なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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N極同士を無理にくっつけようとするかのような

 以前の夏油君のあれこれが、いわゆる任務の一つだった……ということが明らかになった以上、この二人のお仕事とやらも似たようなものだろう、と思いながらホイホイと付いてきた私は。

 

 

「……なんでこんなことになってしまったのでしょうか……」

 

 

 という、心からのぼやきを吐き出していたのだった。

 

 なんでこんなことになったのか?……というと、そもそも二人に付いてきたから()()()()()、としか言えないわけなのだが。

 それはそれとして、生けn()……道連r()……げふんげふん。

 ……頼りになって優秀で可愛くて頼れる(重要なことなので以下略*1)、素敵で無敵で愛しい愛しい私の賢者さま*2……もといミラちゃんには、この二人の会話の橋渡しをして欲しかったのだけれど。

 

 

「……よもや出向先への許可申請の方に、彼女を割り振らなければならないことになるとは、思ってもみませんでしたよ……」

 

 

 私達が立っている位置から、少し離れた場所にある施設。……そこで、現在相手先と雑多な折衝を行っているミラちゃんに思いを馳せつつ、小さくため息を吐く私。

 

 ……視線があうと(見つめあうと)喧嘩になってしまう(素直になれない)二人*3は、訪問先が立ち入りなどに許可を取る必要性のある場所の場合、その交渉中に意図せずして相手方を威圧してしまう……という悪癖があり。

 それゆえ同行者がいる場合はその人物が、それらの手続きを彼等に代わって率先して行わなければならない……という不文律があるのだそうで。

 

 ……企業人としてどうなんだーとか、夏油君に外出申請しに行った時に、やけに素直に(かつ笑顔で)受理されたのはこのせいだったのかーとか、思うことは幾つかあるけれど。

 ここで私が一番ぼやきたいのは、この二人が仕事で外に出る時、こうした手続きは全て同行者の仕事になる……という事実を知っていて、その辺りを一切口にしなかったミラちゃんの行動についてなわけで。

 

 ……なにが言いたいのかって?

 つまりだね、『新秩序互助会』の一員になってから日の浅いキリア()では、出向先との雑多な許可やら交渉やらは、基本的に任せられないって判断になるわけで。

 その結果として、この四人で仕事に当たるのならば必然的に、彼女が交渉役に収まるのが普通……という処理になるのを、ミラちゃんは知ってて黙ってたってことでね?

 

 ──野郎、貧乏くじ引いたと見せ掛けて、もっと面倒なことからは華麗に逃げやがった!

 ……的な恨み節を、先ほどからぶつぶつと呟いている私、というわけなのでしたとさ。……自業自得?デスヨネー。

 

 ともあれ、お互いに歩み寄る気があるのかないのか、現状ではいまいち不明な二人に挟まれた私としましては、なにか話題を振るべきなのか振らずに静観すべきなのか、ちょっと判断に困っているわけでしてね?

 その結果、こうして気まずい沈黙に身を委ねつつ、ミラちゃんの帰りを無言で待っている、というわけなのでございます。

 

 ……そもそもの話として『新秩序互助会』には、その名前(Now Law)的になろう系に属するようなキャラが多いっぽいのだけれど。

 その割り振りに属する人物達は、得てして対人能力が偏っている……というイメージがあるわけでして。……そういう人達は、こういう交渉事とかの対人系のあれこれを、もしかして全部できる人へ対処を投げたりしているのだろうか……?

 

 ……いやまぁ、今のところ私が出会ってきた『新秩序互助会』のメンバー内において、殊更に対人能力に難がありそうな人物と言っても、精々ここにいるこの二人と……それから居丈高*4な感じがデフォなメルクリウスさんとマステリさんくらいのもの……ということになるわけなのだけれど。

 

 後者二人に関しては本人そのものの思考ではなく、それ(原典)に準拠した形で変換されたものでしかないため、どうにかして表現の抜け道を捻り出し、できうる限り円滑に会話を進めるように努力をする……みたいなこともできなくはないんだろうとは思うのだけども。

 前者二人に対しては、()()()()()()()()()()()限りは対人能力の向上の目が一切ない、とまで言い切ってしまえそうな空気がなくもないわけで……。

 

