なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「敵性体『魔列車』、こちらに反応!これより本格戦闘に移ります!」
「了解!みんな、左右からのビームに注意して!」
なんでビームが曲がるんですか?(真顔)*1
……というツッコミは一先ず置いといて、列車に逃げ込んだ私達へと暫く攻撃をしていた『魔列車』。
こちらが出てこないことを悟ったために、攻撃目標をデンライナーに移した結果弱まっていた、周囲への牽制も含めたのであろうビームの雨が、再び強くなり始めたことにより。
こちらへのターゲティングが、再び復活したことを悟る私達。
こうなれば最早立ち止まる暇はなし、準備を整えるためにも相手のヘイト*2を上手いこと散らさねばなるまい。
「こういう時、キリトちゃんがリアルで戦えたら楽だったんだろうなぁ!」
「レイドボス扱いかい?まぁ、間違ってはいない、かな!──行けっ、リモコン下駄!」*3
「まずは手筈通り、というわけじゃな!では行くぞ、【召喚術:ホーリーナイト】【召喚術:ダークナイト】!」
「それではこちらもチンカラホイ、ゆけ!今週のおっかなびっくりロボ!」*4
「……マジで出しおった!?」
そういうわけで、とにかく相手の攻撃対象を散らすため、とにかく数を増やす作戦である。
ある程度耐久なり回避なりができて、とにかく数を増やせるモノ……というような条件付けにより選抜された面もある面々が、それぞれ飛び回るリモコン下駄やら、白黒の二つの騎士による突撃陣形だとか、はたまたどこからともなく小さいロボキーア(!)を召喚してみたりだとか、とにかく撹乱するために全力というわけである。
……まぁ、私のやったことに対しては、ミラちゃんから驚愕のお声が飛んできたわけなのですが。さっき口で説明したにも関わらず、微妙に信じてなかったらしい。
他の面々が『まぁ、キーアだし……』みたいなテンションでスルーしてくれているのとは大違いである。
「む?寧ろこうして驚いてくれる方が、新鮮味があって良いのでは……?」
「せんぱい!いいから集中してください!」
「はいはーい。……さぁてと、いけよ!ファング!」*5
「絶対違うじゃろそれ!?」
「ミラさんも!せんぱいのやることにツッコミを入れるのは後にしてください!」
「わしなにも悪くないことないかのぅ!?」
なお、そういう反応の方が有り難みがあるのでは?……という私の気付きは、向かってくるビームの大半をガードしている、恐らくは現状一番忙しいマシュからの叱責で流されるのであった。
後輩はなにも間違ってないからね、仕方ないね。……続けてロボキーアを宙に浮かせて突撃させたら、またもやミラちゃんからのツッコミが飛んだけど、今度は向こうがマシュに怒られていたのだった。
ともあれ、作戦の第一段階である『飽和攻撃』はクリアー。
ダメージが与えられずとも、こうして相手の攻撃の行く先が本命から逸れてくれれば儲けモノ、マシュの負担も減るというモノである。
「コナン君、行けそう?」
「ちょっと待ってくれ……まさかのコマンド式なんだよこれ……ええと、左に八メモリ、一回ボタンを押してから右に十一メモリ、またボタンを押して左に十メモリ……」
「……みんな、ごめんなさい!もう少し頑張って下さい!」
まぁ、守られている当人であるコナン君の方は、ちょっとばかり時間が掛かりそうなのだが。
よりにもよってコマンド式の解除技なのは、琥珀さんのこだわり故か、はてさて。
『なにしようとしてんのか知らねぇけど、立ち止まってっと蜂の巣にされっぞ!』
「いえ、させません!『
『おおっ!?』
モモちゃんからの忠告と同時、『魔列車』から放たれる
……さっきから思ってたんだけど、なんでこの『魔列車』はいわゆる普通のビームばっかり撃ってきてるのだろう?いや、セイントビーム*7とかされても困るけども。
ともかく、サテライトキャノン*8かなにかかと見紛うような極光が放たれ、辺りが一面白に染まる。
そんな中、マシュが選択したのは受け止めること。鉄壁の守りを誇る彼女ならではの選択肢であり、同時に、この程度の攻撃であるならば仮想展開で十分、という彼女の自信の現れでもあった。
「あ、いえ、その、そういうことではなくてですね?!単純に魔力の節約だとか、そういうことでですね!?」
「マシュがなにを慌ててるのかは知らないけど、向こうはチャージに入ったみたいだから、もう宝具は解いてもいいと思うよ?」
「あ、はい……」
若干空回り気味のマシュを慰めつつ、宙を舞うロボキーアの軌道を操る私。
先頭車両が顔に相当するのかはわからないけど、とりあえずその辺りを集中的に飛ぶようにコントロールし、残りは後ろの車両から飛んでくるビームに対しての盾代わりに使い潰していく。
……え?使い潰していいのかって?どうせおもちゃみたいなもんでしかないんだからへーきへーき。
「ああっ、またせんぱいが
「……おーい、あれはおもちゃだからねー。中々意味不明なこと言ってるってことに気付こうねー?」
……一つ落ちる度に、マシュの反応がよくわからんことになっているわけなのだが。
最近人体構造を無視した変身とか変化とか多用していたから、マシュの中での『先輩許容度』が意味不明なことになっているのかもしれない。流石に自重するべきかなー……。
