なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……なぁにこれぇ」
「なにって、報告書だけど?」
騒動まみれのバレンタインから、暫く経ったある日のこと。
いつもの通りゆかりんルームでお茶を飲んでいた私は、手渡しされた報告書を読み進める度に、わなわなと震える回数が増えていくゆかりんに対し「疲れてるんだろうなぁ」なんて適当な感想を、脳内で垂れ流していたのだった。
……
今回の報告書に関しては、その作成にマシュやライネスなどの手も借りているため、文章が変とか読み辛いとか、そういう書式からして意☆味☆不☆明、なんてことにはなっていないはずなのだけれど……。
「貴方の
「あ、あー。それはねー……」
そうしてよくよく話を聞いてみたところによると、彼女がわけわからんと爆発しているのは報告書の最後の部分、この世界からの消滅、だなんて物騒な性質を持つ方のエクスカリバー*1で強制成仏を試みたモノの、相手方には逃げられてしまったという部分についてらしい。
……まぁ、うん。そこに関しては、こっちとしても話をする準備ができていないと言いますか……。
「え、ちょっと待って。私の勘違いであることを切に願うのだけれど……え、もしかしてこの報告書、書いてないことがあるの?!」
「ははははー。……聞きたい?」
「やーめーてー!!絶対面倒事でしょ!?このタイミングで隠してることとか、絶対面倒事でしょ!?いやよ私、散々今回のあれこれで
「ははは。……さて、エクスカリバーの着弾により、爆散したかに思われた『魔列車』だったのですが……」
「やめろー!話すなって言ってるでしょー!!?せめて私にも心の準備をさせてー!!」
まぁ、上司から責任説明の義務を果たせ、と言われればこなすより他ないんですけどね☆
と、言うわけで。
私はあの騒動の結末部分を、改めて脳裏に思い起こしながら、彼女に語り聞かせて行くのだった──。
「やったか!?」
「おいバカやめろ!」*3
今回の彼は直接戦闘要因ではなかったものの、これ以上長引くのなら引き摺り出されていただろうから、その反応もさもありなん。
……いやまぁ、Xちゃんが本格参戦してくるきっかけにもなりかねないので、こちらとしても彼の参戦は丁寧にお断りしたいところではあるのだけれど。
「……いや、ですから皆さん、私のことなんだと思ってるんです?」
「ヤバい槍ぶん回す人」
「セイバーに頓着しない分行動が読めない人」
「ちくわ大明神」
「いや意味わかりませんからね!?」
誰だ今の。
……冗談は置いといて、彼女が真面目に戦線に加わり始めるのは終わりの始まり感が凄いので、『使われないままの奥の手』としてベンチを温め続けて欲しいという感じでして。
そのようなことを述べましたところ、彼女からはスッゴい渋い顔を返されたわけなのでございましたとさ。……恨むんなら自分のキャラのギャグ属性を恨んでください。
話を戻して。
若干茶化してしまったけれど、先ほどの聖剣の輝きが相手を討ち漏らすとは考え辛い。
サッカーで死人が出そうな辺りは意味不明感が凄まじい*4が、それはそれとしてあれで無事だなんてことになられても困る……こま……?
