なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「それで、ここまでの会話から、犯人がエミヤお兄さんに尊敬の念を抱いている人物なんじゃないか?……って結論を出したわけなんだけど。……その言いぶり的に貴方、もう犯人の目星は付いてるんじゃない?」
「なんだと?それは本当かね、キーア?」
「あー、んー……凛ちゃんは流石に目敏い、っていうか……まぁ、うん。なんとなーく予想は付いてるよ。……その予想があってると仮定すると、相手を捕まえるのは難しいだろうなーって推測もできちゃったりするわけだけど」
「……ふぅん?貴方がそう言うってことは、もしかして私も知ってる人だったり?」
「えーと、どうだろ?
「なんだか、どうにも煮え切らない感じね……?」
一通りエミヤさんの恥ずかしがる姿を楽しんだ後、目尻に溜まった涙を拭いながら、凛ちゃんがこちらへと質問を投げ掛けてくる。
その内容は、既に私が犯人の当たりを付けているのではないか、というもので。……特に否定する理由もなかったので、小さく頷きつつ答える私。
さっきまでおもちゃにされていたエミヤさんも、そのやり取りを聞いて、こちらに確認を取るような言葉を投げ掛けてくるのだった。
──エミヤさんに敬意……尊敬の念を抱きつつ、その上で彼の鷹の目から逃れられるだけの実力を持ち合わせる人物。
……という風に犯人を定義した時に、捜査線上に浮かび上がる人物を一人、私は知っているわけで。……今回の事件に特に捻りがないのであれば、
ただ一つ、その仮定に問題があるとすれば。
その予想が正しい時に、件の犯人を取っ捕まえるのは至難の技……場合によってはかなりの長丁場になる可能性がある、ということだろうか。
私の発言をここまで聞いても、当該の人物にピンと来ていなさそうな辺り、凛ちゃんが
……まぁ、
一応は別世界の、姿が似ているだけの別人。
……エミヤさんと関わりがあるかどうか、微妙に判断し辛い立ち位置にいるこの凛ちゃんだけれども。*1
それでも彼女と同じ顔・同じ輝きを持つ人物が、英霊エミヤという存在にとって、とても重要な存在だというのも事実。
そこまで関わりの深い相手に、彼女が
ゆえに、凛ちゃんが彼女の事情を知らないというのは、別に彼女の怠慢だとか薄情者だとか、そういう悪評に繋がるようなことはありえない……ということになる。
……まぁそれはそれで、今回の事態の解決の難易度が上がってしまった……という風にも取れてしまうわけなのだが。
「……んん?どういうこと?」
「ここにいる凛ちゃんにとっての原典とでも言うべきものは、言っちゃあ悪いけどマイナーもマイナー、知ってる人が珍しいくらいのもの。*2そもそもその作品以外に出てきたこともないし、表面上の設定以外はとてもあやふや……って言葉が飛び出すくらいに、キャラとしては不明点の多いタイプでもあるけど。……それでも私の予想している相手が、
「あー、なるほど。情報アドバンテージ的に、既にこっちが不利ってことね?」
「そういうこと」
こちらの言葉に、なるほどと小さく頷く凛ちゃん。
それはマイナーな出身であるがゆえに、本来ならば相手に自らの情報をほぼ与えない……どころか、姿が同じ『別の遠坂凛』が有名過ぎるがゆえに、そちらと混同される……という形での情報の誤認すら引き起こせてしまうという、かなり特殊な立ち位置にいる
そんな私の言葉になにかを気付いたのか、凛ちゃんは苦い顔をしていた。
……まぁ、うん。
ともあれ。そんな彼女の様子に、エミヤさんの方も遅まきながら、今回の相手がどういう存在なのか?……ということに気が付いたようで。
彼は微妙そうな表情で、こちらに確認の言葉を投げ掛けてくる。
「……あー、つまり。……相手は決して
「そうだねぇ。端的に言えば
「……なるほど。それは確かに、こちらが情報戦で負けるのも致し方ないな」
こちらの言葉に、揃って額を押さえる主従二人。
例えるのなら、ゆかりんのような。……
思わず頭痛を感じて、苦い顔をするエミヤさんと。
これからが大変であるということを、改めて強く実感した凛ちゃん。
そうして二人が浮かべたのが、ある意味そっくりな苦渋の表情だった、というわけで。