 ハジメ君に関しては中身が本当は変貌前、という予想に間違いがなければ、その辺りを周囲に開示できるようになればまだどうにかなるかなー、とも思わなくもないのだけど。

 ソルさんの方に関しては、彼がなにかと混ざっているのか・そもそも本当になにかが混ざっているのか?……という部分が現状不明であるため、改善の余地があるのかどうかすらもわからない状態である。

 

 ……行動を見ている限り、争うのは本意ではなさそうな空気が所々に見えるが……それがこちらの勘違い、と言われてしまえば反論の余地は今のところなく。

 それゆえ、仮に今の状態で『実はハジメ君はとっても良い子なんですよー』みたいなことを言ったとしても、ソルさん側にそれを信用させることもできないし、そもそも信用されたとしても、ソルさん側がそれを考慮する必要性がない……正確には、彼がハジメ君の弱い部分の吐露に付き合う必要性がないため、ハジメ君側が一方的に立場が弱くなる……という結果にしかならないわけで。

 

 そのため、彼等の関係を取り持つことを考えるのであれば、それはソルさんの弱みを握ってから、ということになってしまうのであった。

 で、今のところ彼の弱み、というものに対しての取っ掛かりは、彼が恐らく【複合憑依(混ざりもの)】であるというなんとなくの()、しかないので、こちらとしても動くに動けない……という感じになっているわけである。

 

 こんな状態で話題を振ったところで、彼等の関係性の是正には繋がらないということも先に述べた理由に重なり、余計に会話が減っているというわけなのだが……。

 

 

(……私の頭上で視線の火花を散らすのは止めて欲しいなぁ)

 

 

 私の気まずさを、彼等が考慮してくれるかと言えば別の話。

 

 歩み寄りの切っ掛けがない以上は、彼等は常の通りに不倶戴天*5・相容れぬ間柄のようにメンチバトル*6をおっ始めてしまうわけで。

 ……気が咎めるんならやらなきゃいいのに、とりあえずそれくらいしかできないからやっておく、みたいな惰性感マシマシのものだけど、純粋に外から見れば一触即発以外の何物でもないわけで。

 

 

「……はぁ。お二人とも、手隙なんでしたら先に現場に向かいますか?ここでのお仕事は別に初めてでもないみたいですし、相手方もそう問題にはしないでしょうから」

「……ああ」

「わかった」

 

 

 一応、姿形は偽装しているにも関わらず、ギスギスとした空気を張り巡らせているために、周囲の一般人からのなんとも言えない視線を向けられていた私達は。

 ともすれば殺しあいでも始めるんじゃないか、みたいな深刻そうな顔まで向けられ始めていたことを考慮して、先に現場に向かうことにしたのだった。

 

 ……これが、今回が初の仕事場だったりすると、ミラちゃんが戻ってくる前──正確には、許可がキチンと出ていることを確認する前に動く、だなんて無理はできないのだろうけども。

 この場所に関しては『新秩序互助会』としてもお得意様、向こうもこの二人が問題児であることは承知の上であるため、ちょっと独断専行したとしても大きな問題にはならない……と見越しての行動なのであった。

 ……まぁそもそも、この二人が素直に依頼を聞いて仕事をこなす、という時点で違和感バリバリなのだし、こちらの内情にも通じているらしい依頼者としては、承知の上だろう。

 

 で、そもそもの話。

 この場所での仕事とは、一体なんなのか?……ということが疑問に上がってくるわけなのだが。

 それに関してはとても単純で、()()()()()()()()に頼むのが、ある意味納得できる仕事となっている。

 

 

「イノシシ猟とはまぁ、ある意味お誂え向きと言いましょうか……」

「……まぁ、現代で戦闘関連のあれこれ、ってなると狩猟が一番身近なのは確かだろうな」

 

 

 施設──自然保護に関しての国の役所であるそれを横目に、目的地である山の入り口へと歩き始める私達。

 そう、今回のお仕事と言うのは、地域貢献の一種なのであった。

 

 

 

 

 

 

 皆さんは狩猟という行為に、どんな印象を抱いているだろうか?

