なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・ちょっと遠い時間の話・三

「それで、ここまでの会話から、犯人がエミヤお兄さんに尊敬の念を抱いている人物なんじゃないか?……って結論を出したわけなんだけど。……その言いぶり的に貴方、もう犯人の目星は付いてるんじゃない?」

「なんだと?それは本当かね、キーア?」

「あー、んー……凛ちゃんは流石に目敏い、っていうか……まぁ、うん。なんとなーく予想は付いてるよ。……その予想があってると仮定すると、相手を捕まえるのは難しいだろうなーって推測もできちゃったりするわけだけど」

「……ふぅん?貴方がそう言うってことは、もしかして私も知ってる人だったり?」

「えーと、どうだろ?向こう(なりきり郷)の人だってのは確かだけど……」

「なんだか、どうにも煮え切らない感じね……?」

 

 

 一通りエミヤさんの恥ずかしがる姿を楽しんだ後、目尻に溜まった涙を拭いながら、凛ちゃんがこちらへと質問を投げ掛けてくる。

 

 その内容は、既に私が犯人の当たりを付けているのではないか、というもので。……特に否定する理由もなかったので、小さく頷きつつ答える私。

 さっきまでおもちゃにされていたエミヤさんも、そのやり取りを聞いて、こちらに確認を取るような言葉を投げ掛けてくるのだった。

 

 ──エミヤさんに敬意……尊敬の念を抱きつつ、その上で彼の鷹の目から逃れられるだけの実力を持ち合わせる人物。

 ……という風に犯人を定義した時に、捜査線上に浮かび上がる人物を一人、私は知っているわけで。……今回の事件に特に捻りがないのであれば、()()が犯人だと見てまず間違いないだろう。

 ただ一つ、その仮定に問題があるとすれば。

 その予想が正しい時に、件の犯人を取っ捕まえるのは至難の技……場合によってはかなりの長丁場になる可能性がある、ということだろうか。

 

 私の発言をここまで聞いても、当該の人物にピンと来ていなさそうな辺り、凛ちゃんが()()と面識があるかは微妙。……もし仮に面識があったとしても、彼女の事情について凛ちゃんは深い部分を知り得ていない……と判断することができるわけで。

 

 ……まぁ、相手(犯人)側の気持ちも、なんとなく理解はできる。

 一応は別世界の、姿が似ているだけの別人。

 ……エミヤさんと関わりがあるかどうか、微妙に判断し辛い立ち位置にいるこの凛ちゃんだけれども。*1

 それでも彼女と同じ顔・同じ輝きを持つ人物が、英霊エミヤという存在にとって、とても重要な存在だというのも事実。

 そこまで関わりの深い相手に、彼女が()()()()()を明かすというのは。……とても、勇気のいる行動だと言えるだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうし。

 

 ゆえに、凛ちゃんが彼女の事情を知らないというのは、別に彼女の怠慢だとか薄情者だとか、そういう悪評に繋がるようなことはありえない……ということになる。

 ……まぁそれはそれで、今回の事態の解決の難易度が上がってしまった……という風にも取れてしまうわけなのだが。

 

 

「……んん?どういうこと?」

「ここにいる凛ちゃんにとっての原典とでも言うべきものは、言っちゃあ悪いけどマイナーもマイナー、知ってる人が珍しいくらいのもの。*2そもそもその作品以外に出てきたこともないし、表面上の設定以外はとてもあやふや……って言葉が飛び出すくらいに、キャラとしては不明点の多いタイプでもあるけど。……それでも私の予想している相手が、凛ちゃん(貴方)のことを全く知らない、なんてことはあり得ないと思う。つまり……」

「あー、なるほど。情報アドバンテージ的に、既にこっちが不利ってことね?」

「そういうこと」

 

 

 こちらの言葉に、なるほどと小さく頷く凛ちゃん。

 ()()()()()が事情なだけに、こちらは互いの『相手への知識』という面で、既に負けていると言ってしまってもいいくらいの差がある。

 

 それはマイナーな出身であるがゆえに、本来ならば相手に自らの情報をほぼ与えない……どころか、姿が同じ『別の遠坂凛』が有名過ぎるがゆえに、そちらと混同される……という形での情報の誤認すら引き起こせてしまうという、かなり特殊な立ち位置にいる凛ちゃん(彼女)の存在を以てしてなお、()()()()()()()()()()()と評価するより他ない相手なわけで。

