なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
──月光蝶。
宇宙世紀における一つの到達点、∀ガンダムに搭載されたシステムであるそれは、ナノマシンによって構成された、虹色に輝く蝶の羽である。
文明の全てを砂に返すとされるその翼は、あらゆる人工物を『黒歴史』として塵に返してきたというが……作中のそれは、本来のスペック的には全力を出せては居なかったのだという。
──派生作である『Gジェネレーション』シリーズ。
その作品の一部において、ラスボスを務めたとある機体がいる。
虹色の繭に包まれたその機体は、その繭より解き放たれた時、真なる姿を見せるという……それこそが、
「『System-∀99』!ファンからは∀ガンダム・黒歴史なんて呼ばれる機体!そいつが最初繭に籠っている時と、同じ姿をしているんだよこいつはなぁ~!!」*1
「……そ、そそそ総員退避ィ~!!」
「も、もうダメじゃおしまいじゃ~っ!!?」
目の前に鎮座する虹色の繭を指差して、堂々と叫んだ私。
その内容が内容だっただけに、ミラちゃんとサウザーさんは大パニック。
慌ててそこから逃げ去り、近くの柱の影まで後退することとなるのだった。
……いやまぁ、もうちょっと遠くへと逃げるべきな気もしなくはないのだが、そもそも向こうが本格稼働した時点でゲームオーバー、最早どうしようもないというのも確かなので、実際は何処へ逃げても同じ……と、若干自棄っぱちになっているのかもしれなくもなかったり。
ともあれ、影からそーっと顔だけを出して繭の方を窺ってみるものの、件の繭は先ほどまでと同じく、静かに明滅と脈動を続けるのみ。
今の所は中から∀がこんにちわ、というような気配はなさげなのであった。
そのことに一先ず胸を撫で下ろしつつ、改めて円陣を組んで、作戦会議を始める私達である。
「……ぶっちゃけて聞くが、あれは本当に∀なのか?実はなにか違うものだったりとかは?」
「明らかにサイズが小さいってことが気にはなるけど、見た限り他に該当するモノはほとんどないよ」
「ほとんど……というと、一応他のモノの可能性もあると?」
「……その場合はモスラとかが生まれるんじゃないかな?」*2
「よし!どちらにしても大事だと言うことだな!泣きたい!」
サウザーさんからは改めてあれが∀の繭なのか、という疑問をぶつけられたが……違ったとしても『繭』である以上、中になにかが潜んでいるということは確定的。
一応一例として、あれがモスラのものである可能性をあげたが……私が思い付かないだけで『繭』から羽化してくるヤバイもの、なんて他にも幾つかあるかもしれないわけで。
そういう意味で、警戒を解く理由にはならないと告げるより他なかったのであった。
……まぁ、解析した感じ『ナノマシン』で作られた繭であることはほぼ確実だったので、∀以外である確率はガチャで星5引くよりも低いだろう、とも言っておくことになったわけだが。
そうしてぎゃあ、と叫び声をあげるサウザーさんを横目に、次いでミラちゃんが口を開いた。
「キリアじゃダメ、と言うておったが、
「……試したくはないけど、多分なんとか」
「行けるのか……」
彼女が発したのは、私が先ほど口にしたことについての確認。
対処できるか否かについては……第二形態を使うのなら、多分どうにかなると思うけど。
そもそもの話、こちらが第二形態を使わされている時点で、実質負けのようなもの。……勝った方が私達の敵になるだけです*3案件以外の何物でもないので、正直おすすめはしない。
あとは一応、対人工物特化*4なのが月光蝶システムの特性なので、魔法とかで攻めればもしかしたらどうにかなるかもしれないが。
……作中描写的にはビームという、形の無いものを吸収していたりもしていた上、月光蝶システムとDG細胞の類似性*5──そこから両者が同じ性質を持っている可能性を考慮すると、魔法で対処する内にそれに適応進化する……などという、悪夢以外の何物でもない事態を引き起こす可能性もあるため、あまり試したい手段だとは言えなかったりする。
……最終的に物理も魔法も効かない、パーフェクト∀とかになられても困るのだ。*6
まぁそんな感じで、周辺に相手を刺激しないように結界でも張って、見なかったことにする……というのが意外と無難なんじゃないかなー、とちょっと現実逃避したくなるのが現状なのでありましたとさ。
……それだと問題の先延ばしでしかないため、結局どこかで封印を解いて相対する羽目になってしまうわけでもあるのだけれど。一応、『
ともあれ、現在こちら側に取れる対処が少ない、というのは確かな話だろう。
「……しかし、何故人間大サイズなのだ?∀ガンダムと言えば、それなりの大きさのお髭のガンダム、という奴だろう?」
「そこはなんとも。構成物質的には∀以外の選択肢がありませんので、半ば状況証拠からの断定でしかありませんし。中がどうなっているかとかは、実際に確かめないことには……」
「……確かめるのはちょっと遠慮したいなぁ」
(……口調を戻したと言うことは、余裕が出てきたと言うことかのぅ)
そんな感じで、ミラちゃんからの生暖かい視線を受け流しつつ、サウザーさんの質問に答えを返していく私。
あの繭を形作っている糸は、複数のナノマシンが依り集まってできているものだった。
あの大きさで軽々と持ち上げられるほどに軽いのも、更には繭なのにも関わらず意外と固いのも、それらがナノマシンを有効活用した上でのモノだと言うのであれば、それを行える者が中にいる……という風に判断するのが普通だろう。