 野蛮な行為?それとも、必要な行為?*7

 ……個々人の思いはどうあれ、狩猟というのは歴とした職業の一つである。

 

 無計画・無秩序な狩猟を抑制するために、狩猟免許や狩猟者登録なども必要であり、また使用する猟具によっては、銃砲所持許可申請なども行わなければならなかったりもするし、更に更に、一年の内に定められている可猟期間以外での狩猟は原則害獣駆除となり、そこで狩猟した獲物は金銭への換金はほぼできず、それゆえにハンターとしての活動のみで生活することは困難……だとか。*8

 色々とまぁ、それを取り巻く問題は山積みながら。居なくなると居なくなるで困るもの……それが、ハンター(狩猟者)という職業である。

 

 そんな彼等が日本において、一番駆り出されるであろう相手。*9それが、イノシシとなるわけである。*10

 

 イノシシとは、哺乳綱偶蹄目イノシシ科の動物であり、家畜である豚の原種であるとされる生き物である。

 豚と聞いて、幾人かは弱い生き物だと勘違いしてしまうかもしれないが……とんでもない。*11

 神話においては、度々英雄達を脅かす脅威として現れる*12ことからもわかる通り、彼等は普通に人間にとって脅威となる生き物である。

 ……まぁ、そもそも野生動物はそのほとんどが、人間一人程度なら殺傷できる実力を持つモノがほとんど*13なわけだが、それは置いといて。

 

 ともかく、彼等が人間との関わりにおいて、殊更に害獣扱いされるのには理由がある。

 それは彼等が雑食性であり、()()()()()()()()()()()()()()()という習性がある……ということに尽きるだろう。*14

 

 彼等はどうにも選り好みをしているらしく、例え山中に彼等が好物とするミミズや木の根のような食物が沢山あったとしても、人間が農作物を育てていたり、はたまたお弁当のようなモノを持っている場合は、積極的にそちらを摂食しようとしてくるのである。

 後者の場合は、時によっては人に攻撃してくるパターンさえあるというのだから、姿形こそ違えど、暴徒化した猿の群れを思い出すような有り様だと言えるだろう。

 

 それゆえ、国は増えすぎた彼等の数を是正するため、積極的な駆除活動を促進しようとしているらしく……。*15

 

 

「その流れで、俺達にも仕事が回ってきたってわけだな」

 

 

 ハジメ君が小さく呟くのを聞きながら、山中を歩いていく私達。

 

 本来であれば必要な雑多な免許や手続きなどは、私達が真っ当な戸籍を持っていないことから、あれこれと裏道的な対策を取られているらしく。

 

 結果、役所に申請をするだけで、狩猟行為を始めることができる、というある種の特権的なモノを私達は得ているのだった。

 ……まぁ、狩猟後には詳細な測定やら報告書やらが必要らしいので、言葉ほど単純な話でもないようだけど。……でもまぁ、本来なら必要な『銃砲所持許可申請』なども略式でパスできるようなので、一般的なハンターに比べれば手続きなどが簡略化されている、というのは確かだといえるはずだ。

 

 ……ところで、話を聞く限り国からの援助というか補助というか、結構がっちりやって貰ってるみたいだけど。

 こうして接触するまで、こんなことやってる団体が居るって話、()()どこからも聞いた覚えがないんだけど、お偉いさん方その辺りの説明どうなってるんです?

 

 ……という私の疑問は、今のところ答えてくれる人間がいないために、保留されているわけなのですが。

 これ、向こう()に帰ってからも一騒動ありそうだなぁ、と今から胃が痛い私なのでした。

 

 

*1
小林製薬の『タフデント』のCMにて、みのもんた氏が述べた台詞『大事なことなので二度いいましたよ』が元ネタとして有力視されている言葉。重要な物事を強調するように二度言うことを指すが、まれに単なる間違いで同じ事を二度言った場合にも使われる

*2
『素敵で無敵』は種村有菜氏の漫画『神風怪盗ジャンヌ』における主人公・ジャンヌの台詞『強気に本気、無敵に素敵、もひとつおまけに元気に勇気』より。いわゆる韻を踏んだ台詞。後者の『私の賢者さま』は、水無月すう氏の漫画『私の救世主(メシア)さま』のタイトルから。オタク的には『聖逆十字反天雷烈波(クロス=クルセイドリバースデリンジャー)』の元ネタ、というとわかりやすいだろうか?

