なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
よし、楽しくお喋りできたな!*1
……という冗談はおいといて。食堂での雑談の結果、周囲からの反応がとくに強かったのは、やはり『武闘会』についてのものだった。
郷の方には内部での戦闘行為によるダメージを、非殺傷規模にまでスケールダウンさせる結界が存在するため、結果として私闘などの戦闘行為は厳禁されていない……というのは、こちらに住んでいる人達からすると、結構衝撃的な話だったようで。
「お前もまた、武を競う者なのか?」
「……え、えーと、どうでしょう?ご存知か知りませんが、私は原則サポート要員となっておりますので……」
「……なるほど。お前はトンビになりたいのだな、小さきモノよ」
「……?!」
自身の食事終わりにスッ、と近寄ってきたカルナさんからの問い掛けに、少しばかりドキドキする羽目になったりした、というわけなのである。
やだ……この人多分
まぁ、彼の言葉が足りていないお陰で、周囲には『
そんなトラブルも重なり、私達が昼食を食べきるのに、それなりの時間を要することになったのだが。
……その結果、
「……ふむ。食事における会話というのは、ある意味ではスパイスの一種だとも言えるだろう。仲の良い相手、初めて会う誰か。それらと会話を交わし、共に食事を摂る時間というのは、何物にも代え難い彩りというものを、食事の席に添えるモノだと言えるハズだ。……とはいえ、あまり会話に掛かりきりになるというのも、宜しくはないな。特にこの食堂では、明確に食事を摂る時間というものが決められている。──その時間をオーバーすれば、このようにペナルティも課せられるというわけだ。食事と会話のペース配分を違えることの無いよう、次回より注意したまえ」
「はい、仰る通りです……肝に銘じておきます……」*4
くどくどと……と言うほとではないものの、それなりに長い時間注意を受けていた私は、大人しく謝罪の意味も込めて頭を下げている。
それを受けた彼は、仕方がないなと言わんばかりに小さくため息を吐くと、こちらの頭をぽんぽんと撫でたのち、厨房の奥の方に消えていったのだった。
この食堂にて厨房を預かる人物の一人である、とある赤い外套を纏ったアーチャーから、ありがたーいお
……『武闘会』周りの話は、本当に周囲の食い付きが強く。
訓しい話をとせがまれ続けたがために、私が食べ物を口に入れるタイミングが、ほとんどなかったのである。
更には現在の私の姿──キリアの姿では、キーアの時のようにご飯を急いで掻き込む、といったことは(イメージ的な問題で)行えず。
それらが積み重なった結果、私がご飯を食べ終えたのは……食堂が夕食の仕込みのために一度閉まるタイミングの、ほんの少し前。
……食堂内の清掃をする時間を
単純に手が足りていない以上、円滑な仕事の遂行を妨げるようなことをするのであれば、その尻拭いは罰を犯した者が行うべき……的な考えから生まれたそのペナルティを、先ほどまで私達はこなしていたというわけである。
いやまぁ、正確には食事を時間内に終えられなかったのは、ずっと話し続けていた私だけであって、手伝ってくれている面々はあくまで善意で手を貸してくれている……という話なのだけれど。
……興味無さげに自身の食事を進めていた面々以外、大体の人が手伝ってくれたので、さほど時間を掛けずに終われたのは上々というやつだろうか?
まぁ、それに胡座をかいて、次回も同じようにルールを破り、同じように清掃をしていたら、しこたま*5怒られる羽目になるのだろうけど。
結果が同じだからと言って、過程を尊重しないのは間違っている……というやつである。……あれ、違う?
ともあれ、そうして清掃が終わったことの報告に向かった先で、さっきのアーチャー……もとい、エミヤさんに軽い小言を頂いていた、というわけなのでありましたとさ。*6
「相変わらず、エミヤさんは生真面目ですわね。これがタケシさんやアキトさんならば、もう少し優しい言い方になるのでしょうけど」*7
「まぁ、ルールを破ってしまった以上は、お咎めなしともいきませんし。エミヤさんの注意は悪意からではなく、相手を思いやる善意から来るもの。……素直に受け取らない方が、良くないことだと思いませんか?」
「貴方も大概、生真面目な人ですわね……」
「あはは……ともかく、ありがとうございました。最後まで手伝って貰ってしまって」
「いえ、お気になさらず。私と致しましても、話題の新人の人となりを確かめるチャンスだったので、恥ずかしげもなく近付いてみた……という、ある種の下心ゆえの施し……みたいなものですから」
「それでもです。貴方も自身のするべきことがあるでしょうに、それを一時棚上げまでして手伝ってくださったのですから、私としては感謝の念を抱かざるをえないのです」
「……ふぅむ、本当にあの人から別たれた人物、なのでしょうか?……良い子過ぎるのではありませんこと?」
「……?どうかしましたか、
「いえ、なんでも。……それと、別に呼び捨てで構いませんわよ。礼儀だなんだのと、そういったことを殊更に主張するつもりもありませんし」
「いえ、これは私の
「……実は
「あ、バレちゃいました?」
「……あやつら、一体なにをイチャイチャしておるんじゃ?」
「イチャイチャかなぁ、あれ。表面上は二人とも笑顔だけど、その実裏では色々と探りあってるみたいよ?」
「それはイチャイチャで間違いないじゃろ、いわゆる喧嘩ップルというやつじゃな!」
「……貴様、結論へ至る過程が雑すぎるのではないか?」
そうして奥に去っていくエミヤさんを見送っていると、食堂内の清掃を手伝ってくれた、とある少女がこちらに声を掛けてくる。
茶髪のような、ストロベリーブロンドのようなその髪を、柔らかなウェーブ掛かったツインテールにしている、特徴的な声をしている美少女。
……そう、『とある』シリーズの変態淑女こと、白井黒子。*9
その彼女が、先ほどまで私達の清掃活動を手伝ってくれていたわけなのである。……御坂さんもいないので、単なる善意から。
まぁ、彼女が口にしている通り、彼女は私のことを探りに来たのだ、というのも間違いではないのだろうけど。
すでに報告書なりなんなりで、『キーア』と『キリア』という存在を知っては居るはず。……問題があるとすれば、この彼女が
ここにいる人は、原則自身を『転生者』だと思っているはず。
ゆえに、彼女もまたいわゆる『
ついでに言うのなら、
……あるのだが。それらをこちらから言い出して確認するのは、正しく愚の骨頂。小声で何事か喋っていた辺り、怪しさとしては八十パーセント前後、隙を見せた方の負けだというのは確定的に明らか!