そんな姿を見た私ができることといえば、小さく肩を竦めるくらいなのでしたとさ。
「と、言うわけで。相手方に対処をするために、更に色々呼んでみました~」
「いやちょっと待ちたまえ」
『おやおやぁ~?アーチャーさんはどうやら、気まずさが天元突破*3している御様子!……まぁ、全員よく知ってる人とは別人、という辺り閉口してしまう気持ちもわからなくはないのですが!ところで、その格好は浮かれた気分の表れかなにかなんですかぁ?』
「……だから、君達は私になんの恨みがあると言うんだ!?」
相手を捕まえるのに、とてつもない労力が掛かることを理解したところで。
それをどうにかするために、向こうから更なる援軍を呼び寄せた私。……だったのですが。
そうして呼ばれた面々を見て、エミヤさんは思わずとばかりに絶叫していたのでした。
その慌てぶりは、常日頃冷静沈着な彼にしては珍しすぎるくらいの、その表情まで崩れてしまうようなもので。
思わず笑っ……お労しい気持ちでいっぱいになる私である。……まぁ凛ちゃんの方も、集まった面々にちょっと微妙な顔をしていたのだけれど。
それもそのはず、凛ちゃんは確かに私の知り合いではあるけど、別に常日頃一緒に居るタイプの人物ではない。
それゆえに、
ともあれ。
今回新しく呼び寄せたのは、都合三名。
その内の一人──私のスマホからホログラフとして飛び出しているBBちゃんは、阿鼻叫喚?な二人の様子を見て、邪悪な笑みを浮かべているのだった。
まさに悪魔的後輩、というやつである。
「BB、二人をからかうのはそれくらいにしておきませんか?……私達はあくまでも補充要因、即ち添え物。今回の事件の主体となるのは、どこまでも彼等自身でしかないのですから」
『アルトリアさんは、いつも通りお堅いですねぇ~。こういうのは、ちょっとぐいぐい行くくらいで丁度いいんですよ?』
「……いやもうホントに勘弁してくれ……」
で、そんな彼女の露悪的行動を嗜めているのが、追加メンバーのもう一人。
トリステインの王女であるアンリエッタ……もとい、騎士王アルトリアなのであった。
その姿形がリリィの方なこともあって、弓主従二人の反応はとても面白……困惑したものとなっている。
「顔だけstay_nightってわけか。……いや、俺場違いじゃね?この同窓会に参加してるのはおかしくね?」
「それを言い出したら、正真正銘のオリキャラな私とかどうなるのよ、って話でしょ?いいからどーんと構えてなさいな秘密兵器?」
「えー……いつの間にか銀さん秘密兵器になってるんだけど……期待が重くて帰りたい気分しか湧かねーんだけど……」
「事態の解決の暁には、エミヤさんから報酬が出るって言っても?」
「誠心誠意努めさせて頂きます」
「
そんな彼らの様子を見て、最後の一人──坂田の銀ちゃんが、なんだか感慨深そうに頷きながら声をあげていたのだった。
まぁ確かに、姿や背格好・その背景から目を背ければ、属性的にはstay_night主人公とヒロイン達の邂逅と言えなくもないわけで。
なりきりと『逆憑依』の仕様上、これほどまでに出身作が近い人物達が揃うのも中々珍しいので、思わず感嘆の息が漏れるのも宜なるかな、というやつである。
……おかげさまで、型月関連ではない私達は、微妙に疎外感を覚えることになったわけなのだが。
帰りたいとぼやく
改めて、完全に初対面であろう面々が挨拶を交わし始める。
「君が坂田銀時か。噂のよろず屋の力、この目で確かめさせて貰お……なにかね、その視線は?」
そんな中、唯一の男性(の見た目)同士のエミヤさんと銀ちゃんの挨拶のタイミングで、差し出された右手を取るでもなく、相手をじーっと見つめる銀ちゃんという、なんとも言えない空気が発生することとなった。
単に見つめているというよりは、穴が空くほどに睨んでいるとでも言えそうなそれに、エミヤさんが微妙な顔をしているが。
私にはわかる、銀ちゃんのあの目は──、
「……誰かに負けるのはいい。けど、お前にだけは負けられない──!!」*6
「……何故そうなる!?」
ここはネタの振り所だと、確信した時の目だ。
案の定飛び出したネタに、思わずツッコミをしてしまうエミヤさん。
そんな彼に「いや、冗談だよ冗談」と返した銀ちゃんは、後れ馳せながらその手を取って、彼と挨拶を交わしていたのだった。