なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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お前にも見えるだろう、あの星が

「いや、無事でなにより。お主なら大丈夫じゃと思っておったぞ

「……ミラさん?」

 

 

 ある程度調子を取り戻した私に、掛けられる労い?の言葉。

 もしかして以前はミラちゃんが、彼女(きらり)に振り回されていたのだろうか?……そんな思いを込めた、ジトーっとした視線を彼女に送りつつ、現状について思考を巡らせる私。

 

 先ほどのちょっとした騒動のあと、なんやかんやで同じテーブルに着くことになった私達一向。

 日替わり定食・AとかBとかZ*1とかを頼んだ私達は、それぞれに好き勝手なモノを口に運びながら、自己紹介を交わしていたのだった。

 

 

「じゃあ、改めまして。にゃっほーい、私は諸星きらり!アイドルやってる十七歳☆皆をきらきらハピハピにするために、日夜頑張ってるんだにぃ☆」*2

「俺はサウザーだ。聖帝と呼ぶも、将星と呼ぶも、どちらでも好きにするがいい」*3

「これはご丁寧に。お二方ともご存知かもしれませんが、私はキリアと申します。新参者ゆえ失礼なことをしてしまうかもしれませんが、その時は知らせて頂ければ幸いです。……あの、どうかしましたか?」

 

 

 初対面である二人からの自己紹介に、こちらも丁寧な自己紹介を返したのだが、相手から返ってきたのは感心したような、はたまた驚いたような、間の抜けた表情だった。

 ……ん?間違ったかな?*4なんて内心を表に出さぬように努めつつ、暫く二人の様子を眺めていたのだけれど……。

 

 

「うーん、杏ちゃんみたいだって思ってたんだけど、キリアちゃんはどっちかとゆーと、ありすちゃんみたいだね☆」*5

「随分と礼儀正しい子供よな。もう少しわがままであってもよい時分だと思うのだが……」

「……その、子供扱いしないでくださいますか?」

「そうそう、その意気よその意気!子供というものはそうでなくてはな!はっはっはっ!」

ええ……?

 

 

 彼らから返ってきた反応に、思わずわけがわからないよ、と言いそうになったが自重する私。

 

 サウザー氏が元気な子供を見て満足げに頷いている、という状況の意味不明さは確かに凄いが、子供扱いされているのが私だとなれば、むっとするのも仕方なし。

 ……で、その態度にまた子供らしさを感じたとかで、向こうが呵呵大笑し始めるのもまたお決まりの(テンプレ)展開、というわけで。

 

 

「むぅ……」

「……ふむ、まぁ見た目通りの歳というわけでもない、というやつか。──いや、すまんな。この場所では珍しい、随分と素直な奴だ……と、少なからず好ましく思ったというだけでな。悪気はなかった、許せ」

「……いえ、こちらも条件反射で否定してしまいましたし、子供扱いされるのも致し方ないかと思います」

「……ふっ。気骨があるというのは、悪いことではあるまい。……ともあれ、これから宜しく頼む」

「はい、宜しくお願いしますね、サウザーさん」

 

 

 言い返せば余計に子供扱いされるだけなので、とりあえず小さく唸るだけに留めていると、サウザーさんはそんなこちらの様子に思うことがあったのか、小さく頭を下げてくる。

 ……そういうことされると、こっちの小物感が引き立ってしまうので止めてほしいでござる……。

 まぁ、引き延ばしてもいいことないし、ここらで手打ちにするというのは賛成なのだが。

 

 そんなわけで、机の上で互いに握手を交わした私とサウザーさんなのであった。……のだけど、それを横から羨ましそうに見ている人が一人。

 

 

「サウザーちゃんずるぅーい!一人だけキリアちゃんと仲良くなるとか酷ぉーい!」

「ははは。なに、こういうものは早い者勝ちというやつよ。悔しかったら、お前も仲良くなればよいではないか」

「そうすゆー!キリアちゃん、きらりとも握手、しよ?」

「えっ、あ、はい……って、いたたたっ!?」

「ああっ!?ごめんねキリアちゃん!ちょっと力加減間違っちゃった☆」

 

 

 でっかわいい系アイドル、きらりちゃんは目をきらきらさせ、こちらにずずいっと近寄ってくる。

 

 そのテンションに若干ビビる私だが、友好を求めている相手を追い返すような真似もできず、彼女の望むまま握手をして、そのまま右手を握り潰されそうになるのであった。

 ……サウザーさんと絡んでるからか、わりと身体能力高かったりするのかもしれない。

 

 なお、一緒に来ていた二人──ミラちゃんとアスナさんはというと、定食に箸を伸ばしつつ、今日の焼き鮭は塩加減がいいだとか、今日のお味噌汁はお袋の味がするだとか、かなり他愛のない話に花を咲かせていた。

 ……いや、こっちの話の輪に入れし。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、他の部署の人とは余り話さないのが普通、だと?」

「『新秩序互助会(ここ)』に居るものは、中々に喧嘩っ早い者が多いからのぅ。余計なトラブルにならぬように、用事のない時には積極的に関わることはせんのじゃよ。……まぁ、食事の席が一緒になった時に世間話をするくらいの愛想は、あるかもしれぬが」

おぃィ?

