なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「兵器としての面はよくわかった。それで琥珀、あっちの方は……?」
「おおっと、そうでしたそうでした。そっちの方は……ええと、こんな感じですね。傷に対してのナノマシンによるかさぶたの生成も見受けられました*1ので、
「……なにをこそこそと話していらっしゃるんです?」
暫く頭を抱えていた私だが、ブラックジャック先生と琥珀さんが、なにやらこそこそと話をしているのが見えたため、とりあえず確認のために割り込むことに。
別に二人を信用していないわけではないが、つい先ほどエーくんの現状の危険性について話があったところ。
……
「ああ、ナノマシンと言えばもう一つ、創作界隈において特に活用されている分野があるだろう?」
「有効活用……?……あ、医療用!」
「その通り」
……そういえばそうだった。
先生の言葉に、そもそも彼が何故今回エーくんの検査に立ち会ったのか、という理由を思い出した私。
ナノマシンには、兵器への転用目的よりも遥かに多く、語られている用途がある。
──それこそが、医療用ナノマシン。*2
血管などを通り、体の隅々を巡り、白血球のように病気と戦う……そんなスーパーマシンである。……個人的に、もし仮に『はたらく細胞』に登場したらどんな感じになるのかなー、とちょっと気になっているものだったりもする。*3
ナノマシンと言うものの構想は比較的新しく、一九五九年にカルフォルニア工科大学で物理学者であるリチャード・P・ファインマン氏が講演した『
この時の講演は、大雑把に言えば『今使っている工具よりも小さい工具を作る行程を繰り返すことで、原子サイズレベルでの技術を扱えるのではないか?』といった感じのモノだったわけだが……
ともあれ、その後一九八六年に出版された『
その流れの中で生まれたのが、ナノマシンの医療目的への転用だ。
人の体には、そもそも白血球という病気に対しての免疫機能があるというのに、何故ナノマシンを転用しよう……などと言う考えが生まれたのか。
それは、生来の免疫機能は薬を危険物であると勘違いすることがあったり、ガン細胞のような機能の穴を突くような病気が存在したからだともされるし、肉体の衰えによるそれらの免疫機能の低下を代替するためだったからともされるが……詳しいことはよく分からない。
ともあれ、人間の持つ免疫機能というものが、意外と穴があるものだというのは事実。
それらを代替し、かつ(元の臓器に比べれば)手軽に交換できるナノマシンや機械由来の臓器というものが、永遠を約束する夢のアイテムとして人々の想像を盛んにしたのだろう。
まぁ、そんな感じで。
ナノマシンを使う際に、それをどう活用するのか?……という話をすると、必ず話題にあがるもの。
医療目的のナノマシンというものは、仮に現実化するのであれば誰もが欲しがる技術だというのは間違いないだろう。
∀のナノマシンと言えば、ロボットなのにも関わらずかさぶたを作ることでも有名である。
もし仮に、このナノマシンを他人にも使えるようにできたのなら……。
医療関係者である先生としては、真っ先に気になることだと思われるのも納得だろう。
「ああ、そうだな。……特に、彼のナノマシンは環境復帰を目的としたものだという話もある。……天災が病気となったもの、だなんて風にも呼ばれる
「……あー、そういえば先生ってばアークナイツ組も受け持ちなんだっけ……」
月光蝶によって塵になった大地は、新たな命を育む場所となる──。
そんなような話があったことを思い出した私は、先生の言葉に小さく頷きを返す。
確かに、アークナイツの世界観において一番重要なものである病気……『鉱石病』は、天災の後に現れるとも、そもそもにそれこそが天災を引き寄せているのだとも言われている鉱物、『
感染の仕方、鉱物由来のウイルスめいた挙動などから、『鉱石病』もまたナノマシンのようなモノなのではないか?……などと語られることもあり、∀の月光蝶が彼等の治療に有効である可能性は、十二分にあると言えるだろう。*6
……まぁその場合、彼等の体内の源石全てを排除することにも繋がるだろうから、結果として単なる一般人になる者も多いだろうが。
ともあれ、こっちの世界では今のところ、源石に頼るような事態にもなっていない。
であれば、それらの厄介事が片付けられる目処が立つのであれば、じゃんじゃん解決して行って貰いたいものである。……友人も居ることだし。