 

 そんな私の言葉になにかを気付いたのか、凛ちゃんは苦い顔をしていた。

 

 ……まぁ、うん。()()()()()()()()()()()()()()モノでもあるし、その話題のセンセーションさから彼女も耳にしたことがある……などの事実から、彼女も大まかな相手の事情に気が付いた、とかが理由だろうとは思うけど。

 ともあれ。そんな彼女の様子に、エミヤさんの方も遅まきながら、今回の相手がどういう存在なのか?……ということに気が付いたようで。

 彼は微妙そうな表情で、こちらに確認の言葉を投げ掛けてくる。

 

 

「……あー、つまり。……相手は決して()()()()()()()()()()()()()、と言うことだと?」

「そうだねぇ。端的に言えば二次創作(クロスオーバー)組になるのかな?」

「……なるほど。それは確かに、こちらが情報戦で負けるのも致し方ないな」

 

 

 こちらの言葉に、揃って額を押さえる主従二人。

 

 例えるのなら、ゆかりんのような。……(原作)の彼らに、なにか他の要素を足したような存在。

 こちら(『新秩序互助会』)においては珍しすぎるその存在が──つい最近まで自分達のような存在は、全て『転生者』だと勘違いしていた彼らにとって、未知との遭遇以外の何者でもないその存在が犯人である……という予想を聞いて。

 思わず頭痛を感じて、苦い顔をするエミヤさんと。

 これからが大変であるということを、改めて強く実感した凛ちゃん。

 そうして二人が浮かべたのが、ある意味そっくりな苦渋の表情だった、というわけで。

 

 そんな姿を見た私ができることといえば、小さく肩を竦めるくらいなのでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけで。相手方に対処をするために、更に色々呼んでみました~」

「いやちょっと待ちたまえ」

『おやおやぁ~?アーチャーさんはどうやら、気まずさが天元突破*3している御様子!……まぁ、全員よく知ってる人とは別人、という辺り閉口してしまう気持ちもわからなくはないのですが!ところで、その格好は浮かれた気分の表れかなにかなんですかぁ?』

「……だから、君達は私になんの恨みがあると言うんだ!?」

 

 

 相手を捕まえるのに、とてつもない労力が掛かることを理解したところで。

 それをどうにかするために、向こうから更なる援軍を呼び寄せた私。……だったのですが。

 そうして呼ばれた面々を見て、エミヤさんは思わずとばかりに絶叫していたのでした。

 

 その慌てぶりは、常日頃冷静沈着な彼にしては珍しすぎるくらいの、その表情まで崩れてしまうようなもので。

 思わず笑っ……お労しい気持ちでいっぱいになる私である。……まぁ凛ちゃんの方も、集まった面々にちょっと微妙な顔をしていたのだけれど。

 

 それもそのはず、凛ちゃんは確かに私の知り合いではあるけど、別に常日頃一緒に居るタイプの人物ではない。

 それゆえに、()()()()()()とは面識がない、ということも多々あるわけで。……正に『貴方の友達と私は友達じゃないけど』というやつである。……え?その歌は『私と貴方は友達じゃないけど』だろうって?*4

 

 ともあれ。

 今回新しく呼び寄せたのは、都合三名。

 その内の一人──私のスマホからホログラフとして飛び出しているBBちゃんは、阿鼻叫喚?な二人の様子を見て、邪悪な笑みを浮かべているのだった。

 まさに悪魔的後輩、というやつである。

 

 

「BB、二人をからかうのはそれくらいにしておきませんか?……私達はあくまでも補充要因、即ち添え物。今回の事件の主体となるのは、どこまでも彼等自身でしかないのですから」

『アルトリアさんは、いつも通りお堅いですねぇ~。こういうのは、ちょっとぐいぐい行くくらいで丁度いいんですよ?』

「……いやもうホントに勘弁してくれ……」

 

 

 で、そんな彼女の露悪的行動を嗜めているのが、追加メンバーのもう一人。

 トリステインの王女であるアンリエッタ……もとい、騎士王アルトリアなのであった。

 その姿形がリリィの方なこともあって、弓主従二人の反応はとても面白……困惑したものとなっている。

 

 