 

 

 昼食を食べ進めながら、改めてミラちゃんに話を聞いたところ。

 

 この『新秩序互助会』に集まっている人間には、割と血の気の多い者が多く、それゆえに昔は施設内での私闘も多くあったのだ……みたいなことは、繰り返し話の流れで出てきているわけなのだが。

 それを憂慮した()リーダーが、現在のルールを制定した際に『喧嘩になりそうな相手を挑発しないこと』みたいな注意をしたのだという。

 その結果、自身の所属する部署以外の人との交流は、極力少なくするようになっていったのだとか。

 

 ……なんとなーく、そのリーダーさんが望んだこととは、話がずれてしまっているような気がするのだけれども*6、さっきのソル君とハジメ君みたいな、一触即発の状態を生むよりはマシ……と思っている人が大半なのだそうで。

 結果として今の私達みたいに、部署違いの面々が楽しくお喋りをしている……という状況は、ちょっと珍しいものになってしまった、とのことだった。

 

 

「そういう意味で、お前の振る舞いは俺達から見て面白い(奇異な)ものであった、というわけよ。──聞けばここ以外にも、俺達のような『転生者』が集まる場所があるという。そこの出身でもあるらしいお前のことは、ここにいる皆が注目しているだろうな」

「……さっきからやけに周囲から見られている気がしていましたが、なるほどそういうことでしたか」

 

 

 サウザーさんの言葉を受けて、チラリと周囲を見渡して見ると、そそくさと視線を外す者が幾つか、気付かれて手を振り返す者が幾つか、関係なしとばかりに食事を続けている者が幾つか……といった感じに、結構な頻度で観察されていたことに気が付く。

 

 ……ふむ。

 友達(同僚)との会話は弾むけど、それ以外の他者との会話には、ちょっとした躊躇が絡む……という感じだろうか?

 

 本心は別として、言葉が足りないがゆえに喧嘩を売っていると捉えられやすい、どこぞのインド英霊の姿も見える辺り、確かにここでの他人との会話は難しそうだな、と頷かざるを得ない。

 ……それはそれとして、関係ないとばかりにカレーを食べ続ける件の英霊(カルナ)さんの姿には、ちょっとばかり目眩を覚えたけれども。……いやまぁ、一番目眩を覚えたのは、更にその奥に居る二人の男性に対してなのだけれどね?……()()()()()()()()()()()()()()()()()、あの二人。*7

 

 そんな感じに、奥の方の隅っこの席で、何故かジャンボパフェを二人で突っつきながら大笑いしている、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()から視線を外す私。

 同じ席の面々から『見なかったことにしろ』という無言の圧力を感じつつ、そのまま話を戻す。

 

 

「とはいえ、あちら()も問題が起きなかったわけではありませんよ?単純に土地が広いので、喧嘩しそうな面々はそもそも顔を合わせる機会がなかった、という部分もあったみたいですし」

「ふむ。仲良し子好し*8、というわけではないと?」

「年に一度、互いの技をぶつけ合う武闘会みたいなものもありますし、そもそも血気盛んな方々は、それぞれで集って喧嘩したりもしているみたいですからね」

「ほう?なるほど、それはそれは……」

 

 

 望まれているのは向こうでの生活についてだろうな、と思いつつ、喜ばれそうな話をピックアップしていく。

 

 空間拡張技術の進み具合が遅いのか、はたまた各部署の連携が取れてない弊害なのか。

 ともかく、『新秩序互助会』があくまで実在の施設を利用している、というのは間違いなく。まるで寮生活のような暮らしをしているのも、根本的には()()()()()()()()()というのが真相だろう。

 

 その結果、住まいを破壊しかねない私闘の厳禁、というルールが出来上がり、私闘を引き起こす原因となる、他者との諍いを避けるようになり……といった感じで、一見無関係な話が、全てこの組織の危うさに繋がっている、というのは間違いないと思われる。

 ……要するに、気分転換が足りていないのだ、この組織には。

 

 なので、そういった物事を解消してくれそうな情報を持っている可能性が高い、キリアという外からの異物に対して、皆の注目が集まった結果、私は針の筵となっているわけなのであった。

 ……一応こちらの情報を知っているはずのミラちゃんまで、目を輝かせながらこちらの話を聞いている辺りが正にそれ、というか。

 

