なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
勝ちました!……負けました。
一行で矛盾すんな、と誰かに言われそうな気がしないでもないけど、正直言葉通りとしか言えないので、それ以外に形容しようがないというか。
ともあれ、あの状況下で
それから奥の手──噂の第二形態の半歩手前、感覚的には1.5形態的なモノを起動して、
「自身のキャパを越えたもんを、
やせ我慢的に笑みを浮かべながら、そうぼやく私。
その言葉ほど軽々しく*1使ったわけではないのだけれども、結果として全身を『筋肉痛のもっとエグい版』みたいなものに襲われる始末となっているのはご覧の通り。……あんまりにも痛いもんだから目線くらいしか動かせねぇ!
事態の解決後、糸が切れた操り人形のように地面に崩れ落ちた私は、運悪くうつ伏せ状態で横になってしまったため、森の中を元気に這っていく蟻やらムカデやらに顔を這われ、声にならない悲鳴をあげることになりながら、しくしくと涙を流しつつ誰かの救助を待っていたのでありましたとさ。
で、そんな私をひっくり返して、顔やら頭やらを這っていた虫達を払ってくれたのが、現在私をお姫様抱っこしていらっしゃるモモンガさんというわけでして。
いやほんと……余計な手間をお掛けしてすみません……。
「ふっ、気にするな。
「ええまぁ、はい。話が早くてホント助かります……それはそれとして、ていっ」
「あ痛ぁっ!?ちょっ、キーアさんってばいきなり攻撃は酷くない?」
「やかましいわこの
「……~♪」
「目を逸らすな口笛吹くなぁ!」
「いてててて!軽率に無限抜くの止めない?!」
「ええ……?」
謙遜した声を掛けてくるモモンガさんに目礼を返しつつ、そのまま念動力で五条さんの頭に はたく こうげき!
なんで突然そんな暴挙に及んだかって?さっきからこの人、こっちを指差して「うぎゃあっ!」とか「のわっ、ちょ、ムカデは止めて!昔耳に入られそうになったことあるから怖……ひぎゃぁっ!?」*2とか言ってた私を大笑いしてたからだよ!!
要するに性格の悪さまで、原作の五条さんに近付けなくていいから、という苛立ちを思いっきりぶつけた次第と言うわけである。……確かに体は動かせんけど、だからってこっちに攻撃手段がないってわけやないんぞ!
まぁ、
なお、そんな風に五条さんとあれこれしているのが仲良さげに見えたのか、ミラちゃんが変なものを見る目でこちらを見ていたのだが……ちゃうねん、五条さんがワルガキなだけやねん。
「いや、そうじゃなくて……いやもうよいわ、ツッコミを入れるのも疲れる……」
「なんかたいへんそうだねー」
「……なにを言うておるのかはわからんが、とりあえず同情されておるのは伝わったぞ……」
こちらの弁明を切って捨てたミラちゃんは、その肩をぽんぽんと優しく叩く人魚の魔女を見て、最早全ての理解を諦めたような目をしながら、大きくため息を吐いていたのだった。
「……あー、こんな格好で申し訳ないんですけど、とりあえず司会進行役をやらさせて貰いますね」
「うむ、任せた」
「意義なーし」
いつまでもモモンガさんに支えて貰っていては申し訳ない……ということで、自分の体を念動力で操り人形のように動かす、という方式を採用して一人で立つことに成功した私は、そのまま『今回の勘違いを正す会』とでも呼ぶべきモノの開催を宣言。
「とりあえず、改めて自己紹介を。私はキーア、正式名称は『キルフィッシュ・アーティレイヤー』。しがないオリキャラ、というやつでございます」
「……ふむ、オリキャラ……?確か君は、『マジカル聖裁キリアちゃん』における敵方ではなかったか?」
「──その辺りは詳しく話すと長くなるので、また今度説明しますね☆」
「……あ、ああ(……一瞬、心臓もないのに『
まず最初にしたのは、自己紹介。
基本的に初対面となるモモンガさんには、私が誰なのかをいの一番に示す必要があったためだ。……『
小さく首を捻るモモンガさんになんとも言えない気分を感じつつ、次に話題にあげるのは無論、さっきからなにかを言いたげにもじもじしている人魚の魔女について。
「先ほどキリアとして倒れていた人を看病しましたが……軽度の疲労こそ見えたものの、栄養失調もなければ外傷もなし。
「やはりか……そうなると、あそこでソワソワしている彼女には、こちらへの敵対の意思は……」
「多分ないんじゃないでしょうか?……生憎と魔女語はわかりませんが、恐らくは当たり障りのないことを喋っているのではないかと」
「あたりさわりどころか、ふつうのことしかしゃべってないよー!あ、もしかして」
そうして話題の的となっている人魚の魔女はといえば、皆の視線が自身に向いていることに対して、なにがしかの言葉を発していた……が、相変わらずキンキンしているその声は、なにかを言っているのだとしてもこちらには認識できず。
はて、どうしたものかとこちらが思っていると、彼女はなにかに気付いたようにぽんっと両手を合わせ、徐に自身の頭部──三つ目の兜にその手を掛け、
「──ぷはっ!……あー、あー、うん。……えっと、これで通じる?」
「……親方!(魔女の)中から女の子が!?」*5
「はーい残念、かわいいさやかちゃんでしたー♡」*6
「あ゛?」
「……そ、そんなドスの効いた声とか出さなくてもよくない?!」
持ち上げられたその兜の下にあったのは、ちょっと目が白黒反転しているものの、紛れもない人魚の魔女の生前の姿──美樹さやかの顔だった。……なにこのアンバランス状態!?
