なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……えっと、そんなに見詰められると、流石に恥ずかしいかな?」
「……あっ、そ、その。すみません」
「ううん、いいよいいよ。こっちもちょっと見惚れてたし」
軽い口調でこちらに挨拶と冗談を返してくる少女、結城 明日奈。
彼女は『ソードアート・オンライン』シリーズのヒロインである。メインヒロインであり、かつ多数のヒロインが新たにポップするタイプの作品にしては珍しく、わりと不動の人気を誇るタイプのキャラでもある。
他のヒロイン達が魅力的ではない……かというとそういうことではなく、それでいてなお人気投票をすれば上位に居る、というのだから名実共にメインヒロインであると断言してもいいくらいのキャラなのが、アスナと言う人物なのである。*1
そんな彼女が目の前に居るのだから、一時的に固まってしまうのもおかしくない……というわけではなく。
私が彼女を見て固まったのは、
「な、ナーヴギアですか、それ?」
「うん、そうだよ。こっちにはSAOもALOもGGOもないけど、代わりに『tri-qualia』があるからね。──血盟騎士団副団長・閃光のアスナとしては、色々と確認しておかなきゃ。……でしょ?」
「ソウデスネー……」
出迎えてくれた彼女が居たのは、部屋の中に備えられたベッドの上。
先ほどまで寝転がっていたのであろう彼女が、ノックの音に反応して半身を起こしていた、という形となっている。
そしてその頭部に被っていたのが、濃いグレーのヘルメット型のVRデバイス。……そう、あの悪名高きナーヴギアだったのである。
もうこの時点で『あれー?』って感じだが、確認を取った私に対して返ってくるのは、彼女がそれを使って遊んでいたモノについて。
……『tri-qualia』ユーザーであるアスナの姿をした人物、という時点で嫌な予感がフルパワーである。
ほら、『tri-qualia』内で『フラッシング・ペネトレイター』を再現したってユーザー、居たじゃん?……実はそのあと『マザーズ・ロザリオ』も再現したって話じゃん?
ついでに言うならこの前の『tri-qualia』の『ティアマト襲来』イベントでさらっとランキング上位に入ってて、声繋がりなのかなんなのか大きな金剛杵を貰って話もあったわけで。
……うん、なにが言いたいかと言うとね?
(……あのアスナさんじゃんこの人!)
「……?どうかした?私の顔をずっと見詰めてるけど」
「イエ、ナンデモナイノデス。オキヅカイナク」
「???」
この人、キリトちゃんのお友達の、アスナのアバター使ってた人じゃん!
そんな内心の驚愕を表に出さないようにしつつ、彼女の使っていない方のベッドにそそくさと腰を下ろす私。
いやー。……いやー?
な ん で 彼 女 が ル ー ム メ イ ト な ん で す か ?
……って、思わず脳内で疑問文が闊歩するこの状況。
あれか、キーアとキリアはルーツの同一である存在、キーアの方とゲーム仲間として親しい仲であるアスナさんであれば、あれこれとキリアから聞き出せるモノがあるのではないか、的な人選なの?
いやでもそもそも
みたいな感じに、内心で百面相をしていると。
「ところで、キリアちゃんって
「……そうですね。全国ネットで現在好評放映中、前代未聞のクロスオーバー活劇『マジカル聖裁キリアちゃん』の主人公、基本的にはサポート専門のキリアですがなにか?」
「あ、あはは……色々と思いのこもった言葉だね……」
ずずいっと近寄ってきた彼女に聞かれたのは、目下のところ
他の作品のキャラクター達をゲストに迎え、私の方がFFR*2していくストーリーとなっているアニメである。
クロスオーバーする時のオリジナルキャラは、基本的に作品間の潤滑剤として動くべき……というのは、ミストさんと一鷹君の話からしても学べるはず。……多分。*3
そんな大原則を守りながら生まれた『マジカル聖裁キリアちゃん』であるが、今の私の容姿とはちょっと異なっている。
あちらは変身後での活動がほとんど、ということもあるのだが……。
「へー、そっか。なるほどなるほど。
「……いやその、ええと……なんでもないです……」
うんうんと頷くアスナさんに対し、なにか反論をしようかと思った私だったが……やめる。
劇中のキリアよりも背丈の低い今の
とは言ってもそれほど背丈が違う、というわけでもないのだが、アニメの中のキリアが女騎士然としたキャラであることから、見た目以上に『できる女性』というオーラを発しているのも事実。
その辺りを劇中設定に抵触せずに説明できる気がしなかったので、『マジカル聖裁キリアちゃん』が往年の魔法少女もののプロットをなぞっている……という体にしてしまう方が良いだろう、という判断になったのでありましたとさ。
結果、こうしてアスナさんにいい子いい子、とばかりに頭を撫でられているわけなのでございます。
──見えなかった、このキーアの目をもってしても、彼女が私を膝枕した瞬間が!*4
な、なんだ?なんで私は愛おしげに頭を撫でられている?
彼女の右手にあるものはなんだ?どうして彼女の背後に、微笑みに母性を感じさせるウマ娘のスタンドが見えるんだッ!?*5
「よしよし。母はちゃあんと見ていますよ」*6
「お、オレのそばに近寄るなあああーッ!!」*7
「……やっぱり。貴方、キーアさんでしょ?」
「……ナンノコトデショウカ。ワタシは全国区デ大人気ノキリアチャンデスヨ?キリアチャンカワイイヤッター!」*8
「……ふふふ。母に隠し事はダメですよ?」
「あ、はい。すみません。貴方様の友人のキーアで間違いないです、はい」
「はい、よくできました♪」
「この人怖い……」
母性を最大限発揮した彼女に、私の抵抗など無意味。
結果、奮闘も空しく私の秘密は瞬く間に暴かれていくのであった。……なしてや!
「ふふふ。キリトちゃんをこっちに引っ張ってこようと思ってたのに。横からかっ浚って行ったキーアさんには、お仕置きが必要だよね?」
「えっちょっ、待ってこの人ヤバい!
「……いや、なに遊んどるんじゃお主ら」
なお、最初っからミラちゃんが見ていたことからわかる通り、ここまで全部テンプレ、ここから先もテンプレなのであったとさ。*9
……彼女が『逆憑依』だって知ったのは、本当に今さっきだけどね!