「……ほう?いつの間に。基本的には彼処は外部者は立ち入り禁止のはずなんだが」
「そりゃまぁ、ネットでって奴ですよ。……よっぽど暇だったのかなんなのか、元とキャラ違いすぎてビックリしましたけど」
こちらの言葉に、小さく興味を示す先生。
私の言う友人とは……今いるアークナイツ組では恐らく唯一、
色々と厄い背景を持っているために、自分から引きこもっている節があるが……まぁ、基本的にはいい人だ。……元々『ダーッ、ドーン、パパッ』とか言ってたのが、更に変な方向に行ってる節はあるけど。名前が似てるからって
まぁともかく。
彼女も他の人達が『鉱石病』から解放されたのなら、ちょっとは外に出てくる気にもなるだろう。
その辺りの期待も踏まえるのなら、エーくんのナノマシン云々の話は、わりとプラス寄りに考えられるかもしれない。
無論、兵器転用だけはさせないように、あれこれと報告書をでっち上げなければならないかもしれないけれども。
そんな感じで、彼のナノマシン云々の話をしていた私達は。
「あー、キーアお姉ちゃんみてみてー、かたぐるまー」
「フフフ、これもまたちょっとした
「シュウさんがエーくんを肩車してるっ!?」
何故かエーくんを肩車しているシュウさんという、なんとも言い難い場面に出くわして、呆気にとられる羽目になるのでした。
「……それで、一先ずはこの部屋で匿うことにしたってわけね?」
「そういうことになりますね。サンプルとしてエーくんのかさぶたを置いてきたので、そこからナノマシン技術の解析が進む……ということになるんだと思います」
さて、再びの『新秩序互助会』。
戻ってきた私はと言うと、施設の近くでキリアを呼び寄せて超☆融☆合。
で、一応は存在について説明していたアスナさんに、改めてエーくんを紹介しているというわけである。
「はんなまー」
「は、はんなま?……その、キリアちゃん?はんなまって、なに……?」
「私にもよくは……どうやら挨拶?ではあるようなのですが……」
「挨拶?挨拶なんだこれ……でも、」
で、エーくんはと言えばいつも通り、謎の挨拶である
「……もー!かーわーいーいー!!」
「わぁ、スイングバイ*8しそうなすごいパワーだ。アスナお姉ちゃんは、力持ちなんだなー」
「……ああはい、そうなると思いました」
意外と可愛いもの好き?な面もある彼女は、すぐに彼の純朴な性格の虜となり、彼を抱いてくるくる回るなどして、たくさん構い倒していたのだった。
……これならまぁ、彼もストレスなく過ごせることだろう。構われ過ぎてストレスになるかもしれないけれど。
ともあれ、そんな二人の微笑ましいやり取りを眺めつつ、あっちでの出来事を語る私である。
「へぇ、アークナイツの人達も居るんだ。……そういうのって、一般の人は大丈夫なの?」
「今のところ、一般の人への感染などの可能性はない、ということになっていますね。なりきりの付属物扱いされているらしく、余程それらの病気と相性が良い……というのも変ですが、それらに感染する素質とでも呼ぶべきモノがなければ、人から人への一次感染は発生しないようです。……ただまぁ、感染した人からの感染である二次感染については、確かめるのも不可能なのでとりあえず警戒をする、という形で進んでいるそうですが」
「……現実の人に感染したら、それはもう現実の病気になってしまうから?」
「まぁ、概ねそんな感じの懸念ですね」
話題は、アークナイツ出身の人々について。
彼等のアイデンティティともなっている『鉱石病』、それらが一般の人に感染するのかどうか、という話だった。
一応、その辺りはブラックジャック先生が体当たりで確かめてくれたとかで、憑依者同士ならいざ知らず、憑依者から一般の人への感染は、宝くじに当たるくらいの低確率であると確認されたそうだ。
これは、元となる病気が感染率の高いモノであっても変わらないらしく、そういう意味では現状の隔離のみで事足りている、ということになるらしい。
各感染者は病気ごとに居住区も違うので、憑依者同士の感染もほぼ起こるものではないし、仮に感染が起きても初期症状などであれば、ゆかりんなんかに頼んで無理矢理ひっぺがすこともできる。
……まぁ、その無理矢理ひっぺがすのを利用して、色んな病気の知見を得まくっていた、危ないお医者様が居たらしいのだが。
「アークナイツ組から
「そ、それはちょっと見たいかも……」
そんな
それを聞いたアスナさんは、思わずとばかりに吹き出していたのだった。