「顔だけstay_nightってわけか。……いや、俺場違いじゃね?この同窓会に参加してるのはおかしくね?」

「それを言い出したら、正真正銘のオリキャラな私とかどうなるのよ、って話でしょ?いいからどーんと構えてなさいな秘密兵器?」

「えー……いつの間にか銀さん秘密兵器になってるんだけど……期待が重くて帰りたい気分しか湧かねーんだけど……」

「事態の解決の暁には、エミヤさんから報酬が出るって言っても?」

「誠心誠意努めさせて頂きます」

あまりにも綺麗な(45°の)お辞儀!?」*5

 

 

 そんな彼らの様子を見て、最後の一人──坂田の銀ちゃんが、なんだか感慨深そうに頷きながら声をあげていたのだった。

 

 まぁ確かに、姿や背格好・その背景から目を背ければ、属性的にはstay_night主人公とヒロイン達の邂逅と言えなくもないわけで。

 なりきりと『逆憑依』の仕様上、これほどまでに出身作が近い人物達が揃うのも中々珍しいので、思わず感嘆の息が漏れるのも宜なるかな、というやつである。

 

 ……おかげさまで、型月関連ではない私達は、微妙に疎外感を覚えることになったわけなのだが。

 帰りたいとぼやくよろず屋(銀ちゃん)に、頑張れば甘いものとかエミヤさんに作って貰えるかもよ?……と囁くことで、どうにかやる気を取り戻させつつ。

 改めて、完全に初対面であろう面々が挨拶を交わし始める。

 

 

「君が坂田銀時か。噂のよろず屋の力、この目で確かめさせて貰お……なにかね、その視線は?」

 

 

 そんな中、唯一の男性(の見た目)同士のエミヤさんと銀ちゃんの挨拶のタイミングで、差し出された右手を取るでもなく、相手をじーっと見つめる銀ちゃんという、なんとも言えない空気が発生することとなった。

 単に見つめているというよりは、穴が空くほどに睨んでいるとでも言えそうなそれに、エミヤさんが微妙な顔をしているが。

 私にはわかる、銀ちゃんのあの目は──、

 

 

「……誰かに負けるのはいい。けど、お前にだけは負けられない──!!」*6

「……何故そうなる!?」

 

 

 ここはネタの振り所だと、確信した時の目だ。

 案の定飛び出したネタに、思わずツッコミをしてしまうエミヤさん。

 そんな彼に「いや、冗談だよ冗談」と返した銀ちゃんは、後れ馳せながらその手を取って、彼と挨拶を交わしていたのだった。

 

 

*1
当該作品(ティンクル☆くるせいだーす STARLIT BRAVE!!)において、彼女のBGMとなっているのは『エミヤ -SB Mix-』。エミヤの影も形もないはずなのにも関わらず(そもそもこの彼女が契約しているのはセイバーの方)、何故か彼女のBGMとなっている辺り、設定の上ではもしかしたら関わりがあるのかもしれない、ということから。『プリズマ☆イリヤ』シリーズにおける『EMIYA』のアレンジ楽曲『少女進化!』に対してのご先祖様みたいな曲調をしていたりもする

*2
一時期は型月民すらほとんど知らない、なんてこともあったそうな。先述の『EMIYA』アレンジの存在から彼女を知った、なんて人も居たとかなんとか

*3
『天元突破グレンラガン』のタイトルより。現在では限界を超えた凄いもの、というような意味として扱われる言葉だが、実は造語。『天元(=囲碁盤の中心を意味する言葉)』と『突破』という別々の単語を組み合わせたものであり、元の言葉の意味だけを知っていると意味不明な言葉に聞こえなくもないかもしれない。なお、先述の通り造語なので、この言葉が出てくる世界には『グレンラガンが作品として存在している』という見方をすることも可能だったり(『ウマ娘』のアグネスデジタルが使っていた為、一部で話題になったり。……あの作品のウマ面のガンメン(メズー)は、向こうだとどういう扱いなのだろうか……?)

*4
アニメ『ギャグマンガ日和』のオープニング『アタック!ギャグマンガ日和』の歌詞から

*5
お辞儀はその腰の曲げる角度により、相手への敬意の表し方が変わる、という話から。単なる挨拶なら15°、敬礼ならば30°、そして相手を最も敬って行う最敬礼では45から90°に腰を曲げるのが正しい、とされている

*6
『fate/stay_night』における衛宮士郎の台詞、正確には『────おまえには負けない。誰かに負けるのはいい。けど、自分には負けられない───!』。アニメだと『~自分にだけは~』になる

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