なのでこう、上手いことボロを出してくれないかなー、と和やかな会話を続けているのだけれど……。
元々御坂さんが絡まなければ普通に優秀な彼女、現状の対話では尻尾を掴むどころか尻尾を見付けられる気がしないという始末。
なので、明確に
その結果が、この腹の読めない会話の応酬……というわけである。
(多分、祭で会った黒子ちゃんだと思うんだけどなー)
(恐らく、祭で会ったあの方、なのでしょうが……)
((……決め手に欠ける!))
「むぅ、熱く見詰めあっておる……これはまさか……恋?!」
「ねぇミラちゃん、一回お部屋で休んだ方がいいんじゃない?多分貴方、憧れの人の話を聞いたせいでテンションおかしくなってるのよ」
「
「いや古いわっ!?というか病人扱いするでないわ!」
「んにゅぅ?もしかしてミラちゃん、お熱でフラフラなの?たぁいへ~ん!!大至急でベッドにゴー!しないと~!」
「へ?あっちょっ、待てきらり!話せばわかる、だからやめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
多分、私が知ってる黒子ちゃんだと思うんだけどなー。
そんな内心を隠しつつ、小さく微笑みを向ければ。向こうから返ってくるのも、完璧な淑女の微笑み。
……後ろで騒いでいる面々をスルーしつつ、私達の静かな睨み合いは暫くの間続くのでありましたとさ。
「結果として
「まぁ、用事も終わったんだから、そこは仕方ないね」
まだ残っていたのかね君達、話がしたいのならばどこか他所でやりたまえ──。
そんなエミヤさんからのお言葉と共に、ポイポイっと食堂の外に放り出された私達。
そのまま第二ラウンド突入か、と思っていたのだけれど。
黒子ちゃんの方は、用事があったことを思い出したらしく、そそくさとその場から去っていってしまったのだった。
で、張り切っていた私の気力は行き場を失って霧消し、こうしてとぼとぼと歩いているわけなのでございましたとさ。
そんな私の横を歩いているのは、アスナさん。
他の面々も黒子ちゃんと同じく用事があるとかで、さっさと解散してしまった次第である。
ルームメイトであるアスナさんは、このあとは特に用事も無いらしく。そのまま日課の『tri-qualia』へのダイヴに専念するとのことだ。
「私にとっては向こうでの鍛錬もこっちでの鍛錬も、どっちもそう変わらないから。場所を取らない分、電脳世界の方が勝手がいいでしょ?」
「確かに。……まぁ、私はデバイスを持っていないので、同伴とかはできないのですが」
「え?なんで?……って、そっか。持ってるのは『キーア』の方なんだっけ」
電脳世界での
そのようなことを笑顔で話す彼女に、ちょっと羨ましい思いを浮かべないでもない私。
なにせ、今の私は着の身着のままでやってきた
向こうでいつも使ってるデバイスも手元にはないし、仮にあったとしても『キリア』が使うのはよろしくない。
食堂に居た面々を見る限り、さっきの結界も迂闊に使わない方がいいだろう。
なので、彼女が部屋でゲームしているというのなら、私にできることは特にない……ということになるのだった。
「……んー。じゃあ、『tri-qualia』は止めておこうかな」
「……止めるのですか?」
「うん。それよりも、貴方に『新秩序互助会』の施設についての解説をする方がいいかなって」
「……なるほど、それは願ったりです。子細な説明については、後回しにされていましたから」
詳しい案内はまた別の者に。
……そんな話を夏油君からは聞いていたが、それを待つのも時間が掛かりそうである。
アスナさんが案内してくれると言うのなら、彼的にも文句はないだろう。
じゃあ、一回戻って準備しよっか。という彼女の言葉に頷きつつ、部屋に戻った私達は。
「ふぉう、ふふぉう」
「えっと……黒い、フォウ君……?」
部屋の前にちょこんと座っている、黒いモフモフに出会ったのであった。