それだけだとイヴちゃんとかヤミちゃんとか、ナノマシン使い系のキャラが候補に上がらないわけでもないのだが……。*7
「意味がわからない話ではありますが、あれもまた転生者であると見るのが正しいはず。……その二人が発掘される、というのは意味がわからないので、状況だけを見るのなら∀説の方が強いんですよね……」
「……お主はなにを言っておるのじゃ?」
おかしなものを見るような顔をしているミラちゃんに、事実ですよと返しながら例をあげて説明をしていく。
基本的に、『逆憑依』という事例においてロボット類は持ち込めない、というのが一般認識である。
これは、いわゆる『再現度』方式ではロボットのガワは再現できても、その中身を再現しきることができないから……などの理由がよく言われているが……。
そこをもう少し突っ込むと、複雑な機械類は『完全な再現以外では機能しないから』というのが、ここでの本当の理由ということになる。
一般的な『逆憑依』勢は、大体本物の一割から五割程度の再現度であるのが普通なのだという。……どういう基準で一割だの五割だの言っているのかは、これを提唱していた琥珀さんに聞かないとわからないだろうが……。
ともかく、単に人を再現対象とする場合、その『再現度』は結構ファジーというか、かなり雑な状態でも機能はする、というのは確かなことであるらしい。
そのせいで変なことになっている人もいるので、あまり良いとも言えないわけだが……中途半端な再現でも生活に支障はない、というのは押さえておくべきポイントだと言えるだろう。
対して、機械類というものは──電気を使用しない、単なる金属製の物体であるならばまだどうにかなるのだろうが、電気を使用するということはすなわち制御システムを必要とする、ということ。
それは
姿形だけは似せられても、その機能そのものは曖昧な再現度では機能しないのである。
必然的に完全な再現を行えない『逆憑依』において、機械類は再現の仕様外になってしまうのは、ある意味仕方のないことなのだ。
……まぁ、アスナさんのように何故か『再現の難しいはずの機械類』を、持ち合わせている人も居るわけなのだが……。
これに関しては再現しているのではなく、それが存在している世界から実物を持ってきているのではないか……という予想がされているらしい。
再現に使われるはずの労力を、それらのアイテムを持ってくるために回しているという考え方だ。……こっちの予想もアスナさん相手だと、微妙に例外感漂うのがなんとも言えない話ではあるが。
ともあれ、それらの『機械類は殊更に再現し辛い』ということを念頭に置くと、付属物としてのロボットというものがとにかく扱い辛い、というのはなんとなく理解できるかもしれない。
単なる電子機械でも難しいが、創作世界のロボットはその動力源に至るまで不可思議なものである、といえことも珍しくないからだ。
現代においては、核融合炉*8ですらもまだ研究段階のものであるし、エネルギーそのものが意味不明なタイプの、ゲッターとかマジンガーに至っては、そもそも製作することすら不可能である。*9
これらのものを仮に『再現度』形式で実現しようとする場合、そのエンジンを再現した時点で残り容量が尽きる、なんてことになりかねないわけで。
だったらロボットは端から再現せず、乗り手のみを再現する……という形になるのは当たり前だろう。
結果、以前のシュウさんのように、
なお、モモちゃんは多分『どっかから持ってきた』パターンだと思われる。性能が低かったのは再現度の問題ではなく、そもそもあのデンライナーが量産品だった、という考え方だ。
長々と語ったけど、再現度云々の話からロボットは持ち込みがとにかく難しい、というのはなんとなくわかって貰えたと思う。
その上で、改めて向こうを見てみよう。……うん、ナノマシンで虹の糸を作り、それで更に繭を作る……だなんて、どう考えても
こうなってくると、今までの例とは少し違うものだと判断するしかないのだ。
まず、個人の特殊能力として、ナノマシン生成能力を再現しているとするならば……五条さんの優先技能が六眼だったように、先程例にあげたイヴちゃんやヤミちゃんなら該当していると言えるが、同時にそうだとするのなら地面に埋まっていた意味がわからない。
彼女達はナノマシンによる変身技能こそ持っているものの、普通に食事や睡眠も必要とするタイプの存在である。
つまり、その肉体を細かいナノマシンの欠片に分離して量子化回避、みたいなことはできないわけで。
そうなると、あの繭の異常な軽さが説明できなくなってしまうのだ。
同時に、地面に埋まってるなら息ができないだろう、という話にも繋がってくる。
休眠状態になっているので呼吸は必要ない……という考え方もできるかもしれないが、それでも呼吸が
あの繭には換気の穴は空いておらず、明滅して鼓動をしているように見えるものの、実際に息を吸っているわけではない。
それらの情報を総合するに、あの繭は何者かではあるものの、その中身は本当の繭のように形の無いものである、と考えた方が自然だと言えるのである。
それゆえに、中身が呼吸を必要としないロボットであると考えるのもまたおかしな話ではなくなり、ロボットでナノマシン使いという指定により、∀である可能性が高まるというわけなのだ。
……え?よくわからない?
じゃあまぁ、どろどろに溶けてるイヴちゃんとか誰が喜ぶんだよ、と思っとけばいいよ。一部の特殊思考の人は喜びそうだけど、そういう人には
なお、この話をしている最中、サウザーさんは意味がわからないとばかりに、頭から煙を吹き出していたのだった。