*3
サザンオールスターズの楽曲『TSUNAMI』の歌詞から。正確には()()()()()()()()()()なる

*4
座高が高い、ということから、座っている状態で相手よりも視線が上にある=見下ろしている、という風に解釈をされ、結果として『相手を威圧すること、その態度』を意味する言葉となった。玉座に座って他者を睥睨している感のある二人には、ある意味ぴったりの表現

*5
中国の戦国時代に著された『礼記(らいき)・典礼上』が由来とされる言葉。『父の(あだ)(とも)に天を(いただ)かず』と読む。雑に言うなら『お前のことは同じ空の下に居ると言うだけで虫酸が走るくらいに憎んでいる』となるか

*6
ゲーム『喧嘩番長』シリーズより、ヤンキー達がメンチビーム(『メンチを切る』=『睨む』。その時の視線を光線のように表現する漫画技法があるが、それに名前を付けたものとも呼べるのがメンチビーム。要するに視線の可視化。実際にビームが出ているわけではない)を交わした後、そこから言葉による応酬(=啖呵(たんか)バトル)を行い、そこから実際の喧嘩に至るまでの流れを指す言葉。要するに単なるヤンキーの日常である

*7
生き物を殺す、という時点で忌避されやすい狩猟であるが、特定種類の動物のみが増え続けている環境、というものが良くないというのは、常日頃『人間は増えすぎた!』とか言っている人にとってはとても分かりやすい話だろう。人間と違い、獣達は基本的に生存を目的として増えるものである為、そこに遠慮というものは存在しない。やらなきゃ死ぬが根底にある為、彼等の行動は彼等に取って常に『善』である。……その結果として、特定地域の植物を全て食い尽くす、などの行為をするのであるわけだから、特定種族に取っての善が全体の善にはならない、というのは一目瞭然だろう。その為、自然の調和を目的としての狩猟は許されて然るべき、というのが世のハンター達の主張である。故に、必要以上の狩猟は彼等も許していないし、そもそもそこに罪悪感がないわけでもない。その辺りはしっかりと認識すべきことだと言えるだろう

*8
ハンターのみで食べていけるのは、いわゆる違法狩猟者のみ、というのがハンターの数を減少させる一因になっている、というのは間違いないだろう。報酬も少ない上に、知りもしない他人から『血も涙もない殺戮者』などと責められることもあるというのだから、そりゃやりたくないとなるのが人情である。……その結果として市街地にまでイノシシやクマが出没するようになっているというのだから、堪ったものではない

*9
平成30年のデータになるが、単純な狩猟数では僅か(およそ600頭)な差でニホンジカの方が多いものの、狩猟以外の捕獲数なども含めるとイノシシが一番多い(イノシシ・60万5千に対し、ニホンジカ・57万2千(※農林水産省調べ)。クマが1万9千なのと比べれば、その多さは一目瞭然である)

*10
クマの方が強いのでは?と思うだろうが、単純な農作物の被害に話を絞ると、イノシシが約46億円であるのに対し、クマに関しては約5億となっている(両方とも令和2年のデータ・農林水産省調べ。なお、単純な被害総額だと鹿の方がヤバい(約56億円))。クマは人を積極的に襲わず、また人の居るところにも降りてくることは滅多にない(かつ、降りてきたら確実に何らかの対処がされる)のに対し、イノシシは積極的に街に降りてくる(また、降りてきても単に山に戻される確率が高い)為、というのが理由の一つにあげられる。何故彼等が街に降りてくるようになったのか、というと、彼等が人間の食べ物の味を覚えてしまったこと、及びクマに比べると一度の被害が軽い(=ので、その対処としての駆除が、クマに比べると非推奨気味である)為、だとされている。狩猟者の高齢化・減少傾向や、吐き違えた動物愛護なども重なり、彼等は人間が恐ろしくない生き物だと思ってしまっている。その為、『美味しいものを持っている人間達は、ちょっと小突いただけで餌をくれる生き物』だと認識されているわけである。似たような状況になっている存在には、皆さんご存じの『猿』が存在する

*11
とりあえず離れた島に泳いでいくような体力なども持っている為、生息していないところを探す方が難しかったりする

*12
有名処としてはケルト神話におけるディルムッド・オディナの死因となった魔猪や、ギリシャ神話のカリュドーンの猪などか

*13
犬猫もやろうと思えば殺れます。やる気がない・やる意味がないからやらないだけで

*14
この習性を持つ野生動物は、総じて『駆除』以外の手段が効果を持たない、という点で問題視される。山に返せば良いじゃない、が実質無意味と化す為である。人が居る限り人に寄ってくる、という点で人間という存在の被害者とも言えるのが、更に話をややこしくさせるわけだ

*15
2023年迄に、ニホンジカとイノシシの生息数を半減させるように動いている

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