なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「五条悟と言えば、そっちの管轄じゃないのかのぅ!?」
「おあいにくですが、向こうの人が全員私のやってることを知ってる、ってわけじゃないんですよ!五条さんに至っては、わりと郷を留守にすることも多いですし!」
「ちょちょっ、二人ともそんなこと言ってる場合じゃないってば!来る、もう来るって!!」
ひそひそこそこそ話す私達をニコニコと眺めながら、彼は泰然とそこに立ち続けている。……今の五条さんからしてみれば、大抵の相手は雑魚みたいなものゆえ、仕方がないと言えば仕方がないのだが……。
ともあれ、ミラちゃんがこちらを頼りたくなるのもわからないでもない。知り合いなのだから止められるでしょう、というのは(成功するかはともかくとして)すがりたくもなる話だろうし。
どっこい、そうは問屋が卸さない。
今の私の姿は、変わらずキリアのまま。……ゆかりんとかであるのならばいざ知らず、わりと郷を開けていることの多い五条さんが、私が(名目上の)潜入任務を行っていることを知っているかというのは、半ば賭けになるのである。
で、もし仮に、彼がその辺りのことを知らなかった場合は……。
「し、知らなかった場合は……?」
「『主人格から離反しただけに飽き足らず、僕まで騙そうって?あっはははー。……潰すよ?』」
「ヒュッ(過呼吸)」
「うわぁっ!?おち、落ち着いてミラちゃんっ!?」
固唾を呑みながら問い掛けてきたミラちゃんは、次の私の言葉に過呼吸を起こして卒倒しかけてしまう。*1……まぁうん、事実上の死刑宣告?みたいなものなのだから、仕方ないことではあるのだが。
……いやまぁ、仮にもここは現実世界。
「──さて、そろそろ作戦タイムも終わりかな?」
「ぴぃっ!?」
「僕も暇じゃあないんだ。できれば抵抗とかしないで──って、早いな」
「えっ、ってきゃあ!?」
敵前というのにどこか気の抜けている感じのしないでもない相手に、和やかに声を掛けているように見える五条さんだが……その実、よくよく観察すればそこまで余裕があるわけでもなさそうである。
それは恐らく──と考察に入る前に、彼の振り向いた先から飛んでくるのは、飛ぶ斬撃。……この状況ではさすがに間違えない、これは
「
「──無駄だって言ってるのに、君も中々懲りないねぇ」
聞こえて来た声は予想通りのモノであり、それに対する五条さんの反応も、ある意味では予想通りのものであった。
その魔法の名前は、『現断』。
魔法的な防御のほぼ全てを無効化し、相手を切り裂くとされる第十位階最強の魔法だが……そもそもの話、五条さんは防御をしているわけではない。
それゆえ、単純に防御を無効にしようとしても破るべき壁が多すぎるため、相手に届くことがないのだ。
とはいえ、彼の意識がそっちに逸れたのは確かな話。
それを確認した私達は急いで五条さんから離れ、発生した土煙の向こうに居るはずの相手に視線を向けた。
「無駄、とは随分な言い草だな。──種は割れた。次は届かせるぞ、敵対者」
「──へぇ?」
土煙が晴れた先。
魔法を放った体勢のまま、五条さんと相対するのは、一人のスケルトン。……いや、スケルトンなどと比べるのは烏滸がましい。
総身から死の主の気配を立ち上らせ、自身に立ち塞がる者を油断なく睨み付けるその姿は、単なる骸骨のお化けとは格が違う。
──その者、【
どこかの世界では世界を支配する者として立つ彼は、己が纏うローブをボロボロにしながらも、悠然とそこに立ち続けていたのだった。
わぁ、とっても絵になる対峙だこと。
……なんて風に茶化せればよかったのだが、状況はとても宜しくない。
なにせ、現在対峙しているのは『呪術廻戦』における最強の一人・五条悟と、『オーバーロード』の主人公にして死者の王であるモモンガことアインズ・ウール・ゴウン。
アライメント的には善側と悪側、対決は必至なカード*4なわけで。
事実、二人の間に流れる空気は殊更に重く、迂闊に動けばこちらも被害を受けるだろうことは間違いない、と断言できるような状態だ。
モモンガさん側からの挑発めいた言葉に、五条さんは面白そうに笑っているし、正直どうしたらいいのかわからん(白目)
「いやそこで諦めるでないわっ!止めぬか!酷いことになるぞ?!」
「あれを止めようとした私の方も酷いことになりますが!?」
「ふ、二人とも落ち着いて……」