「いやー、なーんか話が通じてないなー、とは思ってたんだよねー」
「え、ええー……」
さっきからミラちゃん、「ええー」しか言ってないな?
なんて現実逃避めいた思考が浮かんでくるが、それも仕方ないと私は苦笑する。
想像してみて頂きたい。顔以外の全てが人魚の魔女そのものだというのに、顔だけがさやかちゃんのまま、という状態を。……どこの走るガンガー*7だよ、という言葉が思い浮かぶのも仕方がないと思わないだろうか?……上半身云々言い出さないだけまだ自重しているくらいである。
そんな、幾らなんでも肩幅立派すぎ状態のさやかちゃんだが、一応人間に戻ったとかではなく、魔女のままではあるらしい。
「っていうか、そもそも私
「マジかよ」
「流石にわけがわからないよ」
「……世の中って広いんだね」
「見事にみんなのSAN値が削れてる……っ!?」
そうして彼女の口から明かされた、衝撃の事実。
ここにいる彼女は、美樹さやかが『逆憑依』をした結果として、
「あー、それだと語弊があるかも。だって私、自分が『逆憑依』だって気付いたの、
「ちょっと待て、もうこの時点でお腹いっぱいなんじゃけど……」
「諦めようミラちゃん、胃薬はあるから」
「……ぽんぽん痛い……」
……訂正。
ちょっとややこしいが、彼女が『自分が美樹さやかだけど美樹さやかじゃない』と気が付いたのは、あくまでも魔女化してからのこと。
それに気付く前──すなわちここに来る前については、おぼろげながら自身を『美樹さやか』だと確信して過ごしていた、らしい。
わりと常識人なミラちゃんは、彼女の発言に現状の理解を放棄。お腹を押さえながら机に突っ伏してしまった。
他の人も、程度の差こそあれど似たような感じ。一番反応の軽い五条さんでさえ、「えー、そういうのアリなんだ?」と驚きの表情を見せており、モモンガさんに至っては額をその骨の指で押さえながら天を仰いでいる始末。
どちらかと言えば(感性は)常識人な方のアスナさんは、これまた見事な宇宙猫顔を披露していた。
……このままだと会議が停滞し続けるので、意を決してさやかちゃん?に続きをお願いする。
「?なんでそこで名前を言い淀むのさ?……ってああ、今の私って人魚の魔女だから、そっちで呼ぶべきかどうか迷ったってこと?いいよいいよ、好きに呼んで。どっちでも別に構わないし」
「……あー、じゃあさやかちゃんで」
「はーい。……で、なにを話せばいいかな?」
「とりあえず、なんでここにいるのか、からかな」
「ここにいる理由?……んー、ここに
「……んん?」
なお、続いて飛び出した彼女の言葉に、私もまた思考停止に陥る羽目になったのだけど。
……居続ける理由?いやそもそも、なんでここで『キョウスケ』って名前が……?
彼女の口から飛び出す『キョウスケ』と言えば、そりゃ勿論彼女の原作での思い人『上条恭介』なわけなのだが……。
そうして首を捻る私に、彼女はとんでもない爆弾を落としてくれるのでした。
「あれ?聞いてない?リーダーの名前だよ、『キョウスケ』って」
「…………はぁ?」
……どういうこと???