はビームを発射することでその条件を満たしたようだが、デンライナー側は武装縛り状態なので単純な突撃しかできない。
魔法少女属性を持つがゆえに魔力防御を行っているようだが、それもいつまで持つものやら。
そもそもビームを発射し始めたのも、『魔列車』がイマジン──願いを叶える存在であることが作用して、
「……なるほど、責任重大だな」
「そういうこと!見た感じ大丈夫そうだし、任せたからね!?」
「コナン君……」
なので、これ以上相手に対応する時間を与える前に、相手を文字通り一撃死させる必要性がある。
その立役者となりうるのが、コナン君……もとい、彼の履いているスニーカー、というわけである。
いやまぁ、彼のスニーカーの大きさだと、彼以外に履くことができる人間が居なかったので、結局のところ彼自身が作戦の鍵……というのも間違いではないのだけれども。あんまりその辺りを深掘りして、彼に要らぬ緊張感を与えるのもなー、と思わなくもないキーアさんなのだった。
「いーや、
「……それもそうだ」
まぁ、不敵な笑みを見せるコナン君の言葉に、要らぬ心配だったかと苦笑する羽目になったわけなのだけれど。
……蘭さんにお姫様抱っこされてる状況でそれを言えるんだから、大したもんだよ全く。
「……思い出させないでくれよ……」
「あれー!?」
なお、
こつ