ともあれ、戦局は膠着状態を維持している。
このままではこちらのリソースが尽きる方が早いだろう。ゆえに、コナン君には頑張って欲しいところだが……。
「……右に八メモリ回してスイッチ、もいっちょ右に五メモリ回してスイッチ……これで!」
〈エクストラシーケンスへ移行〉
「──よしっ!みんな、射線を開けてくれ!」
「!了解!吹き荒れろ、ローゼスハリケーン!」*9
「あああ、せんぱいー!」
待望のコナン君の発言に、皆の間に緊張が走る。
これで上手くいかなきゃ撤退する他ないのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
ともあれ、彼の準備ができたと言うのなら遠慮は無用。『魔列車』の周りを旋回させていたロボキーアに指示を出し、その回転を早める私。
結果、それは巨大な渦巻きとなり、『魔列車』を閉じ込めることに成功する。……まぁ、相手のビームを巻き込んでいるからこそ封じ込められているだけで、その内竜巻の起点となっているロボキーアが壊れて解除されるのが関の山、だったりするのだが。
なお、さっきからのマシュの変な動きが更に加速したけど、それに関しては知らない。
また、ミラちゃんや鬼太郎君達も、巻き込まれては叶わないと攻撃を止め、こちらに戻ってきている。モモちゃんはなにが起きても対応できるように、ゆっくりと空を走っている。……あの高さならば、少なくとも巻き込まれることはないだろう。
そうして皆の注目が集まる中、コナン君は蘭さんに地面に下ろして貰い、しっかりと『魔列車』の方を見つめていた。
「お前がどうしたかったのか、俺にはわからねーけど。……止めなきゃなんねーってんなら、止めてやるよ!」
そうして彼は、ベルトからボールを射出すると同時、空中にジャンプし前に一回転。剣を構えるが如く右足を天に伸ばし、そこに現れた魔方陣ごと踵落としの要領で……要領で?*10
「あれ?」
「え?」
皆の間に動揺が走る中、コナン君はそのまま着地。
タイミングを失ったボールはぽてんと地面に落ち、コロコロと転がっていく。
……いやその、技は?
そんな周囲の視線を受けたコナン君はといえば、「え、なに、なんなんだ一体?」と周囲の二倍くらい困惑していた。
──そんな中。
『おい、なにをやっている!』
「ら、ライネス?いやその、こっちにもなにがなんだか……」
『違う!
「……へ?」
飛んできたのは、ライネスからの念話。
こちらの混乱を見て声を掛けてきたのだと思われたそれは、実際には彼女がこちらに起きているある
ええと、魔力?
そう困惑する私達の前で、コナン君の足元が輝き始めた。
「……ゑ?」*11
〈──
「ゑ゛」
「あ(察し)」
「あっ、てなんだよ察しってなんだよ!?」
「ふふふ。──是は、己より強大な者との戦いである」
〈──アーティレイヤー、承認〉
続いて放たれた音声が、
困惑するコナン君に微笑みを返しながら、自分がするべきこと……すなわち承認を済ませておく。
この時点で、周囲もなにが起きているのかを察したらしい。
気の毒そうな表情を浮かべながら、皆が次々に言葉を告げていく。
「あー、共に戦う者は、
〈──鬼太郎、承認〉
「な、なるほど?是は、精霊との戦いではない」
〈──ダンブルフ、承認〉
「……えっと、頑張ってコナン君。是は、生きるための戦いである」
〈──蘭、承認〉
「え、ええと……是は、私欲なき戦いである」
〈──ギャラハッド、承認〉
『……なるほどそういうことか。なら、おまけに持ってけぇ!是は、
〈──モモタロス、承認〉
「え。……え゛」
皆の言葉が響く度、コナン君の足元からは色鮮やかな輝きが溢れ出す。
それらは全て混じりあい、解放の時を今か今かと待ち構えていた。
またしてもなにも知らないコナン君、一人だけ置いてけぼりである。……恨むんなら、琥珀さんを恨むんだな……。
「ほら、そろそろ向こうの拘束も解けちゃう!
「ふ、ふふふふ、ふざけんなぁっ!!?どう考えてもヤベー奴じゃねぇかこれ!?」
「
「笑ってんじゃねぇーっ!!」
「ははは。ほらほら、早く早くっ」
「くそっ、くそっ!後で覚えてろよお前らっ!!……あーもう!!是は、世界を救う戦いである!!」
〈──コナン、承認〉
最後の一押し、コナン君の言葉によって始動条件は完全に満たされ、後は彼が技を放つのみ。
モーションアシストが最後まで補助してくれない辺り、琥珀さんの要らぬ気遣いが身に染みるところ。
ともあれ、なんで隠しコマンドなんて設定してるんだろう?というこちらの疑問も晴れたところで、コナン君には今回のお話のけりを、文字通り
「
後ろに大きく右足を振りかぶったそれは、最初に放とうとした技よりも、
ゆえにこそこの技は成立し、相手を打ち砕く聖剣となる。
見よ、今や彼の少年の右足は黄金の如く光輝き、敵対者を丸ごとこの世界から消し去るほどの威力を発揮せんと、ごうごうと唸りをあげているのだ!
「──
叫びと共に放たれた蹴りは、ボールを綺麗に蹴りあげ──そのボールを媒介にして、黄金の斬撃を生み出す。
膨大な魔力の奔流となったそれは、違えることなく『魔列車』が拘束されていた竜巻に命中し。
『わからないわからないどうしてなぜいやだつれていかないで』
断末魔の声を響かせながら、『魔列車』は光の爆発の中に消えていくのだった──。