なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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星は砕けても星?

「爽やかだけならまだしも、『転生』ってところをすっごく重く捉えてる辺り、これって結構根深い話だよねぇ……」

「……そうだね。私は比較的早い内に自分が『転生者』じゃないって気付いたけど、ここに長く居る人は、それだけ転生者であるという自覚(自分の思想)に凝り固まってると思うから」

「……迂闊にその辺りの話をしない方が無難、かなぁ……?」

 

 

 周囲の目から隠れるようにしながら、次なる施設へ向けて足を進めている私達。

 周りの目がないので、私もキリアとしての口調を崩しているが……そうして得られた解放感は、口にしている話題によって、ほぼ相殺されてしまっていたのだった。

 

 先ほどのエミヤさんが語った、自身への不満と、それをバネにして前へ進もうとするポジティブさ。

 ……どちらも原作の彼からすると、ちょっとずれた方向性の思考であるのだが、本人はそれを()()()()という認識によって肯定してしまっている。

 

 普通なら、そういう原作(キャラ)の枠の外に出るような思考をした時点で、自分がどういう存在なのかという部分に、考えがおよぶはずなのだけれど……。

 そこに『自分は転生者である』という認識が挟まることにより、自身の存在に隠された異常性(おかしさ)に気付けなくなってしまっている……。

 

 今まで出会ってきた人達が、郷の人々──自身の特異性について、真っ先に気付いていた人達だったからこそ、ちょっと思い違いをしていたけれど。

 先の事件の時のミラちゃんのように、『逆憑依』という言葉を文字通り逆に憑依したと(そのまま)捉えているような思考を持つ人々にとって、己が模造品(本体からのコピー)……ある種の偽物とでも呼ぶべき存在である、ということはまず思い至らない類いのものであるらしい。*1

 今でこそ彼女(ミラちゃん)も、自身が本人そのものとは言い難い存在だ、ということを理解しているようだけれど、それは彼女の物分かりが良かった、と言うだけのことに過ぎないのだ。

 ゆえに、

 

 

「……その辺りのことを、私が彼らに説明したとしても。一笑に付されるか、最悪の場合は自身の認識との齟齬ゆえに、暴走する可能性がある……ということですよね、これ?」

「んー、そうだね。そういうことになっちゃう……かも?……ところで、なんで口調を戻したの……って、ああ。なるほどね」

 

 

 そんなバカな、と笑われるのならまだマシで、最悪のパターンだとそんなことあるわけないだろ、とぶちギレられる可能性があるわけである。……迂闊に話をふれないなぁ、これ。*2

 

 そうして突然口調を戻した私に、アスナさんが一瞬怪訝そうな表情を浮かべるが……、話に夢中になっていた結果、いつの間にか人の多い場所に差し掛かっていたことに遅蒔きながら気が付いた彼女は、得心したように一つ頷くのだった。

 

 ともあれ、状況としてはあまり宜しくない状態である。

 まだ理性的なエミヤさんですら、あんな感じなのだ。……ここに多数在籍しているとされる、いわゆる『なろう』な感じの人々に同じ話をした時、返ってくるのは一体どんな反応なのだろうか?

 ミラちゃんと同じように、怪訝そうな顔をする?

 それとも、そんな訳のわからないことを言う奴は敵だ、と攻撃される?

 

 そんな不安を抱きながら、一歩踏み出した私は。

 

 

「ふみゅっ!?」

「あっ」

 

 

 前方不注意により、見知らぬ誰かに激突。勢い余って尻餅をつく羽目になったのだった。

 痛みから思わず鼻頭を擦る私の前に、差し出されるのはぶつかった相手の右手。どうやら、こちらが立ち上がるのを手助けしてくれるらしい。

 ぶつかってしまったのはこちらだと言うのに、優しい人だな……。

 なんて思いをお礼と共に告げながらその手を取り、立ち上がらせて貰った私は。そこで漸く、天井の明かりによって逆光になり、認識できなかった相手の顔を視界に収め。

 

 

「……おう。大丈夫か?」

「アッアッアッ……ダダダダイジョブデスヨ?」

「……いや、全然大丈夫そうには見えねぇんだが?」

 

 

 その特徴的な()()()()を視界に入れ、大いにフリーズする羽目になるのだった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、ここの案内……ねぇ」

「ソウナノデスヨ。ワタシハシンジンナノデ、ハヤクココノコトヲオボエタイノデス」

「……いや、そのだな?」

「ハイ,ナンデショウカナグモサン?」

「頼むから普通に話してくれ……」

 