「いやー、危ないところだった危ないところだった。まさかそんな隠し玉があるとは、コナン君も隅に置けないなぁ」
「……?!」
晴れ始める爆煙の向こう、大小二つの人影がそこに立っているのが窺えた。
聞こえてくる声には微妙に聞き覚えがあり、それがこちらに驚愕をもたらしている。
……そう、何故ならばその影とは。
「
「か、金田さん?」
呆然としたような声をあげる蘭さん。
それもそのはず、私達の前に爆煙の向こうから現れたのは、先ほどから連絡の取れなくなっていた二人、金田君と
「私より私へ。話を合わせるように、オーバー?」
「……回収は終わりました。このまま帰投するべきでは?」
「いやいや、よくないよキリアちゃん。俺達は今唐突に現れて、唐突に状況を引っ掻き回しているんだ。──ヒントくらいは、与えておかないとね?」
「……お好きにどうぞ。私は関与しませんので」
いつの間にそんなに仲良くなったのか、そんな疑問を感じさせる二人のやり取りに、困惑する私達。まぁ、私は察したけど
そうしてそっぽを向いたキリアの手には、小さな鉄道模型が鎮座している。……いや違う、あれは単なるおもちゃではない。
「あー、潜入捜査的な?オーバー?」
「それは、まさか……」
「そのまさかだよ。これは君達が、さっきまで必死になって倒そうとしていた『魔列車』。それを
「……!」
こちらの呟きを聞いて、楽しそうに声をあげる金田君。
その様子は『金田一一』としては不自然極まりないもので、ゆえにこちらが思い違いをしていたことを理解する。
「上から他のガワを被るのは反則ですよねぇ」
「その通りです、
「……なるほど。その姿は変装だ、ってことか」
状況の複雑さをいち早く見抜いたコナン君が、小さく声をあげる。
そう、目の前に居る
前例として姿が変貌していた荷葉ちゃんを知っていたからこそ、その勘違いは強固なモノとなっていたが……、【兆し】になっただけで姿が変わるなど、本当はあるわけがないのだ。
その辺りは、マントを被ってその下の人物を不確定にしていた桃香さんが、ある意味で証明している話でもある。
「姿の変化は
「正解正解。……いやはや、あそこを解決したって聞いた時にはビックリしたものだけど、おかげ様でこうして労せず
「……『魔列車』が目的……?」
それを疑問に思わなかったのは、繰り返しの中で姿を変じさせて行った、荷葉ちゃんという前例を見ていたから。
……思えば、
「あの人物って?」
「
「あ、あま……なんだって?」
「天照玉藻之前猫被。……
「……あっ、
「正解ー。……ふふ、いやはや。奇縁もここまでくれば良縁、ということかな?」
おちゃらけたような喋り方をする彼は、こちらの視線を受けながら周囲をてくてくと歩いている。
余程楽しいのか、はたまた
「
「……言っておきますが、胸焼けがしても知りませんからね」
「大丈夫大丈夫。
「……!そいつを止めろ!」
コナン君の鋭い声が飛ぶが、間に合わない。
彼は、それを嚥下した。
「……
「だから言ったじゃないですか……」
練乳に蜂蜜をぶっかけ、それにバターを混ぜて更に砂糖大盛り、そのまま型に流し込んで冷やして固めたのち、衣に包んで揚げたかのような甘すぎる味。*6
そんなものを感じたような声をあげた彼は、顔を歪めて小さく
……その姿を、私達は知っている。
「……
「……ま、ここまでやれば流石にわかるか。──正解だよ、私は夏油傑。『
金田一少年の姿を被った彼は、おどけたようにそう語るのだった。*7
「ああああああああもうやだああああああ!!!」
「もちつけ」
「これが落ち着いてられるかぁぁぁぁっ!!!なぁぁんでこんなヤバいことを隠してたのよもぉぉぉぉっ!!!!?」
「いやほら、『マジカル聖裁キリアちゃん』としての
「あああもぉぉぉおおおおっ!!!!」
話を聞かされたゆかりんはと言うと、完全に発狂状態。
こりゃ落ち着くまでなーんも話できんなぁ、なんて風に思う私なのでございます。
「……それだけ、というわけではないのでございましょう?」
「……あー、わかります?」
とはいえ、彼女の優秀な副官でもあるジェレミアさんには、何故私がこの辺りのことを報告書に書かなかったのか、というのがわかってしまったようだったが。
報告書というものは、当たり前だが誰かに読ませるために作るものである。
特にこういう重要案件の場合、所属する全ての人間が一律に閲覧権を持つものとして扱われる。
「……
「どういう反応するかが全く読めないですし。……『
「確かに。私ももし、今この場にルルーシュ様が現れたとしたのならば、色々と揺れるでしょうから」
「……ですよねぇ」
それはすなわち、例えば憑依関連の有効活用を謳う急進派の目にも入るということでもあるし、なにより
今の私達は所詮『逆憑依』であるが、『逆憑依』であるからこそ彼が
その辺りの確証もないまま、悪戯に話を広めるのはやめて置きたい。……
「……おや?」
「おっと口が滑った。……このことは内密にお願いしますね」
「おやおや。魔王らしく、裏で暗躍……ということですかな?」
「はははー。……今日のおやつはなんです?」
「今日はじゃがいものガレットですよ、毛利が焼いたモノですね」
「ほほう、それはなんとも。コナン君に自慢せねば」
「こらぁー!!ほのぼのしてんじゃないわよーっ!!!」
なんにせよ、午後の時間は過ぎていく。
波乱の予感を振り撒きながら、それでも時間は先に進んでいくのだった。
おしまいですので次は幕間ですよ。