 

「……おほん。情報として知っているのと、本人から実際に聞くのとでは色々と違う、ということじゃよ」

「なるほど?……ところで、ミラさんの素直なお気持ちを聞かせて頂けるのでしたら、こちらの()()()()()がミスター・ダンブルドアとあった時の話なども提供できますが……」

「わし、キリアちゃんの話に興味深々じゃわい☆」

「落ち着いてミラちゃん、キャラが崩壊してるわ!」

「ぬぉおぉ離せアスナ!わしの憧れわしの理想!その根源の内の一人の話が聞けるとあらば、わしは悪魔にでも魂を売る覚悟じゃぞー!!」*9

 

「……お、おお。こんなキャラだったのか、こいつ(ミラ)は」

「ハピハピしてるミラちゃん、とぉってもかわゆーい!」

 

 

 なお、ミラちゃんが自身の欲望に素直じゃなかったので、ちょっとせっついてみたら凄いことになりました。

 ……流石名前に使われている一人、食い付きが半端ないんだぜ……。

 

 

*1
日本においては、一日三食その全てが昨日の献立とは違う……というのはよくあることだが、海外においては毎日同じものを食べている(流石に朝昼晩では違う)、ということも珍しくないらしい。その辺りが『日本人は食にうるさい』というイメージの元にもなっているとかいないとか。なので、『日替わり定食』というのも、海外からするとちょっと珍しいものになるのだとか

*2
『アイドルマスターシンデレラガールズ』に登場する高身長アイドル。背丈こそ高いが、内面は普通に乙女。また、かわいいものが好きで自身の言動や服装などにも、彼女の思う『かわいい』が反映されている。なお、スタイルは欧米のモデル並みであり、ちょっと真面目にすればそっち方面もやれたりする。戦闘の心得はないものの、割と怪力である描写が散見されたり(同僚アイドルの双葉杏を軽々と抱えたり、など)、彼女モチーフのロボット(きらりんロボ)が存在したりなど、戦闘力がないわけでもなさそうな感じだったり。……アイマスのアイドルは戦えて当然?そうだな!(関連作の他のアイドル達を見ながら)

*3
実は『いちご味』の方のサウザー。その為、ちょっと親しみやすさがアップしている

*4
『北斗の拳』より、トキの偽物であるアミバの台詞。原作では『ん!?まちがったかな……』表記。老人に対して生兵法で秘孔治療を施した結果、苦しむ様子を見ての一言であり、彼の外道の性質が見え隠れしている。……模倣の才能やらちょっと調子に乗りやすい性格など、好きな人は結構好きなタイプの悪役

*5
『双葉杏』と『橘ありす』のこと。どちらも『アイドルマスターシンデレラガールズ』のキャラクター。ぐうたらニート系アイドルのあんずと、生真面目系のありす。両方とも背丈は低いが、キャラとしては正反対とも言える。……実際は杏の方が結構切れ者なのに対し、ありすの方は大人になりたいお年頃、という辺りも正反対っぽい二人である。「まぁ、杏の方が年上だし。そりゃあね?」

*6
『流石は■■■■様。我々には及びも付かぬような、深謀遠慮の策を巡らせているとは……』的なことを言った者が居るかは定かではない

*7
前者のインド英霊は『fate』シリーズのキャラクターの一人、カルナのこと。自身では要らぬことを言い過ぎると思っているが、実際は言葉が足りていないタイプの人。率直な言葉・かつ物言いが足りていない為、割と喧嘩腰に聞こえるタイプ。後者の二人は『神座』シリーズのキャラクターの一人、水銀こと『メルクリウス』と、『デモンベイン』シリーズより『マスターテリオン』の二人。どちらも既視感まみれの世界を生きる超越者。水銀さん的には『毎ループ未知の動きを見せる変な科学者』はどう映るのだろうか……?

*8
とある人物やグループの空気や関係が和やかで良好であることを示す言葉。『子好し』の方は強調の意味合いの言葉であり、語感を整える為のモノでもある

*9
『賢者の弟子を名乗る賢者』の主人公、ミラの元々の姿である老魔術師『ダンブルフ・ガンダドア』。その名前の由来は、中の人である『咲森 鑑』が好きなキャラクターであった『ハリーポッター』シリーズのアルバス・ダンブルドアと、『指輪物語』シリーズのガンダルフの名前から付けられている。……そういう意味で、ミラは彼らの系譜に当たるキャラだとも言えなくもないのかも?なお、ドラマCDの時のミラの声を担当していたのは丹下桜氏だった為、『悪魔に魂を売る』云々はちょっと洒落になってなかったり(黙示録の獣(ネロちゃま)的な意味で)


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