 

 あのあと、こちらの手を引っ張ってくれた相手の向かう先と、私達の向かう先が同じだったため、道中を共にすることになったわけなのだけれど。

 

 その相手が相手だっただけに、私はこんな感じにカタコト状態に陥っていたのだった。

 ……それもそのはず、私がぶつかった相手と言うのは、ここに来て一番最初に他者と争っているのを見た、二人の男性のうちの片割れ……そう、ある意味話題に上っていた人物の一人、南雲ハジメだったのだから。

 

 ──南雲ハジメ。

 彼は『ありふれた職業で世界最強』の主人公である少年で、元々は単なるオタク趣味の少年である。

 それがなんの因果か、とある事件を切っ掛けに今の彼の──言い方は悪いが中二病っぽい姿へと変貌を遂げることとなった。

 

 話の造りに微量ながら追放系の要素が含まれる*3ものの、基本的には普通の異世界転生系の作品であるのだが……。

 主人公であるハジメ君は、今の姿になる過程で経験した出来事により、とにかく性格が苛烈になってしまっている。

 その姿は、最終的に本当に人類種の天敵*4にまで発展しそうな危うさを持つが……まぁ、その辺りは今はあまり関係あるまい。

 

 ここで問題なのは、彼が()()()()()()()()()()()()()()タイプだ、ということである。

 別に私がボロ雑巾になるのは()()()()()()のだけれど、現在の私は潜入任務の真っ最中。……下手な騒ぎを起こして任務失敗、だなんてことになれば、そっちの方が大問題なのである。

 

 なので、こうして彼の癪に触らないように、極力平身低頭の姿勢を崩していない私なのだけれど……彼から返ってくるのは、若干の鬱陶しそうな空気と、それから何故か申し訳なさそうな空気なのであった。

 ……ふむ?返ってくるのなら、鬱陶しそうという空気だけだと思っていたのだけれど。

 

 

「では、お言葉に甘えさせて頂きます。そちらは南雲ハジメさん、でお間違いないでしょうか?」

「……俺のこと知ってんのか。まぁ、こっちもそっちについては知ってるけどよ」

「……いや、なんでそんなに知名度高いんですか私……」

 

 

 彼の言葉に甘え、片言状態を解除する私。

 そのまま自己紹介に移るも、互いに互いを知っていたため省略。……確かに全国ネットで放送してるって聞いてたけど、それにしたって『マジカル聖裁キリアちゃん』の知名度おかしくない?

 そんな疑問に内心首を捻りつつ、とりあえず差し出された右手を握って握手を交わす私達。

 こういう(友好的な)行為をやってくれる、という時点でわりと違和感マシマシなのだけれど、こちらの手を握ったあとの彼の反応も、言い様のない違和感を醸し出していた。

 

 

「…………」

「……あの、南雲さん?」

「っ、いや、なんでもねぇ。……それと、別に畏まらなくてもいいぞ」

「……では、ハジメさんと呼んでも?」

「ああ、構わねぇ」

 

 

 彼は私と握手した右手を無言で眺め、何事かを考えていた。……感じ入る、とでも言うのだろうか。高々小娘一人と握手したにしては、どうにも変な反応だった。

 

 ……んー?

 なんだろうか、こちらのイメージと随分反応が違うような……?

 違和感だけが積み重なるけれど、なにが理由でそうなっているのかがわからないので、あくまでも積み重なっていくだけ。

 解消できないその違和感に、少なからず不快感を覚えつつ。それでも、歩を進める私達。

 

 そうして、お互いの目的地にたどり着いた私達は、その扉の上にあるプレートを眺めていた。

 

 

「トレーニングルーム、ですか」

「外では荒事になることもあるしね。あと、単純に体を動かすのが好きって人も多いから、そういう人達を中心によく利用してるみたい」

 

 

 私は汗を掻くのはそんなに好きじゃないから、あんまり使わないけどね。

 ……というアスナさんの言葉を聞きながら、廊下の窓から中を覗き見る私。

 

 内部は普通のフィットネスジムと言った感じで、ウォーキングマシンとかダンベル、それから簡易的なリングなどが備え付けられているのが見え、それを使う人々も見覚えのあるキャラクター達ばかりで、ちょっと目眩がしてきそうになる。

 ……というかサウザーさん、何故か知らないけどきらりさんとスパーリングしてない?しかもきらりさんが()()()()()()()()()()ように見えるんだけど気のせい?*5

 

 