思わず思考停止した私にミラちゃんが叱責を飛ばしてくるが……正直一触即発という言葉でも足りないような空気感のあの二人の間に割り込んで、その激突を止めるだとか……単なる自殺志願者では?としか思えない以上、動きたくねぇとしか言いようがないというか。
そうして私達三人が慌てる間も、状況は止まることなく進む。
くいくい、と人差し指を動かして挑発する五条さんに対し、モモンガさんの方も答えるように持っていた杖をくるりと手の内で一回転させ、
「
「っ!」
唱えられた呪文には、『範囲拡大』の効果が付与されていた。
無限の距離によって届かなくされているのであれば、その距離をそのまま越えてしまおう……ということなのだろう。
実際にその原理でいけるのかとか、『現断』の魔法無効で無理矢理呪術への対処を行っているのだろうかとか、色々疑問は無くもないが……。少なくとも、その呪文を聞いた五条さんが、その場から引くことを選んだということだけは確かだった。
「──へぇ、短い間によく……」
「PvPでは相手のビルドを読み解くのも必須の能力だからな*5。……避けたということはやはり、
「さて、どうだろうねぇ?なんとなーく移動したくなっただけかもよ?……そっちもそっちで、やけに固いけど──なにかしてたり?」
「素直に話すと思うか?」
「だねぇ。……じゃあまぁ、第二ラウンドと行こうか!」
互いに挑発を繰り返す二人は、そのまま攻撃を繰り返し始める。
蒼での引き寄せを警戒していたらしいモモンガさんに対し、不意打ちで赫を使い弾き飛ばして距離を取り、そのまま茈を発動しようとする五条さんに対し。
予想していたモノとは違う衝撃に一瞬目を細めながら、ここで距離を離れさせる意味を理解して
攻守が頻繁に入れ代わりながら、それでも決定打は出しきれずに攻撃を続ける二人の姿は、まるで踊っているかのようだが……。
「周囲の被害を考えてくれませんかね!?」
「あっははは。大丈夫大丈夫、帳の外に攻撃は漏れないようになってるから」
「そういう問題じゃねーんですよー!」
それらの破壊の余波から逃げる私達からしてみれば、決して見惚れているような暇はなく。
どっちかに加勢をするにしても、互いに自分一人しか守る必要性のない動きをすることで他者の干渉を拒否してるし、そもそもこの二人この戦闘を楽しんでいる節があるので、変に手伝うとあとで恨まれそうなのである。
「……は?楽しんでる?」
「お互いに奥の手まで使ってないから、ってこと?」
「その暇がない、ということもあるのでしょうが……実際使えたとしても使う気はないんじゃないでしょうか?」
え、戦闘狂?
……とでも言いたげなミラちゃんの声に対し、アスナさんが答えを述べる。……『狂』とまでは行かずとも、わりとバトルジャンキーな気質がなくもない気がするミラちゃんがそれを言うのか、という気分は無くもなかったが、とりあえずそれは心中に押し止め。
アスナさんの言う通り、現状の二人は互いの切り札──モモンガさんであれば『
双方共にそれらを使えるだけの
もしくは、先に切り札を見せた方がそれを止められる側になる……みたいな懸念を持っている可能性もあるが。
ともあれ、現状の闘争が容易く終わるものではない、というのは確かだろう。……やっぱり間に挟まらないとダメ、だったり?
「悟達の間に挟まる奴絶対殺すウーマンとか出てきません……?」
「なんじゃその胡乱過ぎる生き物」
「……よ、よくわからないけど大丈夫だよ、きっと」
「実行役じゃないからって、二人して反応が雑すぎでは?」
止めなきゃいけないことはわかっているものの、流石に彼処の二人と比べられると
……ええい、あとで恨むぞ二人とも!
若干悲愴感漂う言葉を吐きながら、改めて一つ頬を叩いて気合いを入れる。
……本当なら、この状況下でキーアの姿を晒すのは、後々のモモンガさんとの交渉の上でマイナスにしかならないのだが……背に腹はなんとやら、若干自棄っぱちな気分で飛び出そうとして。
──視界の端に、とあるものを見付けた。
それは、私達がこんなことになってしまった理由の一つ。
森に立ち入るきっかけとなった自殺志願者が、草むらの中に倒れている姿で。
なんでこんなところに?と疑念を抱いた私が、反射的に彼を解析して──その首元に、奇妙な紋様が浮かんでいることに気が付いた。
それは、
それがナニを意味するのかに気が付いた次の瞬間、
「もぉなんなのよあんたたち!」
「「!?」」
甲高い声と共に、二人の間に巨大な剣が振り下ろされた!