「きらりさんが、捕まえて……きらりさんが、画面端……?!」*6

「相変わらず綺麗なループコン*7だな。つーか元々戦闘系の作品でもないのに、よくやるわ」

 

 

 窓に張り付いて中を覗き見る私と、いつの間にか横に来て、中の様子を実況し始めるハジメ君。……ノリがいいのかなんなのか。

 ともあれ、近付いてきたアスナさんも加え、三人で二人の対戦を眺める。

 トレーニングルームの中の人達も、いつの間にやらリングの方に視線を向けており、ある種の試合観戦の様相を呈しはじめていた。

 

 

「きらりんビーム、相手は死ぬ……」

「途中で切り返したのは流石だが、愛されボディ*8には敵わなかったな」

「当たり判定とかどうなってるんだろうね、あれ」

 

 

 最終的な結果は、きらりさんが北斗有情破顔拳(きらりんビーム)を発動しての一撃死(FATAL K.O.)*9

 ……いや死んでないけども。ともかく、諸星のきらりが勝利を収めたのは確かな話。模擬戦とはいえ、高度な戦いであった。

 その見ごたえの良さは他の観客も認めるところであり、外にいる私達にもわかるくらいの歓声が、中で響いていることが窺えた。

 

 ……さて、ここまでの一連の流れを見て、私からの一言。

 

 

「ウソでしょ……」*10

「いや、ツッコむタイミング遅ぇよ」

 

 

 思わずそう呟いた私に、横のハジメ君が呆れたような声をあげるのだった。

 

 

*1
俗に言う『スワンプマン問題』に近いか。これは1987年にアメリカの哲学者であるドナルド・デイヴィッドソン氏が考案した思考実験であり、自身と全く同じ組成・性格・体格などを持つ存在が突然現れたとして、それは元の人物と同一と呼べるだろうか?というようなもの。この思考実験に端を発し、同じ名前を持つ存在が様々な物語りにおいて登場している。突然、というようにスワンプマンは『来歴』だけを持ち合わせない存在である。その『来歴』をどこまで重く見るか、という風にも解釈できる存在。『死者蘇生』に関する話にも、微妙に関わらないでもない

*2
スワンプマンというタイトルでなくとも、似たような『偽物達の物語』は多数存在している。そういう作品で偽物とされた者達は、大概本物と呼ばれる者に対して反逆を企てている。……常に目覚めているのは一人、という前提があるにしても、その辺りの問題にけりを付けているとも言える、どこぞの()()()()()さんの恐ろしさがわかろうと言うもの「たわけ」

*3
『ありふれた職業で』の部分。無能だと思われていた者が後々凄いことをしてみせる、という点が類似していると言えなくもない

*4
『アーマード・コア フォーアンサー』における主人公の異名の一つ。この名で呼ばれるのはとあるエンディング一つだけだが、割りと意味不明なあれ。fate的には人類悪……ではないと思われる。なのにあれ。あまりにも意味がわからない。なのでそういう意味ではハジメ君はまだまだ引き返せると思います。まだ理解できるし

*5
『諸星のきらり』呼ばわりなのに使ってるのが北斗とはこれいかに

*6
とある格闘ゲームプレイヤーを実況した、とある人の言葉。実況者って口が回らないと勤まらないよなぁ、ということを実感する、語彙力に圧倒される感じの台詞群

*7
格闘ゲームなどの用語の一つ。特定の動作(コンボ)繰り返す(ループさせる)もののこと。なお、別に無限コンボでなくとも『一定回数繰り返す』のならループコンボと呼ぶ

*8
格闘ゲームの用語。この場合は『製作チームに』愛されている、の意味。見た目に対して当たり判定が小さいなどの理由により、攻撃側のコンボが途切れやすいキャラのこと。有名なのは『AC北斗の拳』のトキであり、彼の場合は喰らい状態(ダメージを受けて仰け反っている状態)に膝よりしたの当たり判定が()()という、意味のわからないことになっている

*9
きらりんビーム以外は全て『AC北斗の拳』より。それぞれ、絶命を向かえる際に苦しみではなく幸福を感じるが為に『情が有る』とされる謎ビーム一撃必殺技『北斗有情破顔拳』(この技の場合、先の効果の上に更に死の前に笑顔になる(破顔する)という効果がある。コワイ!)と、『AC北斗の拳』で一撃必殺技で勝負を決めた際に表示される文字のこと。……有情とは?

*10
『ウマ娘 プリティダービー』において、サイレンスズカがよく口にする言葉。困惑したり落胆したり驚愕したりした時に軽率に飛び出してくる

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